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サロメ(二期会) [オペラ、コンサート、バレエ]

 2月25日
二期会のオペラ「サロメ」を東京文化会館で見た。
このオペラは、一幕と短い。
salome.jpg

 今回の「サロメ」は、コンヴィチュニーの演出が評判になっている。
私は、前回、従来型の演出で、見たので、今回のには、驚いた。
オペラは、演出が違うと雰囲気ががらっと変わる。

始まってすぐ、ひそひそっと、「これ、あぶないわよね。18禁」と、友達が言ってくる
ほど、乱れた場面ばかり。サロメは王女様の品格なく、蓮っ葉だし。

舞台装置は、フィリッポ・リッピの「ヘロデの宴」のようだった。
ただし、全員、白か黒の服で、モノトーン。
ヘロデの宴.JPG

注:この絵には、サロメが3回、登場している。
  中央が踊るサロメ、左端はヨハネの首をお盆に受け取るサロメ、
  右端は首を母にわたすサロメ。

 サロメの母は、今はユダヤの王ヘロデの妻だが、元はヘロデの兄の妻。
サロメを連れて再婚した。それは「律法で許されない」と預言するヨハネ。
だから、サロメの母は、ヨハネをうとましく思っている。
ヘロデが宴で、サロメに、「踊れば、何でも好きなものを褒美にやろう」と言い、
サロメは、「ヨハネの首を褒美にください」と答えた。

 サロメがヴェールで踊る名場面で、たいして踊らず、壁に戸の絵を描き、何度も
体当たり。出ようとしても、出れない。他の人たちも、サロメに倣って、壁に戸を描き、
体当たり。そこで、初めて、私は、この設定は、閉じ込められた世界と気付いた。
だから、希望のない人々は、享楽的になっているのだとわかった。
(第3次大戦後、シェルターで暮らす人々という設定なのだそう)

 サロメのテーマは「愛」だが、結末も従来のものと大いに違っていた。
違和感を覚えたまま、「ワインでも飲みましょう」と、劇場を後にした。

オケがとってもよかったなぁ。歌は、皆、発音がよく、声もよく通っていた。
特にヘロデが存在感があった。そういう設定なのだろうか、サロメは元気いっぱい、
体全体を使っての体当たり演技。ヨカナーン(ヨハネ)は、風貌がまさに、絵に出てくる
預言者ヨハネだった。

原作:オスカー・ワイルド
作曲:リヒャルト・シュトラスス
指揮 : シュテファン・ゾルテス
演出 : ペーター・コンヴィチュニー 
公演監督 : 多田羅迪夫 
 
<キャスト>
サロメ : 林正子
ヘロデ : 高橋淳
ヘロディアス : 板波利加
ヨカナーン : 大沼徹
ナラボート : 水船桂太郎
ヘロディアスの小姓 : 栗林朋子
管弦楽 : 東京都交響楽団

 ☆つるりんこさんが、とてもわかりやすい解説を書いていらっしゃいます。


その後は、上野駅「アトレ」の「ブラッスリー・レカン」へ。
昔の駅舎の「貴賓室」を使っているので、天井が高く、レトロで居心地のいい空間。
夜のコースでも、2800円からと、値段が良心的。

11-02-25_002.jpg 11-02-25_004.jpg

コースは、前菜が、ブーダンノワール、りんごのペーストのせ、サラダ仕立て。
主菜は帆立貝(写真なし)、デザートの皿の手前左はカシスアイスクリーム。
ワインは、アルザスのHugelと知ってるものがあったので、それにした。
ちょっと甘いけれど、ブーダンノワールには、合っていた。


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コメント 16

yk2

フィリッポ・リッピがこんなふうに1枚の絵の中で三態のサロメを描いているのを知りませんでした。さすがナマクビ・・・ぢゃなかったサロメ大好きなtaekoさんですね~。勉強になりました(笑)。
by yk2 (2011-03-01 21:33) 

