ボルゲーゼ美術館展 [展覧会(西洋画)]
東京都美術館で開催されている「ボルゲーゼ美術館展」を見に行った。
ボルゲーゼ美術館は、ローマにあり、シピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿のコレクション。
ルネッサンス・バロック美術品の宝庫と言われている。
この展覧会の目玉作品は2つ。
ひとつが、↑チケットの絵に使われているラファエロの「一角獣を抱く貴婦人」(1506年頃)。
実際は、写真よりずーーっときれい。空の青さに透明な空気さえ感じた。
ペンダントのルビーも輝いていた。服の色も実際は、ペンダントと同じルビー色。
この絵をボルゲーゼ卿が購入した時は、宗教画「聖カタリナ」だった。
一角獣部分が聖カタリナのしるしの車輪だったのである。20世紀になって、研究者が、
これは宗教画でなく肖像画の構図であると気づき、洗った所、今の一角獣が現れた!
一角獣は「貞節」を表すので、この絵は結婚のためのものであったのが、本人が
亡くなったので、描き換えられたのでは、と言われている。
ボルゲーゼ卿とは、こんな風貌の人であった。大理石の胸像。
服の襞、襟の立ち方の表現はすばらしくて、作者ベルニーニの才能に目を奪われる。
ベルニーニの「ダビデ像」は、しばしばミケランジェロの「ダビデ像」と比較されている。
①は、モザイク画。「オルフェウスの姿のシピオーネ・ボルゲーゼ」
注意深く見なければ、モザイクとはわからない。
オルフェウスが演奏をすると、動物たちが集まって来たという逸話に自分を置き換えて
描かせたボルゲーゼ卿。ボルゲーゼ卿が説教をすると、生きているものは全部、集まって
来たという意味なのだろうか?正体不明の羽が生えた爬虫類が跪いているのが不気味。
①
ボルゲーゼ家は、富裕な名門貴族で、シピオーネ枢機卿の伯父は教皇であった。
当時の教皇の権力は偉大なものであったから、伯父の力を背景に、絵画コレクターの
シピオーネ卿は、芸術家たちの大パトロンであった。
② ボッティチェリ工房の「聖母子、洗礼者ヨハネとその弟子」
工房ということは、ボッティチェリの指導の下、弟子たちが描いた作品という意味。
「うしろの天使6人、左端の人以外は、ボッティチェリの描く顔じゃないから、きっと弟子の筆」
と、同行の友が推測。なるほど。
②
もうひとつの目玉は、③ カラバジョの「洗礼者ヨハネ」(1609年)
徹底した写実と明暗の対比の画風で、見る人をひきつける天才カラヴァッジョ。
カラヴァッジョは、口論の末、殺人を犯し、ローマから逃げ、制作を続けていたが、
パトロンであったボルゲーゼ卿に恩赦を願うため、渾身の作のこの作品を携えて、
ローマに向かった。しかし、旅の途中で亡くなってしまう。。
(ドラマティックなカラヴァッジョの生涯は、映画化され、2月13日から公開される)
③
洗礼者ヨハネは、「毛皮をまとい、葦の十字架を手に持つ」のが、お約束。
(参照:ダ・ヴィンチの「洗礼者ヨハネ」)
このヨハネは少年なので、毛皮をまとう代わりに横に毛のふさふさした羊、
葦の十字架でなく、葦の枝を持っている。
展示作品は全部で48点と少ないので、ゆったりと見れる。
初めて名前をきく作家や、○○の追随者というのが結構あって、さらっと見て歩ける
ものが多かった。 そんな中で、美しいと思ったのは、
左:「レダ」 ダ・ヴィンチの模写(本物はどこに行ったのかわからないそうだ)
右:「ヴィーナスとふたりのキューピッド」 ブレシャニーノ(1520年)
展覧会のあと、コーラス練習に行き、Aに、「今日、なんの展覧会見たの?」ときかれ、
ちらしとポストカードを見せたら、「レダ」を見て、「これ、エロ~い」って、く、くっと笑った。
Aは高校の時、隣の席だったが、授業中に、「く、くっ」と笑って、授業と関係ないちょっと
危ない系の話をささやいて来てたのを思い出した。
④ 「魚に説教する聖アントニオ」 ヴェロネーゼ(1580年)
変なタイトルと思ったが、聖アントニオが人々に説教をしていると、魚も集まってきて
聞いたという意味。魚の形は見えないが、海が黒くなり、白い点のある部分が魚の群れらしい。
聖アントニオは、純潔の印の白い百合を胸にさしている。
