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メトロポリタン美術館展 [展覧会(西洋画)]

 上野の東京都美術館で開催中のメトロポリタン美術館展は、会期もあと少し。
1月4日までです。

メトロポリタン美術館はニューヨークにあり、パリのルーヴル美術館と並んで
世界最大級の規模。一日では、とても廻れない。私は3回行ったが、まだ見残して
いるものがたくさんある。それくらい多い所蔵作品なので、今回の東京展は「自然」
というテーマで、古代から現代に至るまでの作品をピックアップして展示している。

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パンフレットの表紙は、ゴッホの「糸杉」。
自然がテーマなので、展示作品は風景画が多い。

パンフを見たら、私が今年の3月にメトに行った時、写真を撮ったルノアールの
「浜辺の人物」(1890)と、アンリ・エドモン・クロスの「松の木のある風景」(1896)
があった。共に「海」という自然が背景の絵。
ルノアールの海は青がとっても爽やか。
エドモン・クロスの海は、赤や緑の大きな点描。大きな点描は彼の特徴。

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海の絵は、他にもたくさん展示されていた。
ドラクロワの「嵐の最中に眠るキリスト」(1853)
小さめの絵だが、聖書(マタイ8章23)に基づいたドラマティックな場面。
激しい嵐が来て、舟に乗ったイエスと弟子たちは波にのみこまれそうになった。
動揺する弟子たち、ひとり悠然と眠るイエス。
絵にはないが、この後、イエスが「嵐よ、しずまれ」と言うと嵐がしずまる。

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モネの「マヌポルト(エトルタ)」(1883)
こちらもドラクロワに負けずに激しい波の描写。
エトルタはノルマンディー地方。こういうアーチ状の断崖や門(ポルト)がある絶景。
絵によく出てくる場所なので、私も実際に見たくて行ったことがある。

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こちらは明るい陽射しの穏やかな海。
ターナーの「ヴェネティア、サンタ・マリア・デラ・サルーテ教会の柱廊から望む」
(1835)

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同じく青い空を背景にした海の絵は、時代がずっと現代に近づきホッパー
「トゥーライツの灯台」(1929)。ホッパーはアメリカの誇る偉大な画家のひとり。
わかりやすい明快な構図のものが多い。

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こちらもアメリカの誇る偉大な画家、ウィンスロー・ホーマーの
「月光、ウッドアイランド灯台」(1894)
暗い海面と波が月光に照らし出されている、水平線の向こうに明るく見える点が
灯台だろうか。展覧会の最後に展示されていた。

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ゴッホの「糸杉」、エドモン・クロスの「松の木のある風景」の他に木を描いた
作品は、アンリ・ルソー「ピエーヴル川の堤」(1909)

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メト美のホールのガラス扉は、ティファニー作のステンドグラスが美しい。
ステンドグラスといっても教会のものと違って図柄には植物や鳥が多い。
「ハイビスカスとオウムの窓」(1920)

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レンブラントの傑作「フローラ」(1654)もすばらしい。

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アメリカで注目されている日本人写真家杉本博司の「ボーデン湖」(1993)
私がハラミュージアム・アークに行った時も、杉本の「千体仏」が展示室
そのものを作品にして展示されていた。

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ひとつ、ひとつ良品揃い。見終わったあとは、自然というテーマが大きすぎるし、
年代も国もばらばらなので、ひとつひとつが繋がらない気がしたけれど、
こうやって何日もたってしまうと、古今東西の良い絵が見れてよかったと素直に
思える。おすすめです。