ぶんじん

オペラを見る習慣がないんですが、「サロメ」ってのには惹かれますなぁ。美術史上、一つの“ジャンル”になるほど描かれている女性、それがどんな風に歌い、踊るのか見てみたいです。
by ぶんじん (2011-03-01 21:36) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます。
▲yk2さん、見慣れてないから変だけど、昔は、こういうふうに、ひとつの画面に
同一人物の時間の前後するものが描かれている絵が、あるんですよ。マザッチョの
「貢ぎの銭」には、ペテロが3回登場します。日本の絵巻物もそうですね。

「ヘロデの宴」の絵は祭壇画なんです。上にもう一枚絵があるので、絵の上の網目のような模様は、額縁というより仕切りです。サロメのモデルは、僧侶フィリッポ・リッピ50歳が見初めた24歳の女性。で、2人は結婚したんです。フィリッポ・リッピは僧職をクビになりました。ナマクビの話じゃないと、ご期待に添えないかしら(笑)

▲ぶんじんさん、「サロメ」は、美しいがゆえに、義理の父からも、色目で見られて
しまうんです。いつも男の人から愛され、ちやほやされる。それなのに、サロメの
方から、すてき!と思ったヨハネに無視され、サロメはいらっとくるわけです。
サロメを歌うには、声の良さ+容姿も要求されます。踊りは薄物だけの半裸だったり
なので、以前は、ダンサーが踊っていたのですが、最近の傾向は、本人が踊ります。アラビア風のダンスが多いです。


by TaekoLovesParis (2011-03-01 23:24) 

pistacci

ナマクビがらみでクビになった・・?・・・と、くすり(笑)。
過去記事を読んだら、ついに好きな人のクビを自分のものにした、という単純な話でもないようですね。
ぅ~ん、わたしだったらどうなんだろうなぁ。
そんな想いの日々はどこかにいっちゃったなぁ・・・。
by pistacci (2011-03-03 23:00) 

Inatimy

話の流れからすると、悲劇なんですよね。
サロメは自分から言い出したこととはいえ、悲しんだのかしら。
私に見向きもしないなんて、いい気味だわ、だったら、ヨハネが可哀そう過ぎるなぁ・・・。
by Inatimy (2011-03-03 23:08) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲pistaさん、「サロメ」は、オスカー・ワイルドが戯曲にしてから、男を惑わす「運命の女」という解釈になってしまったけど、聖書では、単にヘロディアスの娘。それが、
ルネッサンスの時代に、ヨハネの首を持つサロメとして画家たちに描かれ、ホロフェルネスの首を切ったユーディット(カポディモンテ美術館展記事に絵、載せてます)も、生首物語として描かれてます。この時代は、どれだけ迫真に迫った絵が描けるかが、画家の力量だったのかしら、ね。

ヨハネが普通の人でなく、預言者っていうところがポイント。つまり、「運命の女」に
見向きもしない神の言葉を預かる人。ところが今回のヨハネは、サロメに惚れられて、サロメといっしょにシェルターを脱出しちゃうという結末。ふたりは本当の愛を
知りました、ってことらしい。ちょっと、ついていけなかったので、「ワイン飲まなくちゃ」
だったんですけどね。

普通は、好きな人が死んだら、なんて、考えるのもいやですよね。でも、出口のない愛だと、2人で燃え上がった場合、行き先は死になる、っていうのが、セオリー。
古今東西、たくさん、そういうドラマがありますね。
pistaさんは、そういう出口のない恋は選ばないと思いますが。。

▲Inatimyさん、悲劇なんですよー。
<私に見向きもしないなんて、いい気味だわ>
→ そう、その通りの解釈もあるんですよ。「王女の私が愛してあげたのに、知らん顔するなんて、身の程知らずね」

pistaさんへのコメントに書きましたが、たくさん解釈があるんです。
私が好きな説は、塩野七生の「サロメの乳母の話」。サロメは、ヘロデ王に疎まれ、
牢獄に入れられていたヨハネの所にせっせと通い、預言を聞き、今の自分の国の
状況を知る。そして、国を救うためにヨハネの首を所望したっていう頭のいいサロメ。
by TaekoLovesParis (2011-03-04 00:30) 

