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ザ・ベスト・オブ・山種コレクション展 [展覧会(日本の絵)]

  フェルメール展に行ったので、その記事を載せようと思っていましたが、
フェルメールは、3月14日まで。山種コレクションは2月5日までなので、
こちらを先にします。

 山種美術館は、創設者の山崎種二氏のコレクション用の美術館。
山崎氏は、ヤマタネ証券を設立した人。絵が好きで、初めて買った絵が
酒井抱一の作品だったが、これが偽物だった。以来、物故作家ではなく、
同時代の画家の作品を本人と親交を持って買うようになった。

 山崎氏が応援したのは、38歳で院展入選という遅咲きの奥村土牛。
「鳴門」は、やさしく淡い色合いだが、ひきこまれそうになる渦の表現が
すばらしい。

鳴門.jpg

 桜の季節にいつも公開される「醍醐」。醍醐の桜の淡いピンクは
見ていて飽きないし、幹の色重ねの表現、後ろの土塀とのバランスが
静けさをよぶ。何度見てもいい絵。

 姫路城を見上げる構図で描いた「城」の立体感は、日本画にはない
雰囲気で、セザンヌの影響を受けたというのがわかる。青が美しかった。

 東山魁夷の「歳暮る」
暮の京都の街並みを、京都ホテル(現ホテルオークラ)から眺めて描いた。
手前が高瀬川。川端康成に、「京都の街並みを描いておかないと、今に
こういう景色はなくなってしまう」と言われて描いたそうだ。

歳来る.jpg

 魁夷の「満ち来る潮」は、横幅9mの大作。皇居に飾られているものと
同じようなものを、と、山種氏が注文して描いてもらったそうだ。
薄い緑色の海、岩に当たってはじける波の飛沫を金、銀で表現している。

 川井玉堂の「早乙女」(1945年)。日本画らしい色合いと雰囲気。
昔は、こんな風景がありふれていたのだろう。のどかさを感じる。
右上、あぜ道に「たらしこみ」が使われ、アクセントになっていた。
玉堂早乙女2.jpg

 福田平八郎の「筍」。背景の地面に散っている竹の葉が一つ一つ
趣が違い、現代のグラフィックデザインに通じるものを感じた。
筍の黒い皮、元気な緑の葉が目に残る。

筍.jpg

 山口蓬春の「卓上」
不思議の国のアリスを思い出すような、日本画としては変わった作品。

山口逢春 卓上.jpg

 展示は、時代順になっているので、最初は、小林古径の「静物」1922年。
古径唯一の油絵とのことだったが、背景が単色で、薄塗りだったので、
ぱっと見、油絵に見えなかった。
古径の作品は、どれも気品と静けさがあるので好きだ。

 この美術館は、速水御舟作品をたくさん持っている上、館長さん
(創始者の孫娘)が御舟の研究者なので、御舟用には別室があった。
重要文化財の「炎の舞」。日本画なのに、洋画の象徴的雰囲気も持つ
作品。軽井沢の別荘で、たき火をした時に、集まって来た蛾の舞う姿を
描いている。赤が美しい。
御舟炎舞1.jpg

御舟の金地の屏風「翠苔緑芝」の紫陽花の花や琵琶の葉も印象に残る。
季節がら、紅梅、白梅それぞれの梅図の若木からすくっと伸びる端正な
枝の姿にも惹かれ、桃の花のふくよかさも美しかった。

