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ザ・ビューティフル [展覧会(西洋画)]

友達Mが、「ザ・ビューティフルって、ポスターがとってもきれいな展覧会やってるから
見たいわ。場所も丸ビルの三菱だし」と言ってきた。

ちらし.jpg



たしかに~、はっとするほど色鮮やかなオレンジ色。

ザ・ビューティフル(The Beautiful)展は、英国の唯美主義1860~1900年に
焦点を当てた展覧会で、英国のヴィクトリア&アルバート(V&A)美術館で開催された
ものの巡回展である。
三菱一号館は、英国人コンドルの設計で、唯美主義の時代の英国ふうの建物
だから、この展覧会の会場にはぴったり。

唯美主義がおこった19世紀は、芸術の分野で絶えず、「変化と革新」があった。
ヴィクトリア女王の時代であり、英国は世界に植民地を広げた絶頂期であった。
新しいものへの欲求が高まり、絵画を購入する層も広がったことから、物語を
主題とするわかりやすい絵が広まった。さらに、芸術は美的価値を第一に
おくべき、唯ひたすら美しいものを求めるという「唯美主義」の運動がおこった。
 (注:唯美主義は耽美主義とほぼ同じ)

ダンテ・ガブリエル・ロセッティ「愛の杯」

ロゼッティ愛の杯.jpg

この絵、見たことある、ってお思いの方もいらっしゃるでしょう。
上野の西洋美術館所蔵の絵。
耽美主義の先駆け、ラファエル前派の重要メンバーであったロセッティ。

当時の売れっ子フレデリック・レイトンの「母と子」

レイトン母と子.jpg

実際に見ると、コントラストがはっきりした白が美しい絵。
花瓶にはいった白い百合、細かい模様のペルシア絨毯の上でくつろぐ母と子。
後ろの金屏風はどうやら日本ふうらしい。描かれている絵が日本画とは違うが。。
ぜいたく品に囲まれたゆったりとした暮らしぶりは、きっと、当時の憧れ。


ジョージ・フレデリック・ワッツ「孔雀の羽を手にする習作」

ワッツ孔雀の羽.jpg

孔雀の羽根は、耽美主義の作品によく使われている。
美しいものの代表格だったのだろうか。

アルバート・ムーア「黄色いマーガレット」

きいろいマーガレット.png

服の色、扇子の色も黄色。黄色いマーガレットは足元右にある。
ムーアは、古代ギリシア彫刻を学び、衣服を古代ギリシア風に再現した。

チラシに使われている絵は、同じくアルバート・ムーアで、「真夏」
これも衣服がゆったりと古代ギリシアふう。色が鮮やかなだけでなく、
かなり大きな絵なので圧倒された。


ザ・ビューティフルというタイトルだから、全体に美人画が多い。

エドワード・バーン・ジョーンズが下絵を描いたタピストリー「ポモナ」
ウィリアム・モリス商会の制作。
ポモナはローマ神話の果実の神なので、りんごを持っている。

タピ ポモナ.jpg 
 

同じくエドワード・バーン・ジョーンズ作のブローチ。
色鮮やかできれい。七宝、サンゴ、トルコ石に真珠が少し。

バ-ンジョーンズブローチ.jpg

工芸品もいろいろと展示されていた。

ウィリアム・ゴドウィン 「飾り戸棚」

ゴドウィン飾り戸棚.jpg

画家ホイッスラーの自宅を設計したゴドウィンは、家具もデザインした。
だから、この飾り戸棚は実際にホイッスラーの邸宅に置かれていた。
開き戸棚の部分は火灯窓模様で、日本の寺院ふう!
ホイッスラーの絵「黒と金」も展示されていた。

耽美主義は、年数を経ると、時代の流れもあり、だんだん世紀末的になっていった。
オスカー・ワイルドの「サロメ」をモノクロの版画にしたビアズリーの作品が当時よく売れた。
この辺りは、mozさんが詳しく版画つきで書いていらっしゃるので、そちらをご覧ください。

ザ・ビューティフルの名に違わず、きれいなものがたくさんあるので、ふらりと、
見に行くのに、ちょうど良い展覧会だと思う。[黒ハート]


