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ベルギー幻想美術館展 [展覧会(西洋画)]

 Bunkamuraザ・ミュージアムで「ベルギー幻想美術館」という展覧会を見た。
全部が姫路市立美術館所蔵の作品。

 幻想美術は好きな分野。
チケットに使われているのは、クノップフの「ヴェネツィアの思い出」(左)
パステル画なので、ふわっとやわらかくやさしい。
髪の毛と肩の輪郭線をぼかしてあるので、ふわっとした感じだが、顔は細かく描かれている。
BelgiqueKnopf.JPG      BergiqueBrouge.JPG   

 右は同じくクノップフの「ブリュージュにて 聖ヨハネ施療院」  
建物の上部がなく、波ひとつない鏡のような水面。寂しい施療院。
ブリュージュは中世の都。今は観光都市だが、この時代は忘れ去られた場所だったのだろう。 

 幻想美術はベルギーだけではないのだが、特にこの時代、ベルギーに画家が多く誕生
したのは、植民地からの富を背景とし、実業家たちが新しい芸術を支えたからである。


 ステヴァンス「オンフルールの浜辺の若い女性」
初めて名前をきく画家だが、印象派と交流があったとのことで、マネの絵にでてくるような女性。
船の煙が見える夕暮れの海の彼方を見つめる姿が心に残る。
Belgique3.JPG

 ジャン・デルヴィル「レテ河の水を飲むダンテ」
かなり大きな作品。煉獄でベアトリーチェに出会ったダンテは、罪を責められ気を失うが、
目覚めたのち、淑女マチルダに導かれて忘却の河レテ河を渡り、河の水を受ける。
聖書でも古典でもない「神曲」から主題をとっているのが、幻想的といわれる所以。

BelgiqueDelvil.JPG

 

 レオン・フレデリック「春の寓意」
宗教的雰囲気で春を表現。ひとつひとつの花がきれいに描かれていた。

BelgiqueLeonFrederik.JPG

 幻想派のレオン・フレデリックも初期は、こんな社会派の絵を描いていた。
「チョーク売り」  
BelgiqueFrederick.JPG



 骸骨で有名なジェームス・アンソールの「果物、花、裸にされた光」
右端にいる子供がテーブルの上のぶどうを食べている!

BelgiqueUnsoleS.JPG 
 アンソールの「キリストの生涯」リトグラフ32枚組もあった。

 マグリット「ジョルジェット」
ジョルジェットはマグリットの妻。マグリットには愛する妻の顔が景色の中に見えたり
したのだそう。マグリット作品は、リトグラフとエッチングが大半を占めていた。
BelgiqueMarglitte.JPG



 最後は、女性と鉄道、夜の情景が多い独特の幻想世界、ポール・デルヴォーの「海は近い」
結構大きな作品。

Belgique1.JPG  

 ポール・デルヴォー「パイオリーブ」 リトグラフ
BelgiDelbeau.JPG

 ベルギーサベナ航空の社長依頼の夫人をモデルにした自宅の3枚の壁画も大きい。
本の挿絵も相当数あり、おもしろかった。当時、デルヴォーが売れっ子だったことがわかる。

 不思議な世界だが、とらえて離さない魅力がある。10月25日(日)まで開催中。


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aranjues

ベルギーって、チョコレートとワッフル食べながらビール飲んでるだけじゃないんですね((笑)。

絵画へのコメントは、あえて、スルーして、、ブルージュ、、
一度ゆっくり散策したいヨーロッパの街ベスト3の一つです。
ここにはグーテンブーム醸造所というベルギービールの醸造所があり、
ブルージュトリプルというスペシャルビールを日本でも飲めます。
by aranjues (2009-09-09 00:15) 

TaekoLovesParis

aranjuesさん、冒頭から笑わせてもらいました。
チョコ、ブリュッセルの駅に降りたら、駅構内の左がゴディバ、右がノイハウス
でした。さっそくいろいろ買って、「行きからお土産屋で買うなんて」と、友達に
あきれられました。aranjuesさんも駅構内に「ブルージュトリプル」があったら、
速攻飲んでいらっしゃることでしょう。
ブルージュは静かでいい所ですよ。私はブリュッセルから観光バスで行きました。
そのときは、友達がシャンパンに凝っていて、行く先々で、昼間からお茶がわり
にシャンパンを頼むので、ちょっとあきれたのですが、今の私なら彼女の気持ち
がわかります。休日を満喫してたんですよね。

「ブルージュトリプル」、なんでトリプルかわからないけど、覚えやすい名前なので、
見つけたら飲んでみます。
by TaekoLovesParis (2009-09-09 00:56) 