つるりんこ

こんにちは!
Wキャストの林正子組を観られたのですね。
この蓮っ葉?な役作りならこちらのサロメの方が合っていたと思います。
幕切れの読み替えに違和感がなくもありませんが、
台本をなぞる演出より目が離せない緊張感があり、
新鮮に観られて楽しめました。
また、音楽が最高でしたね。
by つるりんこ (2011-03-04 16:45) 

TaekoLovesParis

つるりんこさん、そちらの記事がとてもわかりやすいので、リンクをつけさせて
くださいね。
つるりんこさんも林正子組、だったんですね。「ファウストの功罪」のマルグリート
の時の清純さとは、打って変わった役づくりでしたね。あれは全部演出の指示
なんでしょうね。
曲と歌詞をそのままにして設定を置き換える、見ているときは違和感があるけれど、(たしかに、つるりんこさんがおっしゃるように、目が離せませんでした)終わってからゆっくり考えてみると、あれもありなんだ、と思えます。「トリスタンとイゾルデ」に通じるような世界感がありました。
演奏も歌も、じっくりと聞かせる場面が多くて、とてもよかったです。
みんなドイツ語の発音がきれいですね。

by TaekoLovesParis (2011-03-04 21:32) 

りゅう

さすがサロメのようにお美しいTaekoさま。
生首モノにはいつも以上に辛口ですね!(* ̄m ̄) ププッ
まぁ、それはともかく、
やはりサロメには気品が必要ですよね。
舞台でも絵画でも。
それが無くなったらタダの・・・(^_^;)
by りゅう (2011-03-05 14:15) 

TaekoLovesParis

りゅうさんへ、
お口の上手なりゅうさんには、かないませんわ。おっほっほ。
あたくしは、いつも優しい視点ですわ。辛口だなんて、そんなことおっしゃると、
天罰で、首がまわらなくなるかもしれないことよ。

まぁ、それはともかく、
歌った林正子さんは、知性があって美しい人で、気品もあるから、OKでした。
たしかにキャスティングが難しいですね。
by TaekoLovesParis (2011-03-05 15:07) 

aranjues

ポスターが秀逸ですね。
キャスティング次第で随分印象が変わりそうですが、
サロメ役の林正子さん、知性的で美人で気品がありますか、
其れは是非観てみたいですね(^.^)。
by aranjues (2011-03-06 09:29) 

TaekoLovesParis

aranjuesさん、ポスターにも斬新さが表れていますね。
林正子さん、古風な名前で覚えやすいですね。声がすばらしいです。
背も高いので、舞台映えがします。それより、<知性的で美人で気品>
っていうほうが気になりますか?(笑)
by TaekoLovesParis (2011-03-06 18:08) 

duke

二期会のサロメ、新聞に載ってました^^
生首もの、見たことないです・・おこちゃまなもので・・^^;
年はおばちゃまですけど・・・ ̄▽ ̄
レカンは上野訪問時に便利ですよね!おいしそうですね^^
by duke (2011-03-07 22:27) 

TaekoLovesParis

dukeちゃん、生首には、足を踏み入れないほうがいいと思います。
私は、行きがかり上、見始めちゃったけど。
同じお金を払うなら、夢のあるきれいなものを見たほうが、いいですよー。
ボエームに飽きた頃、見てください。
レカンは、お得な部類。おすすめです。
by TaekoLovesParis (2011-03-07 22:49) 

シェリー

サロメといえば・・・
ワインの漫画で「ミアーニ」っていうワインを
サロメに例えているのを読んだなーって思い出しました^^
私はこのオペラを観たことがなかったので
いまいちピンとこなかったですが
Taekoさんならすぐにワインのイメージ湧きますか??^^
by シェリー (2011-03-09 15:27) 

サンフランシスコ人

サンフランシスコのオペラハウスで、サンフランシスコ歌劇場の「サロメ」を観たことがあります.....

http://archive.sfopera.com/reports/rptOpera-id336.pdf
by サンフランシスコ人 (2017-10-25 02:48) 

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