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コメント 12

ぶんじん

この美術館の企画展、“趣味”がはっきりしていて楽しいですね。うむ、確かにどれも美しい。
by ぶんじん (2014-03-14 08:59) 

angie17

こういう趣旨での展覧会、良いですね!
分かりやすい!

by angie17 (2014-03-14 15:51) 

カエル

美しいポスターですね。
目を引く!
母と子の子供の(折り畳まれ方)感じがとても好き。お母さんと一緒にいたいのがわかりますね。
by カエル (2014-03-14 17:08) 

coco030705

こんばんは。
とても素敵な美術展。V&Aはいい美術館ですね。私もロンドンに居たとき行きました。三菱一号館が、英国人コンドルの設計とは知りませんでした。いい建物ですね。
ちょうど3月最終週に友人に会いに鎌倉と東京へ行きます。ぜひこの美術展を見に行きますね。楽しみです。
by coco030705 (2014-03-15 00:23) 

Inatimy

耽美主義って、唯美主義とも言うんですね。 
チラシに小さく“英国の唯美主義”とあったので、
「唯、美しく。」 のフレーズに、あぁ、なるほどと納得。
それにしても見事なオレンジ色♪ オランダ人好みなのにこちらで開催されないのが残念です。
アルバート・ムーアの絵、本当にキレイ。 布のひだや、白い生地の透け感がたまらなく。
なんとなく物憂げな、けだるそうな雰囲気が醸し出す美しさの中、
ダンテ・ガブリエル・ロセッティ「愛の杯」は、ちょぴりキリっとしてて目を惹きますね。
by Inatimy (2014-03-15 07:56) 

匁

耽美主義の意味はpc上では
「美の為の美を追求する」とありました。
ちょっと、ついて行くのに難しそうです。
 
ダンテ・ガブリエル・ロセッティ「愛の杯」 は
今度、西洋美術館に行ったら注意してして見ます。
by (2014-03-16 10:28) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます。
▲ぶんじんさん、美しい人たちばかりです。しかもちょっと寝そべったような姿勢ばかりで(笑)。時代の流行がそうさせていたのでしょうか。

▲angieさん、疲れているとき、難しい展覧会は、さらに疲れるけど、これは、単に美しい、癒し系です。挿絵のような絵もあります。

▲カエルちゃん、「母と子」ですが、子供と百合を除いたら、単なる横たわる女性になってしまう。子供の折り畳まれかた、って表現、いいなぁ。
ちっちゃく丸まってかわいいですね。

▲cocoさん、チラシの左端に「V&A」の文字が目立つようにはいってます。この展覧会には、V&Aの作品がたくさん展示されてるので、cocoさんがいらしたら、懐かしいものもあることでしょう。
三菱一号館は、レトロなカフェ「cafe1934」がおすすめです。

▲Inatimyさん、オレンジ色はオランダの色でしたね!オレンジ色のチューリップもきれいですね。
私は唯美主義よりも耽美主義という言葉になじみがあるので、ついつい耽美と書いちゃいましたけど、Inatimyさん、すごい。ちゃんと違いを気にしてくださってる。調べてみたら、英語では両方同じ、aestheticism。耽美というと、谷崎文学を思い浮かべるから、唯美のほうがきれいなイメージですね。書き直しておきます。
ムーアのこの絵は、一度見たら、忘れられない絵になりますね。
ロセッティの「愛の杯」の女性、射るような目ですものね。中世の習慣で、戦いに行く騎士たちを見送る最後の夜、「愛の杯」というハート模様のある杯を使ったそうです。ロセッティは写真で見ても驚くほどにハンサム。恋愛体質で、愛の杯のモデルのエリザベス・シダルと結婚したのちも、ウィリアム・モリスの妻ジェインに想いを寄せ云々、です。

▲匁さん、元になる英語では、同じaestheticism (日本語でもエステ→美しくなる術)なのに、唯美と耽美。<耽美は「美の為の美を追求する」
>で、唯美は、唯、美しいものを追及する、って、使い分け難しいですね。「愛の杯」は衣服のピンク色が美しかったので、写真を撮ったことがあります。西洋美術館の常設は撮影Okでした。

by TaekoLovesParis (2014-03-16 13:31) 

yk2

唯、美しさにのみ耽溺する・・・って言葉から連想するに、僕は、ラファエル前派との関連性でやっぱり漱石、それも『それから』の主人公・代助を思い出さずにはいられません。「道ならぬ恋」ってキーワードも含めてね~(^^ゞ。

