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プーシキン美術館展 [展覧会(西洋画)]

 横浜美術館で開催中の「プーシキン美術館展」に行った。
フランス絵画300年というサブタイトル通り、17世紀から20世紀までの代表的な
画家の作品がずらっと並ぶ。しかし、初めて見る絵ばかりだし、知らない画家の絵
にも印象に残るものがあり、面白かった。

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会場の初めに展示されているのは、17世紀最大の画家ニコラ・プッサンの
「アモリ人を打ち破るヨシュア」1624頃

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もちろん、左端、勇敢な筋肉隆々の男がヨシュア。裸で敵に立ち向かう。
画面全体に猛々しさがほとばしる殺戮シーンだが、時が止まり、ここに
封じ込められているかのよう。
プッサン初期の作品。私は「アルカディアの牧人たち」や風景画ののどかさが
プッサンと思っていたので、この荒々しさには、ちょっと腰が引けたが、ゆっくり
見ているうちに良い絵とわかってきた。

下の絵は、ブールドン「犠牲を捧げるノア」1650年代半ば
ノアが祭壇を築き、神に犠牲をささげようとしている。犠牲の羊が青い服の男
に首をつかまれている。後方にノアの方舟が見え、空には約束成就のしるし
の虹が見えている。プッサンの絵とは主題が違うが、こちらはドラマティック
ながらも優美さのある絵。

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古典主義からロココへと時代は変わる。
ロココの代表作家ブーシェの「ユピテルとカリスト」1744年
はっとするほど美しい色彩での華麗な表現。
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女性作家マルグリッド・ジェラールは姉の夫であるフラゴナールに絵画を
学び、風俗画に長けていた。
「猫の勝利」1785年
女性が抱き上げているのが猫だから、猫の勝利。犬は足元でジェラシーで
吠え続けている。猫はペルシアで、犬はボロニーズ?女性の髪もくるくるっと
巻き毛。室内描写がオランダの風俗画ふう。
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ダヴィッド「ヘクトルの死を嘆くアンドロマケ」1783年
ダヴィッドはローマ賞をとり、イタリアへ5年間留学し、古典を学んだ。
丁度世の中が軽薄なロココを批判しはじめた時期だったので、ダヴィッドの
新古典主義様式は高く評価され、ナポレオンから多くの注文が来た。
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トロイア戦争を題材にした絵。トロイア軍の指揮官ヘクトルが、ギリシアの
アキレウスと一騎打ちの末、遺体となって帰って来た。嘆くアンドロマケ、
母を慰める幼い息子。


ダヴィッドに学んだアングルもイタリアに留学し、ラファエロを研究した。
アングル「聖杯の前の聖母」1841年。
優雅で美しい聖母。私はこの絵が一番よかった。
ロシア皇帝アレクサンドル2世からの注文の絵。
アングルは、これがロシアに運ばれてしまったことを残念に思い、後に
同じ構図の小品を4点制作した。

pushEngret.jpg



コローの風景画「突風」1860年代半ば
馴染みのある「モルトフォンテーヌの思い出」のような穏やかな風景画
でなく、荒れ狂う風をドラマティックに描いてるのは、オランダの海景画の
影響だそう。
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印象派のマネ、モネ、ドガ、ルノアールもあった。
ルノアールはチラシに使われている「ジャンヌ・サマリーの肖像」1877年

セザンヌは「パイプをくわえた男」1893年
体が斜めになっている構図。背後に「青い服を着たセザンヌ夫人の」絵が見える。
机に、衣服に明快な四角形、キュビズムのはしりが伺える。
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ゴッホの「医師レーの肖像」 1889年
同じ年の作品「ルーランの肖像」と同じ模様つきで派手な緑色の壁紙が背景。
この絵を医師レーは気に入らず、10年後に売却している。

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マティスの「カラー、アイリス、ミモザ」1913年
きれいな色の取り合わせ。
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ピカソも3点あり、どれもよかった。

ビュイヤールの「庭」1898年
白・茶・緑色系の大きな点描。表現にリズムが感じられ好きな作品。

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モスクワに行く機会はないと思うので、この展覧会を見れてよかった。

 
  ☆mozさんの、この展覧会記事です



 


