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ゴヤ展 [展覧会(西洋画)]

 東京・上野の西洋美術館で開催中の「ゴヤ展」に行った。
1月29日まで開催なので、のんびりしていたら、11月30日までの無料観覧券
をいただいたので、急遽、出かけた。
goya1.jpg

 夏にプラド美術館に行ったので、宮廷画家ゴヤの筆による王室の人々の肖像画
が、ずらっ~っと飾られている大きな円形の部屋の記憶がまだ新しい。
「この王子様の絵、あったわね。それから、このいじわるそうな顔、女王だっけ?」
と、プラドの絵を思い出しながら、M子さんと見て歩いた。
「王室の人を描くのに、こんな意地悪な顔に描いていいのかしら」と、その容赦なさ
に軽い驚きを感じたのだった。

GoyaPrinceOfCarlos4.jpg

 この王子様の絵は、有名な集団肖像画「カルロス4世の家族」の習作なので、
下半分が粗く描かれている。気品ある顔で愛らしい。

 ゴヤが宮廷画家になったのは、50歳を過ぎてからのこと。
ゴヤ(1746~1828)は、スペイン北東部サラゴーサの出身。絵の修業の後、
マドリッドの王立タピストリー工場で、原画の制作をしていた。当時はロココの時代
だったので、こんな図柄。日傘(1777年)

GoyaHigasa.jpg

 タピストリーの原画なので、大きな画面にはっきりとした色で描かれている。
傘で日陰になっている女の顔と輝いている男の顔。女の人の膝にいるのは犬。

 
 
 

 ゴヤの時代以前に、スペインで絶大な人気のあったムリーリョの影響が
はっきり見られる作品は、やはり若い頃のもの。
「木登りする少年たち」(1791年)

goya3.jpg

少年たちの服装が、木に登る子と台になる子で対照的。
力関係が小さい時から、はっきりしていた時代。

「無原罪の御宿り」(1783年)
同じ主題のムリーリョ作品よりもずっと小さい。
背後に神様が見え、マリア様の表情は、ゴヤの方が大人っぽい。

goya4.jpg

 そして、これも横長で書院の間の違い棚の絵のような構図。印象的だった。
猫の表情がはっきり見え、唸り声が聞こえるかのよう。迫力ある作品。
「猫の喧嘩」(1786年)
goya2.jpg

 今回の展覧会の目玉作品は「着衣のマハ」。(1807年)
チケットの絵に使われている。
大きな絵で見応えがあった。近くで見ると服の美しさに目を奪われる。
時の宰相ゴドイの依頼で、まず、「裸のマハ」が描かれたが、それはプラド美術館で
お留守番。モデルはゴドイの愛人と言われている。

 宮廷画家になり、富も名誉も得たゴヤだったが、1808年、ナポレオンのスペイン侵略
により、カルロス4世は捕らわれる。そんな悲惨な時代の版画「戦争の惨禍」シリーズ
から20点が展示されていた。

戦争が始まる前にもゴヤは、社会風刺の版画「ロス・カプリーチョス」シリーズを制作。
そのためのデッサンが展示されていた。「神よお赦しください。それが母親だったとは」
とか「むしりとられて追い出され」「告げ口屋」といったタイトルからもその毒気が十分に
伝わってきた。人間観察への鋭いまなざしは現在にも通用する。
ゴヤは1792年に大病をし、耳が聞こえなくなった。この時から、批判精神が強まった
と言われている。

デッサンや版画は、混んでいると、見えにくいし、暗く悲惨なので、全部、見なかった。

小さいながらも、一番、人だかりがしていた作品。不気味な怖さ、狂喜が感じられる。
「魔女たちの飛翔」(1798年)

司教のとんがり帽子をかぶった3人の魔女たちが、裸の男を抱え、天に昇って行く。
下には白い布をかぶって両手を前に差し出し救いを求める男。恐れて地に伏せる男。
解説を読んでもよくわからなかった。きっと何か、ストーリーがあるのだろう。

 「聖フスタと聖ルフィーナ」(1817年)
セビリア大聖堂の聖杯室の主祭壇のための下絵。
うしろに、セビリア大聖堂の「ヒルダの塔」が見える。
この夏に行ったばかりなので、「あ、ヒルダの塔!」とうれしかった。

goya5.jpg


 本家プラド美術館の規模からすると、「これだけ?」という少なさだが、ひとつ
ひとつが、見ごたえのある作品なので、満足できる展覧会だと思う。
オススメです。


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コメント 15

匁

「着衣のマハ」をブラド美術館で見られて、今度、国立西洋美術館でまたまた見られるって素晴らしいですね。
「裸のマハ」はお留守番らしいですが、そんな姿で来客があればどうするのかな???。

