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「アンフォルメルとは何か」展 [展覧会(西洋画)]

 ブリヂストン美術館の「アンフォルメルとは何か?」という企画展、
タイトルから、どんな内容か想像がつかなかったが、チケットがあったので、
行ってみた。
「20世紀のフランス絵画、抽象画の流れ」が、わかりやすく示されていて、
とてもよかった。そして、心を動かされる作品がいくつもあった。
7月6日までと会期が残りわずか。遅いご紹介ですみません。

おなじみのセザンヌ、モネの絵で始まる。
「抽象画」も、こういう写実ではない絵がもとになっている。
Cezannne.JPG     MonnetVenezia.JPG


モンドリアンも初期は、点描。「砂丘」1909年   レジェ「抽象的コンポジション」 1919年Mondrian.JPG       Leger.JPG


カンディンスキー「2本の線」 1940年     パウル・クレー「島」 1932年    
Kandinsky.JPG   Klee.JPG
  

 20世紀のフランス絵画の代表がこの絵? と思いながら、見て歩いて気付いた。
これらは、全部、ブリヂストン美術館の所蔵作品。自前のもので、こういう企画を組める
のは、すごいと感心する。

 以上のような幾何学的抽象画に対して、第二次大戦後の抽象画はロマン主義的に
なる。絵の中に作者の訴えたいストーリーがある。

ジャン・フォートリエ(Jean Fautrier)は、1898年パリに生まれ、父の死後、母のいる
ロンドンに転居。第一次大戦では英語が堪能だったため、戦場でさまざまな仕事に
つく。第二次大戦では対ナチのレジスタンスに参加。ナチに処刑された仲間を悼み
制作したのが、「人質」シリーズの連作(大原美術館蔵)。
紙の上に石膏(石灰)をかけて、立体的にしたものもある。
一枚ではなく、シリーズでたくさん並んでいるだけに、虚ろな顔に胸がつまる。

FautrierHitojiti.JPG

フォートリエの「旋回する線」(1963年)
キャンバスの上に紙を丘のように貼り、青い色を塗り、線を描いた作品。
コラージュ風。写真では立体感が伝わらないのが残念。

Fautrier.JPG

 同じく、フランスの戦後を代表する抽象画家は、ジャン・デュビュッフェである。
美術教育をうけない素朴な人たちの視点(アール・ブリュット)で、絵を描いた。

熱血漢(1955年) (徳島県立近代美術館)
                  美しい尾の牡牛(西洋美術館)
Debuffet.png    debuffet.JPG

 熱い血が湧き上がってくる熱血漢、簡単でみごとな表現に感心した。
牡牛の絵は、西洋美術館の常設展示で見たことのある大きな絵。絵の具に土を
混ぜて自然に近い表現をしているそうだが、はっきりは見て取れなかった。
背景の水色が実際は、もっとクリア。
牡牛が空に向かって何かを訴えているかのように見える。

 ニコラ・ド・スタールの絵は、初期はこのように抽象だが、だんだん具象に近く
なってくる。私はド・スタールの色彩が好きだ。グレー中心の初期から、だんだん
黄色使いが多くなってきて、楽しい絵になってくる。さて、その先と思った所、
41歳で自殺してしまう。
コンポジション(1948年)(愛知県美術館)
この絵がチラシに使われていた。
                 DdSteal.JPG

 アンフォルメルとは、informer、非定形のものを意味する絵画運動で、ここから
派生したのが、アメリカのポラックらのアクション・ペインティングと捉え、ポラック、
サム・フランシスの作品も展示されていた。
日本人の菅井汲、堂本尚郎(堂本印象の甥)の作品もブリヂストンは数枚持って
いるので、展示されていた。

 本来は、フォートリエ、デュビュッフェ、ヴォルス、ハンス・アルトゥング 、ピエール・
スーラージュといった「アンフォルメル」の中心的作品が展示される予定だったが、
海外からの貸し出しが難しい状況のため、とりやめになったとのことだった。
スーラージュへのインタビュー動画が流れていた。


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コメント 15

hatsu

カンディンスキー「2本の線」、とっても惹かれます^^
by hatsu (2011-07-02 08:22) 

