ゲティ美術館 [外国の美術館、博物館]
私がゲッティ美術館のことを知ったのは、もう15年くらい前のこと。日経新聞のコラム
記事でだった。「アメリカの石油王ポール・ゲティが山を切り開いて美術館をつくった、
そのスケールの大きさは日本では計り知れないものであり、所蔵作品もすばらしい」
それから数年後、N嬢が、「ゲティ、行ってきたわ。山の上だからケーブルカーに乗って
行くのよ。さすがアメリカね、すごく広いの」
↓ これがケーブルカー。無料。入場料も無料と太っ腹。
ケーブルカーを降りると、正面に白いモダンな建物がある。
マイヨールの浮かんでいるような女性の彫刻が配置され、奥には白い少年の彫像。
ここが入口。ジェームズ・アンソールの展覧会をやっていたので、看板が出ている。
SCANDALOUS ART 大げさなタイトルは、骸骨の絵が多いアンソールだからかな。
友達が、「西洋絵画」ガイドツアーに参加しようと言うので加わった。
代表的な絵画の前で説明をしてくれるから、おすすめの絵がわかる。
一番の名画は、ゴッホの「アイリス」。大変高価な値段(72億円以上)で買ったそうだ。
赤い土の地面から1本1本の花が音楽のように咲き乱れるパワフルな絵。
葉は剣のようである。色の対比も美しい。
ミレーの「鍬を持つ男」
これでは、小さくて見えにくいが、男の疲れてしんどい表情が、絵が発表された
当時、話題になった。この絵は、労働者階級のシンボルと長年考えられてきたが、
最近では、ミレーはリアリズム(どこまで真実に近く描けるか)を追求したのだと
言われている。
一方、都市の生活を描いて人気があったのは、ジェームズ・ティソ。
「日本の工芸品を眺める娘たち」
ティソは、日本の工芸品の蒐集を早くからしていて、ジャポニズムが広まるのに
一役買っている。
ルノワール「散歩」1870年も、印象派初期、屋外の光を意識した絵。
男性の顔は光で影の部分となり、女性の白い服は光があたり輝いている。
服装でわかるようにパリの中産階級の生活を描いている。
印象派の先駆者モネの「朝の光のルーアン大聖堂」1894年
朝の光、昼の光、夕方の光、と時間ごとに描いたルーアンの大聖堂。
朝なので、全体の色調が青みがかっている。
ドガ「踊り子」Dancer Taking a Baw(The star) 1877年
ゲティ美術館は、ゲティ氏の遺言により、毎年、絵を購入することになっている。
2011年12月に購入したのが、マネの「Brunet夫人の肖像」。1860-3年
長い間、個人蔵で、「フランスのモナリザ」というふれこみの絵。
マネが古典回帰でヴェラスケスやゴヤに倣っていた時代のもの。背景に景色を
置くのは、17~18世紀の流行。
セザンヌ「永遠の女性」1877年
男性は皆、女性に支配されているという意味合いの絵。
中央に女性、ベッドの天蓋によるみごとな三角形構図。
周囲にいる男性たちは、音楽家、枢機卿、王様、、、さまざまな職業。
右端の画家はセザンヌ自身。
まだまだご紹介したい絵がたくさんあるので、次の記事にします。
外国のお金持ちはスケールが違いますね。
by よしあき・ギャラリー (2014-09-12 06:24)
無料!すばらしい。
ルノアールの光の捉え方にうっとり。
男性の顔に影が、こういうシチュエーションあるなぁ。。。
絵画いいですね。やっぱりいい。
油絵やりたいんだよなぁ。。。画伯カエル。笑
そうそう、三菱のチケット購入したので、近日中に行って来ますね。
あの画気になってて。。。やっと芸術の秋突入です。
by カエル (2014-09-12 07:33)
アメリカ式"富の還元"なのでしょうが、それにしても豪勢だ。
行ってみたいなぁ。
by ぶんじん (2014-09-12 09:53)
わー、ゴッホのアイリス、スゴイです。
なんか動き出しそうなこのニョロニョロ感、なんだろう。
夢に出てきそうな気がしてきます。
Taekoさんの言われるように、パワフルだからかも。
何かパワーを持っていますね。
高価で買ったということは、それだけ価値が高いのかな。
by nicolas (2014-09-12 16:09)
こんばんは。
アメリカの大金持ちは桁が違いますね。すごい!の一言です。
ゴッホのアイリスのすばらしいこと。Taekoさんがおっしゃるように、パワーを感じる絵です。私はジェームズ・ティソが好きです。美しいですね。前に何かの展覧会で、子供のまわりに日本の提灯のようなものが描かれていた絵があったんですが、とても好きでした。
ルノワールの光の描き方の美しいこと。もちろんモネも。ドガもすばらしいし、マネ、セザンヌはちょっと変わった絵ですね。
なんとすごい美術館でしょう。次回の記事を楽しみにしております。
by coco030705 (2014-09-12 20:27)