 この美術館が恵比寿に移動してから、来たのは2回目だけど、ふらっと
何回来ても、背筋が伸びる気がする。

 喫茶室もあるが、閉館時間の5時だったので、ここから、恵比寿に
向かって200mほど歩いた所の新しいワインバー「夜木」に、友達が、
雑誌で見たから行ってみたい、と言うので、入ってみた。
カポーティの短編集「夜の木」から名前をとったそうだ。都会の孤独に
ついて書いた短編なので、この店もそんなコンセプトなのだろう。
ワイン1杯400円。一回ごとにお金を払うキャッシュ、、、システム。
夕食を予約した店が6時からなので、ここで、軽くアペリティフのつもりが、
居心地がよく、パテがおいしかったので、さらに、もう一杯、チーズも、、
と5杯。奥では、ちゃんと食事もできるようになっていたので、「今度は
ちゃんと食べに来ます」と、店を出た。
                        *後日、行った記事はこちら                                                               

yogi.jpg


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よしあき・ギャラリー

好きな美術館で、時々行ってます。
by よしあき・ギャラリー (2012-01-15 06:16) 

yk2

へ~、山種のすぐそばにそんなワインバーが出来たんですか。面白そうですね。
#文芸ワインバーなの?(笑)。

それにしても、C.O.Dだと、ねーさんはそれはそれは何杯もお飲みになられるから、いちいち大変でしょうに。一体何度お財布を出さなきゃいけないやら、ねぇ・・・(笑)。
by yk2 (2012-01-15 09:37) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます。
▲よしあきさん、お好きな美術館ですか。よしあきさんの作品のヒントがたくさん、
あることでしょうね。

▲yk2さん、都会の孤独を受け止めるようなバーっていうコンセプトなんだと思います。文芸の香りはなかったけど、オーナーが、カポーティを好きなのかしら?
1回ごとにお金を払うのは、C.O.Dっていうんですね。こういうの初めてでした。
いつもお金は友達がまとめて払って、後で精算してます。


by TaekoLovesParis (2012-01-15 10:27) 

ぎーこ

会期中に上京する機会がありますので伺ってみます!
日本画はあまり詳しくないのですが、
すごく魅力的な展覧会みたいですし。
嬉しい情報をありがとうございました。
by ぎーこ (2012-01-15 11:16) 

匁

先ほどnhk日曜美術館でこの展覧会を紹介していました。
既に観覧されたんですね。
「炎の舞」が特に印象深かったです。
蛾が絵の題材になるなんて、標本以外には
珍しく、面白いですね。
by (2012-01-15 13:18) 

ムーミン

遅くなりましたが、今年も宜しくお願いします♪
山種コレクションは、力作が揃っているんですね。
美しい色で、印象的な絵に惹きつけられそうです。

フェルメールも行かれたんですね。そちらも楽しみです。
by ムーミン (2012-01-15 16:51) 

バニラ

わたしも日曜美術館アートシーンで、この展覧会の紹介を見ていました。
「筍」が印象深かったのですが、東山魁夷の「歳暮る」も玉堂の「早乙女」も山種のコレクションだったのですね。 
大人のバー、 わたしも足を踏み入れてみたい~
by バニラ (2012-01-15 17:39) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲ぎーこさん、日本画って、くわしくなくても、名前だけ知ってる作歌がいたり
しますね。こぷいう絵を描く人だったのね、ってわかったりしました。
小倉遊亀の「涼」、京都の芸者の置屋のおかみさんが夏の着物姿で、何か
話してる絵ですが、ものすごく、いきいきとしていました。東山魁夷の「歳暮る」
も、ぎーこさんがご覧になれば、あれはあそこ、ってすぐおわかりになると思います。
醍醐寺、永観堂、と、京都が主題の絵がいくつもありました。
ベーグル、パンケーキを見ると、ぎーこさんのお名前が浮かびます(笑)

▲匁さん,私も「日曜美術館」のアートシーンを見てうれしくなりました。
「炎の舞」は、近寄ると蛾ですが、遠くから見ると、蝶に見えます。この絵は、
炎の赤の色もすばらしいです。

▲ムーミンさん、山種美術館は、以前は、千鳥が淵のそばにあったので、
お花見の季節にいつも桜の花の展覧会をやっていて、好評でした。
ここに移ったので、東山魁夷の9mの絵も展示できるようになったそうです。
フェルメールもよかったです。

