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フェルメールからのラブレター展 [展覧会(西洋画)]

 渋谷の東急Bunkamuraでやっている「フェルメールからのラブレター展」は、
フェルメールの手紙を主題とする絵が3点見られる展覧会。

 3点は、どれも手紙が主題の日常生活を描いた作品。
広い会場に3点だけでは、ということで、同時代(17世紀)の生活を描いた風俗画が
約30点展示されている。

会場に入って、一枚目の絵を見て、同行の友達は?と見渡すと、もう、はるか向こう
にいる。早すぎ~(笑)。解説の字は読んでないな。

メインはこの3点。
左から「手紙を書く女と召使い」1670年頃
「手紙を読む青衣の女」1664年頃    「手紙を書く女」1665年頃

Vermeer1.JPG

 これらの絵が描かれた17世紀のオランダは、船で世界に乗り出していた黄金期。
識字率も高く、手紙のやりとりがふえた時代だった。
どの絵も室内なので、家具や床、掛け布、壁の絵などから当時の生活が窺える。

「手紙を読む青衣の女」は、オランダが、ほとんど貸し出しをしない大切な作品。
今回、修復を終え、日本に初登場で注目されている。
会場で見て、「あれっ?」と思った。壁が白い!
以前にオランダの国立美術館で見た時は、壁が薄暗い白だった。
修復できれいになったと、はっきりわかる。服の青も際立って見える。

↓ オランダ国立美術館へ行った時のチケット。
壁の色、真っ白ではありませんよね。

RIJKS青衣.JPG

 近づいて絵を見ると、手紙を読んでいる女性の表情から、どんな状況なのかが
見て取れる。恋人からの手紙を、口を少し開いて、つまり声を出して読んでいる、
とか、後ろに世界地図があるので、恋人は遠い所に旅をしているのね、この頃の
女性の服は、スカートが広がっているけれど、、、でも、お腹が大きいのかしら、
ということは、恋人ではなくてご主人ね、と想像がふくらむ。
シンプルな色づかい、柔らかな光。

 「手紙を書く女」の女性の黄色の衣装は、フェルメールの他の絵にも登場する。
袖や襟に斑点模様の毛がついた特徴ある服。フェルメール没後の財産目録に
「黄色のサテンのガウン、白の毛皮縁付き」とあったそうだ。* フェルメールの
所持品、すなわち絵にポイントを与える服だったとわかる。
絵の中の女性が、澄んだ瞳でこちらを見つめているようで、どきっとする。

 「手紙を書く女と召使い」は、2008年のフェルメール展にも来た作品。
一心不乱に手紙を書く女性、床に落ちている手紙、窓の外を曰くありげな表情で見つめる召使い、壁にかかっている「川から救いあげられるモーセ」の絵、と、
何か深刻な物語がありそう。

 

 さて、友達が素通りした風俗画は、フェルメール展に抱き合わせ展示されることが
多いピーテル・デ・ホーホの「中庭にいる女と子供」。フェルメールは、初め、ホーホ
の構図を参考にしていた*。奥行きのある落ち着いた絵。(左)
ヘラルト・テル・ボルフ「音楽の仲間」(右)。フェルメールはボルフの横向きの肖像画
を単独の人物クローズアップの参考にしたそうだ*。

中庭.JPG   音楽.JPG

 コルネリス・デ・マン「薬剤師イスブラント博士」
机の上の本、地球儀、ヴァイオリンが博士の博学多才ぶりを示している。
この時代の絵によく描かれる「どくろ」は、人間の生のはかなさを示す教訓。
日本風のガウンは、フェルメールの「地理学者」も着ていたと思い出す。

Fe薬剤師.JPG

 フェルメールの前でしか立ち止まらなかった学生時代の友達は、ずっと前に
出光美術館に私を誘った人なので、絵に興味があるのかと思ったら、日本画を
たま~に見るだけなんですって。フェルメールの名前が有名だから、見てみようと
思ったとのこと。

「レストラン予約してあるから」と連れて行ってくれたのは、青山に新規開店の
オーガニックレストラン。つまり有機野菜と発酵食品を使った和食。
からだに良さそうなので、がんばって食べたけど、納豆と梅干しはムリで、友達が
食べてくれました。

 (*部分は、「謎解きフェルメール」小林頼子、朽木ゆり子著を参考)


