ジークフリート [オペラ、コンサート、バレエ]
昨晩(17日)、新国立劇場に、オペラ「ジークフリート」を見に行った。
ワーグナーの大作、4時に始まって10時に終わる長丁場。2回の休憩をいれて6時間。
これは、「指輪物語」の3番目の話。昨年、ここで2番目の話「ワルキューレ」を見た。
今回はそのつづき。
主役級は、全部ドイツ人。とくにジークフリート役(テノール)は3幕全部、歌いっとおしの大役。
幕があくと、こんな舞台。ワーグナーの時代でなく現代ふう。
キッチュな緑の壁紙。TVモニターが3台、冷蔵庫に電子レンジ。
ジークフリートが赤いスーパーマンのTシャツにオーバーオール。
あれれ、、英雄ジークフリートが、こんな格好、って拍子ぬけ。
でも、声がすばらしい!歌詞の字幕がどんどん進むので、せっせと見なければ、
で、舞台装置の奇妙さは、次第にどっちでもよくなってくる。
舞台は4階分の高さ。
銀色の大きな字、上は「HEIL」(繁栄、万歳)、下はMIME(ミーメ・この家の主)
ジークフリートは孤児。ミーメに育てられている。
思春期のジークフリート、見たことのない母はどんな人だったのだろう?
父は?と考え続けている。ジークフリートの質問に、ミーメは母の最期について
語り、父の形見の折れた「ノートゥングの剣」を渡す。
ジークフリートは、折れた剣の破片(プラスティック!)をガラスのボールに
すりおろし、冷蔵庫からミルクを出して注ぎ入れ、撹拌。電子レンジにチン。
(うっそ~!ありえないって叫びたくなる)
さらに、それをオーブンに入れる。
お菓子を作る手つき、手順での鍛冶屋仕事。名剣が鍛えなおされ、よみがえった。
ジークフリートは、勇敢で、大蛇を退治し、、っていう物語を小さい時にきいたけど。。
その通りで、蛇や化け物を退治し、大蛇を倒し、木の根元に隠されていた指輪を手にした。
大蛇をやっつけたときに指についた血をなめたところ、小鳥と話せるようになった
ジークフリートは、小鳥の道案内で、岩山に眠る乙女「ブリュンヒルデ」を目覚めさせ、
永遠の愛を誓う幸せな結末。
小鳥役は日本人、安井陽子(ソプラノ)。この間見た「魔笛」で夜の女王役。
小鳥らしさを出すために、宙吊り場面がたくさんあって大変だったと思う。
オーケストラがワーグナーの響きとうねりをよく出していて、トランペットが心に残る。
「オーケストラ、ブラボー」と最後に声がかかったので、友達と「ほんと、そうよね」
とにっこり。
次々出てくる奇妙な舞台装置がだんだん楽しくなってくるから不思議。
映画のフィルムが散乱してる部屋の意味は?ジグソーパズルの一片がベッドなのはなぜ?
TVのモニターに本心を語る姿を映し出したり、などなど、工夫がいっぱい。
しかし、何よりも歌の重厚さにノックアウトされた。
ミーメとジークフリート、共にテノール通しの掛け合いが、1幕ずっとだが、心地よかった。
「ワルキューレ」と関連づけて話を理解するのに忙しく、退屈せずとてもおもしろかった。
ワーグナーが15年かけて作った作品というのもうなづける。
曲だけでなく、ストーリーもいろいろな意味合いを含んでいて、興味深い。
このつづき、来月上演の第4話「神々の黄昏」が楽しみだ。
【指 揮】ダン・エッティンガー
【演 出】キース・ウォーナー
【ジークフリート】クリスティアン・フランツ
【ミーメ】ヴォルフガング・シュミット (「サロメ」で、ヨカナーン役)
【さすらい人】ユッカ・ラジライネン
【アルベリヒ】ユルゲン・リン
【ファフナー】妻屋秀和
【エルダ】シモーネ・シュレーダー
【ブリュンヒルデ】イレーネ・テオリン
【森の小鳥】安井陽子 (「魔笛」で、夜の女王役)
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
うちの近くの駅に降りたら、雪が舞っていた。重厚なワーグナーの夜にぴったり、
と、満足感にひたりながら、家に向かった。
装置が現代風でコミカルに、でも歌は聴かせる、で、かなりユニークな作品なんですね。なんだかとてもとっつきやすそうな感じがしました。
続きもあるんですね。チェックしてみようと思います。
by Bonheur (2010-02-19 00:36)
