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エミール・ノルデ展 [☆彡Paris  展覧会]

 今月初めに行った「ベルギー幻想美術館展」で、アンソールの「キリストの生涯」
32枚組を見ていたら、昨年末、パリのグランパレで見た「エミール・ノルデ展」の
「キリストの生涯」の衝撃を思い出した。
「ピカソと巨匠たち展」を見に行ったとき、「隣のエミール・ノルデも見れるチケットがお得」
と言われ、「エミール・ノルデ?知らない人」と思ったけど、ここはいつもいい展覧会が多い
ので、おすすめに従った。

Nolde.JPG

 エミール・ノルデ(Emil Nolde)は、ドイツ表現派の人。
原色使いの大胆な色彩とデフォルメが特徴。
ドイツの北の端のノルデ村の出身なので、Noldeというペンネームを使った。

GuideBook.JPG    

[右斜め上]
海(1913年) これが彼の故郷、北ドイツの海。
今回の展覧会のカタログの表紙。寒く、暗い厳しい海。

 暗い色使いだったノルデだが、1913年にドイツの植民地であったニューギニアに行き、
原始美術にふれ、色彩が明るく豊かになった。ゴーギャンが1893年にタヒチに移住した
ことから、当時、画壇では「プリミティヴィズム」(原始美術)が流行だったが、実際に行く人
は少なかった。簡単に南の島に行ける時代ではなかったからである。

 熱心なプロテスタントのクリスチャンだったノルデは、「キリストの生涯」という9枚の祭壇画
形式の作品を描いた。中央の大きい絵が十字架のキリストである。
この絵は、当時、教会から強い抗議を受けたとの説明を読んで、納得がいった。
漫画のような型やぶりな表現法に、私も驚いたからである。

Christ.JPG
© Stiftung Seebüll Ada und Emil Nolde - Neukirchen, Allemagne

 「楽園を追われて」という絵(写真なし)は、困惑顔でイブを見るアダムと反省顔のイブ。
あまりにもイブの顔と体が醜く描かれていて。。
 

 第二次大戦中ノルデは、ナチスに共鳴し党員になるが、彼の絵は「退廃芸術」の烙印を
押され、絵を描くことも絵の具を買うことも禁止されてしまう。しかし、故郷に近い田舎で、
ひっそりと内緒で、小さな絵を描き続けた。

[右斜め下] 自画像(1917年)       海辺のカップル(1903年) 水彩
jjgazou.JPG        NordeCouplesurla plage.JPG

Pear.JPG   ペア(1931-35年)
© Stiftung Seebüll Ada und Emil Nolde - Neukirchen, Allemagne

 この展覧会は、大掛かりで、油彩、水彩、かなりの点数があり、いくつもの部屋に、年代順
に展示されていた。
「ピカソとその時代展」は盛況だったけど、こちらは、ガラすき。
しかし、強烈なインパクトの絵の連続[パンチ]

 調べてみたら、2004年に「東京都庭園美術館」で、「エミール・ノルデ展」が開催されていた。
またいつか、東京で開催されることを期待して。。


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コメント 25

pistacci

キリスト教徒でないからこそ、こんな明るい「キリストの生涯」に、惹かれますね。
最後の三枚も、すきです。
渋谷はあと一ヶ月も会期が残っていたのですね。次々行きたいものがはじまっています。まずはハプスブルグ♪
by pistacci (2009-09-27 00:33) 

TaekoLovesParis

pistaさん、こんばんは。
私も行きたいものがたくさん。pistaさんがごらんになった「ローマ帝国」に、まず、
行こうと思ってます。
ハプスブルグは「マリー・アントワネット」の実家で、「エリザベート」が最後の皇女
ですものね。2つのミュージカルを制覇した私たちとしては、外せません、でしょ?
by TaekoLovesParis (2009-09-27 00:49) 

りんこう

この人は全く知りませんでした。
なんだかとても波乱の生涯を送った人のようですね。
庭園美術館でも展覧会があったんですね。
でも、「ノルデ?知らないや」と無意識のうちに鑑賞の選択肢から外していたかも。
もったいないことですね。
by りんこう (2009-09-27 00:52) 

yk2

僕も同じく全く知りませんでした。
今回載せられている内でも、1つ1つの作品が随分と作風が変わっていますね。
実際のところ、小さくてあんまりちゃんと見えてないんですが、『海辺のカップル』はボナール的な雰囲気がして嫌いじゃないです。
『キリストの生涯』枚の祭壇画は、ゴーガンの名前が出されているだけに、すぐに『黄色いキリストのある自画像』が思い出されますね。
by yk2 (2009-09-27 02:31) 

