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酒井抱一展(畠山記念館) [展覧会(日本の絵)]

 昨日まで、白金台の畠山記念館で、「生誕250年酒井抱一展」が開催されていた。
展示品すべてが畠山記念館の所蔵品なので、気をつけていれば、また見る機会が
あると思う。

 今回は、会期を2回に分けて、一部展示を入れ替えていた。
12ヶ月花鳥図の1月から6月まで前期で、7月から12月までが後期という具合。

 前期に展示されていた「四季花木図屏風」
四季花木図屏風.jpg

屏風なので、かなり大きい。
満開の桜のみごとさ、華麗さに目が行くが、下の花々は、まさに百花繚乱。
色とりどりの鮮やかな色彩。細やかな写実の優美な線。美しい。

 抱一は、晩年63歳から、「12ヶ月花鳥図」の連作を始めた。
12ヶ月花鳥図とは、藤原定家が、各月を象徴する植物と鳥を選び、和歌に
詠んだものが、後世、光琳らの画題となった。
抱一は、花や鳥、虫を伝統的なものと入れ替え、立体感のある瑞々しい画面
を構成した。

椿梅.JPG       

上の写真は、右から一月、二月、三月。
一月、椿と白梅に鶯。椿の赤の鮮やかさに目が惹かれる。
二月、菜の花に雲雀
三月、こちらに向かって伸びてくる桜の枝が画面に奥行きを感じさせる。
ほぼ中央に位置する瑠璃鳥。桜の花の色に瑠璃色が鮮烈なインパクト。

「12ヶ月花鳥図」は、宮内庁三の丸所蔵館版、プライスコレクション、
出光美術館版、ファインバーグコレクションなどがあり、花や鳥が少しづつ違う。

畠山のは、他のシリーズにない鳥や花が登場するものがあり、個性的である。
四月の「芍薬に燕」、六月の「百合・立葵に雀」、七月の「むくげに頬白」(下右)、
十月の「山茶花にカケス」である。

7月8月.JPG

むくげの枝の交差が面白く、右上に配置された頬白が、つがいで楽しそうな光景。
ちなみに、三の丸版の七月は、朝顔・玉蜀黍に青蛙である。
八月は、芙蓉に鶉(上左)。「秋草鶉図屏風」の鶉と同じく、太って愛らしい鶉。
抱一の描く鳥たちは、かわいい表情なので、見ていると、和やかな気持ちになる。

 「月波草花図」
銀の世界。厳かなまでに静かな両端の景色が、真ん中の絵の激しさを際立たせる。
大きく描かれた月に、しぶきを立てる荒々しい波頭。
「今は、津波のあとだから、この波が恐く見える」と、友達が言った。

この日の入場料は、被災地への義援金にすると書いてあり、私が払った500円玉
を、受付のおねえさんが「寄付金箱」に入れていた。

月波草花図.JPG

 写真はないが、この日、一番、印象に残ったのは、鈴木其一の「向日葵」だった。
前期の華やかさに比べ、地味な色合いの後期の展示の中、すくっと伸びた茎の上
に大きく咲く黄色の花一輪。左右には蕾。「たらしこみ」技法で、丁寧に描かれた葉
の一枚一枚には、軽やかなリズム感があった。

 畠山の「風神雷神図」は、掛け軸なので、大きさも屏風に比べると小さい。
コンパクトなので、風神、雷神共に、かわいらしく、表情と仕草はマンガっぽく楽しい。
墨で描かれた雲の濃淡がみごとで、達者な筆さばきに感心し、見入った。

風神雷神図掛け軸.jpg


 海に囲まれ、四季のある日本の自然は、すばらしいけれど、地震や津波は。。
寒い中、辛抱なさってる被災された方々への援助、早くすすんでほしいですね。


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duke

なんて美しいのでしょう。破壊や自然の猛威を目にした後で、とても和みました。美しい三陸の景色が早く復興できますように。そして芸術が人の心を少しでも癒すことができますように祈っています。
by duke (2011-03-23 18:45) 

aZU

作品一枚一枚に品があり、また違った楽しみですね。
by aZU (2011-03-23 21:00) 

りゅう

気になっていたのですがドタバタしていて逃してしまいました。
「12ヶ月花鳥図」見たかったなぁ。。。(T_T)
by りゅう (2011-03-23 21:33) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲dukeちゃん、松島に面してる所は、松島が津波を受け止めてくれるから、
今回も被害が少なかったんですって。悲惨な映像をずっと見てると、、見ても
何もできないから、余計に心が痛みますね。

▲aZuさん、12ヶ月花鳥図は、他の版のと比べてみるのが、楽しいです。

▲りゅうさん、私も最終日の前日に、意を決して行きました。地下鉄が途中で
止まったら、やだな、って思ったからです。地上なら、閉じ込められても、外が
見えるけど、地下鉄は。。。恐怖。
畠山の所蔵品は、また見る機会がありますよ。
by TaekoLovesParis (2011-03-23 22:33) 