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Inatimy

この中で一番印象に残ったのが「ハイビスカスとオウムの窓」。 
ハイビスカスと言うと、南国、トロピカル、赤い花びらに中央から長くしベが伸びていて・・・と
私の中に浮き上がるイメージと、この作品の白のハイビスカスの爽やかな雰囲気とかなりの差が。
ハイビスカスも様々な種類があるのかしら・・・とまた花に新たな興味がわきました。
展覧会のサイトのオンラインギャラリーものぞいてきましたが、面白いですね。
同じくティファニー社の『カエルの盆』が可愛くて。 ウィリアム・ド・モーガンの『魚の大皿』、北ネーデルラントの『一角獣のテーブルカーペット』など実際に観てみたいものがいろいろでした♪
by Inatimy (2012-12-21 23:16) 

baby_pink

松の木のある風景・・眺めているだけで
気持ちがふんわり優しくなれるような
そんな色合いに魅力を感じました✿
こんなセーターがあったら毎日スキップしちゃそう^^*
by baby_pink (2012-12-22 07:28) 

hatsu

「月光、ウッドアイランド灯台」に、惹かれます。
水平線の向こう、灯台があるように見えますね^^
「ハイビスカスとオウム」も、優しくていいなぁ♪
自然という大きなテーマ、いろんな見方があっておもしろいですね。
by hatsu (2012-12-22 08:34) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲Inatimyさん、言われてみれば、ハイビスカスは赤を思いうかべますね。
白も花屋さんで鉢植えで売っています。白は上品でおとなしい姿。
ここでは白い花びらに入った茶系の筋模様と背景の色が合っていて綺麗
ですね。従来の教会のものと違って20世紀、楽園のイメージですね。
メト美で撮ったホールの窓の写真も後日掲載しますね。縦長窓にぶどう模様
が似合っていました。
「一角獣のテーブルカーペット」は、一角獣にぶどうやお花がいっぱいでまさに
楽園。温かみのあるカーペット。南ネーデルランドのタピは大きい作品だったので、「よく作ったわね」とささやいている声があちこちで聞こえました。織物は写真
よりも実物のほうが厚みがあるので、みごとさが伝わりますね。
オランダのライスダールの風景画もありましたが、小さくて地味でした。

▲pinkさん、エドモンクロスの点描の松の木は温かい色味で、たしかにセーター
によさそうですね~。たくさんの色がまじりあってハーモニーを奏でる音楽的な
感じがします。寒い季節は温かみのあるものに惹かれますね。

▲hatsuさん、ホーマーの夜の海の絵に目をとめてくださったんですね。
こういう色合いの夜の浜辺で、男女がダンスをしているホーマーの「夏の夜」
もすてきです。ブリヂストン美術館の「ドビュッシー展」で見てとっても心に
残っているんです。
by TaekoLovesParis (2012-12-23 14:56) 

バニラ

わたしも「ハイビスカスとオウムの窓」が気になりました♪ 
それとルソーの「ピエーヴル川の堤」。  東京都美術館は改装して随分と閲覧しやすくなりましたよね。 特に上階との移動が楽~♪

by バニラ (2012-12-24 11:32) 

pistacci

絵の他にキルトやタペストリー、写真もあって面白い展覧会ですね。
いつかyk2さんと話題にされてたボンボンのシロクマ。
実物みてファンになりました。
by pistacci (2012-12-25 02:16) 

TaekoLovesParis

バニラさん、木でも写実や印象派絵画の木ではなく、ティファニーやルソーの木が
気になる辺りは、やはり現代寄りのバニラさん、って思いましたよ~。
展覧会場は1階に高さがあるから、エスカレーターは便利ですよね。
私も最近、バニラさんを見習って、はしごで展覧会廻りをしているけれど、
この展覧会は、種類が多岐にわたっているので、見終わった途端、あれも
よかった、これも、、、だけで全体の印象が散漫。だから「今日の私は感動能力
が乏しいのかも」と、お茶して帰って来てしまいました。
by TaekoLovesParis (2012-12-25 08:29) 

TaekoLovesParis

pistaさん、いらしたのね!
キルトやタピは写真で見ると絵のように見えてしまうけど、実物は刺繍とはっきり
わかるから、皆、感心して眺めていましたね。写真では「切り妻屋根とりんご」も
メルヘン的な写実で好きでした。
シロクマ、ここのはかわいかったでしょう。オルセーのはもっと大きいんですよ。のっしのっしと歩いてる感じの大きさ。白い大理石の特徴をいかしてて綺麗だし。
知ってる作品がふえてくると楽しいですよね。

by TaekoLovesParis (2012-12-25 08:39) 

