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バルテュス展 [展覧会(西洋画)]

終わった展覧会の記事を載せると、友達から、「遅すぎー、見に行けないじゃない」って
クレームがつくことが多いのですが、今日が最終日の展覧会です。バルテュス展、上野都美術館。

BalthusTirashi.jpg

なんで、もっと早く載せなかったのかというと、少し戸惑っていたから。
私が、それまで見たバルテュスの絵は、ニューヨークのメトロポリタン美術館で大きな
壁面を一面使った展示室最後の絵「山」。
置物ように置かれた人間がこちらを鋭く見つめているので驚く。三角形構図。
配置された人間と山の形が呼応。一見、平面的であるように見えても、かなり奥深い
山々の景色。そして目のさめるような青い空。白い岩山、緑の山、と色が美しい。

Balthus4.jpg

さらに、「暖炉の前の人物」 スーラを思い出すパステルカラーの色合い。
柔らかい光。彫刻のようになめらかな体。こちらは上の「山」と違ってやさしい
雰囲気の絵。

Balthus3.jpg

そして、昨年春、ニューヨークのMOMAで見た絵。
これも、配置されたような人物が面白く、思わず、足をとめ、写真を撮った。
それぞれの人物に関連性がないのがユニーク。ストーリーをいくつにも作って見ること
ができる。
Balthus.jpg

ユニークで、発想が面白い。硬質な人物表現が独特でいいなぁと思っていて、
バルテュス展を楽しみにしていた。
期待を裏切られたわけではないけれど、今回の展覧会の中心になっている少女を
モデルにした絵は、私はあまり好みではなかった。
むしろ、↓のような絵がとてもよいと思った。

Balthus5.jpg

バルテュスは、若い頃、ピエロ・デラ・フランチェスカに傾倒し、ルーヴルに通って模写を
した。それが展示されていた(上の左)。硬質な人物表現は、ピエロの影響もあるのね、
と思った。
パリを離れ、ブルゴーニュ地方に住んだバルテュスは風景画を描く。(上の中)
「シャシーの農家の中庭」は、手前に木がある構図、当時はやりのジャポニズムの影響か。
幾何学的な畑の構成も面白い。
「トランプ遊びをする人々」は、歌舞伎の睨みにヒントを得たそうだが、この人物は、
ピエロ・デラ・フランチェスカ的な気がした。


バルテュス画業の初期、パリのようすを描いた絵は、どれもいいなと思う。
「空中ごまで遊ぶ少女」、手をおおきく広げコマの行方、空を見る少女や、リュクサンブール公園、
かなり暗い色合いのオデオン広場など。
それ以前、11歳の時の「ミツ」という拾ったネコとの物語の絵本。黒い線で描いた版画
のような40枚の挿絵もかわいらしい。バルテュスは猫が好きで、絵によく登場する。

自画像。マニエリズムかな?とっても脚が長いが、ここにも猫がいて、タイトルは
「猫たちの王」

Balthus6.jpg

展覧会のチラシの少女の絵の足元にも、無心にミルクを飲む猫がいる。
挑発的なポーズだが、この絵は色合いが落ち着いていて、いいなと思う。

こういう世界もあり、視野を広げるためにもおすすめです。今からでも時間があったら、
雨ですし、展覧会行きはいいと思います。
最後の部屋、篠山紀信が撮った写真シリーズ、とても綺麗でした。


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yk2

僕もバルテュスと云えば、Bunkamuraでメト展が開催された折りに観た『山』ですね。のどかな山の光景を描いているようで、配置された人物たちの服装はなんだか山には不似合いな気がして、大体この横になっている女性は何故ここに寝ているんだろう?、まさか、ちゃんと息はあるよね??なんて具合に、爽やかにも不穏にも思えたりしてザワザワ落ち着かない。そのよく解らない「???」な感じが、この画家の得体の知れない奇妙な魅力なんだと思ってました。マグリットみたいに、シュールなのとも、また、ちと違う。
そんな「???」を求めて、僕もこの展覧会に大いに期待していたんですが、今回は、そう云う意味では、割と「フツー」だったかもしれませんね(^^ゞ。また、終盤に展示されていた篠山紀信の写真があんまりにも素晴らしく思えて、僕はそっちにすっかり魅了されてしまいました。
by yk2 (2014-06-23 12:16) 

coco030705

こんばんは。
私は昔、京都の美術館で観ました。メト展だったのかもしれません。
記憶に残っているのが「山」です。とても個性的で面白い絵をかく画家だと思いました。自画像がおもしろいですね。なんという足の長さ。そしてタイトルが「猫たちの王」っていうのがおかしいです。(^^) 随所に猫が描かれているのが嬉しいです。また京都に巡回するので、行くつもりにしております。
by coco030705 (2014-06-24 00:00) 