雛鳥

このあたりの琳派は好きなので、仕事の合間に行ってみよう、
…と思いきや、もう終わってしまいましたか…残念。
でも、また目にする機会があるかも、という貴重な情報、ありがとうございます!
抱一は、たおやかな美しさが印象的で、見ていると穏やかな心になってくるようです。
いつまでも眺めていたいような作品ばかりですね。
でも、実は私は抱一の弟子の鈴木其一の方が好きだったりします。
其一の凛とした潔さがとても好きなのですが、今回は抱一のみの展示だったのですね。
by 雛鳥 (2011-03-23 22:50) 

てんとうむし

あぁ、、「12ヶ月花鳥図」ですね♡
『皇室の名宝展』で何度もその前を行ったり来たりして立ち去りがたかったことを思い出します。
風神と雷神も抱一のものは、いたずらっ子みたいなんですよね^^
この展覧会は逃してしまいましたので、また次の機会にめぐり会いたいと思います♪
by てんとうむし (2011-03-23 23:52) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲てんちゃん、「皇室の名宝展」は、すばらしい展覧会でしたね。
あのとき買った図録の「12ヶ月花鳥図」を今でも時々、見ています。

▲雛鳥さん、雛鳥さんが日本画がお好きなのは知っていたけれど、
中でも「其一びいき」でらしたんですね。
この展覧会は、サブタイトルとして、ー琳派の華ーとしてありました。
だから、前期には、其一の「曲水宴図」、後期に「向日葵図」が展示されて
ました。向日葵は、まず、花に目がいってしまいますが、葉っぱがすばらしい。
(シソの葉のように見えると言った人もいましたが。)
by TaekoLovesParis (2011-03-24 00:52) 

yk2

taekoねーさん、横レスごめんなさい(^^ゞ。
だって、あの葉はシソですよ~。ネイビーとエメラルドのグラデーションだから余計にそう見えちゃう(笑)。

雛鳥さん
僕はこの師弟の二人、どちらも大好きなのですが、其一の方が好き、って方の気持ちも解らないではありません。例えば植物画などに於いては其一の方がより一層描写がシャープで写実的。もはやほとんど西洋のボタニカル・アートを思わせる作風で、これが江戸絵画か!?と驚かされちゃいますものね。

ところで、“抱一”の名はルネッサンス期の巨匠たちと同じく、美術工房のブランド・ネームとしても機能していた事実があって、抱一の印が押されていても、実際はほとんど其一が手掛けていただろう作品も存在するらしく、今となっては研究者たちにも、これは抱一、こちらは其一などと、正確に選り分け判断するのは至難の業なんだそうです。もしかしたら雛鳥さんが好いなと思う抱一作品にも、其一の筆がたくさん入っている・・・かもしれませんね(^^。
by yk2 (2011-03-24 01:06) 

hatsu

八月、『芙蓉に鶉』の鶉ちゃんは可愛いですね^^
優しくて美しくて力強い、
作品とTaekoさんのお話に、パワーをいただきました♪
by hatsu (2011-03-24 05:58) 

moz

こちらもご覧になったのですね。抱一、250年で特別展が行われているんですね。
これだけ一度にご覧になると特徴とか個性とか良く分かるのではと思います。 ^^
12ヶ月花鳥図だと3月の赤がとても目にしみてきますし、月波草花図だと、
とても幽玄さを感じます。確かに、つきに波、こんなときだと恐ろしさを感じますね。
でも、とてもある種の動きも感じて素晴らしい絵ですね。

原発が心配です。飲み水まで・・・、早く復旧してくれないでしょうか・・・。
みたい展覧会もあるのですが、なかなか、心が落ち着きません。 ^^;
by moz (2011-03-24 06:19) 

Inatimy

検索かけて、其一の「四季花木図屏風」も見てみたんですが、
色もくっきりだし、梅や紅葉の枝の動きのせいか「動」って雰囲気ですね。
今の気分だと繊細そうな抱一の「四季花木図屏風」ほうが好みかな。
鈴木其一の「向日葵」も探して見ましたが、
其一が見たのは中央が黄色の品種の向日葵だったんですね。
う~ん・・・確かに、葉っぱは青紫蘇みたいかも。
「たらしこみ」、すっかり頭にインプットされました♪
by Inatimy (2011-03-24 06:48) 

coco030705

こんばんは。
酒井抱一の日本画、美しいです。写実的であり繊細ですね。
私は「12ヶ月花鳥図」の中の三月の山桜の絵が好きです。
瑠璃鳥の色がほんとうにきれい。「むくげに頬白」と「芙蓉に鶉」も
いいですね。鳥達がとってもかわいいです。

私たちは美術品を鑑賞できる余裕があって、幸せですね。
被災されている人々に一日も早く物資が充分に届いてくれることを、
祈るばかりです。


by coco030705 (2011-03-24 18:13) 