ぶんじん

初めて一人で美術展に行ったのが中学生の時だったでしょうか。このブリヂストン美術館でした。そして、最初に見た一枚がたぶん、このセザンヌの「サント・ヴィクトワール山」だった記憶が。
震災・原発事故の影響、各地の美術展で企画変更という形でも出てますね。残念です。
by ぶんじん (2011-07-02 10:26) 

バニラ

人質シリーズ、旋回する線、それにジャン・デュビュッフェの絵が好きだなぁ~
観に行こうかな♪
by バニラ (2011-07-02 10:45) 

yk2

taekoねーさん、現代アート好きですよね~(バニラさんも、ですよね^^)。僕にはまーるでさっぱりわからんちんです。

>第二次大戦後の抽象画はロマン主義的になる

うむ~。戦中に様々な不安や不穏な社会を体験した故かしらん?。

もしも時を超えてドラクロワにインタビューが出来るものなら、「巨匠、これらが解りますか?」って訊いてみたいです~。
by yk2 (2011-07-02 11:33) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲hatsuさん、2本の線が交差して領域を作り、って考えると、まさに幾何学
ですね。でも、じっと見てると音楽が聞こえてきそうな感じがします。楽しくて
優しいメロディの、ね。

▲ぶんじんさん、中学生のとき、ひとりで美術展にいらっしゃるとは、落ち着いた
趣味でいいですねー。その頃から絵がお好きだったんですね。初めて見る
セザンヌの山は印象に残るでしょうね。
お目当ての絵が貸し出してもらえず企画変更になったものは、核がないから、
何か物足りなさが残りますね。作品がないのに、なぜ、インタビュービデオと
思ったら、ちらしに絵の写真が掲載されていたので、来る予定だったのね、
とわかりました。

▲バニラさん、デュビュッフェの他にビュッフェもお好きなんですよね。前に
記事になさってらしたでしょ。この企画展示のほかに常設も充実してるから、
見にいらしても、がっかりはなさらないと思います。落ち着いた雰囲気の
ティールームもおすすめで、コーヒー、おかわりできます。

▲yk2さん、バニラさんの方が私よりもっともっと現代アートにお詳しいですよー。
私は現代より、ちょい前、近代くらいまでしか、ついて行けてないんです。

<第二次大戦後の抽象画はロマン主義的になる>戦前は、抽象画=幾何学的
で、それが飽和状態になったから、形のはっきりしないものに移行したのではないかしら。形がはっきりしてないから、ストーリーづけが必要で、ロマン主義的(叙情的)抽象画と呼がれたのでは、と勝手に推測してます。

ドラクロワが解りますかと訊かれたら、「いつの時代にも冒険は必要。アングルくんの
ように静かな昔風の美だけを踏襲してたら、美、アートの世界に発展はないよ。しかし、これは、わかる、わからないの問題外。アートの範疇ではないね。子供の絵のようだよ。こんなのを注文したり買ったりする人がいるのかね」
by TaekoLovesParis (2011-07-02 21:07) 

GON

TaekoLovesParisさん、おじゃまします。

洋画系の知識は殆どないのですが、
1年前に国立国際美術館でルノアールを観ました。
今回のブリヂストン美術館とはコンセプトやテーマが異なりますが、
心を動かされる作品ってありますよね☆

前回の記事のコメントのことで恐縮なのですが、
自分の拙い写真を褒めていただいて
ありがとうございます!
by GON (2011-07-02 23:24) 

よしあき・ギャラリー

あやうく見逃すところでした。
ありがとうございます。(`_´)ゞ
by よしあき・ギャラリー (2011-07-03 06:06) 

匁

アンフォルメルって初めて聞きました。しかし、
油絵を描き始めた頃、
絵の具をナイフで盛り上げたり、削ったり、子供の工作をするように
夢中で描いていました。
そうすることが、水彩と違って油絵だと思っていました。
これも、アンフォルメル の影響だったんですね。
今も、全体には薄く何度も重ねるようにしていますが
県展に出品した絵も、中央の白い部分は
盛り上げてナイフで筋を付けています。(写真では出ていませんが)
この手法効果で、入選したのかも?!
by (2011-07-03 07:02) 