▲バニラさん、小野竹喬の「沖の灯」がありました。小野竹喬を初めて知ったのは、
バニラさんの記事だったので、その絵の前にたったとき、「バニラさん!」って
思いましたよ。わかりやすくかわいい絵で、色遣いもよかったです。
by TaekoLovesParis (2012-01-16 01:17) 

Inatimy

『卓上』の絵を見て思い出したのは、アンリ・マティス。 
マティスの描く絵にもよくテーブルが登場しますよね。
カポーティは、『ミリアム』という作品を読んだことがあります。  
英語だったから辞書を引きつつ、かなり苦労したけれど、
その分ん想像が膨らんじゃってストーリーちょっぴり怖かったな。
短編集「夜の木」に入ってた話で、そう、そう、年老いたご婦人の都会の孤独から起きた話でした。
by Inatimy (2012-01-17 17:23) 

baby_pink

『鳴門』ふんわり優しい¨綿あめ¨のような
ふわふわした淡いグリーンのような毛糸のような
優しい雰囲気の中にも、渦の中に引き込まれそうな表現に
ハッと息をのむ思いがしました。

それから、『歳暮る』は、夜が明ける頃の新しい一日の
はじまりを感じさせる景色の中、冬のシンシンと降る
雪が、不思議と柔らか・温かに感じられます。
何故かな~?って考えてみたら、今、私が炬燵に入りながら
おの『歳暮る』を見ているからだわ✿と気が付きました^^うふふ。

共に、自然の厳しさ、優しさを実感しました。
やっぱり、自然、そして芸術って素晴らしい!

taekoさん、いつも素敵な時間をありがとうござます^^
今日はとってもいい日になりそうです♪がんばります。


by baby_pink (2012-01-18 06:49) 

TaekoLovesParis

Inatimyさん、私も「卓上」を見て、マティスを思い出しました。シカゴ美術館で見た「テーブルの上のりんご」を思い出したのです。有名な絵、金魚鉢も丸いテーブルにのってましたね。中央のメダルの女の人がトランプのクイーンに見えて、不思議の国のアリスと、考えたりもしました。

カポーティは、20代の頃、好きでした。「ミリアム」が短編集「夜の樹」にはいって
るんです。ミリアムの怖さって、想像がひろがっていく怖さ、雪の日という設定も
夢か幻か、幻想的ですね。この幻想部分が大きいのが、「ティファニーで朝食」かなと思ってます。深層心理をついてるんでしょうね。でも原文でお読みになったとはすごい。表現のみごとさに定評のあるカポーティだから英語で読んでこそ、価値がわかると言われたことがあります。数年前「冷血」が映画化されたんですよ。主演の人が上手くて、カポーティにそっくりでした。

by TaekoLovesParis (2012-01-18 20:31) 

TaekoLovesParis

pinkさん、私も鳴門の色合いと力強い渦が、新春にふさわしいかなと、一番上に
もってきました。海の色の若草っぽい緑色は、春の色にも通じる気がして。
「歳暮る」は、静かな静かな絵。pinkさんのおっしゃるように、大粒なのにやわらかい雪ですね。お炬燵でノートPCですか。足元が温かいと幸せを感じますね。そうじゃ
なくても、幸せなpinkさんでしたね。うふ。
この絵を見ると、冬の京都も行ってみたくなります。
自然の美しさ、はかなさを絵で表現できるって、すばらしいですね。
by TaekoLovesParis (2012-01-18 20:45) 

nyonyo

私も観てきました。そうそう、アートシーンも見ました!ザベストオブとあって、どれもよかったですネ♪
by nyonyo (2012-01-20 14:20) 

TaekoLovesParis

nyonyoさん、いらっしゃいましたか!満ち来る潮のような9mの大作や御舟の屏風をゆったりと見れるのは、この美術館ならでは、ですね。新しい建物ならだからこそ、と思いました。
ほんと、ベスト版の名に恥じないですね。

by TaekoLovesParis (2012-01-20 20:28) 

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