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ホノルル美術館所蔵・北斎展 [展覧会(日本の絵)]

 日本橋・三井記念美術館へ「ホノルル美術館所蔵・北斎展」を見に行った。
「2010年、北斎の生誕250年」にちなみ、昨年開催の予定だったが、震災で
延期になり、今年の開催となった。

 生誕250年なので、ここにある景色は、ほぼ200年前の景色と思いながら、
見て歩いた。

 最初の絵(版画)は、江戸日本橋。
遠近法で描かれている。
遠くに富士山と江戸城が見える。川の両岸に立派な倉庫が並び、往時の日本橋の
繁栄がわかる。手前中央に橋の欄干があり、人々が荷物をかつぎ橋を渡っているが、
なんと大勢の人。実物で見ると、ひとりひとりの顔の向き、表情が異なり、こちらに
語りかけてきそうなほど活き活きとして面白い。
一枚目から、ひかれてしまう。

hokusaiNihonbashi.jpg


 有名な赤富士の「凱風快晴」
春から夏、凱風(=南風)がふき晴天の時に、朝やけで富士が赤く染まるのを赤富士
とよぶ。
静かな雲。青の濃淡が美しい。当時、ドイツで発見された顔料「プルシアン・ブルー」が
中国経由で日本に入ってきて、北斎もこれを使っている。青が赤富士の姿をくっきりと
うかびあがらせて、構図が目に残る絵。
hokusaiFuji.jpg

 「諸国名橋」シリーズで紹介される絵では、こんな橋もあるのね、と橋の形を感心して
見入った。昔もこれらの絵を見て、「見に行きたい」と旅に出た人がいたことだろう。
京都の渡月橋
画面が桜で華やぐ。松と桜が交互に並び、背景に嵐山、リズム感のある景色。
画面を横切る雲と水の流れの直線が呼応して、上2/3の画面を引き締める。

hokusaiTogetukyou.jpg


 三河の八つ橋古図
伊勢物語「東下り」の「かきつばた」の歌によまれる八つ橋。
光琳の「八つ橋図」で、おなじみの形の橋。

hokusaiYatuhasi.jpg


 「百人一首」シリーズは、北斎独特の楽しい解釈で絵になっている。
参議篁(さんぎ・たかむら)の句 
「わたの原 八十島かけて こぎいでむと 人には告げよ 海女の釣り船」
この句では、海女が主役ではないのに、左端の海女のアワビを取る姿が
漫画的で、思わず笑ってしまう。  島流しだというのに。

hokusaiSangiAma.jpg

  「奥山に 紅葉ふみわけ なく鹿の 声聞くときぞ 秋は悲しき」
は、紅葉の山の静けさ、寂しさが、ひしひしと伝わる絵だった。


 「諸国滝」シリーズの神奈川「大山ろうべんの滝」の滝も雄大で意表をつく。
水音が聞こえそうな迫力だけど、どこか漫画っぽく親しみを感じる。

☆修復を終えたばかりで、実物はどれも、とても鮮明な版画です。
前期が5月13日まで、後期が6月17日まで。
全部の作品が入れ替わります。 


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コメント 10

バニラ

絵師の北斎もすばらしいけれど、彫り師や刷り師の技といったらため息がでますね。
どんな人たちだったのだろう…
by バニラ (2012-04-28 17:29) 

よしあき・ギャラリー

色彩が見事ですね。
これは、行かなくちゃ。 ^^
by よしあき・ギャラリー (2012-04-28 17:41) 

チョコローズ

偶然ですが、先日テレビで葛飾北斎の特集をやっていて、プルシアン・ブルーが出てきました。
プルシアンが訛って「ベロ藍」って言ってました。これが無くっちゃいい色が出ないらしいです。
三井美術館、ものすごく綺麗ですよね。浮世絵なら私にもわかりやすいし、行ってみようかな。
本物の色合いを見てみたいです。
by チョコローズ (2012-04-29 00:00) 