雛鳥

Taekoさま…この場をお借り致しまして…、
yk2さま、コメントありがとうございます!
まさに其一の写実性が好きなので、ボタニカルアートという表現、
なるほどぴったり、と思いました。
日本画を見始めた頃、抱一の作品が異様にぼやけていたように思え、
それと比較して其一はまっすぐで潔いなあと、興味を惹かれたのですが、
最近は抱一の印象が変わってきまして、柔らかい美しさを感じるようになりました。
ですが、もしかしたらおっしゃるとおり、私が心惹かれた作品のどれかは、
其一の手によるものだったのかもしれませんね…。
おもしろいお話、ありがとうございます!
by 雛鳥 (2011-03-25 00:18) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲yk2さん、抱一・其一にお詳しいyk2さんに、どんどん補足していただける
ほうが有難いです。
あの向日葵は、当時の日本にはなかったはずの西洋種向日葵って、ききました。
そのせいで、葉っぱが紫蘇?日本の向日葵の葉っぱは厚みがあるけど、
其一のは、紫蘇のように薄い感じでした。薄いからこそ、光を受けて輝く、
「たらしこみ」の2色グラデーションが効果的なんでしょうね。

私が前の記事に載せた「野菜群虫図」は、まさにボタニカルアート的な其一の
作品ですね。
写実を得意とした其一が描いた「酒井抱一像」、イケメンですよー。
「抱一工房」、当時、江戸で人気のブランドだったんですね。銘がはいって
いれば売れたと、いうのを読んだことがあります。
by TaekoLovesParis (2011-03-25 00:27) 

匁

Taekoさん
勉強させていただきました。
1月 白椿にウグイス
2月 白梅にスズメ
3月 桜にツバメ
4月 薔薇にミツバチ
5月 カキツバタにバン
6月 紫陽花にトンボ
7月 ヒマワリにカマキリ
8月 秋草に馬追
9月 白菊にルリビタキ
10月 柿にカラス
11月 アシに白鷺 
12月 竹にオシドリ
なるんですね。
5月、8月、9月はどんな鳥か解かりませんので調べました。納得。
匁だったらどんな組み合わせにするか?
考えて見たいです。

by (2011-03-26 09:12) 

TaekoLovesParis

匁さん、調べていただいてありがとうございます。
こうやって、書いていただくと見やすいので参考になります。
馬追は、私、知ってます。スーイッチョって鳴くキリギリス。
匁さんの絵に、花鳥図が、どんな組み合わせで、でてくるのか
楽しみにしています。
by TaekoLovesParis (2011-03-26 13:01) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲hatsuさん、鶉って、かわいいですよね。でも、肉を食べるときは、絵を想像
しないようにしています。フランス料理に鶉はよく出てくるんです。クセがなくて、
おいしいんです。

▲mozさん、おっしゃるとおり、「月に波」は、こんな狭い空間の波なのに、恐さを
感じるほどに立体感がある動きです。抱一の波は、出光に「波濤図屏風」というのがあり、それは屏風一面に描かれたいろいろな波がリズミカルな動きで、これとは
また違った面白さです。
ようやく交通機関も落ち着いてきましたが、水や野菜の放射能問題まで出て来て、飲食店はどこも閑古鳥なようです。昨日は、25日で金曜なのに、私が行った店も
がらすきでした。

▲Inatimyさん、私は、この数週間前に出光美術館で、其一の「四季花木図屏風」
を見たんですよ。屏風は、大きさがあるから、やはり、本物を見ると感動します。
色、形鮮やかな其一屏風は、遠くからでも、目だっていました。其一の方がモダン
で、デザインっぽいですね。
向日葵も見てくださったのね。そう、ゴッホのひまわりとは、種類が違うでしょ。

▲cocoさん、桜が好きなcocoさんだから、「三月」に目が行ってしまうでしょ。
そう、どれも鳥が、ふっくらと愛らしいんですよ。本物そっくりで、鳴き声が聞こえて
きそうなほどです。こんな景色を見ていたら、一首浮かんできそうですね。

▲雛鳥さん、yk2さんにきちんとお礼を書いてくださって、ありがとうございます。
私も、なるほど、と思うことが多かったです。
by TaekoLovesParis (2011-03-26 13:26) 

Inatimy

この2つ前の「琳派芸術・第二期」の記事ですよね♪
そこにあった「四季花木図屏風」の写真が本の中心じゃなく、
左側にまだありそうだったから気になってたんですよ~。
屏風かなり大きそうですね。
日本にいる間に、和の芸術をもっと見ておくんだった、とつくづく思います・・・。
by Inatimy (2011-03-26 22:18) 

TaekoLovesParis

Inatimyさん、鋭いです!写真が本の中心じゃないから、左側にある、って推測。
そうなんです。左側は秋の楓だったから、省略したんです。実際に会場では、
ふたつが並んでるわけだから、迫力があるのがわかるでしょ。大きさは、ひとつが、
132.8×318.8cm(昔は尺だから、小数点が出ちゃう)
外国にいらっしゃると、和のよさがわかると、皆さんおっしゃいますね。
特に琳派はわかりやすくて、いいですね。墨絵の世界になるとわからないです。
by TaekoLovesParis (2011-03-27 00:54) 

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