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アンドリュー・ワイエス展 [展覧会(西洋画)]

 渋谷のBunkamuraミュージアムで、「アンドリュー・ワイエス展」を見た。
wyethS.JPG

  ワイエスはアメリカの風景画家。現在91歳。
著作権があるので、ちらしの表裏だけをのせておきます。

↑チラシの絵は、「火打ち石」というタイトル。実際に昔、使われていた火打ち石だそう。
向こうが海。砂浜なので、石の白く見える部分はカモメの糞。石のまわりにはカモメの
運んできた魚の骨や貝殻がころがっている。

 今回の展覧会は、制作過程を見せることに主眼をおいているので、「火打ち石」の
横に、このためのデッサンが3枚、水彩が1枚あった。

 [右斜め下]チラシ裏の上段中央は、水彩、右はテンペラ。「幻影」というタイトル。
部屋のドアを開けたら、幽霊が見えた、と思ったら鏡に映った自分だったという絵。

wyeth2.JPG

 ワイエスの画法は、まずデッサンをする。水彩にする時もある。さらにドライブラシ。
これは筆に絵の具を浸し、絞り、残ったわずかな絵の具を点のように置いていく手法。
織物のような作業とワイエスは言っている。
さらに、それをテンペラにして完成させる時もある。

 どの作品も、完成品に対し数点の習作。
画家のSが「すごくよかった」と絶賛したのが、うなづける。絵を描く人にとっては、興味深い
と思う。会場はすいていたが、来ている人は、食い入るように見ていた。

 ワイエス展は70年代終わり頃、見たきり。白や緑など淡い色の海辺の家の景色で、
夏の感じだったが、今回は、晩秋の色合い。人のいない廃屋のような景色には寂寥感が漂う。

 下段中央の「松ぼっくり」は、ヘルメットの中に松ぼっくりがはいっている。
松ぼっくりは、暖炉の火をつけるための必需品。デッサンでは、松ぼっくりを拾っている女の人
が描かれていたが、完成品にはいない。

 ワイエスに絵の手ほどきをしたのは、挿絵画家の父だった。夢のある挿絵に対して、
ワイエスの絵は、リアリズムだが、景色は何か郷愁を感じさせ、肖像画は一生懸命
生きている人への尊敬が伺えた。一見冷たく見える景色もよく見るとたくさんのメッセージ
がつまっている、それがすばらしいと、見てから数週間たった今、思う。


 ★ この記事の1ヶ月後、2009年1月17日、ワイエス氏は、眠るように亡くなりました。
子供の頃から体が弱かったというワイエス氏の体を支えてきたのは、絵への情熱なのでしょう。
ご冥福を祈ります。


☆ 2017年、ワイエスの住んだフィラデルフィア郊外のワイエス記念美術館=ブランディワインミュージアム
へ行った時の記事です。 → 

これは、渋谷ではなくて、銀座。ベルギーチョコの老舗「ノイハウス」のティールームでの
チョコレートケーキ(フォンダンショコラ)とコーヒー。
カメラも携帯も持っていなかったので、友達が撮ってくれた。

neuhaus.JPG


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コメント 27

k-sakamama

ノイハウスのチョコ、美味しいですよね。
ちょっと高価ですが。。
ティールームは入った事がありません。
美味しそうですね。
by k-sakamama (2008-12-18 08:08) 

pace

ワイエスは不思議な作家ですね
アメリカの良心とも言われたり
アカデミックじゃないのにアカデミック
結構好きですね
初めて観たのは高校生だったかしら中学生だったかしら?
by pace (2008-12-18 15:56) 

katsura

この展示、行きました。ワイエスは初めてで観てみたいと思う画家だったので満足です。
ちょっと怖くなるような対象へのせまり方ですね。
by katsura (2008-12-18 20:32) 

yamagatn

凄いですね!
画風もそうですが、91歳
老いてもなお健在とはこのことですね
by yamagatn (2008-12-18 20:42) 

coco030705

いいですね、アンドリュー・ワイエス。昔、京都で展覧会があったとき見ました。そのころのボーイフレンドが絵を描く人で、彼がワイエスが
大好きだったんで、教えてもらいました。すばらしい画家だと思います。
この展覧会は関西には来ないんでしょうね。残念です。

ところで、フォンダンショコラって、中から熱いチョコレートがでてくる
あれでしょうか?私はまだほんとにおいしいフォンダンショコラを
食べたことがないので、今度こちらでおいしい店を捜してみようと
思います。

by coco030705 (2008-12-18 22:47) 