Bonheurさん、ドイツものだから、Bonheurさんにはオススメです。
ワーグナーは、一度、経験してみると、はまる人と拒否の人と、はっきり
わかれるんですって。
モーツァルトのオペラなどでは、アリアのとき、字幕を見ると、まだ同じ
ということが多いのに、(同じ歌詞で長く歌ってる)、ワーグナーは語り
と同じなので、映画並みのスピードで字幕が変わります。しかも、
ストーリーが語られてるので、寝てられませんでした(苦笑)。
続きの第4話「神々の黄昏」で、完結するんです。第4話は、音楽がいい
ってきいてます。演出は今回と同じ人なので、かなり、とんでておもしろい
でしょう。許容範囲の広いBonheurさんなら大丈夫だと思います。
by TaekoLovesParis (2010-02-19 00:56)
大蛇を退治したり、指輪を手に入れたり、小鳥と話せるようになったり・・・のあたりを読んでいると、まるでドラクエのようなゲームみたいに思えてきますね。
舞台装置も現代風だし♪
照明で壁に浮かび上がったベッドの影まで計算されて、アートですね~。
by Inatimy (2010-02-19 08:24)
お芝居の余韻に浸りながら、帰りは雪が散らつくって・・・いい雰囲気ですね^^
手の上で融けてしまう雪は、儚くって素敵です^^
by ムーミン (2010-02-19 12:58)
素敵な夜でしたね! ワグネリアンになりましたか?
本当にオペラは面白いですね!
舞台はこれからもどんどん変化していくでしょう!
楽しみですね~
by mikosuke (2010-02-19 14:35)
謹厳なイメージのお堅いドイツとはかけ離れて、随分とポップな舞台装置ですね~。僕はいなちみぃ~さんよりは少し年上なので、赤いTシャツにオーバーオールって、マリオかい?って思っちゃいましたが(^^;。
それにしても、4時に始まって終わるの10時って・・・(苦笑)。
by yk2 (2010-02-19 22:49)
現代風にアレンジされているのですね~。オペラがちょっと身近に感じてきました。
わたしはyk2さんよりたぶん年上だけど、やっぱりドラクエみたいって思いました(笑)
6時間って言うと途中で食事したり、幕間がゆったりなのでしょうね。
この時間設定がとっても優雅ですね~。ジークフリートが歌いっとおし、っていうところに、やまぐちさんがやってくれたらいいなぁ、って想像が飛んじゃった(笑)。
by pistacci (2010-02-19 23:05)
nice&コメントありがとうございます
▲Inatimyさん、つよーい武器持って宝探し、ドラクエがこういうのを参考に
ストーリーを作ったんでしょうね。ドラクエとは音楽が違うから、似てるとは、
思いつかなかったけど、言われてみれば、、です!巨人族と小人族がでて
くるのも、ゲームのストーリーっぽい。
照明、うまいです。暗い森の草地は照明で、緑に黒い模様にしてるし、シルエット
を上手に使ってますね。
▲ムーミンさん、雪がひらひら、きれいだったので、家にはいってしまうのが
もったいなくて、門の前で、しばらく空を見上げてました。はかないから美しい
んでしょうね。
▲mikosukeさん、いつもオペラに一緒に行く友達Mが、今ではすっかりワグネリアン。最初の「ラインの黄金」見逃して残念だった、と言ってます。
舞台は演出で、大いに変わりますね。
▲yk2さん、マリオは軽くぴょんぴょん、はねてたけど、声楽家なので重量級。
それに、そんなに若くないのに、オーバーオールって、、でした。
ジークフリートの幼児性を示すために、ぬいぐるみがたくさん置いてあって、
このキッチュな壁紙の部屋、小物も全部、意味アリなんです。
▲pistaさん、第一回目の休憩が50分、そこで夜ごはんを食べて、第二回目の
休憩が45分、その時は、コーヒーとお菓子。帝劇より、売ってる食べ物がおしゃれ
です。お菓子はプロフィットロール(小さいシュークリームを重ねたぶんにチョコがけ)が定番。シャンパンもおつまみプレートもあります。
休憩が長いのは、舞台装置の入れ替えより、歌手が休むためでは?