よしあき・ギャラリー

私も、家にこもってばかりいないで、もっともっと外に出て刺激を受けないといけませんね。 ^^;
by よしあき・ギャラリー (2009-09-09 06:33) 

エリザベート

幻想美術・・・知りませんでした。でも、こういう絵好きです。女性と鉄道「海は近い」・・前に座ってゆっくりと時を忘れて眺めていたいです。。
by エリザベート (2009-09-09 14:51) 

匁

一番好きなのは最後のポール・デルヴォー「パイオリーブ」です。
こんな感じの絵を描こうと思って描き始めるのですが
出来上がったものはかけ離れた物になってしまいます。
何かを想像さす。ときめきと空想。そして物語性。
チョット欲張過ぎかな?
だからいつも見る人には何を描いたか首を傾げさせてしますのですね。
気になるのは
マグリット「ジョルジェット」です。
前に描いた 阿修羅 の頭部の発想ですね。
これもよく有る手法なのかな?
そうするとこれもマスターしておきたいですね。

by (2009-09-09 17:58) 

Inatimy

あ、私の撮った写真と同じ場所!
この「ブリュージュにて 聖ヨハネ施療院」と同じ部分を撮ったことがあります。 
ブログに使ったのは建物全体入ったものを使いましたが。
(こちら http://inatimy.blog.so-net.ne.jp/2008-10-08
聖ヨハネ施療院、今は、メムリンク美術館♪
ポール・デルヴォーは、昔スペインにいた頃、マドリッドでの展覧会まで観に出かけたことが。
「夜汽車」だったか、とても印象に残ってます。 ベルギーの人だったんですね。
これだけの作品が姫路市立美術館所蔵だとは・・・スゴイです。
by Inatimy (2009-09-09 21:34) 

yk2

デルヴォーのこの絵は「日本の美術館名品展」に出展されていた絵ですね。光が当たっているから、右側で眠る女性とその傍らに立つ女性に目が行くわけですが、彼女たちを中心にしてこの絵を観ると、なんだかその足元の板張りの床の高さは外の石畳の高さと整合しないような、(まるでアングルの『トルコ風呂』みたいに)人物配置と遠近法が合ってるようで合ってないような、へんてこな絵だな~と思ってたんですが、そうか、だから幻想美術か(笑)。

横浜美術館と松岡美術館にも所蔵作品が1点ずつ在って、現在どちらも丁度展示中なので、どれが一番にシュールか(^^;、じっくり見比べるのも面白いかもしれませんね。
by yk2 (2009-09-09 22:46) 

てんとうむし

先日Bunkamuraを通ったときは展覧会の合い間の何も公開していない期間だったので、次の「ベルギー幻想美術館」はどんな雰囲気なんだろう、とポスターを眺めて想像していました。
本当に幻想的で不思議な魅力に溢れていますね~^^
by てんとうむし (2009-09-09 23:19) 

pistacci

題名だけだと、基礎知識のない私には、どんな作品が展示されるのかほぼ見当が付かない。こんなふうに記事にしてくださると、あ~見たことある、とか、この絵が見たい、とか、よくわかってありがたいです。ちなみに私にとってのベルギーはチョコとエルキュール・ポアロ(笑)。
「ジョルジェット」は埼玉で見たような気がするのですが、奥様だったのね。
Taekoさんの解説で、よくわかりました。
by pistacci (2009-09-10 01:18) 

roseadagio

「海は近い」先日上野で見て、印象に残っていました。絵の大きさと、どうして題名が「海は近い」なんだろう?と思ったからです。
恐るべし姫路!ですね。
by roseadagio (2009-09-10 09:14) 

hatsu

「ブリュージュにて 聖ヨハネ施療院」、素敵ですね。
心の奥のほうに、スーッと入ってくる感じがします^^
by hatsu (2009-09-10 13:58) 

berry

幻想美術、ステキですね。
デッサン画好きなわたしには溶け込みやすいです。(笑)
だから「ブリュージュにて 聖ヨハネ施療院」一目で気に入りました。
「チョーク売り」は、暗い時代背景が浮かぶようです。なんか切ない。
でも、マグリット「ジョルジェット」も好きだったりします。(笑)
by berry (2009-09-10 18:22) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございました
▲よしあきさん、いい刺激を受けると、描く対象が広がるのでしょうか。
私は見るだけで描かないから、描けるかたは、すごいなと思ってしまいます。

▲エリザベートさん、「海は近い」、大きな絵なのですが、どこからこのタイトルが? と近づいて目をこらして奥の闇を見ましたが、これはどうみても池か湖。水があるから
海も近いのでしょうか?
非日常で美しい世界、挿絵のような感じもありますね。