空の青、動いてるような雲、引き込まれそうになる奥行きのある空間。
聖アントニオの姿も動的で、説得力のあるドラマ性の高い宗教画。
④
聖書に題材を置いているが、わかりやすいドラマティックな絵が多かった。
「放蕩息子」、「ゴリアテの首を持つダヴィデ」(カラヴァッジョ作ではない)、
「天使の栄光のうちに聖痕を受ける聖フランチェスコ」など。
スライドでボルゲーゼ美術館の内部を見せていたが、すばらしい絵とたくさんの
ベルニーニ彫刻。 ふぅ。。行ってみたい。
「カラヴァッジョ 天才画家の光と影」は銀座と梅田のテアトルで2/13~上映。それから順次全国展開みたいです。
白鳥が危ない系?その話題で
高校時代に一時でも帰れて素晴らしいです。
コーラス練習頑張ってください。
by 匁 (2010-01-31 20:04)
「ボルゲーゼ美術館展」、いいですね。
ラファエロの絵、綺麗な使い、優雅ですよね。
カラヴァッジョの光と影・・・確かに、色っぽいです^^
観たいですねー。
by ムーミン (2010-01-31 21:00)
今夜の日曜美術館でバロックとルネサンスを観たばかりなので、
予習ぱっちりでこちらを拝見できましたよ~♪
わたしとしては精神的にはカラヴァッジョ支持だけど、観て好きなのはラファエロかな。
by バニラ (2010-01-31 21:48)
ご紹介ありがとうございます。
結構面白い作品が来ているのですね。
会期が長いので(写実画壇展ともかぶっているので)是非観に行きます。
by plot (2010-01-31 22:29)
今回は文中にエレガント部のtaekoさんのトコロには全く以てに相応しくないセリフが・・・(笑)。
まぁ、レダってテーマはそっちの目的で描かれていてもなんの不思議も無いテーマですもんねぇ(^^;。映画化されたゾラの『居酒屋』の中に、貧しいパリ市民である主人公たちがルーヴルに絵を鑑賞でなく“見物”に行って、「ほら見てみなよ、白鳥とだぜ、く、くっ」みたいなシーンが描かれてましたもんね。絵は画面には出てこないけど、セリフで「レダ」だって判っちゃう。まさにお友達のAさんの反応とおんなじですねぇ。
それにしても、高校生は3歳児じゃないんで(^^;使い方間違ってる気もしますが、「三つ子の魂百まで」とはよく云ったもので、人間って基本的には大きく変わらないもんなんですね。く、くっ(笑)。
by yk2 (2010-01-31 22:29)
yk2さん、匁さんに「レダ」のことをどうやって説明しようかと思っていたところでした。
「居酒屋」の映画を見てないけど、そんな場面があったんですね。ゾラは自然主義文学っていうとカッコいいけど、庶民の生活を生々しく描いた最初の人ですものね。
Aは、ここを読んできっと、「え~やだ、私、そんなじゃないわよ」って言ってること
でしょう(笑)。でも、他の友達は、「すぐAって、わかったわよ」って言うでしょう。
by TaekoLovesParis (2010-01-31 22:47)
匁さん、映画の詳しいご案内ありがとうございます。
カラヴァッジョは、2回殺人をしたってきいてますが、、映画を見ればわかるだろうと
追求してません。でも、すべて絵への情熱ゆえ、なんでしょうね。
レダと白鳥の件に関しては、上のyk2さんのコメントからお察しくださいませ。
by TaekoLovesParis (2010-01-31 22:52)
ムーミンさん、4月まで開催で、点数が少ないので、ごった返さないと思います。
特にラファエロは、洗ったばかりのような清々しいきれいな絵です。
ドラマティックなカラヴァッジョは、最後の部屋にライトアップして置かれてました。
都美術館は、このあと2年間くらい、改修工事をするので、休館です。
by TaekoLovesParis (2010-01-31 22:58)
ボルゲーゼ美術館って行ったことあると思ってたんですが…。
ローマに取材に行った時、行ったと思ってたんです…。
ラファエロの「一角獣を抱く貴婦人」も見覚えがあったし…。
でも、行ってなかったみたいです…。
「一角獣を抱く貴婦人」もガイドブックで見たから観たように錯覚していたようです。
これはこの機会に観に行くべきですね!
