ロシア・アヴァンギャルド展 [展覧会(西洋画)]
渋谷のBunkamuraミュージアムに 「ロシア・アヴァンギャルド」展を見に行った。
私の好きな「マレーヴィチ」の作品が、日本でまとめて見れる初めての機会である。
マレーヴィチは、明るい色調、強調された線、遠近法にとらわれない平面構成で、
農民を描いている。私には、ゆかいな「働くおじさん」のイメージ。
「刈り入れ」 1920年代
農民シリーズ以前、マレーヴィチは、「スプレマティズム」(究極の絵画表現)という
平面幾何学と色価で単純に表現する運動の創始者だった。↓のような十字架シリーズで、
表現の追求をした。
ロシア革命は、1912年。
革命後、レーニン指導下のソ連では、前衛芸術は、「革命的」と認められていたが
、1930年代、スターリンの台頭により、前衛芸術は、粛清された。
時代の流れは、「ロシア構成主義」に変わり、マレーヴィチは、スプレマティズムの
終わりを宣言し、測量師となり、具象絵画に戻った。
この展覧会の最後の絵は、具象にもどったマレーヴィチの「自画像」と「妻の肖像」。
革命の時代を生きたマレーヴィチだったことが、よみとれる。
以上、私が好きなので、マレーヴィチのことばかり書いてしまったが、
この時代の他の画家の絵もたくさん展示されている。
オリガ・ローザノヴァの「汽車のあるコンポジション」(1910年代初頭)
産業革命後で、汽車が文明の象徴だった時代。
カンジンスキー、シャガールは、後にロシアを去るが、この時代のロシア人である。
シャガールの「家族」 1911年。
家では、ユダヤ人であり、外では、権威ある者に握りつぶされてしまう2面性、
との解釈もある。背景は、キュビズム的な多面体構成になっている。
展覧会のサブタイトルは、「シャガールからマレーヴィチまで」だが
シャガール作品は、この他に19歳のときの「女の肖像」と、「ヴァイオリン弾き」しかない。
「ヴァイオリン弾き」(1917年) よく見ると、屋根の上にいますね。
ヴァイオリンはユダヤ人の生活の慰めで、儀式にに欠かせなかった。
幼少期をロシアのユダヤ人地区で過ごしたシャガールは、「ユダヤ人は、屋根よりも
空に近い」という言い伝えを忠実に絵に表現している。
アンリ・ルソーを思わせるようなこの絵を描いた画家は、ピロスマニ。
子供の絵のような「ネオ・プリミティズム」は、最少の美術的要素で最高の効果を
出そうとしていた。
ピロスマニは、「百万本のバラ」の歌のモデルで貧しい画家。居酒屋の看板描き
をしていたが、お札に肖像が使われるほどの国民的画家となった。「ピロスマニ」
というワインのラベルには、彼の絵が用いられている。
「イースターエッグを持つ女性」 1910年代
ロシアらしい素朴さ、フランスとは違ったたくましさが、どの絵にもあった。
よさそうですね!映画を観に行った時に、ドゥ マゴでお茶をしたので気になっていたのです!
by duke (2008-08-05 00:20)
映画(画家と庭師)、見てきました。dukeさんの写真で見ていたときは、わからなかったけど、庭師役は、「サン・ジャックへの道」という私的には◎の映画で準主役の人だったので、とってもおもしろかったです。
ルーブルでドラクロワの絵を見る場面、庭でオペラの曲が聞こえてきて、うれしそうに「ナブッコだね」と庭師が言うときの表情、赤いプジョーのmotoになったら、犬が追いつかなかったり、楽しい場面づくしでした。育てた野菜の緑がいきいきして、、示唆するものがたくさんあるいい映画でした。教えてくださってありがとう!