てんとうむし

クレーやカンディンスキーの作品、それに西洋美術館の「牡牛」も常設展で「いいなぁ」と思っていたものばかり。
行きたいと思っていた展覧会でしたが、残念、逃しちゃいました。
Taekoさんのおかげで、行った気分になれて嬉しいな^^
ありがとうございます♡
by てんとうむし (2011-07-04 00:39) 

Inatimy

今の気分ではフォートリエの「旋回する線」かな。
文字が書かれてるみたいで、カリグラフィー練習しなくっちゃ、と、ワクワクしてくる感じ。
ポストカードを買うなら、「美しい尾の牡牛」♪
のびのびしてて、私もちょっと絵を描いてみようかな、なんて気分にさせてくれますね~。
どの絵もパッと見は何の関連もなさそうに見えるのに、アンフォルメルという一言で、
つながりがあるとは。 面白い企画です♪
by Inatimy (2011-07-04 05:49) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲GONさん、知識がなくても、吸い寄せられるように見入ってしまう作品って、
時々ありますね。その絵の持つ力なんでしょうね。

GONさんの記事では、大阪の建物の撮り方の視点がおもしろいですね。
そしてグラバー邸や紅葉の京都の写真も心に残りました。

▲よしあきさん、いつも、いろいろな所に出かけ、ご覧になった景色をきちんと
作品に仕上げていらっしゃる、絵に対する真摯な態度が作品に表れていますね。

▲匁さん、県展の入選作品、 mimimomoさんの大きな写真なら中央の白い
砲弾のような部分の立体感がわかるかと見てみましたが、やはり、写真に
してしまうとわかりませんね。でも、しっかり白い部分に存在感があるのは、
立体だからなんでしょうね。
<この手法効果で、入選したのかも?! >、見る人の目を惹きつける
オリジナリティがあるから、たしかに!ですよ。

▲てんちゃん、展覧会はそのうち、と思っているうちに会期の終わりが来ちゃい
ますね。私も最終日近くに駆け込むのばかりです。喜んでいただけてよかった
です。

▲Inatimyさん、なるほどー、フォートリエのこの作品は、確かに文字のようですね。
私は、立体だったので荷物を紐でグルグル巻きにしているのかと思いました。
「美しい尾の牡牛」は、Inatimyさんに絵を描いてみようかしら、と思わせる
ほど、親しみがありますね。
この展覧会に行くまで、私も「アンフォルメル」という派を知らなかったんです。
by TaekoLovesParis (2011-07-04 21:31) 

いっぷく

福島が展覧会にまで影響を及ぼしているんですね。

素直な気持ちで作品の前に立ち自分に問いかける。
今の自分に何も訴えるものがなければ次の絵の鑑賞を始める。
そうでもしなければ作品に付いて回る情報に自分の感じ方が
ゆがめられてしまうような気分に陥る。
出かけて行って好きな絵が1枚でも見つかれば幸せな気分になれます。
そして今の気分は「コンポジション」に決まりです。

by いっぷく (2011-07-07 15:15) 

りゅう

ブリヂストン美術館、ここ数年行っていないんですよね。。。
ついつい逃してしまって。。。(^_^;)
ここのモネ、ルノワール、セザンヌは、本当に素晴らしい作品ですよね。
それだけでも観に行く価値があると思います。
おっと、忘れるところでした、もちろんデュフィもです。ヾ( ̄ー ̄)ゞ
by りゅう (2011-07-09 00:38) 

TaekoLovesParis

いっぷくさん、東京での展覧会は、震災直後は8割がた中止、その後も、絵を
貸してもらえず中止という企画展もいくつかありました。ようやく最近、普通に
なってきたという状況です。

今の自分に何かを与えてくれる絵、そういうものに会いたいですね。
「コンポジション」、大きな絵でした。しかも絵の前に肘掛つきの椅子が一客
置いてあったんですよ。「どうぞここにすわってゆっくりご覧ください」といわれて
るかのようでした。座って見ると視点も変わりますね。
by TaekoLovesParis (2011-07-11 00:25) 

TaekoLovesParis

りゅうさん、いつでも行けると思える美術館は、ついつい逃してしまいますよね。
りゅうさんは、「ジョルジェットちゃん」がごひいきでしたよね。
ここのティールームは、「ジョルジェット」っていう名前なんですよ。
デュフィの「オーケストラ」ね、私も好きです。
by TaekoLovesParis (2011-07-11 00:36) 

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