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yk2

新装なったBunkamuraでのフェルメール、早速お出掛けになったんですね。
相変わらず、よく事情を知らない人には全部がフェルメール展みたいなタイトル付けてるのが何だかなぁ・・・(^^;な部分は有りますが、今回は展示作品が3点「も」有って、これは素直に有り難がらなくっちゃいけないんでしょうね(苦笑)。
加えて今日から2月3日まで限定のオマケで(?)、ル・シネマにて『真珠の耳飾りの少女』も上映されるそうで、DVDで観ちゃった作品ではあるけど、展覧会ついでにあの映像美を大きなスクリーンで再鑑賞するのも悪くないかなぁ~なんて思い始めてます(^^。
by yk2 (2012-01-21 07:56) 

angie17

Taekoさん、納豆と梅干が苦手なのですか?
あらまぁ・・・。
青山のお店って、もしかして(た★な食堂?)
行ってみようかと思っていたの・・。
by angie17 (2012-01-21 12:19) 

TaekoLovesParis

angieさん、当たり!そこです。ログハウスで落ち着いた空間。普通の人にはとってもおススメです。私は、「ごはんとみそ汁」でなく、「パンとハム」で育ったので、偏食なんです。
みそはあまり得意じゃないんだけど、ここのみそ汁は、麦みそなので、特別な風味でコクもあり、玄米に合いました。
私が食べた「た★な定食」は、何種類ものお料理に、有機ビールとスイーツ付きで、よかったです。2500円くらい?
by TaekoLovesParis (2012-01-21 12:50) 

TaekoLovesParis

yk2さん、昨年の「フェルメールの地理学者とフランドル絵画展」のときは、フェルメール作品ひとつだけでしたものね。今回は3点。フェルメールを見るたびに、同時代のフランドル派の絵を見るので、いつのまにか、ピーテル・デ・ホーホやヘラルト・テル・ボルフなどのフランドル派の画家が馴染みになってます。

地理学者を見に行った時は、ル・シネマで「私を離さないで」を見たけれど、軽い展覧会と映画の組み合わせは、よいですね。しかも同じフェルメール。「真珠の耳飾りの少女」のぱっと振り向いて、こちらを見る眼差しと、「手紙を書く女」の眼差しは、似ている気がします。どちらもとっても魅力的。特に男の人は、こういう眼差しで見つめられたら、まいっちゃうでしょう(笑)。美少女スカーレット・ヨハンセンを大画面で見てください。
by TaekoLovesParis (2012-01-21 14:37) 

好(ハオ)くん

Taekoさま、おひさしぶりです。
父がフェルメールの「牛乳を注ぐ女」がこの世で一番美しい絵だと言ってきかないんです。札幌にはなかなか展覧会がないので、ご覧になれて羨ましいです。
私も納豆が苦手ですよ★
by 好(ハオ)くん (2012-01-22 19:46) 

匁

匁も展覧会場では解説文は
読みません。
そして、前座の絵も見なように、通り過ぎる
くらいにして、メインの絵だけを何度も見て
その印象をお土産に持って帰れるように
心がけています。
こんなのはダメでしょうか???

納豆と梅干しはダメですか?!
毎朝食べていますヨ。

by (2012-01-22 21:38) 

ぶんじん

フェルメール展、とっくの昔に始まっているんですよね。私も観に行かねば。
そうか、やっぱりこの青い服の人はご懐妊中なんですね。身重で旦那の帰りを待つのは大変そうだなぁ。
by ぶんじん (2012-01-22 23:10) 

TaekoLovesParis

好くん、おひさしぶり。そういえば、海外展の巡回は、札幌に行きませんね。
電車に乗って簡単に見に行けることを有難く思わないと、ですね。
お父様は、フェルメールがお好きなんですね。好きな絵があると人生が楽しく
なると思います。
納豆は、両親とも嫌いだったので家で食べたことがなかったんです。 好くんも
ムリなんですね。

by TaekoLovesParis (2012-01-23 00:33) 

TaekoLovesParis

匁さん、いろんな見かたがありますよ。匁さんもこの友達と同じく一点集中派ですか。前座(笑)、まさにそうですね。匁さんは、きっとご自分の絵に参考になさることを考えていらっしゃるから、必要なメインだけ、なんでしょう。私は解説を読むのが、
好きなんですが、混んでいるときは、字が見える所まで行くのが大変だから、割愛します。
匁さんの朝食はごはんなんですね。納豆も梅干しも体にいいんですよね。でも、なじめなくて。。
by TaekoLovesParis (2012-01-23 00:46) 