匁

綺麗な木版画ですね。
北斎も凄いですが、彫師や刷り師も凄いな!!
と考えてしまいます。
どのくらいの枚数を彫ったか?
どのくらいの枚数刷って、その内の何枚を世の中に出したか?
余計なことですが。
by (2012-04-29 10:39) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲バニラさん、そうなんですよね。北斎が描いた絵が彫師によって、精巧に彫られ、刷り師によって色刷りされるんですよね。家代々の職人さんとしての「彫師」や「刷り師」だったのかしら。ひとつの版から何枚もの版画が作られる。これはホノルル美術館所蔵のものだけど、「凱風快晴」は東京国立博物館、MOA美術館など、いくつもの美術館にあるので、見る機会が多いですね。

▲よしあきさん、青がすばらしいです。北斎は構図がいいと言われていますが、
こうしてみると、色合いもいいですね。

▲チョコロさん、その番組、見たかったです。調べてみたら、「ベロ藍」って、ドイツのベルリンで発見されたから、訛って「ベ」になったんですって。鎖国の江戸時代だから、長崎に入ってきて、広まったんですね。
三井本館は昔の重厚な建物部分も残した立派な美術館で、きちんとしていて気持ちがいいですね。ぜひ、いらしてみてください。帰りに何を召し上がるのかしら(笑)

▲匁さん、目下版画制作に熱中されていますね。ほんと、彫師も刷り師も、技量がすばらしいですね。それまでは、輪郭線を墨で書いていたけれど、ベロ藍で描くようにと、北斎が指示をしていたそうです。
どのくらいの枚数、刷ったのかは、調べたけど、わかりませんでした。リトグラフだと、何枚中の何枚と記入されていますよね。
by TaekoLovesParis (2012-04-29 21:45) 

noriko

Taekoさんの記事を拝見して、修復がなされた鮮やかな北斎ってどんなだろうと行ってみたくなりました。
できれば前期と後期両方見たいけれど、行けるかな~・・・。

by noriko (2012-04-29 22:47) 

Inatimy

面白いことに私、赤富士、モネの家で観たのが初めてだったんですよ。
まさか異国の地で本物を見るとは。
嵐山の渡月橋の作品もいいですね~。 
そうそう、こんな感じで川沿いに桜があったなぁと思いだしました。
つい先日も本屋さんで北斎漫画が並んでいたので、
離れてしみじみ日本の良さ・・・です♪
by Inatimy (2012-04-30 19:19) 

coco030705

こんばんは。
北斎の絵はほんとうにすっきりして美しいですね。構図がすばらしいと思います。
赤富士は印象的ですね。以前写真でも赤富士を見たことがあります。
本当に赤く染まるんですね。実物を見てみたいものです。
海女の絵もいいですね。確かに漫画的です。(笑)
Taekoさんの解説で楽しませていただきました。有難うございました。
関西にも来たら見に行こうと思います。

by coco030705 (2012-04-30 22:02) 

pica

ちょうど「北斎」をテーマにしたTV番組を観たばかりで
見たいな~と思ってたんです(^_^)
できれば両方行きたいけど…前期は無理そうです。
by pica (2012-05-01 03:00) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲てんちゃん、青がとってもきれいです。色が鮮明なので、細かいところまで、はっきり見えて、いろいろな発見があって楽しいですよ。おすすめの展覧会です。

▲Inatimyさん、モネは浮世絵のコレクションをしていたんですものね。特に外国で日本の絵を見ると、インパクトが強くて、印象に残りますね。
私は桜のある渡月橋をみたことがない、春に京都に行ったことがないので、行ってみたいです。

▲cocoさん、赤富士、私も本物を見たいけれど、朝寝坊だからダメかも。。
夏を河口湖の高台のマンションで過ごしていた時は、曇らない限り、一日中、富士山が見えていたので、親しみのある姿です。
歌舞伎役者市川門之助を描いた錦絵もありました。今の門之助のほうが、やさしい顔ね、なんて思いながら、見ました。でも、やはり、雰囲気は引き継がれていました。

▲picaさん、北斎の番組があったんですね。私は、いい番組を見逃すことが多くて。。「日曜美術館」だけは、気にしてるのですが。
by TaekoLovesParis (2012-05-02 00:51) 

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