by TaekoLovesParis (2008-08-05 01:03)
わたしの好きな絵画の世界ですね。
「汽車のあるコンポジション」に一目惚れ。
鉛筆デッサンの白黒の世界も大好きだけど、
<明るい色調、強調された線>というのも面白くて、意外と気に入ってるんです。(笑)
by berry (2008-08-05 07:49)
berryさん、そうberryさんごのみ。思わずくすっと笑ってしまう絵です。
berryさんも、くすっと笑わせるのがお上手ですものね。
私も、この「汽車のあるコンポジション」の軽快さが好きで、絵葉書を買いました。オリガなので、女性作家です。
by TaekoLovesParis (2008-08-05 08:08)
抽象画はあまりわからないんですが、一番上の「刈り入れ」という絵がいいなと思いました。色がきれいですね。
先日、京都国立近代美術館であった「ルノワール+ルノワール展」に
行ってきました。Taekoさんの記事を読んでぜひ行きたいと思っていたので。すごくよかったです。絵画と映像が並べて展示してあって、
どちらも楽しめました。いい展覧会を教えていただいて、ありがとうございました。
、
by coco030705 (2008-08-05 10:47)
Cocoさん、「ルノワール+ルノワール展」、楽しめたようでよかったです。映画好きのCocoさんにおすすめだったんですよ。
もうひとつ、おすすめがあります。上のコメントで書いているのですが、
「画家と庭師とカンパーニュ」というフランス映画。ルコントびいきの
Cocoさんにおすすめです。
by TaekoLovesParis (2008-08-05 11:02)
Taekoさんへ
↑ありがとうございます。ぜひ見に行こうと思います。
by coco030705 (2008-08-05 19:06)
Taekoさんの記事を読んでマレーヴィチを観たいと思っていたので、この展覧会に行きたかったんです。
『画家と庭師』も♪
やっぱりいいんですねぇ~!
先週までは、へろへろで渋谷まで出かける気力が出なかったのですが元気が出てきたので行ってきます^^
by てんとうむし (2008-08-05 21:56)
いつもコメントいただきっぱなしで、
遊びにも来られなくてすみませんでした。
ロシアアヴァンギャルドは昔、目黒の庭園美術館で
開催されたときに観にいきました。時代背景が
よくわからないのですが、主にプロパガンダの
作品が多かったように記憶しています。
とてもPOPで、当時はロシアの知られざる創造性を
垣間見た感じがして新鮮でした。
個人的にシャガールが好きなので、
上記の貴重な絵は必見ですね。
鎧を着ているようなマレーヴィチの農夫、
癒し系の風味をかもし出し、なかなか惹かれる絵です。
顔がなんだか牧歌的ですね(笑)
また、時々お邪魔しますね。
Taekoさんもお時間あるときに、ぜひ遊びにきてください。
最後まで優しく接していただいてとてもうれしかったです。
ありがとう、そしてこれからもどうぞよろしく!
by コールドターキー (2008-08-05 22:21)
マレーヴィチって恥ずかしながら、はじめて知りました。
好きです。なんか、なじめる前衛ですね!