Inatimy

「山」の絵を見てふと思い出したのが、上田敏 訳のカール・ブッセの詩 ”山のあなた”。
Taekoさんが紹介してくださったバルテュスの絵は、詩や短編の挿絵になりそうな感じ。
mozさんところでも作品を拝見してたんですが、一枚目の展覧会のチラシの絵のような
<チラ見せ>っぽいものは、どうも居心地悪くって。
「暖炉の前の人」のように全裸だとまだスッキリするんですけど・・・。
並べてみて見ると、チラシの絵と山の絵、どことなく構図が似てますね。
腕挙げてる人を中心に、猫=横たわる女性、椅子=男性・・・という風に。
ちょっと強引すぎかしら。
by Inatimy (2014-06-25 04:52) 

pistacci

最近すっかり展覧会へ行けないので、こういう形で紹介していただけると
遅くても私はうれしいです。
実は、先に夫人をとりあげた雑誌の特集で、バルテュスの名を知りました。
yk2さんのコメントで、なるほど、そういえばマグリットにちょっと雰囲気が近いかも、
なんて思い出していました。

by pistacci (2014-06-25 23:20) 

moz

展覧会の企画の仕方が、バルテュスと少女とネコ・・・みたいな感じで、それが前面に押し出されて過ぎて、自由に評価しづらかったのかなって思います。
展覧会の後見たテレビ番組でも、そのことを大きく取り上げていたから。
確かに、作品誕生の多くのインスピレーションは少女と女性の変化の刹那、みたいなところにあるのだと思いますが、それだけがきっとバルテュスではないのでしょうね。TaekoLovesParisさんがここに書かれているような、バルテュスもいるのだと思います。ぼくも風景画やふつーの? 肖像画等にとても惹かれました。
今回来ていない作品も見てみたいと思います。
あと、篠山紀信さんの眼光鋭い写真、あれは素晴らしかったです。
by moz (2014-06-26 06:09) 

匁

ニューヨークのメトロポリタン美術館やMOMA
と比較できるってすごいですね。

Wカップも日本は一次リーグで敗退しました。
一次リーグ突破、ベスト8入り、はたまた優勝
の声も聞かれました。
ところが、強豪と言われるチームの試合は日本のレベルとは
数段違うのが、にわかサッカーフアンでも明白。
FIFAランク48位で本大会出場がやっとを思い知らされました。
テレビマスコミは 負けそう などネガティブの発言をすると殺されそうな雰囲気でした。
やっと自由に発言できるようになったみたいで、弱点も聞こえてきました。
by (2014-06-26 11:58) 

TaekoLovesParis

匁さん、こんばんは。
もしや、と思いながら、TVの前に釘づけになって見た日本の3試合ですが、
技量の違いをまざまざと見せつけられましたね。相手のディフェンスに阻まれて、打っても打っても決まらないシュート。逆に相手は、少しのチャンスでも得点する。日本のホンダでも世界のホンダではないですものね。トップスターのいる所は
強いですね。
グループリーグを突破した4年前の南アフリカ大会のときより、確かに日本は、
強くなってるし、ヨーロッパリーグで活躍する選手もふえたけど、世界のレベルも上がってる。気候のせいか、今回は南米勢強いですねー。
マスコミは過剰に盛り上げるのが仕事なのだから、と割りきって、冷静に見るようにすればいいんでしょうね。

準々決勝、準決勝と、これから面白い試合、スーパープレイが見れるのが楽しみです。見ると、48位日本との差が明確にわかることでしょう。
by TaekoLovesParis (2014-06-26 23:05) 

nicolas

バルティス展を観にいかれた、確かmozさんのところでもつぶやいた気がしますが、
奥様の節子さんのほうを先に知りました。
スイスの山奥グランシャレーでのハルミさんも交えての暮らしぶりが、
高校生の頃たまたまみた雑誌で描かれてて、
こんな夢のような生活をされているかたが居るんだなと思ったものです。
ムートンのラベルのほうでもご夫婦で描かれてますよね。
ワイン会で話題に上がるのは、やっぱりアメリカ経由の白ラベル。
エロと芸術って紙一重だけど、真っ白ラベルってスゴイ経緯だと思いました。

Taekoさんの「硬質な人物表現」、すごくウケました!
私だったら、ただ単に「体の硬そうな人を描いてる」としか言えなかったです。(笑)
でも、その「硬質な人物表現」が曲者で、そのお蔭でこの画面は
何かすごく異質な空気が流れている気がします。
一見意味の無さそうなものが、急に意味を帯びているのはそういうコトなのかも
とさえ思ってしまいます。

by nicolas (2014-06-27 16:10) 

TaekoLovesParis

お返事遅くてすみません。ワールドカップ+大リーグ+プロ野球と見るものがたくさんなのに、仕事も忙しい6月です。
▲にこちゃん、私もずーっと前に、たしか「家庭画報」で、和服姿の節子夫人とスイスの立派な山小屋が紹介されていたのを覚えています。だから、にこちゃんのコメントをmozさんのところで読んで、画家だったのね、とちょっと驚きました。しかもムートンのラベル絵を頼まれるほどの腕前。検索で見たら、可愛い写実的な絵でした。アメリカでは白いラベルになってしまったバルテュスのとは180度違いますね。アメリカって、ピューリタンの清い伝統があるから許せないんでしょうね。