Taddy

『ペア』という作品、丸木俊が描くイラストを思い出しました。
ベルギー幻想美術館展は観てみたかったです。
by Taddy (2009-09-27 07:42) 

aranjues

yk2さんもご存じないなら私が知ってるはずも無し。
1903、1917、1931~、、確実に筆のタッチ(というのでしょうか)
が変化していますね。
by aranjues (2009-09-27 09:37) 

Bonheur

ナチスに隠れながら描いた絵、気持ちがこもっていそうですね。
旅先で知った印象的な画家は旅の思い出とともに頭に蘇りますね。
by Bonheur (2009-09-27 10:41) 

duke

北国のエミール、という感じでしょうか。
確かに漫画のような宗教画ですね^^;
海の絵が、荒々しく厳しい感じですね。
by duke (2009-09-27 15:30) 

いっぷく

政治が芸術に介入して「退廃芸術」の烙印を押すなんて恐ろしい時代があったものです。その時代には異端でも時代が変われば評価の変わることは往々にしてありますね。
by いっぷく (2009-09-27 19:37) 

匁

エミール・ノルデ覚えておきます。
北ドイツの厳しい寒さの中で育った反動で明るい原色で描きたかったのかな?それにしても、漫画風に宗教画を描くと反発必至ですね。
でも、最後の絵は好きですね。
by (2009-09-27 20:02) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲りんこうさん、<「ノルデ?知らないや」と無意識のうちに鑑賞の選択肢から外していたかも。> → 私もそうだったのかもしれません。自分が知らない画家の情報
って、耳から素通りしちゃう傾向があって。。(反省)
パリのグランパレの企画展は、いつも一目置かれてる存在なんですよ。
だから、見たほうがいいんだろうなと思って、はいってよかったです。

▲yk2さん、画家は年代とともに画風が変わっていくけれど、ノルデは、実にはっきり
変遷のあとが見えます。「海辺のカップル」のあたりの時期の作品は、どれも
やさしい感じでした。強い色彩になってからは、花の絵が多く、ひまわりが代表作だそうです。
<黄色いキリストのある自画像』が思い出されますね。>
→ 言われて、あっ、と思い出しました。背後の十字架にかかってるキリストですね。

yk2さんのアングルの「パフォスのヴィーナス」についての記事、さっき発見しました。
過去の日付なので、お知らせが来ないんですね。コメント書いてありますから。

▲Taddyさん、原爆で有名な丸木俊ですね。たしかに!見てみたら、絵本の挿絵と似てました。ArtistのTaddyさんには、いろいろ教えていただくことが多くてうれしい
です。
「ベルギー幻想美術館展」は、全部、姫路美術館の所蔵品なので、Taddyさんは
ごらんになる機会がいつかあるでしょう。伊勢参りは1度だけでしたっけ?


by TaekoLovesParis (2009-09-27 22:47) 

Inatimy

キリストの生涯の絵、祭壇画としてはかなり派手だけれど、
これがステンドグラスの絵だったら、陽の光を通して、
美しい色になったのではないかしら♪
by Inatimy (2009-09-27 23:12) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲aranjuesさん、<yk2さんもご存じないなら私が知ってるはずも無し。>
→ そうですね、なんてあっさり言ったら悪いし、、(本当は笑ってます)
今朝、NHKの日曜美術館で、「芭蕉の書の変遷」を見た友達が、見に行きたいと
言ってるので、たぶん行くことになるでしょう。

▲Bonheurさん、<旅先で知った印象的な画家は旅の思い出とともに頭に蘇りますね。> → まさに、そのとおり。いつもBonheurさんは的確な表現をなさるから、
すごいなと思ってます。
ナチスに隠れて描くから、どれも小さい絵。それを戦後、自由になってから、大きく
描き直す作業に何年間もかけたそうです。

▲dukeちゃん、ノルデは色使いが強烈で、花の絵など一度見たら、忘れない感じ
です。これ、昨年のクリスマス・イヴの日。見終わって外に出たら、シャンゼリゼの
ライトアップが幻想的ですてきでした。

▲いっぷくさん、「退廃芸術展」の写真(モノクロ)が、数枚ありました。ヒットラー
も写ってたりしてたので、興味深く眺めました。
戦時中は、監視に見つからないよう、絵の具をたくさん使わないよう、作品を小さく
つくり、戦後、それらを大きく描き直したそうです。
長い歴史の中、絵の評価は時代によって変わりますね。ジョルジュ・ラトゥールも
しばらく忘れられてたんですものね。