by りんこう (2010-01-31 23:08)
バニラさん、日曜の夜8時は、「坂の上の雲」じゃなくて、「日曜美術館」なんですね。
今朝、私が見たのは、アジアの、、だったから、朝とは違うぶんなんですね。でも、
「バロックとルネッサンス」、数週間前の朝、見ました!ソプラニスタの人が、バロック風、ルネッサンス風と歌い分けて、一角獣のことを歌っていましたね。
じっと眺め、これは宗教画の構図でなく、肖像画の構図、と当てた研究者は、すごいな、と思います。背景の景色がモナリザに共通するところがありますよね。本人が
亡くなったら、肖像画に聖女カタリナの持ち物の車輪を持たせて、カタリナに仕立て、
売る、しかも枢機卿に売るって、バチ当たりですよね~。
ドラマを知っていて見ると余計、絵に興味がわきます。
by TaekoLovesParis (2010-01-31 23:09)
plotさん、「写実画壇展」は、今年も4月1週に上野の森美術館ですか。
見に行きます。
by TaekoLovesParis (2010-01-31 23:11)
りんこうさん、ボルゲーゼ美術館は予約しないと行かれないんですって。
公式サイトにreservationがありました。
「一角獣を抱く貴婦人」は、見る機会が多い絵なんでしょうね。
by TaekoLovesParis (2010-01-31 23:14)
これ、観にいこうかどうか迷ってました。先に六本木のルノワールの方に行ってきました。
Aさんのエロスのご指摘も教養に基づいたものだなあと思いました。このような絵画において、白鳥は男性の象徴ですものね。
なかなか本場に観に行かれないので、この機会に足を運ぼうと思いました。
by Bonheur (2010-01-31 23:30)
チケットの絵でも、車輪をこんな風に抱えていたのかなっていうのが、なんとなく想像付いて、その発想がちょっと軽くっておかしくなっちゃう。
最近ならばさしづめ『お、これ、いいんじゃね?』っていうところ?
学生時代の友人と会うと、そうそう、そういえば彼女は学生の時もこうだった、っていうのを急に思い出しますね。一瞬でタイムスリップする瞬間。
by pistacci (2010-01-31 23:38)
点数が少なそうなので観に行こうか迷っていましたが、ラファエロの絵をやっぱり見たいのでいくことにします。
絵は本物を見ないと色も雰囲気もわかりませんものね。
by mami (2010-02-01 00:05)
Bonheurさん、ルノワールにもういらしたんですね!
カラヴァッジョに比べると、明るく、春のような感じでしょうね。
私も、いつか行こうと思ってます。
白鳥の説明していただいて、、王の妻レダを見そめたゼウスが、白鳥に化けて誘惑する話、ギリシア神話。絵には、神話を題材にしたものが多いですね。神様がたくさんいすぎて、ごちゃごちゃになっちゃいます。
by TaekoLovesParis (2010-02-01 00:21)
>見る人をひきつける天才カラヴァッジョ。
確かに、彼の「バッカス」はすごいインパクトですもんね♪
レダで調べてたら、ウィキペディアの“レダと白鳥”で、チェザーレ・ダ・セストによる模写に遭遇。
こちらの方は、いかにも卵から生まれました、みたいな描写だったので、
模写する人によって微妙に違うのね、とビックリ。
「魚に説教する聖アントニオ」は、聖アントニオの顔が人に向かってるので、
「この人たち、実は魚?」なんて思ってしまいますね、ふふ。
魚の部分が暗くって・・・。
by Inatimy (2010-02-01 07:47)
Taekoさんはレダがお好きでしたか!(/ー\*) イヤン♪
よーし、私も白鳥に変身してTaekoさんを誘惑しに行くぞっ♪
・・・と、思いましたが、Taekoさんは本物の肉食!