ルビー

アンドリュー・ワイエス展、気になってました。制作過程をのぞくのって、
ますます、その作家の実力というか、感性に感動しそうですね。

ノイハウスのティールームあるんですか、これもまた気になりますね~。

by ルビー (2008-12-18 23:39) 

lie

Bonsoir, Taekoさん
私は日本グラフィックデザイナー協会の会員なのですが、
今、ミッドタウンで「未来へ託すデザインリボン」という企画展を来年の2月1日まで、やっています。12月29日〜1月5日は休み。
展示されているリボンは購入することも出来ます。
●東京ミッドタウン・デザインハブ(ミッドタウン・タワー5F)
お時間ありましたら♪
by lie (2008-12-18 23:57) 

匁

パリからの記事かと思いました???
アメリカの国民的画家アンドリュー・ワイエスという副題でnhk日曜美術館でも見ました。
松ぼックリも戦争のこと自然破壊のことなかなか奥が深い絵です。
それから自宅に帰るのに足の不自由な女性が草原を這っているところは印象的でした。
どこか、アメリカ人の心の奥底に残っている西部開拓史の精神が伝わるようです。
お気をつけて。

by (2008-12-19 08:44) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲k-sakamamaさん、ノイハウスはベルギーではゴディバと並んで有名らしいのですが、日本では知名度がイマイチ。私はお気に入りなので、ティールームを銀座の裏通りで見つけ、うれしくなりました。

▲ワイエスは、ぜいたくもせず、ひたすら絵に打ち込む人、というイメージがありますね。尊敬されている画家で、ペンシルヴァニア州生まれ、活動場所もそこなので、フィラデルフィアの友達は彼が同郷の人ということで、自慢にしています。

▲katsuraさん、対象を観察して、表現し、構築していくというプロセスは、小説でも同じですものね。私はクリエイターじゃないので、怖い思いより、「ここまで、いろいろ試してみないといい作品はできないのね」と感心しました。

▲yamagatnさん、老いてなお、の原動力は、「描かなくては」、というエネルギー、そして、「描きたいもの」があるようです。

▲Cocoさん、そういえば、ワイエスを好きっていう人は、男の人に多いですね。Cocoさんのように絵を描く人に知り合いがいたりした場合は、
こういうタイプの展覧会は、刺激を得ると思います。

<フォンダンショコラって、中から熱いチョコレートがでてくる
あれでしょうか?>
→そうです!だから、少し温めてサーブされるんです。冷たいと、チョコが固まってますものね。寒い冬のケーキですね。

▲ルビーさん、感動を受けた対象物があったら、すぐに、デッサン、すぐに水彩、なんだそうです。印象が薄れないうちにって。水彩だと、油絵と違って、すぐに表現できるから、ワイエスは好きなんだそうです。
名古屋にもノイハウスのティールームが見つかるといいですね。

▲Bonjour lie,
展覧会情報、ありがとう。会期が長いから、行けます。行ったら、ご報告しますね。

▲匁さん、私もNHKの「日曜美術館」見ました。小沢征璽の娘の作家、
小沢征良さんがゲストでしたね。征良さんは、ワイエスと同じ東部のボストンで小さい時、暮らしていたので、凍った池の水の下に葉っぱが閉じ込められている絵を見ると、懐かしさを感じると言っていましたね。
アメリカ人にとっては、懐かしさを感じる景色がリアリズムで描かれている、そこに共感できるのでしょう。

松ぼっくりを入れているヘルメットは、第一次世界大戦に従軍した夫君が使っていたもの、というのに驚きました。戦争が身近ですね。

<アメリカ人の心の奥底に残っている西部開拓史の精神>
→そうですね。ものすごく真面目にピューリタン的に対象物にとりくむ、
一生懸命生きているものに感動し、絵の対象とするのですね。
<足の不自由な女性が草原を這っているところは>
→この絵が代表作といわれることもありますね。草原の緑と女性のドレスのピンク、空の青、印象に残る絵でした。

匁さんも、おからだに気をつけて良いお年をお迎えくださいませ。
by TaekoLovesParis (2008-12-19 09:29) 

pistacci

この記事を見て、すぐにでも行きたくなったけれど、なかなか行けない~。
せわしい時に、気持ちがすっと、おちつきそうな、しずかな絵ですね。
by pistacci (2008-12-20 09:54) 

kakasisannpo

素敵な時間を過ごされましたね。
ワイエスは好きな画家のひとりです
何故か、後ろ暗いところがありますが、その絵には言い表せぬ魅力が漂っていますね。
ノイエスのカフェもいいですね
by kakasisannpo (2008-12-20 20:03) 

kakasisannpo

ノイハウスでしたね


by kakasisannpo (2008-12-20 20:04) 