「魔女たちの飛翔」のサイズは 40.5×30.5cm(F6号) たしかに家で見ても小さいです。
ちなみに、マハ は97×190cm(M120号) ですね。これを2枚並べると壮観ですヨネ。
by (2011-12-23 10:09) 

kazy-m

僕がプラド美術館に行ったのは、15年も前のことですが、黒い部屋の衝撃は今でも鮮明に覚えています。
Taekoさんのおっしゃるように、プラド美術館に比べるとこれだけという感じは否めませんが、その時に見れなかった、忘れてしまった作品を見られ、ゴヤの作品を再認識できました。
by kazy-m (2011-12-23 17:34) 

moz

ゴヤいかれたんですね。じぶんも来年早々には行く予定にしています。本日、フェルメールの初日にBunkamura に行ってきました。ようやく、絵を見る気力がわいてきたみたいです。ゴヤも楽しみです。
ブラド美術館で見られているのですよね。じぶんはフェルメールをこの前京都で見て、今日、渋谷で見ましたが、展示する場所によって感じもだいぶ違うのだと思いました。きっとTaekoLovesPariさんも、そんな感覚をもたれたんではないかなと思っています。そういう意味では、やはりその絵のもともとあるところで見るのか一番の鑑賞方法なんでしょうね。
それでも、ゴヤ、見に行くつもりです。
予習させていただけました。ありがとうございます。
ムリーリョも良いですよね。暖かい感じ好きです。
by moz (2011-12-23 18:15) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲匁さん、この絵は、絵の依頼者の宰相ゴドイの家にあったそうです。
愛人がおおっぴらに認められていた時代だったからでしょうね。
愛人だから、着衣でも、室内着のようなこの衣装なんでしょう。
来客は召使が「お待ちくださいませ」と引き留めておいてくれるから
大丈夫ですよ。
120号でしたか。2m近くある絵には、それなりの場所が必要ですね。

▲kazy-mさん、プラドの「黒い絵」ばかり集めた部屋ですね。
「わが子を食らう」絵は、見たとたん恐怖でした。なんでこんな絵を
描くのだろうって思いましたよ。ゴヤの一生を見ていくと、わからなくは
ないけれど、共感は覚えません。
この展覧会は、点数が少ないけれど、各時代のものを集めているので、
ゴヤの一生が見える気がしました。
by TaekoLovesParis (2011-12-23 21:11) 

ムーミン

こんばんは♪
ゴヤ展、いいですね。12月に東京へ行く予定だったので、行ってたら観られたかも・・・・でも、こうやって観られて良かったです^^
ブラド美術館で観てから、また東京でも・・・いいですね。
大きな絵は見応えがあったでしょうね。
by ムーミン (2011-12-23 21:42) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲mozさん、以前に記事で、ゴヤ展のチケットをいただいた、と書いていらしたので、いいなぁと思っていたら、私も手に入りました。
新しくなったBunkamuraで、フェルメールをご覧になったのですね。
初日にいらっしゃるのがお好きなmozさんですものね。
私も行こうと思っています。絵は置く場所が違うと違って見えるだけでなく、
同じ絵でも、何年かたって見ると、新しい発見があったりしますね。
ムリーリョ、実は、私も好きなんです。

▲ムーミンさん、<でも、こうやって観られて良かったです^^>
→ こういうコメントいただくと、うれしいです。
大きな絵を適切な照明でゆったり見れるのは、美術館だからこそ、ですね。
by TaekoLovesParis (2011-12-23 22:01) 

あるふぃん

こんばんは
西洋美術館ではゴヤ展があっているのですね~
20年以上前ですが「着衣のマハ」「裸のマハ」どちらもスペインで観賞しました。
美術館内で写真OKだったので驚いた記憶があります。
(日本では駄目ですよね~)
しかし、もう20年も経っているとは・・・@@
またスペインに行きたくなりました~笑
by あるふぃん (2011-12-24 19:06) 

てんとうむし

Taekoさま、Merry Christmas!!
ここのところ、あっちへ行ったりこっちへ行ったりでなかなか落ち着いて美術館へ行く時間がありませんでしたが、Taekoさんの記事を拝見して、お正月休みには久しぶりにゆったりと絵画と向き合ってみたいな、と思いました。
Taekoさんのクリスマスディナーの記事も楽しみです^^
by てんとうむし (2011-12-24 23:02) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲あるふぃんさん、外国の美術館は、フラッシュなしなら撮影OKというの
多いですね。でも、オルセー美術館は今年行ったら、撮影禁止になって
ました。きっとマナーの悪い人がいたんでしょう。
プラド美術館は、1m以上の大きな絵が多いから、写真を撮るのは、大変
かもしれませんね。
パリもいいけど、スペインもいいですよね。