危ない危ない、危うく焼き鳥にされてしまうところでした。。。(/ー\*) イヤン♪
あ、ボルゲーゼ展の招待券が当たったのですが、当選報告記事がまだでした。。。
あいかわらずちまちましたものしか当たりません。。。(^_^;)ははは
今回、ギルランダイオの作品が複数来日してるんですよね。
テンション上がりまくりです!((o(^-^)o))ワクワク
by りゅう (2010-02-01 22:01)
ご紹介ありがとうございます。
Taekoさんの記事を拝読して期待が高まり、前売りのチケットを買っていたので、いつ行けるかな~とカレンダーを見ながら思案しています。
「レダ」の件、ゼウスは万能の使いっぷりの濫用ですよね~^^;
by てんとうむし (2010-02-01 22:01)
りゅうさん、ちょっと、ちょっと、、、って文句言いたいとこだけど、うますぎ~。
白鳥の焼き鳥なんてきいたことないけど、、とっぴな発想に、座布団3枚。
今、外は雪。池はないけど、白鳥が飛んで来るかもしれないと思える静寂さ。
えっ、ボルゲーゼ展も当たったんですか。新年早々、今年もツキがあるん
ですね。りゅうさんの場合、パワースポット参りは不必要です。「ちまちましたものしか当たらない」なんて失礼なことを言った人は、羨ましがって言ったんですよ。
ギルランダイオ、わからなかったので、リストを見て、「レダ!」(笑)
「レダ」と「ルクレツィア」が並んでかかってました。りゅうさん好みの美しい人です。
背景のえんじ色が高貴な印象を与えていました。「若者の肖像」は、小さな絵で、
友達と「普通ね、よくあるような若者で」と言ったのですが、、また失礼なこと言っちゃったかしら。
by TaekoLovesParis (2010-02-01 23:42)
大変ご無沙汰してます〜
やっぱりここに来るとためになるなー
レダ、勉強になりました!
by miku (2010-02-02 00:09)
nice&コメントありがとうございます
▲pistaさん、ラファエロの作品だから、当時から、やはり際立っていたんでしょうね。
だから、高く売れそうって、思ったんでしょう。<これ、いんじゃね@>って、うんうん、
きっと、そうよ。車輪時代の写真もあったけど、こげ茶色の平凡な大きい車輪。大きいから一部だけ出てる。その無造作さにくらべたら、一角獣の毛並みの繊細なこと。見事に描かれてるんですよ。
友達っていろんな個性の人がいて、結局、その個性は変わらないのね。
▲mamiさん、点数が少ないので、ひとつひとつをじっくり見れます。疲れないし。
やっぱり、ラファエロとカラヴァッジョがBIG2です。
▲Inatimyさん、私は「バッコス」のほうが見たかったんだけど。。カラヴァッジョは
リアルに描くから、モデルになりたくないです。しかし、もっとリアルなのは、
チェザーレ・ダ・セストによる模写でした。
「聖アントニオ」、実際の絵も、魚の部分が暗くて、目をこらして見ても、魚なんだか
、どうだか、よくわかりませんでした。このタイトルだと、Inatimyさんが、人を魚と解釈しても不思議じゃないですよ。(タイトルがますい?)
▲てんちゃん、チケット買ってあれば、たいていは行きますよね。この展覧会は、
おすすめです。万能の神ゼウスだから、ですか(笑)
▲mikuさん、勉強になったのは、ラファエロじゃなくて、レダ?ちょっとはずす
とこが、mikuさんらしい(笑)
by TaekoLovesParis (2010-02-02 00:33)
ボルゲーゼは大昔行きました。ベルニーニ、素晴らしいですよね。カラバッジョも大好きなんです。映画もみなきゃ!
またローマに行きたいです!
by duke (2010-02-02 18:42)
年明けは忙しくしていまして、情報収集もしていない中、
「この展覧会、もうやってるんだ!」とこちらで気付きました…。
私もチケットの女性の絵が気になっていました。
全体的に柔らかいタッチなのに、眼差しだけが印象的なほど強く、
実物を見たら少し圧倒されそうです。
4月までの開催なんですね。
まだ時間ありそう、と思っていると終わってしまうので、早めに行ってきます。
by 雛鳥 (2010-02-02 22:25)
nice&コメントありがとうございます
▲dukeちゃん、ボルゲーゼにいらしたことがあるんですね。私は2回ローマに
行って、一度は一週間もいたのに知らなくて、ごはん食べてるばかりでした。
いつか行きたいです。ローマの町には、ベルニーニの彫刻が似合いますね。
▲雛鳥さん、おっしゃる通りですね。目が笑ってませんね。一部のすきもなく、
きりっとした感じ。胸元のアンダードレスがレースかしら?って見たりするほど、
素材までわかるようなきれいさ、です。修復が終わったばかりなのでしょうね。
「まだ日にちがあるからそのうち」と、油断して結局最終日、混んでいるところに
行く、って私もよくあるパターンです。
by TaekoLovesParis (2010-02-02 22:34)