ずーーっと、歌ってほしい、受けました!テノールで、ずっとより、やまぐちさんの
ような低い声のほうが、ずーっとにはぴったり、ですね。
by TaekoLovesParis (2010-02-20 00:27)
リングは鑑賞する方も体力勝負ですね。
来月で4夜完結ですか。すばらしいですね。
名古屋ではおそらく永遠に不可能です。
ソリストは多いし、登場人物が通しではでなくても、
それぞれが微妙に関わってて、ストーリー展開がドラマチックで。
続けて鑑賞できれば長時間も気にならないでしょうね。
神々の黄昏、表第とは裏腹に神々の話から人間が主人公になってきますね。
2回の休憩、私は、ワイン飲みすぎないように注意が必要です。
さすがにビールは飲みません(笑)。
by aranjues (2010-02-20 02:14)
6時間ですか!演じる方はもちろんですが
観る方もプロでないと見れませんね。凄いです。
4階まで有る舞台装置ですか!、想像がつきません。
「指輪物語」の中に第二話「ワルキューレ」
第三話「ジークフリート」
第三話「神々の黄昏」
有るんですか?次回は8時間ですか?
by 匁 (2010-02-20 09:15)
nice&コメントありがとうございます
▲aranjuesさん、リングにおくわしい!そうなんですよ。
前回と同じ歌い手が出るので、友達が「あの人、この前、もっと金髪でしたよね、
照明で違って見えるのかしら」って気にしたり、私は、指揮者の前髪が白髪に
なったのに驚いたりと、約1年後に見るので、容貌も少し変化して、でした。
1年もたつので、前のストーリーを忘れて、その日、行く前にあわてて読んで、
と、学生時代の試験前と同じです。
メインのところで売ってるが、シャンパンで、横のコーヒーコーナーにひっそり
ワインもあるっていう具合なので、シャンパングラスを手にしてる人がチラホラ。
男の人が、さっとシャンパンを買って来てくれるという時代もありましたが、今は、
自前で飲んで、居眠りしたら、ワーグナーファンの同行の友に怒られそう。
終わってから、ゆっくり、ベルギービールを飲むコースが、aranjuesさんには、
おすすめです。
▲匁さん、劇場自体が4階まであるので、舞台もそれと同じ高さなんです。
さらに、ここは、オペラ劇場として作られているので、奥行きも深く、舞台装置が
前後に動けるようになっています。宙吊り装置もあるし。
指輪物語の第一話が「ラインの黄金」、これを見逃しています。
次回、何時間でしょうね。8時間はないでしょう(笑)
by TaekoLovesParis (2010-02-20 11:08)
近いのですが、最近めっきり新国立劇場行っていません。
リング好きなので、新国のワーグナーは一度行ってみたいと思いながらまだなんです。
今、オケはN響じゃなくなっちゃったんですね(__)
by うさぎ (2010-02-20 13:04)
オペラって、こんなにポップなものもあるんですね。
丁寧にレビューを載せていただいているので、イメージが掴めてきました。
荘厳、静謐とはちょっとかけ離れた舞台のようですが、
こんな楽しい見せ方もあるんだなあという、新しいイメージの発見でした。
長い時間、お疲れさまでした。おもしろければ長さは気になりませんよね。
ものすごくどうでもいい話なのですが、先日TVで「崖の上のポニョ」見てまして、
ポニョの元々の名前が「ブリュンヒルデ」でした。
ここからきているのかあ、と自分的発見でした。
by 雛鳥 (2010-02-20 13:12)
休憩を2回はさんで 6時間とは!?
好きな方にとっては 時間など関係ないのでしょうね~!
新国立劇場 一度は行っているような気がしますが・・・
思い出せません。
by ララアント (2010-02-20 15:34)
ワーグナーオペラは長いですよね。。。
格好よく言うと、『壮大』ってことなんでしょうけど。
役者もオケもお客さんも体力勝負って感じがします。。。(^_^;)
by りゅう (2010-02-20 22:22)
nice&コメントありがとうございます
▲うさぎさん、リング好きでいらっしゃるんですね!私は、タンホイザーと、
マイスタージンガーは見たことがあったけど、リングは、昨年のワルキューレ
が初めてです。
オケは、「東フィル」が多いです。今回は合唱がなかったけど、新国立劇場
合唱団は、レベルが高いです。
▲雛鳥さん、<おもしろければ長さは気になりませんよね。>
→ まさにその通りでした。オペラは歌(アリア)の部分は、変わらないから、
舞台装置で、印象ががらっと変わります。
<ポニョの元々の名前が「ブリュンヒルデ」>→そうだったんですね。
北欧の神話やドイツの抒情詩を組み合わせて作った台本になので、
ブリュンヒルデが出てくるのも当然なんでしょうね。
▲ララアントさん、新国立劇場は、赤い絨毯の階段をのぼってチケットを
切る場所に着くところで、すてきな空間です。コンサートホールもあるので、
オペラだけでなく、コンサートもやってます。
▲りゅうさん、はい、まさに体力勝負です。
一幕、二幕、それぞれが終わったときの拍手で、出演者が舞台に出てきて、
ありがとうジェスチャー。三幕が終わったとき、これで全部終わりなのに、
もう、拍手するほうも、出演者も疲れきって、パワーなしでした。
そんな中、「オーケストラ、ブラボー!」って大きな声で言った人がいて、
そこには再び拍手がおきました。駅のホームで時計を見たら、10時20分。
私は家が近いけど、遠い人は大変だなと思いました。
by TaekoLovesParis (2010-02-21 00:44)
私の知っている音楽関係者はバッハ派が多数で、どうやらそういう方の多くはワグナーはどうしようもなくてダメ!という方が多いみたいです。
どうしてなのか分かりませんが・・・。
(ワグネリアンに八つ裂きにされそうな言動ですが決して私じゃありませんよ!)