てんとうむし

ワイエスは、とーってもストイックなイメージ。

ノイハウスは銀座のどのあたりでしょう?
私もフォンダンショコラたべたーい♡
by てんとうむし (2008-12-20 22:42) 

yamagatn

ご訪問くださりniceまで頂きありがとうございます
by yamagatn (2008-12-21 10:25) 

duke

TaekoLovesParisさん、こんにちは。ワイエス、好きです。
私は無事にパリからチューリッヒに移りました。また25日に戻るのが楽しみです。では!!!^^
by duke (2008-12-22 06:43) 

TaekoLovesParis

dukeさん、コメントいただいてうれしいです。
私は友達がPCを持ってないので、パリでブログを見れません。
では、Fouquetで!

by TaekoLovesParis (2008-12-22 19:44) 

エリザベート

行かれたのですね。。ワイエスはず~っと好きな作家で先日NHKで案内しているのを羨ましく見ていました。最近のものは風刺的でいいですが、若い頃の絵は影のある彼の心を映していて好きです。それは今回は来なかったのでしょうか・・・?
by エリザベート (2008-12-23 15:04) 

miku

ワイエス、師匠と観てきました〜
むかーし「ヘルガ展」を観に行ったことがあって、
それ以来好きな作家です
鏡に映った自分と思いがけず対峙する絵、すごく臨場感があってどきどきしちゃいました
by miku (2008-12-24 23:53) 

琉那

Taekoさん、
クリスマスおめでとうございます☆

ワイエスの絵について
「どうしても自分が所有したいというわけではないが、
所有しているひとに好感を持つ絵だ」
と、江國香織さんが書いていたのを思い出しました。
(『日のあたる白い壁』というエッセイで
今見たら、グラウンドホッグ・デイ(聖燭節)という絵でした)

「一見冷たく見える景色も
よく見るとたくさんのメッセージがつまっている」
というTaekoさんのことばが
とても良くて、チラシをまじまじと見ました。
寂しいようで、どこか懐かしいような絵ですね。

フォンダンショコラのとろとろ熱いチョコレート、
すごーく食べたくなりました^^
by 琉那 (2008-12-25 12:57) 

Inatimy

ワイエスは、中学生の頃、美術の教科書に載っていて、
卒業後、教科書から絵を切り抜いて残していたほど、
気に入ってた画家さんでした。
教科書に載ってる画家さんは、皆、ずいぶん昔の人ばかりだと思ってたので・・・現在91歳と知ってびっくり!
by Inatimy (2008-12-26 09:17) 

いっぷく

アンドリュー・ワイエスの絵で印象に残るのはクリスティーナの世界ですね、はじめて知ったのはこの絵ですね。
石の絵は私には孤独と暗い雰囲気が感じられるのが魅力にもなっています。
by いっぷく (2008-12-27 11:20) 

aranjues

何とコメントしようかしばし迷いましたが、
やっぱりこんな今年かコメントできません、
火打ち石、写真かとおもいました(^_^;)、、。
ベルギーチョコの店、ベルギービールも置いてあるのかな?
ベルギーチョコにはやや濃厚なベルギービール
こそお似合いだと思うのですが、、。
by aranjues (2008-12-28 23:18) 

Krause

今年はブログを通じてお世話になりました。また、ろくなコメントもできず恐縮です。来年も宜しくお願い申し上げます。
by Krause (2008-12-31 12:12) 

aranjues

遙か彼方にいらっしゃるご様子ですね?。
毎度毎度、オシャレでセンスの良い
記事を有り難う御座いました。来年も楽しみにしております。

よき年をお迎え下さい。
by aranjues (2008-12-31 12:42) 

Zunko

今年、ブログでお世話になりました。
これからも話題豊富なTaekoさんのブログ楽しみにしております。
良いお年をお迎えください。
by Zunko (2008-12-31 21:05) 

TARO

Taekoさん
あけましておめでとうございます^^
今頃ガイコク?かしら?
今年も宜しくお願いします!
by TARO (2009-01-01 22:19) 

TaekoLovesParis

たくさんコメントいただいたのに、お返事ができなくてすみませんでした。

by TaekoLovesParis (2009-01-12 13:04) 

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