▲匁さん、本人は大真面目に描いても、茶化してるように見られてしまう作品ですね。キリストの生涯はそれまで歴史画として描かれてきたから、反感をかいますね。
でも、ノルデは熱心なクリスチャンだったそうなので、愛情を持って描いてるんですよね。現代的に描こうとしたんでしょう。
by TaekoLovesParis (2009-09-27 23:16) 

TaekoLovesParis

Inatimyさん、なるほど~ステンドグラスの絵ね。これだけ色がはっきりしていると
きれいでしょうね。でも、顔がこわいかも。。
by TaekoLovesParis (2009-09-27 23:21) 

c-d-m

楽園を追われて・・・で思い出しました。
けっこうトホホな絵でしたね。
真面目であればあるほど、コメディになってしまいそれが権威から顰蹙を買うのも背景にユーモアが足りなかったご時勢を感じさせます。
きっと何に対しても愛情が深くて、すぐ影響を受けてのめり込むアツいタイプだったんでしょうね。

by c-d-m (2009-09-28 00:36) 

roseadagio

「楽園を追われて」の絵、印象的です。明るい色使いに風刺画のような表現が、ノルデの当時のキリスト教に対する思いなのでしょうね。
北ドイツの海は波が荒れ狂っていて、日本海のようなんでしょうね。
by roseadagio (2009-09-28 16:14) 

berry

最後の「ペア」好きですね。即気に入りました。
基本的にはデッサン画のような感じが好きだけど、
色鮮やかな絵も好きだったりします。(笑)
ブルーが意表をつくというかブルーが刺激的で好きです。

by berry (2009-09-28 17:20) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲cdmさん、トホホ、、っていう表現がぴったりですね!
<きっと何に対しても愛情が深くて、すぐ影響を受けてのめり込むアツいタイプだったんでしょうね>
→ そうなんですね、感動する力が絵筆をとらせるのでしょうね。

▲roseadagioさん、「楽園を追われて」の絵をご存知だったんですね。
直情径行型で、感じたままをすぐ表現したんでしょうか。
私も何パターンかある海の絵を見て、やはり日本画のような感じをうけました。

▲berryさんは、明るい性格だから、きっと明るい鮮やかな色がお好き
なんでしょうね。花の絵がたくさんあったけれど、どれもはぱぁっと明るかった
です。 ブルー、、「ペア」では、顔にまでブルーがはいりこんで。。(笑)

by TaekoLovesParis (2009-09-29 01:10) 

フェイリン

海、なんだか寒さと暗さを感じますね。
海の怖さを教えたかったかのような絵ですね。私は好きな感じです♪
by フェイリン (2009-09-30 14:37) 

エリザベート

十字架上のイエスはとても神の子の顔ではないですが、どうしてこんなにも綺麗な色を使ったのでしょうね?鮮やか過ぎる色使いに何故?を感じてしまいました。
by エリザベート (2009-09-30 16:10) 

ぎーこ

この画家は知りませんでした。
北ドイツの海のイメージがわかる絵だと思います。
いつも曇り空、暗い海、晴れて欲しいという希望的な思いも感じたり。
by ぎーこ (2009-09-30 16:11) 

pica

エミール・ノルデは、私も知りません。
9枚の「キリストの生涯」はぜひ見たいですね。
赤と緑が印象的で、思わず「クリスマス」を連想してしまいました。
by pica (2009-09-30 16:42) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲フェイリンさん、北の荒海という感じですね。畏怖を感じるような自然がフェイリン
さんはお好きなんですよね。私も氷河、行ってみたいです。

▲エリザベートさん、おっしゃるとおり、なぜ?が多い絵ですね。でも、ずっと見ていると、ノルデの心に浮かんだままなんだな、って思えてきます。

▲ぎーこさん、北ドイツの海、北海?をごらんになったことがあるんですね。
私は見たことがないので、うらやましいです。

▲picaさん、もう10月、ってことは、クリスマスもすぐ、ですね。
by TaekoLovesParis (2009-10-01 01:09) 

miku

エミール・ノルデ、庭園美術館で観ました!
色を流したような絵が印象的でした
すっかり忘れてたんですけど、図録見直してみると
好きな絵多いかも
思い出させてくださって、ありがとうございました!^^
by miku (2009-10-01 19:26) 

TaekoLovesParis

mikuさん、ご覧になったんですか!
しかも図録もお買いになって、もってらっしゃる。
mikuさんなら、そうだろうなと思いました。
by TaekoLovesParis (2009-10-01 23:19) 

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