Taekoさんのおかげでまたひとつ、知識がふえました。
by ルビー (2008-08-06 00:23)
Malevichを前回紹介された時に他の絵を探してみたら、続々楽しい絵が出てきました。中にはおもちゃの世界のようなのまで出てきてうれしくなりましたよ。絵画の世界は広いですね、そして宝の山。
by いっぷく (2008-08-06 07:28)
おはようございます。
前回の記事で マレーヴィチ は通り過ぎていました。
改めて見ましたら 男と馬 は構図が男が大きく馬が隠れる形で変わっていておもしですね。
刈り入れは 働くおじさん と言うか、私には鎌を持って 一休み と言う感じに見えますね。奥行きも感じさせて面白いですね。
シャガールのヴァイオリン弾きは寂しそうで、よくある結婚式の絵と共通する点があるように思います。
暑い日が続きますがお身体に気をつけてください。
by とらion (2008-08-06 09:15)
十字架の絵、良さそうですね。カンデンスキーもこの頃ですから、ロシアにはすごく才能が横溢していたんですね~。
by katsura (2008-08-06 12:41)
鼻持ちならない権威に成り下がっていくその後の他国の運動に比べて
ロシアは学生の青臭さを持ち続けたことが素敵です
by pace (2008-08-06 14:03)
ふふ、「屋根の上のヴァイオリン弾き」状態なんですね。
調べてみたら、このミュージカルの原作の作者が、
当時まだロシアだったウクライナ出身だと分かり、
面白いつながりでした。
「サン・ジャックへの道」よかったです♪
サンチャゴ・デ・コンポステーラのお香ぶんぶん(ボタフメイロ)は、
やっぱり素敵♪
by Inatimy (2008-08-06 16:55)
ふたたびこんにちは!^^少し前に書いてくださっていたコメントを拝見しましたら、「小・中・高」一緒のお友達が・・と書いていらしたので、もしかしたら同じ高校かな、と思いました^^私、26期です^^
by duke (2008-08-07 00:07)
僕はここに載せられている絵ではシャガールの『バイオリン弾き』が気になるかなぁ。
刈り入れのおじさんは、鎌持ってなかったら甲冑身に着けてるみたいにも見えませんか?。(→この感想はチェーザレ第5巻を読んだばかりだからかも・・・^^;)
by yk2 (2008-08-07 01:31)
お~dukeさん、私の方がず~っと先輩。blogで後輩に会ったのは、初めてで、うれしいです。遠い学校だったので、渋谷で途中下車ばかりでしたが(苦笑)
by TaekoLovesParis (2008-08-07 22:39)
yk2さん、チェーザレ5巻、出たんですか!遅いな~って思ってたんですよ~。明日でもさっそく。
おじさんの持っている鎌が、農民のシンボルとして、後にソ連の赤い旗の模様に使われてますね。この絵の背景の段々のように表現されている畑がきれいで気に入ってます。
by TaekoLovesParis (2008-08-07 22:47)
Inatimyさん、「屋根の上のヴァイオリン弾き」のミュージカル、昔、森繁久弥ので見ました。あの一家は国外追放されるユダヤ人だけど、ロシアのユダヤ人だったんですね。
私も今、調べてみたら、原作があって、それに触発されて、シャガールが絵を描き、アメリカでミュージカルになったのは、ずっと後、1964年なんですね。調べてくださってありがとう。
「サンジャックへの道」のアル中次男が、上のコメントでの映画の2人の主役のひとり。「サンジャック」では、みごとに人のいいダメ男役を演じてましたものね。あの映画は、ひとりひとりがとても個性的で、役割分担がちゃんとできていて、おもしろかったです。Inatimyさん命名のお香ブンブンが、最後でお役目を果たしてましたね。
by TaekoLovesParis (2008-08-07 23:16)
こんばんは、なんか嬉しいですーー>▽< これからもよろしくお願いいたしますm(_ _)m
by duke (2008-08-07 23:46)
nice&コメントありがとうございます
▲てんちゃん、てんちゃんがこの間、ごらんになった「僕の大切な友達」と同じ、ダニエル・オートウィユが主演です。私はわからなかったけど、
「親父がとっておいたワイン」というので、○○の1982年とかを飲んで
「ん、うまい」という場面もありました。フランス人画家の日常生活なので、なにかと言ってはワインを飲んでいました。だから、てんちゃんが見たら、わかるワインがあるかも。。
