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2012年秋の展覧会(3) [展覧会(日本の絵)]

5、「琳派芸術Ⅱ」展 (出光美術館)
2011年、抱一生誕250年記念の「琳派芸術Ⅰ、Ⅱ」が開催されたが、東日本大震災
のため、Ⅱは会期途中で終了になってしまった。1年半後、再度の展覧会だが、前回
見た人も楽しめるよう、展示構成をリニューアルしたそうだ。

Rinpa1.jpg

リニューアルとのこと。どこが変わったのかしら、でも前のをちゃんと覚えてない(涙)
はいってすぐが、金銀の抱一の屏風。
「風神雷神図屏風」、隣に「八ツ橋図屏風」、二曲の「燕子花図屏風」。どれも
まばゆく金ぴか。後ろ側に「紅白梅図屏風」と、抱一の屏風代表作が勢ぞろい。
なんて贅沢な部屋。

抱一八橋図びょうぶ.JPG

次は、草花図の伝統がどのように引き継がれたかのコーナー。
宗達の伝統を引き継いだ俵屋工房の作品は「伊年」という印が押されている。
「伊年」の「草花図屏風」。

伊年草花図s.jpg


この屏風の花の大きさに驚いたが、同じ「伊年」の豪華な「四季草花図屏風」
(金地に2段で花が図鑑のように描かれたもの)より落ち着いていいなと思った。
「伊年印」の伝統は、喜多川相説 →光琳 → 抱一→ 其一と受け継がれていく。
その流れを見ることができて興味深かった。相説の「四季草花図貼付屏風」は、
花が写生のように綺麗に描かれているが、意匠性はない。表装が派手。

喜多川相説.jpg

後の時代、抱一の「12か月花鳥図貼付屏風」の花は、花が大きく訴えかけてくる。

次の部屋は、抱一以前に江戸に琳派を伝えた人たち。江戸琳派の先駆者。
中村芳中の「扇面貼付屏風」

芳中.jpg

俵屋宗理の「秋草図」は余韻を残す余白の使い方。洒脱な画風で江戸で人気があった
そうだ。二代目宗理が葛飾北斎と聞いて意外だった。

江戸っ子が洒落や機智を好んだことから、句を絵の中に書きこむのが流行った時代。
抱一の「住吉太鼓橋夜景図」(左)
水墨画のモノトーンに印鑑の朱色が粋。抱一40歳の時の作品で、この後、草花を
描くようになる。

抱一住吉.jpg  きいつ桜坊図.jpg

抱一の弟子其一の「桜坊図」 (右)
陽の当たっている葉と当たらない葉の大胆な対比を墨の濃淡でみごとに表現。
点在する赤いさくらんぼが愛らしい。

其一の作品コーナーがあり、白地に青波、扇面流の粋な描き表装の「三十六歌仙図」、
緑の葉にきゅうり、下にナス、色がきれいな「野菜群虫図」があった。

今回のリニューアルは、抱一を軸にして、宗達、宗理、其一らを配し、琳派の伝統と変化
を見せるという趣旨。タイトルも「琳派芸術」。
借りてきている作品もあるが、8割がたが出光美術館の所蔵品というのがすごい。

6、「はじまりは国芳」展

国001

あの面白い国芳の絵、しかも文化の日は入場無料!というわけで出かけた。
「はじまりは国芳」というタイトル通り、単なる国芳展ではなく、国芳から伊東深水
、江戸から昭和に至るまで、国芳ルーツの大勢の画家の絵や版画をみることができた。

kuniyosi1.jpg

「近江の国の勇婦於兼」1832年
近江の国の怪力の遊女お兼が暴れ馬の引き綱を下駄で踏み付け取り押さえ
ている場面。国芳は西洋画を研究していて、馬の陰影の付け方などに西洋画
の影響が見られる。藍色が美しい。

国芳といえば、武者絵、合戦もの、猫。
これは単なる猫ではなく、猫がふぐの文字を作ってる面白さ。猫の体、柔らかい
んですね。

kuniyosi4.jpg   

「みかけはこわいがとんだいい人だ」という男のいかつい顔の絵は、よく見ると
裸の男たちで顔が構成されている。上の猫のふぐと同じしかけ。(写真なし)

国芳の弟子、月岡芳年の作品が多かったが、私はスルーして、昭和の鏑木清方へ。
清方は、芳年の弟子の水野年方に師事、美人画が秀逸。(左)

kuniyosi0.jpg  kuniyosi5.jpg 

ユニークなところでは、川瀬巴水の版画「木場の夕暮」1920年
川に映る電柱と橋、空の色。造形的な雲の形。安定した構図。色合いも郷愁をよぶ
昔の東京の風景。巴水は昭和の広重と呼ばれているそうだ。

伊東深水の「髪」1953年は、メアリ・カサットの浮世絵っぽい絵「浴女」を思い出した。
髪を洗うという動作からだろうか。

たくさんの作品があったが、どれも気楽にさらっと見れて、楽しかった。


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コメント 11

チョコローズ

出光美術館は日本画の展示が多く、難しくてこれまで行ったことがありませんでした。
でも先日興味のある展示があり、初めて伺いました。
静かで綺麗で展示の仕方に余裕があって、とても気に入りました。
こんな環境なら日本画も見てみようか、と思いました。
目の保養は必要ですよね。

by チョコローズ (2013-02-03 13:09) 

yk2

僕はねーさんがスルーした?芳年がこの展覧会一番の収穫だったなぁ(笑)。漠然と、血みどろのグロテスクな絵ばかりのイメージしか持っていなかったから、こんなにもデッサン力のある、素晴らしい“線”の画家なんだって初めて気付きましたよ。