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Inatimy

チラシの「ジャンヌ・サマリーの肖像」、背景のピンク色がとっても愛らしい色調ですね。
売却した医師レーの気持ち、分かる気がします。 私も見た瞬間にあれ、郵便配達夫?と・・・。 
しかも、ゴッホの「ルーランの肖像」もあちこちの美術館に複数枚ありますものねぇ。
複雑な心境だったかも。
マティスの「カラー、アイリス、ミモザ」の絵は、テーブルの上のクロスの模様が可愛い。
藤みたいな柄ですね~♪ こういう風呂敷があったら欲しいな。
by Inatimy (2013-08-14 22:05) 

coco030705

こんばんは。
これは、9月末に神戸に来ますので、友達と行く約束をしています。
ブーシェの「ユピテルとカリスト」、美しい色彩ですね。マルグリッド・ジェラールがフラゴナールの義妹とは!猫ちゃんが大きくて立派ですね。女性や少女と、猫はよく合いますね。
アングル「聖杯の前の聖母」は本当に品があって美しいです。実物を見るのが楽しみです。コローの「突風」もすばらしい。こんな風景画はコローには珍しいですね。セザンヌ、ゴッホ、マティス、ほんとうに魅力的です。そして、私の大好きなビュイヤールの作品もあって、行くのが楽しみになってきました。ご紹介ありがとうございます。
by coco030705 (2013-08-15 22:33) 

匁

おはようございます。
毎日暑いですね。お久しぶりです。
気になった作品は
マティスの「カラー、アイリス、ミモザ」1913年
です。丁度100年前に描かれたんですね。
三角形と逆三角形を組み合わせた構図に色彩を配置したんですか??。

こちらはただある物を描く段階ですが?。描く前は急いでしまって
配置も考察もおろそかになりがちです。

隣で開催のマンモスYUKA展には夏休みの宿題のお手伝いで行きました。
その後は前にある観覧車に乗りましたよ。

by (2013-08-16 08:23) 

kazu-m

週末東京へ行く目的のひとつが、この展覧会を見ることです。
アングル「聖杯の前の聖母」、憂いを含んだアングル独特の女性の表情ですね。
ダヴィッド「ヘクトルの死を嘆くアンドロマケ」、以前にも見た記憶が・・・
アンドロマケの嘆く姿が、とても強いインパクトがありました。

あとは、せっかくなので中華街の行きつけの店に行って、その後ぶらぶらと夜景でも撮ろうと思っています。
by kazu-m (2013-08-16 21:16) 

fraise

私もプーシキン、見に行きました。
運よく朝日新聞社の特別招待日に行くことができて、館内は招待者しかいなかったので(それでもかなり混んでいましたが)ゆっくり鑑賞することができました。
見ごたえある作品がたくさんあって、なかなかよかったです。
ルノワールの作品、とてもいいですね。大好きです。
by fraise (2013-08-16 21:56) 

moz

ジャンヌ・サマリー嬢に横浜駅で会って一目ぼれして向かった展覧会でした 笑
もちろん、ジャンヌ・サマリーの肖像画素晴らしかったけれど、TaekoLovesParisさんがご紹介くださったように、素晴らしい絵が粒選りの展覧会でしたよね。
アングルも、もちろん素晴らしかったです。
2年前にめげずに来てくれて感謝です。
拙い、自分の記事をご紹介下さってありがとうござます。TaekoLovesParisさんに紹介していただくなんて、光栄ですけど、恐縮してしまいます。 ^^;
by moz (2013-08-20 06:46) 

カエル

なんだか夢中になって読んでしまいました。
どのタッチもうっとりしてしまった。
行って来ようかな。。。
by カエル (2013-08-20 19:27) 

りゅう

ラファエロの影響がモロに出ているアングル、きれいな色合いのマティス、素敵ですね。
見たいなぁと思いつつも暑すぎて横浜までいく元気がありません。
今週のぶらぶら美術・博物館がプーシキン美術館展だったので、これで済ましちゃおうと録画して見ました。でも、紗世ちゃんじゃなかった・・・(T_T)
とっとと録画消去です・・・
by りゅう (2013-08-22 23:58) 

ムーミン

ご無沙汰しました。時々拝見してました。
4月に東京へ行った時に、「ラファエロ展」と三菱一号館美術館の「クラークコレクション」に行ってきました。Taekoさんのブログでも観られて嬉しかったです(^^)
プーシキン美術館展も行けないので、のテレビなどで観賞してました。また詳しく観られて嬉しいです。マチスはなかなか観られないですね。
9月から1カ月ほど盛岡でシャガール展があるので、行きたい!と思っているのですが・・・。
by ムーミン (2013-08-25 08:28) 