▲匁さん、マグリット「ジョルジェット」が、「阿修羅」の頭部と同じ発想とは、
おっしゃっていただくまで気づきませんでした。なるほど~、そうですよね。
幻想=シューレアリズム=現実にありえない世界→心象風景、マグリットの
場合は、いつも妻の顔が脳裏にあったので、蝋燭の炎に照らされて、そこに
いるように見えたんでしょうね。
匁さんの楽しい発想は、マグリットに通じるものがありますね。
じっと見ていたら、だんだん、「パイオリーヴ」の女性が、匁の女のように
見えてきましたよ。
by TaekoLovesParis (2009-09-10 20:41) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございました
▲Inatimyさん、見て来ました。Inatimyさんの写真の上の方を隠して見ると、
この絵と同じになりますね!何で覚えてなかったんだろうって、思いながら記事を
見たら、チョコに心を奪われたんでした。おしゃれでおいしそう、The Chocolate Line。私はDrosteが結構好きだから、オランダのチョコもおいしいんだろうなぁって
考えてたんですよ。「メムリンク美術館」とは宗教色が強くていい利用のしかた
ですね。
デルヴォー、お好きだったんですね。私が初めて見たのは、96年、伊勢丹での
「ポール・デルヴォー展」。伊勢丹カードを持ってると無料で見れたので、行った
んです。「夜汽車」もそのとき見たのかしら?見覚えのある絵です。
姫路市立美術館は戦前、日本陸軍だった赤レンガの由緒ある建物だそうです。
リトグラフが多いのは、やはり購入価格のせいでしょうね。

▲yk2さん、はい、「海は近い」は「日本の美術館名品展」にありました。大きい絵
だから覚えてます。
まず、明るく照らされた右の眠れるエマニュエル・ベアールふうに目がいきますよね。
駅舎のようなバス停の簡易待合室が、幻想でギリシア神殿に見えたのかなと思いました。そう考えると、床の高さに合点がいくからです。この絵をじっと見ていると、
中央の電柱がジャマな感じしませんか?
横浜美にも松岡にも今、展示中ですか。コランの絵のように突然ヴィーナスが
ごろん、というのもデルヴォーには時々ありますが、時は必ず夜、この色合いです。
by TaekoLovesParis (2009-09-10 22:20) 

duke

ブルッセル、行きたいです^^ チョコとビールも大興味あり!
最初のふんわり女性、きれいですね。
あと、オンフルール、いつかいってみたいです。結構印象派で描かれてますよね。
印象派クラブ(!笑)でステヴァンスさんも行かれたのでしょうか。
皆さん仲良しっぽいですよね。
マグリットも大好きなんです。デルヴォーもステキ。
by duke (2009-09-11 17:34) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲てんちゃん、この展覧会は私が行った9月3日が初日でした。その日は、ベルギーの「レオニダス」のチョコが先着100名様に配られたそうです。私は夕方、ワーグナーの前に行ったので、チョコはもう影も形もありませんでしたが、会場はすいていて、
ゆっくり見れました。幻想的なものは混んでたら興ざめですものね。

▲pistaさん、ポアロはベルギーの人だったんですか。読んだわりには覚えてない
です。たしかに、この展覧会のタイトル、ぴったりではないですね。マニアックな
感じがしちゃう。特定の人向けかなって。pistaさんが埼玉でご覧になったのは、
タイトルが「シューレアリズム展」だったのかしら?

▲roseadagioさん、「海は近い」、っていうタイトルが、幻想的なのかと思いました。
見えそうな、、だけど、見えない。姫路市立美術館は、戦前日本陸軍の建物だったので、赤レンガの有形文化財だそうです。
by TaekoLovesParis (2009-09-12 02:08) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲hatsuさん、「ブリュージュにて 聖ヨハネ施療院」は、この絵のもつ静けさに
惹かれます。水面に映る建物の影が心に映ります。私はこういうさび色あい、
好きです。

▲berryさん、軽妙な語り口のberryさんは、絵も軽いデッサンがお好きなんですね。この展覧会は半分以上がリトグラフで、油絵は少ないんです。天上の主題や花の絵が多いレオン・フレデリックの重い「チョーク売り」は、この中では異色で、気になったので、絵はがきを買ってしまいました。

by TaekoLovesParis (2009-09-12 02:12) 