▲コールドターキーさん、<ロシアアヴァンギャルドは昔、目黒の庭園美術館>→その取り合わせが、とっても斬新ですね。アールデコの
庭園美術館にPOPなロシアもの。見てみたかったです。
マレーヴィチの農夫は、顔がいかつかったら、×ですね。いかにも善良そうな素朴な感じの顔だから、癒し系になるんですよね。
シャガール19歳のときの「女の肖像」は、当時のガールフレンドを描いたもので、まだ、シャガールのオリジナリティはなく、ふつうの絵でした。
新しい場所で、新しい気分、新しいアイディア。また、タイムリーなたのしい話題、期待しています。
▲ルビーさん、<恥ずかしながら>→いえいえ、マレーヴィチは、知っている人の方が少ないと思いますよ。私も10年くらい前に当時、パリの
美術学校に行っていた友達に教わったんです。
▲いっぷくさん、ポンピドーでは、展示変えがあっても、マレーヴィチの
何か作品が見れます。アムステルダムの近代美術館で、マレーヴィチの絵に出会ったときは、うれしかったです。
そのうち、記事にしますが、今日、箱根にある「トイ・ミュージアム」に行って、いっぷくさんのところで前に見た「歯のでてるミッキー」の本物を見ました。
by TaekoLovesParis (2008-08-08 02:01)
nice&コメントありがとうございます
▲とらionさん、<マレーヴィチ は通り過ぎていました。>
→見ても記憶に残らない絵って、たーーくさんありますよね。
でも、何かきっかけがあると、覚えられる。私も友達に「マティスのさくらんぼを持つ少年」を、「これ小学校の教科書にあった」と、言われ、印象に残っています。
ヴァイオリン弾きの寂しさは、ユダヤ人集落で育ったシャガールが感じていたユダヤ民族の寂しさかもしれませんね。
とらionさんは、昼は甲子園、夜はオリンピックをごらんになりながら、名シーンを描きとめてらっしゃるのでしょうか。
とらionさんも、暑い日々、ご自愛くださいませ。
▲katsuraさん、十字架には、色、形、構図で、いろいろなパターンがあるので、どこかでまた、ご覧になる機会があるかと思います。
<ロシアにはすごく才能が横溢していたんですね~。 >
→抑圧されると、余計、才能が開花するのかもしれませんね。
▲paceさん、<ロシアは学生の青臭さを持ち続けた>
→おっしゃるとおりだな、と思いました。音楽でもロシアものには力強さがありますね。
▲dukeさん、いっしょに遊んでいる高校の友達は、ここを読んでいるので、かわいい後輩の登場を喜んでいることでしょう。
by TaekoLovesParis (2008-08-08 08:14)
「刈り入れ」って面白い絵ですね。
近未来的だけど、愛嬌ある表情(つぶらな瞳)で、思わずニッコリしてしまいます。
あっそうだ、今度のお盆休みに遅ればせながらコロー展に行く予定です。直前にTaekoさんの記事を再度熟読し、ついでに近くのレストランも
Taekoさんの記事で検索し予習バッチリで臨みたいと思います(笑)
by かよりん (2008-08-09 00:18)
おそくなりました。わたしも「屋根の上・・」にひっかかり、調べて豆知識を増やしました。映画、みましたっけ。一枚の絵から、いろいろな方向に話が膨らんでいくと、その絵にも、とても愛着が湧いてきますね。
by pistacci (2008-08-10 17:08)
かよりん、そうなんですよ。おじさんの顔がこわかったら、武装で戦いへ?と思えてしまいますよね。マレーヴィチは、この「刈り入れ」が気にいっていたらしく、これをさらにもっと抽象化して、図形化したものもあります。でも、図形ばかりの模様には、ちょっとついていけない。。
<Taekoさんの記事を再度熟読し、、、Taekoさんの記事で検索し>
→ありがとう。かよりんを選挙の参謀にスカウトしたら強いぞって、
思っちゃいました。友達が議員の奥さんでいつも選挙が大変ってきいているので。
by TaekoLovesParis (2008-08-10 17:24)
pistaさん、「屋根の上の、、」映画もご覧になったのね。どんどん興味がわいて調べること、私もあります。
バイオリン弾きが建物に比べて大きいのも意味があるんだな、とか、家々がユダヤ人ゲットーに見えてきたり、でした。
<とても愛着が湧いてきますね> → 同感!
by TaekoLovesParis (2008-08-10 17:35)