どっちをとっても観客、演じる側の双方に体力とペース配分が脳裏を過ぎるオペラな世界は自分の仕事にも大いに通じるものがいっぱいあるなぁと勝手に思ったりします。
体力は感性と同じ位大事ですねー。(時にはそれ以上かも)
by julliez (2010-02-21 16:42)
Taekoさま、私もこれ見たかったんです~~!
以前お話したかどうか、ワルキューレとラインの黄金観にいきましたから。
ワグナーの壮大さ、新国立の奥行きに心打たれました。
あれだけ長い時間劇場に留め置かれたことがなかったせいか、、演者と観客に不思議な一体感が生まれ、なんだか別のステージにワグナーに連れて行ってもらったかのような高揚感が生まれたのが新鮮でした。私だけかも知れませんが。アハ。
by roseadagio (2010-02-21 22:06)
nice&コメントありがとうございます
▲julliezさん、フランス人で、ワーグナーを好きっていう人は、少ないでしょう。
(<八つ裂き>って、言葉がおかしかったです)フランス人は、自国びいきだから、オペラは、なんてったって、ビゼーの「カルメン」、イタリアオペラだけど、原作がフランスの「椿姫」、「リゴレット」は、大抵の人が知ってますね。julliezさんがお好きな「サムソンとデリラ」のアリアもフランスもの。
そう、仕事に体力、必要ですよね~。情熱だけでは長続きしないから、ペース配分を
うまくやらないと。自己管理が厳しい世界ですね。
▲roseadagioさん、前2作をごらんになったんですね!「ラインの黄金」は見そこね
たのが、今頃になって悔やまれます。主神ヴォータンは、今回は、「さすらい人」に
変身して登場でした。1,2作と同じユッカ・ラジライネン、じっくり聴かせてくれました。「ラインの黄金」で、フリッカ役だったエレーナ・ツィトコワは、「こうもり」と
「バラの騎士」が、演技(女だけど男に化けてる)・歌ともにすごくよかったので、
「ラインの黄金」も見たかったんです。
ワルキューレの最後の火をつけられてしまう場面の続きが今回の3幕でした。
<高揚感>っていう言葉、ぴったりです!
by TaekoLovesParis (2010-02-22 02:02)
ワーグナーのこういった大きなオペラは見たことがないんです。
一度見てみたいとは思いますが、関西で上演の機会もありませんしね・・・
パリで見たタンホイザーはかなりモダンな演出でしたが、
歌唱、演奏は素晴らしかったのを覚えています。
壮大なワーグナーのオペラを堪能された様子が伝わって来て
私のテンションも高まり気味です♪
by ぎーこ (2010-02-22 23:48)
状況を読んでいるだけで、すごく面白そう!
でも見るほうにもそこそこ体力が要りそうですね・・。
by あやっぴぃ (2010-02-23 14:52)
nice&コメントありがとうございます
▲ぎーこさん、外人が歌うワーグナーを見れるのは、東京だから、なんですね。
東京に住んでいてよかったと思います。しかも、家から、新国立へは30分
かからないんです。パリでご覧になった「タンホイザー」もモダンな演出とは、
最近は、モダンなのが流れなんですね。私も来週、バスチーユオペラ座で、
「ドン・カルロ」を見る予定で、楽しみ。
▲あやっぴいさん、時間が長くなるほど、舞台と客席とに一体感が生まれる
んですよ。平日の4時開演だったのに、結構、お年を召したかたがいらっしゃって
、「こういう人たちがほんとのオペラ好きなのね」と、友達と話してました。
by TaekoLovesParis (2010-02-23 19:54)