りんこう

これは観に行きたいですね。でも姫路市に行けば観られるんですね。
姫路市の人はいいなあ。でも姫路は遠いからやっぱりこの機会に。
デルヴォーの作品なんかはまさに「幻想」という感じがして好きですね。

by りんこう (2009-09-12 07:35) 

miku

これ、いいですねー
デルヴォー、マグリットは観に行ったことあります。
デルヴォーは、Taekoさんのいらした伊勢丹だったのかな。
クノップフの聖ヨハネ施療院にも惹かれます。


by miku (2009-09-12 15:09) 

coco030705

こんにちは。
姫路にこんないい絵がたくさんあったなんて、驚きです。
地方美術館も侮れませんね。
「幻想」と名のつくものは、絵でも文学でも大好きです。

ところで、私の友達の妹さんのご主人、カメラマンの橋村氏が、
今回、東京・上野の西洋美術館で写真展(ローマ展 というのに併設?
参加みたいな?)を開催されるそうです。(もう始まっているかもしれません。)
去年でしたか、Taekoさんが行ってくださって、コメントを寄せてくださいましたね。
もし今年もお時間が許せば、ちょっとのぞきにいってみてくださいませ。
ではまた。


by coco030705 (2009-09-13 16:35) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます。
▲dukeちゃん、印象派クラブの写生遠足先、「オンフルール」は、風光明媚という言葉がぴったりの場所。きらきら光る海に停泊するたくさんの帆船。石畳の古い町並み。
モネの師、ブーダンが描く絵は海岸が多いけど、ここと隣町のル・アーブルが舞台で、モネや印象派の人たちの絵にもよく出てきますね。
まぶしく明るい海なのに、ステヴァンスがこんなに暗く描いてるのは、幻想だから
なんでしょう、って思いました。
「くすっ」って笑うツボがあるマグリットは、dukeちゃん好みかと。

▲りんこうさん、日本の中にもいい作品を持っている個性的な美術館がいろいろ
あるんですね。りんこうさんが記事になさったフジタの「平野政吉美術館」もそう
だったし。
デルヴォーの作品を前に、りんこうさんがどっぷり浸るか、つっこむか、どっちでしょ?

▲mikuさんは、写真的なイメージの「聖ヨハネ施療院」がお好きだと思いました。
でも、ふとしたところにおもしろさを見つけるのもお得意だから、デルヴォー、
マグリットもいいでしょ。マグリットはずっと前に新宿三越に画廊があった頃、
大きな展覧会がありました。

▲Cocoさん、ハシさん、西洋美術館で企画展に抜擢されたとはすごいですね!
サイト見ました。西洋美術館50周年事業の古代ローマ帝国の遺産「ローマ展」と
併設で「ローマ 未来の原風景」の写真展なんですね。一昨年前の「東京都写真
美術館」での展覧会のときも「未来の原風景」シリーズが数点あって、おもしろいな
と思ったんですよ。19日からで会期が長いので必ず行きます。記事にしますから。
by TaekoLovesParis (2009-09-15 08:48) 

まさみん

幻想美術というのですね。絵画は、芸術性と当時の時代背景を映し出す貴重なものなのですね。Taekoさんのブログに来るようになってから深さが少しづつ分かってきました。でもまだまだ解説をお願いします。(笑)
by まさみん (2009-09-15 09:56) 

TaekoLovesParis

まさみんさん、うれしいコメントありがとうございます。
ちゃんとした説明が書けるよう、努力します。
by TaekoLovesParis (2009-09-17 00:01) 

りゅう

幻想美術館展、素敵なタイトルですね。
象徴派を知っている人でも「えっ、幻想美術って何?」ってつい惹かれちゃいますよね!
このタイトルはBunkamuraとしては久々にナイス!な気がします。
05年にベルギー象徴派展を開催しているだけに、
「象徴派」を前面に出せなかっただけかもしれませんが。(^_^;)
デルヴォーの作品が多数あるようなので、とっても楽しみです。(^_^)
by りゅう (2009-09-19 00:48) 

TaekoLovesParis

りゅうさん、こんばんは。
<デルヴォーの作品が多数あるようなので、とっても楽しみです>
→ ということはいらっしゃる予定なんですよね。
ここのは、りゅうさんがおっしゃるように、象徴派なんですよ。
千足伸行の「幻想美術の見かた」っていう本があるんだけど、そこでは、
近代以前の幻想美術、ラファエル前派、フランス象徴主義、その他の国の象徴主義
っていう分け方、でした。つまり、幻想美術って言ったら、もっと広義のものになる
んでしょうね。でも、幻想美術館、えっ、なに?って思わせるところが、幻想的で、
うまいですね。
by TaekoLovesParis (2009-09-20 00:41) 

いっぷく

ここに行ったら真っ先にポール・デルヴォーの「海は近い」を観にいくでしょうね、
海が近いのか、遠いのかここが海の中なのか、まさに幻想を抱いてしまいます。
後ろ向きの女性の注意をひいて呼び止めたくなります。これはわたしの幻想で。
by いっぷく (2009-09-20 06:29) 

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