▲てんちゃん、MerryChristmas!
美術館はゆったりとした気分になれていいですね。
お正月は、渋谷Bunkamuraのフェルメール展が良さそう。
クリスマスディナーは、弟の家で、でした。


by TaekoLovesParis (2011-12-25 23:20) 

チョコローズ

私も先日見に行きました。年内にアップしたいです。
知識不足の私には少し難しかったけど、着衣のハマの画は良かったです。
あれなら素人にもわかります(笑)
by チョコローズ (2011-12-26 00:42) 

Inatimy

ゴヤは、銃を向けられる市民の姿とか、人食いの巨人の絵とか、血なまぐさい印象が強くって、
しかも、その人食いの絵を食堂に飾ってたって話だから、何て趣味なのかしら・・・
・・・って思ってましたが、「聖フスタと聖ルフィーナ」はいい感じかも♪
でも、やっぱりムリーリョの方が安心できて好きだなぁ。
魔女が司教のとんがり帽子をかぶってるのも、なぜなんだろうって気になりますねぇ。
by Inatimy (2011-12-26 07:26) 

りゅう

「魔女たちの飛翔」見応えありますよね。
06年のプラド美術館展(東京都美術館)のとき、とても印象的だった作品です。
このおどろおどろしさというか不気味さが、ゴヤって感じがします。
この展覧会はパスすることになりそうなので、
Taekoさんのところで楽しませていただきます♪
あ、ハダカじゃないから観に行かないわけじゃぁあ~りません!ヾ( ̄ー ̄)ゞ
by りゅう (2011-12-26 22:55) 

hatsu

王子様のお顔、愛らしいですね。
女の子かと思っちゃいました^^
『無原罪の御宿り』、素敵ですね。
優しい色合いに、心が癒されました。
by hatsu (2011-12-27 06:31) 

baby_pink

王子様の着ているお洋服の色合いや柄、
そっくりなセーターを私も持っているので
思わず、あれ?(・_・)って嬉しくなってしまいました✿

繊細かつ荘厳的な雰囲気に、心もゴージャスになれますね。
私も実際に観に伺いたくなりました。

Taekoさん、寒さも厳しくなってきましたので
くれぐれもぽかぽか暖かくして優しい年末をおすごしください^^
by baby_pink (2011-12-27 12:14) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲チョコロさん、チョコロさんの「ゴヤ展」記事読みました。
率直な感想でおもしろかったです。
グッズとして売ってるカカオサンパカの板チョコ、やっぱり食べてみたいと、
通信販売を調べたら、もう売り切れてました。

▲Inatimyさん、「社会派ゴヤ」の絵は、見るのが辛いですね。そういうのに
背を向けてはいけない、って言われ、そうだな、とは思うのですが。。。絵は
飾る所を選びますね。「社会派」の絵は、街中でポスターとして、人々の目を
覚まさせるのは最適だけど、食堂は。。
ムリーリョは、貧しい人々を描いても顔に品がありますね。

<魔女が司教のとんがり帽子をかぶってるのも、なぜ>
→ 私も気になって調べたのですが、納得のいく説明ではなかったので、
忘れちゃいました。なるほどね!と思ったものは覚えてるのですが、そう?
、って思うと、覚えてられないんです。

▲りゅうさん、「魔女たちの飛翔」は、06年のプラド美術館展にも来てたんですね。
私も見覚えがあるけど、小さい絵だから、プラドで見たのを覚えてるわけでなく、、、って考えていたんですよ。りゅうさんの記事を見て、都美術館で見たことを
思い出しました!記事が丁寧に書いてあると、こういう時いいですね。
このプラド展に比べると、今回はスケール小さいですから、りゅうさんのパスも
納得。ハダカじゃないからって(笑)、りゅうさんはきれいな楽器を持った
おねえさんに目下関心が集中してるの、ちゃんとわかってますよ。

▲hatsuさん、そ、王子さま、さすが、品が違いますね。いじわるゴヤだから、
無垢な王子さまは、きりっとかわいく、王族でも大人には容赦ないんですよ。
「無原罪の御宿り」は、たいてい衣装がブルーと白(何か意味がある?)。
色の対比が清純な感じできれいですね。

▲pinkさん、わ、すてき、手のこんだセーターですね。確かに似てるものを
持ってると、はっとしますよね。
この展覧会では、やはりポスターの「着衣のマハ」が、群を抜いてよかった
です。それと初期のタピストリー下地の明るい作品。社会派部分はつらい
ですが、デッサン力はすごいです。清濁あわせ飲んだような展覧会です。

pinkさんも、おふたりで初めての年末、働きすぎてダウンしないようにね。
by TaekoLovesParis (2011-12-28 13:30) 

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