深水の『髪』は、なだらかな円の丸みの組み合わせで構成した女性の体の描き方が本当に上手で、確かにカサットのあの版画の素晴らしい背中の丸みを思い起こさせますね。深水の“線”も、ドガが見たなら、きっとお褒めの言葉(嫉妬まじりの・・・笑)を頂戴したことでしょう。
by yk2 (2013-02-04 00:50) 

hatsu

「桜坊図」、いいですね。
墨の濃淡で、力強さも繊細さも表現できるんですね。

「はじまりは国芳」、楽しそうです^^
by hatsu (2013-02-04 06:51) 

ムーミン

これだけの作品が揃うのは、すごいですね。
京都へ行った時建仁寺で、複製ですが「風神雷神図屏風」と「草花図」を観て来たんですが、お寺で観るのもまた違った雰囲気で良かったです。
<草花図の伝統がどのように引き継がれたかのコーナーも興味深いです。
「始まりは国芳」、楽しく観られるのはいいですね。
by ムーミン (2013-02-04 12:26) 

nicolas

わー、偶然ですが「国芳と猫」という本を図書館で借りてます。
猫以外にもいろいろ載っていて解説もオモシロかったです。
猫の表情がよく見るとすごく繊細に描かれているのび驚きました。
by nicolas (2013-02-04 17:14) 

kazu-m

風神雷神図、燕子花図、金彩と緑がとても艶やかで大好きな絵図です。
「はじまりは国芳」展、僕も見てきました。
猫文字の図には、そのユーモラスさ・可愛さ・ユニークさに思わずにっこりでした。
幕末から明治にかけての版画の色彩、特にきついとも思える赤は輸入した顔料を使ってるんでしょうか。
一緒に、アメリカ人の浮世絵師の作品も展示してありましたが、顔の捉え方がこんなに違うんだと驚きました。
でも、日本の浮世絵師が描いた、西洋人の捕らえ方と同じだよねとも思ったり。

by kazu-m (2013-02-04 21:41) 

Inatimy

この中でもらえるとしたら、「伊年」の「草花図屏風」。 
パッと見で、トウモロコシに里芋かしら、と食材に親しみが(笑)。
2001年だったかに友達に誘われ京都で月岡芳年展を見たんですが、スプラッターな絵が怖くて。
そうじゃない絵は、師の国芳に比べると劇画タッチっぽいし、濃いし、
なんだかずっと緊張して見てたような。  
国芳の猫と金魚のポストカードを見つけた時はホッとしました・・・。 
by Inatimy (2013-02-05 06:50) 

coco030705

こんばんは。
琳派いいですね。派手な美しさが素敵です。
中村芳中の「扇面貼付屏風」が一番好きかもしれません。
次の展覧会は、鏑木清方の美人画が美しいですね。どことなく雰囲気が
竹久夢二に似ているように思いました。昔の東京の風景の版画もユニークで
いいですね。


by coco030705 (2013-02-05 23:21) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲チョコロさん、出光はお金もちなので、美術館に余裕があっていいですね。特に出光の休憩コーナーは、皇居のお濠が一望のもとに見渡せて気持ちがいいです。
さらに、日本画や屏風の良いものをたくさん持っているんですよ。
<目の保養は必要ですよね。>→ チョコレートと同じくらいに必要(笑)

▲yk2さん、芳年は絵の主題のほうに目がいってしまいました。歌舞伎の場面が多かったので、「奥州安達が原ひとつ家」の鬼が妊婦を吊るす恐ろしい絵では、こんな場面、歌舞伎にないのに、と思いながらさらっと見ました。俊寛の鬼界が島は、こんなかもね、と思ったり、歌舞伎と比べて見て、絵そのものを丁寧に見なかったんです。そうですか、デッサン力ね、今度、機会があったら、線に注目して見ます。
深水の『髪』は、構図が大胆で、浴衣の紺のひまわり模様が目に残りました。斬新な柄ですよね。背中の丸さでは、アングルの「パフォスのヴィーナス」が、浮かんできます。
こういう肩の凝らない展覧会もいいですね。

▲hatsuさん、桜坊、絵がなかったら、さくらんぼ、と読めなかったかも。葉っぱが
軽やかでいいですね。墨で描く絵は、はモノトーンの世界の尽きぬ表現を教えてくれますね。
国芳、楽しかったです。この日は2つ目の展覧会だったので、気楽に見れるのはよかったです。
by TaekoLovesParis (2013-02-07 23:53) 

moz

これらも皆見逃しています・・・ 、昨年は何していたんだろう? と思っていたら今年ももう一ヶ月過ぎてしまったんですね。チケット無駄にしないようにしなくては ^^;
見せていただくとどれもすごい作品ばかりですね。
中でも面白いなと思ったのは、木場の夕暮です。
版画なんですよね、実際にこんな景色を見たような記憶もあるし、なんとなくそのときの感覚がよみがえってきます。電信柱、この前の岡鹿之助の絵もそうですが、すごく気になってしまいます。これは、ポッキーではないですけど 笑
by moz (2013-02-11 06:35) 

TaekoLovesParis

mozさん、お返事遅くてすみません。
<チケット無駄にしないようにしなくては> → グレコ展のことですよね。いらっしゃったから大丈夫ですね。素直な感想で感動が伝わる記事だったので、私もすぐに行きたくなりました。 でも、このお返事がこんなに延び延びになるほど忙しかったので、まだ行ってません。
ポッキー電信柱ね(笑)。雲は?
by TaekoLovesParis (2013-03-02 02:41) 

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