「硬質な表現」の人物は「異質」な感じを見る人に与えますね。バルテュスはそこを狙ったのかもしれません。特に横たわる人物のポーズは不自然ですが、それが、決め手になっているのかもしれません。プッサンの「ナルシストエコー」のナルシスを意識して描いたと言われてますが。

にこちゃんの今回の記事の黄色詰め草、雑草クラスの植物の進出という意見に、「ほんと、そうよね!」って思いました。名前が覚えられないほど、つぎから次へと新種が登場していますね。あ~でも、モンサンミッシェルを背景にした赤いケシの写真、すてきです。

▲mozさん、「綺麗と美は違うのかな」という素直な書き出しの記事でしたね。
私も似たことを思いました。すぐれたアート作品であっても、自分はあまり好きでないという場合がありますね。あと、少女から大人になる時期特有のあやうさに惹かれるかどうか、ということが、今回の展覧会のポイントでしょうか。nicolasさんもmozさんのとこのコメントで書いてましたね。
写真が物語る、というのが、今回の篠山紀信の大きなパネル写真で伝わってきました。見た人の心に残るような表情を捉えてますよね。
by TaekoLovesParis (2014-06-30 01:05) 

yk2

taekoせんせー、ここはあえて水栓とお玉(^^ゞに突っ込んでおきますね~♪。

×・・・ナルシストエコー
○・・・ナルシス(ナルキッソス)とエコー

これじゃ可哀相にエコーがナルシストみたいですがな(笑)。
by yk2 (2014-06-30 12:21) 

TaekoLovesParis

にこちゃん、ごめんなさい。変換ミスで、yk2さんが指摘してくださったとおり、
これじゃ、エコーがナルシストになってしまうわね。
「ナルシスとエコー」なんです。 水に映る自分の姿に恋焦がれ、いくら話しかけても、答えてくれない自分の影。落胆し、何も食べず、憔悴し、山の絵の人物のように、ぱったりと倒れてしまうナルシスです。

by TaekoLovesParis (2014-07-01 02:09) 

TaekoLovesParis

yk2さん、ご指摘ありがとう。自分で笑っちゃうほどの間違えぶり。
エコーは、私の誤字で口もきけない上に、ナルシストにされてしまい、かわいそう
なことをしました。ナルシス→水仙→水栓と解く、お玉ときいて何と解く?→小玉→こだま→エコー う~ん、ちょっとムリがあるなぁ。

で、本題。Bunakmuraの「メト展」にこの大きな絵が来たのは画期的でしたね。
横になっている女性が、ナルシスの逆向きなんて説明を読むと、余計、わけわからなくなりますねー。だって、なんで、ここにナルシス登場?これは登山で健康的主題だから私は○ですが、ロリータっぽいのは△でした。景色や肖像画が特別印象に残るかといえば、そうでもないし(あくまで個人的意見)、配置された人物が気になる「山」と上から4番目のMOMAの絵が私は好きなんだと確信しました。
バルテュスが多面性を持っているからこそなんでしょうね。ひとりの作家の絵、すべてを好きになるっていうのは、難しいことかもしれません。

そう、紀信の写真、構図もいいし、表情の捉え方もいい。これぞプロの写真っていう感じでした。yk2さんは人物写真も撮ったりなさいますか?
by TaekoLovesParis (2014-07-01 02:38) 

TaekoLovesParis

cocoさん、「山」をご覧になったら、やはり覚えてますよね。ユニークですものね。
映画の一場面のカットのような絵もありますね。巡回したらぜひ、ご覧になってください。バルテュスが猫好きだったことが、いくつもの絵から伝わってきます。ここに紹介しなかったけど、レストランの壁画として描いた「地中海の猫」も面白い絵ですよ。

by TaekoLovesParis (2014-07-01 02:44) 

TaekoLovesParis

Inatimyさん、「山」ときけば、「山のあなた」が思いうかぶ、同じよ。私は中学の時、暗誦させられたから覚えてるの。でも、そらんじるだけで、いまだに意味がわからない。そして私も<チラ見せ>、扇情的なのは好みではないです。フラゴナールの「かんぬき」なら好きですけど。
構図の類似性ね、腕を上げてるところが何よりも際立って似てますね。さらに猫とイスで三角形構図、安定感を出してますね。Inatimyさんは、いつも絵をとっても丁寧に見てくださるのでうれしいです。
by TaekoLovesParis (2014-07-01 02:57) 

TaekoLovesParis

pistaさん、<遅くてもうれしい>って、援護してくださると、ほっとします。
バルテュス夫人の若い頃を描いたデッサン、とっても魅力的でした。バルテュスが
惚れるのもわかります。和服が似合って、頭がよくて、いつも夫をたててと昔ながらの日本の賢婦人ですね。それで画家。こういう立派な日本人がいるのは誇りに思えます。
マルグリット、そうね、不意をつくという点で似てるところがあるわね。
by TaekoLovesParis (2014-07-01 03:07) 

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