nicolas

Taekoさん、こんにちはー
メリークリスマスです~

私もルソーの「ピエーヴル川の堤」、いいなーって思いました。
木々のカタチに惹かれた後に気になるのは、
左奥の道の先。人々がこっちにくる様子でしょうか。
道の先には何があるんだろう?って、ちょっとわくわくします。
by nicolas (2012-12-25 13:56) 

kazu-m

ゴッホの糸杉にはしばし魅入ってしまいましたが、普段目にする機会の少ないアメリカの画家の作品が、ヨーロッパの画家とは違った作風が印象的でした。
今年は、フランドル派大好きの僕にとって、沢山の作品に触れられることが出来とても良い年でした。
そのしわ寄せか、年末はトラブル続きで参っていますが、来年への足固めと思って乗り切りましょう(笑)

by kazu-m (2012-12-25 21:42) 

coco030705

こんばんは。
やはりすばらしい名画ぞろいですね。画家の個性が光っていますね。
モネの「マヌポルト(エトルタ)」が力強く、色彩も美しく惹かれます。
ターナーもいいですね。レンブラントの「フローラ」も好きです。
皆いいですね。
ティファニーのステンドグラスもすばらしく美しい。私がメトに行ったときは
ちょうどティファニーの特別展をやっていまして、芸術品のステンドグラスの数々や
豪華な宝石を観ることができました。今考えたらなんとラッキーだったこと、
と思いますね。



by coco030705 (2012-12-27 00:19) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲にこちゃん、やはり、にこちゃんもルソーの「ピエーヴル川の堤」支持ですね。
この絵に人がいなかったら、絵に命がない、動きの全くない寂しいものになってしまいますね。遠近法の道が奥へと目を導いてくれて、いろいろなストーリーを想像して楽しいですね。

▲kazu-mさん、ここには写真を載せなかったけれど、私もメトご推薦のアメリカの画家ビーアスタッドの「ヨセミテ渓谷」が目に留まりました。絵の上から察するとアメリカの自然は、起伏に富み、岩山が多くヨーロッパよりずっとダイナミックでした。
「糸杉」は見る人にパワーを与えてくれる作品ですね。
印象派の巨匠の作品中心の展覧会が多いなか、素朴でほっとするものがフランドル派にはありますね。何回かご上京でしたものね。忙しい年末、がんばってください。

▲cocoさん、<皆いいですね。> → 見ているうちに、あれもいい、これも、って
いいものがふえちゃいますね。だから、どの絵の写真を載せようか迷いました。
NYでティファニー展とは、いい巡りあわせでしたね。宝石箱は、さぞかし豪華で美しいことでしょう。ティファニーはランプよりもステンドグラスのように大きい方が私は好きです。特徴がはっきり出て。でも実際に見ないと良さがわからないですよね。
by TaekoLovesParis (2012-12-28 12:05) 

moz

メトロポリタン展は少し時間が空いたときにざっと見てしまいました。
ちゃんと見ていないのでもう一回行こうかと思っています。
そんな中でも、ターナーはすごいなぁとおもいましたし、ホッパーの絵にもなぜか惹かれました。
そして、気が付いたらかなりの時間釘付けだったのは、ミレーの絵。
「麦穂の山 秋」でした。不思議な絵、この絵はもう一度見たいです。
2012年はフェルメールショックであまり展覧会に足を運びませんでした。来年は、もう少し絵に会いに行きたいと思っています。
良い展覧会、絵のことまた色々と教えてください。 ^^
by moz (2012-12-30 09:14) 

TaekoLovesParis

mozさん、ターナーにホッパー、2つとも空の青さ、空と流れる雲の様子が印象に
残りますね。一方、ミレーの「麦穂の山 秋」はグレーの空に鉛色の雲が向こうからどんどんやってくるかのようで。。はっきりした遠近法。今までのミレーとは違った印象の絵ですね。mozさんはこの絵にどんな音楽が合うとお思いになったのでしょう。
フェルメール+フランドル派で印象深い絵の年、思い出に残るような絵が見れると、一生の宝になりますよ。
by TaekoLovesParis (2012-12-30 11:21) 

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