TaekoLovesParis

ぶんじんさん、ご懐妊説と、この時代の服はスカートがふくらんでいたという説と
2つあるんだそうです。身重の方がドラマティックでいいですよね。
さくっと見終わってしまうので、見るのにあまり時間は、かかりませんでした。
by TaekoLovesParis (2012-01-23 00:49) 

Inatimy

現存する作品が30数点と言われてる中、作品3つ揃うのは、素晴らしいかも。
アムステルダム国立ミュージアムに行くたびに、どれか貸し出し中だったから、
海外あちこちで人気なのが分かりました。 ルーブルでも貸し出し中だったし・・・。
でも、手紙関連のテーマなら、もう一点、『窓辺で手紙を読む女』もあったらなぁ。
『手紙を読む青衣の女』明るくなりましたね~。 オランダの光じゃないみたい。 
思い出したかのように自分のフェルメールの過去記事も読み返し、
久々に『真珠の耳飾りの少女』DVD観てみたくなりました。
by Inatimy (2012-01-23 17:33) 

kazu-m

長野市の東山魁夷館にも多くの京都の絵が展示されていますが、そこにも”「京都の街並みを描いておかないと、今にこういう景色はなくなってしまう」”言葉が添えられています。
フェルメールのラピズラリから作ったという、青が一段と冴える光の使い方ですね。
他の絵に比べると、光の使い方も随分明るいような気がします・
来月観に行く予定なので、今から楽しみです。
by kazu-m (2012-01-23 21:39) 

TaekoLovesParis

Inatimyさん、2008年だったかしら、東京上野の西洋美術館で大掛かりなフェルメール展があって、7点展示されたんです。今回の3点は、それに次ぐ規模でしょうね。
「窓辺で手紙を読む女」ドレスデン美術館のも東京・上野に来たことがあって、私はその時買ったファイルをいまだに使ってます。
私もInatimyさんのところで、フェルメールのカテゴリーから3記事と、秋旅の記事、
もう一度、読みました。きちんと調べてらっしゃるから、読み応えがありますね。
映画の「真珠の耳飾りの少女」と絡めての現在の写真、旅へのいざないですね。デルフトに行かないと!って思っちゃいます。
by TaekoLovesParis (2012-01-23 23:22) 

TaekoLovesParis

kazu-mさん、魁夷の美術館が長野県にあるんですね。調べてみたら、お母様が長野に疎開なさっていたので、一時、住んだのですね。川端康成と親しかったから、
「今、描いておかないと、、」と言われたのでしょうね。川端は「美しい日本」を誇りにしていた人ですものね。
ラピズラリのフェルメールブルー、とても綺麗ですよ。ご上京、楽しみですね。
by TaekoLovesParis (2012-01-23 23:35) 

チョコローズ

Taekoさんのフェルメール展の記事お待ちしていました。
しっかり解説していただけるので、これ読んでから行こうと思っていました。
今年はフェルメールの当り年だそうですね。
6月には「真珠の首飾りの少女」が初来日するとか。「真珠の耳飾りの少女」も見れますね。
でもまずはこちらの3点をしっかり見て参ります。フェルメールブルー楽しみです。
by チョコローズ (2012-01-24 00:59) 

TaekoLovesParis

チョコロさん、フェルメール作品は、そんなに大きくないけれど、存在感は十分です。
現存するもの35枚の中でも、この3枚はすばらしいです。(ぱっとしないのもあるんですよ) 6月来日の「真珠の首飾りの少女」は、「手紙を書く女」と、同じ黄色のガウンを着てますよ。
「手紙を書く女と召使い」は2度も、盗難にあったけれど、無事、戻ってきたという曰くつきの絵です。
少し、知識を入れてから見に行くと、面白さが増しますね。


by TaekoLovesParis (2012-01-24 20:10) 

てんとうむし

銀座にはフェルメールセンターもオープンしたし、今年は当たり年なんですよね^^
いろいろ楽しみです♡
by てんとうむし (2012-01-24 22:14) 

kazu-m

魁偉のお母さんが、長野に疎開されていたというのは初めて知りました。
魁偉が大学生のときに、木曽(長野県山口村、現岐阜県中津川市)で豪雨を逃れ、見ず知らずの方の泊めてもらった夜に見た風景(その時の景色が有名な「月明かり」)で、魁偉の画家として決心がつき、その後も数多くの絵を長野で描いたことが縁となって、多くの作品が長野県に寄贈されたと聞いています。
魁偉の描く青も素晴らしく大好きです。
同じ光を受けながら、フェルメールは「輝きの青」、魁偉は「静寂の青」でしょうか。
東山魁夷館は、車で1時間ほどなので、季節を変えながら年2~3回行きます。
by kazu-m (2012-01-24 22:36) 