それはそうと、つい先日の日曜美術館でコンドルと彼が弟子入りしていた河鍋暁斎の話をしてましたね。wikiで見てみると、彼がお雇い外国人技師として来日したのは1877年で若干25歳でのこと。三菱一号館は1894年に出来た建物だそうだから、来日17年目。その間に、彼はすっかり暁斎の弟子、日本画の絵師”暁英”としての変貌を遂げていたわけで、そんな影響はこの建物のどこかにもこっそり表れているんだろうか?と訪れる度に思い返します。それらしき物を発見できたコトは一度も無いけれど(^^;。

by yk2 (2014-03-16 13:38) 

moz

じぶんもどちらかというと耽美主義で覚えてきた方です。
唯美と耽美ではちょっと感じが違いますね。どっちかな? この展覧会見た感じだとじぶんはやっぱり耽美かもしれません ^^
展覧会は絵画だけではなくて、色々な所に影響を与えた運動だったことが分かって、面白かったです。
ぼくの拙い記事を紹介していただいてありがとうごいます。
書き殴りなので、ちょっとはずかしいです 笑
by moz (2014-03-17 06:42) 

gillman

ラファエル前派展を見たら、次はこれですよね。

by gillman (2014-03-17 15:46) 

ひこうき雲

国立西洋美術館のモネ展を見に行った時に、このチラシを見て興味を持っていますが、色々と忙しく見れそうもない雰囲気です。
by ひこうき雲 (2014-03-17 21:21) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲yk2さん、美術に造詣の深かった漱石の作品には、たくさんの画家たちの名前が登場しますね。英国留学した頃は、ラファエル前派が盛んな時代。昨年、芸大の「漱石展」に出ていたロセッティの「レディ・リリス」、美しかったです。ロセッティは、Inatimyさんへのコメントに書いたように、モリスの妻に想いを寄せ続け、旅行が多く不在がちのモリス邸に住み込み、彼女をモデルに絵を描いたそうです。代助ほど悩まず、即、行動なのは、明治の日本と繁栄期の英国という環境の差でしょうか。

コンドルが河鍋暁斎に弟子入りしていた話、私も同じTV番組で見ました!
暁斎の「枯れ枝に烏が一羽とまってる絵」に感動して弟子入りしたというコンドルの「木の枝に百舌がとまっている絵」の達者さ。暁斎絵日記に描かれた、コンドルの家に人力車で出稽古に行く様子、コンドル邸での食事風景、日光への旅行等々から、コンドルが愛弟子であったことがわかりますね。たしかに三菱一号館に暁斎らしさは、、、見当たりませんね。当時の流行、ネオバロック様式ですね。

▲mozさん、<唯美と耽美ではちょっと感じが違いますね。>→ 展覧会を見終わると、耽美って思う気持ちは私も同じです。でも、「耽」の字だと過激だから、「唯」の方がキャッチコピーにふさわしいんでしょうね。六本木のラファエル前派は絵画ばかりなので、同じにならないためにも、こちらは、芸術運動として、インテリアも見せていましたね。mozさんの所に写真があった、アルマ・タデマの「肘掛け椅子」や「タウンゼントハウスの応接間」、華やかさと落ち着きを共有して、すてきでした。こういうインテリアの居間で詩を読むロセッティを描いた水彩画が「芸術新潮」の載っていました。当時の憧れの生活でしょうね。

▲gillmanさん、順番からいくと、ラファエル前派が先ですよね。ラファエル前派の物語的な絵を壁に飾るインテリアが、唯美主義の時代の流行になっていくわけですから。ウィリアム・モリスの壁紙、デザインは今も使われてますね。

▲ひこうき雲さん、お忙しい折、お体をお大切になさってくださいね。元気じゃないと、おいしいワインも飲めませんから。
by TaekoLovesParis (2014-03-20 11:14) 

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