TaekoLovesParis

ムーミンさん、お久しぶりです。
ラファエロ展、クラークコレクション、どちらもよかったですね。
見に行っても書いておかないと忘れてしまうので、遅れ遅れになりながらも
書いています。秋田からムーミンさんが記事を読んでいて下さるときいて、
うれしいです。私もシャガールの絵は夢があるし、赤は元気が出るので好きです。
いらっしゃれるといいですね。
私は夏休み、ハワイでホノルル美術館へ行きました。帰ってきたばかりなので、
後日、記事にしますね。
by TaekoLovesParis (2013-08-25 22:55) 

今造ROWINGTEAM

いいですね♡
素晴らしい芸術の数々を眺めて、目の保養。
猫の勝利、可愛いなぁ。笑
猫好きにはたまらんです。

ねね
by 今造ROWINGTEAM (2013-08-27 15:28) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲Inatimyさん、「ジャンヌ・サマリーの肖像」は、背景のピンクでふんわりとしたイメージの作品になっていますね。輪郭線もなく、肩の辺りはぼかして立体感を作っているのが近くで見るとよくわかりました。背景の右上に青い羽根のようなものを置くことで、軽やかさが強調されていますね。いろいろな工夫があって後世に残る作品が生まれるんですね。

私も医師レーは、顔つきよりも、この背景が気に入らなかったかなって思います。
当時だったら真面目に見えないですよね。服の打ち合わせは逆だし、ちゃんと見て描いているのか、っていう気持ちだったんでしょうね。
Inatimyさん、マティス柄の風呂敷をどういうふうに使うの?インテリアに使うんでしょ?

▲cocoさん、神戸に巡回しますね。会場が違うと、大きな流れは変わらなくても、配置が少し変わるんでしょうね。ブーシェの「ユピテルとカリスト」は、そこだけ、ぱっと明るくなる色彩でした。「猫の勝利」は小さい作品ですが、絵の場面に引き込まれてしまいます。猫の毛並みが綺麗でした。どれもこれも良い作品で見甲斐があります。
ビュイヤールの名前を知ってる人が少ないので、cocoさんもお好きと伺ってうれしいです。

▲他の方々、お返事遅いですが、今晩でも。
by TaekoLovesParis (2013-08-30 08:54) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲匁さん、私がハワイに行ってる間に、巨人にマジックがつきました。
楽天もマジックがついて、田中まあくんの記録に注目ですね。
それにしても、毎日、暑いですね!
マティスは暑さを吹き飛ばすような大胆な構図、逆三角形が活きてますね。
そして、テーブルクロスの唐草模様。これを参考にするのは、、ちょっと冒険
だけど、匁さんの絵には遊び心があるものもありましたね。
横浜にいらして、観覧車にのられたんですね。マンモス展の広告、たくさん貼って
ありました。

▲kazu-mさん、アングルの聖母は、高貴な美しさですね。私は、ルノアールの描く女性は可愛らしくて、アングルの描く女性は美しい人が多いと思っています。美人の条件は卵型の顔って思える輪郭ですね。「ヘクトルの死を嘆くアンドロマケ」のアンドロマケの表情は放心。このあと失神するか、狂乱かというショック状態、一度見たら、忘れられませんね。
横浜といえば中華街、本場の味ですものね。横浜の夜景では、観覧車の写真を撮るかたが多いですね。夜空に色が綺麗で見とれます。

▲fraiseさん、招待日ですか、特別の感じでいいですねー。ゆっくり見たい作品揃いなので、混んでると、絵が遠くなって、見えにくいですものね。やっぱり、ルノアールがよかったですか。そうですよね、mozさんのように一目惚れしてしまう人がいるほどですから。

▲mozさん、mozさんの記事は写真も大きくて見やすいし、読みやすい素直な感想で、とってもいいと思います。mozさんが出会ったポスターは、私が一番上にのせたのと同じかしら?ローズ色、ピンク、紫という三色旗もどきの配色がとてもきれいで、今までにない感じ、って思いました。
大震災の直後より、こうやって少し落ち着いてからの開催の方がいいですね。

▲カエルさん、夢中になって読んでくださったなんて、うれしいです。食べ物記事じゃないのに、って書いたら、怒る?

▲りゅうさん、この聖母はラファエロ作?って、私も最初に見たとき、思いました。
マティスもいいでしょ。たしかに、りゅうさんのとこから横浜は遠いですね。それにこの猛暑。今日も暑いです! ぶら美、山田五郎の番組でしょ、紗世ちゃんは毎回
出てるのかと思ってたら、、あらら、りゅうさん、ついてなかったですね。消去しなくとも(笑)

▲今造ROWINGTEAMのねねさん、ほめていただいてありがとうございます。猫、かわいいでしょ。


by TaekoLovesParis (2013-08-31 12:28) 

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