TaekoLovesParis

てんちゃん、銀座のフェルメールセンターは、オランダの観光局主催で、7月までと、
期間限定でしたね。
てんちゃんは、デルフトにいらして、新教会、旧教会、市場と巡る旅をなさったから、フェルメールの絵への思いもいっそう、でしょうね。
by TaekoLovesParis (2012-01-26 22:20) 

TaekoLovesParis

kazu-mさん、木曽には魁夷のそんな思い出があったのですね。そして車で
らくに行かれる場所が美術館とは、いいですね。
青は、とても幅広い色ですね。この展覧会でフェルメールブルーを堪能なさっていらしてください。
by TaekoLovesParis (2012-01-26 22:27) 

hatsu

『真珠の耳飾りの少女』を去年観てから。
フェルメールの作品を、
いつか観に行きたいなーって思っていました^^
3月までなんですね、行ってみまーす♪
by hatsu (2012-01-27 06:35) 

TaekoLovesParis

hatsuさん、映画をご覧になっていらっしゃると、時代背景もわかるし、画家フェルメールに親しみを感じますよね。あの時代に描かれた絵を今、こうやって見ることができるというのもちょっと感動。同じ時代の他のオランダ絵画も解説を読みながら、見ると、なるほどと興味がわきますよ。服装も独特で面白いですね。
by TaekoLovesParis (2012-01-27 21:15) 

moz

手紙を読む青衣の女の背景はやはり綺麗になっているんですね。
以前に見られたときとの比較ができて興味深かったのではないでしょうか。たくさん見られているとこういう見方もできるんですね。
この女性、妊娠しているという説と、そうではなくてこういう服なんだと言う説があるようです。どちらを取るかによって、絵から受ける印象も変わりますね ^^
今年は6月が楽しみです。フェルメールが目白押しですね。
by moz (2012-01-29 14:50) 

うさぎ

私もこれ、京都で見てきました。
3枚しかなくても目の前でじっくり見れて幸せだった~。
今パリなのですが、新しくなってオルセーにちょっとがっかりして
帰ってきたところです。
みずらいし、なんかみんなガラスかけちゃって。。。
by うさぎ (2012-01-30 00:57) 

TaekoLovesParis

うさぎさん、パリからコメントありがとう。
フェルメール、京都展のほうが先にあったのですね。
オルセー、私は昨年4月に行ったけど、まだ工事中の部分がありました。
ガラスがかかってると、反射して見えにくい時がありますね。
展示場所が変わると、お目当ての絵が見つからなくて苦労したりします。
カフェも新しくなったのかしら。
企画展が楽しいと、行ってよかったと思えたりします。
パリ、行きたいなぁ。
by TaekoLovesParis (2012-01-30 01:27) 

TaekoLovesParis

mozさん、白っぽかったので、思わず、天井の照明を見てしまいました。LED?
絵は照明でもずいぶん違って見えるときがあるので。
6月の西洋美術館の「真珠の首飾りの少女」、見たことがないので、楽しみです。

by TaekoLovesParis (2012-01-31 01:18) 

りゅう

作品数は少ないですが、なかなか見応えのある展覧会でしたね♪
フェルメールだけ見てとっとと帰ってくれるお客さんがいっぱいだと、回転率も上がって会場も混雑しなくてサクサク鑑賞、ある意味みんながハッピーかも。(* ̄m ̄) プッ
ちなみに私は、作品を見てから解説を読み、あらためて作品を見るの繰り返しです。
さらに二周り目では、お気に入り作品の前でじっくりとたっぷりと。
この展覧会も3時間半くらいかけて楽しみました。
居座ってる割にはあまり金を落とさない、性質の悪い客でございます♪(≧▽≦)b
by りゅう (2012-02-05 15:41) 

TaekoLovesParis

りゅうさん、3時間半ですか。私はこの日は滞在時間20分の優良顧客でした。
ひとりだったら、もっとゆっくり見たと思うけど、出口で待ってられたら、気がせきます。でね、わかったのは、この人と長年、友達で、いつも楽しく話しが尽きないけど、この人は、私が絵とお肉料理が好きだって知らないのね、ってことでした。

<作品を見てから解説を読み、あらためて作品を見るの繰り返しです。>
→ 私も同じく、です。2まわり目は、さらっとで、特によかったものだけ、じっくり。
趣味が合う友達といっしょだと、こそこそっと小声で、批評したり、です。
by TaekoLovesParis (2012-02-06 23:55) 

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