マイヨールの像は Air かな。
テュイルリー公園でトラとライオンを追いかけてる時に見た覚えが。
72億円以上のゴッホのアイリスの絵をポンと買っちゃうところ、
さすが石油王の美術館ですね^^。 毎年、絵を購入しなくちゃいけないのに、
入場料もとらず、ケーブルカーも無料とは恐れ入りました。
ジェームズ・ティソの絵、似た感じのを見たことがある・・・と思ったら、
フランスで活躍したベルギー人画家のAlfred Stevens アルフレッド・ステヴァンス。
ゴッホ・ミュージアムでの企画展で知った画家でした。
ちょうどティソと同じ頃に活躍してて、ジャポニズムも。
このセザンヌの「永遠の女性」はリュクサンブール美術館での<セザンヌとパリ>展で
観ました。 確か国立西洋美術館も所有してましたよね。
並んで展示されてたので覚えてます^^。 ブログ記事の続きも楽しみにしてますね♪
by Inatimy (2014-09-13 07:24)
このゴッホに72億円か~@@。オイルマネー、たしかにすごいですねぇ。
でも、もし僕がアンセルムなら、この『アヤメ』の花のうてなには飛び込まないかも。だってなんだか見た目、食虫植物みたいなんだもん(笑)。
この絵から音楽かぁ。100人が考えたらもれなく別々の100曲が挙げられそうだけど(^^;。僕にはポロックよりもゴッホの方がよほどオーネット・コールマンの音楽が似合う気もするし、今朝はこの記事読みながら久々にパガニーニのカプリースなんぞを聴きました。カオスっぽいのが気分かも(笑)。taekoねーさんはこのアイリスからどんな音楽を聴いたんでしょね?(^^。
by yk2 (2014-09-13 10:07)
印象派の絵は私でもわかるし、優しい雰囲気で好きです。
それを自分で集めてしまうお金持ちって、すごいな。
そのコレクションを出し惜しみせずに公開してくれて、ありがとう!って感じですね。
by チョコローズ (2014-09-13 14:05)
随分有名な画家の名前が並んでいますね。
ドガの「踊り子」
この絵は上野の西洋美術館の
常設展で見たような気がしましたが?。
by 匁 (2014-09-13 16:36)
ロープウェイに乗っていく無料の美術館、やはりアメリカの大富豪はスケールが違う。
ゴッホのアイリスのように、個人所蔵の美術品は個性が反映されるので、そんなことも感じながら鑑賞するのも楽しいのではないでしょうか。
それにしても、凄いコレクションです。
by ひこうき雲 (2014-09-16 20:46)
コメントをいただいたのにお返事が遅くてすみません。
▲よしあきさん、特にアメリカと中東、オイルマネーはスケールが違いますね。
▲カエルちゃん、やっぱり、写真と比較して見るのがカエルちゃん!油絵を始めると、光の捉え方がもっとよくわかるんでしょうね。
ヴァロットン展、見れましたか?版画のモノトーンの世界は写真の参考になる?
ヴァロットンには、構図の面白さがありますね。
▲ぶんじんさん、もしロスにいらっしゃる機会があったら、ぜひ。GettyMuseum
というと通じなくて、GettyCenterが正式名称。その中のMusuemなんです。
▲にこちゃん、ゴッホのくるくる渦巻きもパワフルだけど、こちらは凝縮されてパワフル。ゲティは資金が豊富なので、毎年、何を買うかが注目されてます。だって、
72億をぽんと出すんですものね。当然、買い付けのキューレーターも超一流なので、図録に紹介されていました。
▲cocoさん、ゴッホのアイリスは、白い花瓶にはいった絵がメトロポリタン美術館、黄色い花瓶にはいった絵がゴッホ美術館にあるけど、やはり、花瓶の花と地植えの花では、勢いが違います。
ティソの絵、特に女性が美しいですね!さらに小物に凝っていますね。提灯のもあったんですか。ゲティには、もう一枚、ピンクの服の若く美しい公爵夫人の肖像画がありました。
▲Inatimyさん、いつも調べてくださってありがとう。空中に浮かんでるようで、
「Air」なのね。階段に置くというのが、いいなって思いました。
つづきあり。。電話なので。
by TaekoLovesParis (2014-09-21 10:56)
つづきです。
Inatimyさん、「テュイルリー公園でトラとライオン」、見ました。Airは、手で風を「おっと」とさえぎっているようなポーズだったんですね。遠くからは優雅に見えたけど、Inatimyさんの写真で見ると、かなり力強いってわかりました。
ステヴァンスは、ベルギー幻想美術展でマネに似た画風の絵を見たことがあります。調べてみたら、日本の調度品を配した作品をたくさん描いてるんですね。
セザンヌの「永遠の女性」、西洋美術館で見たことないと思ったら、デッサンに絵の具で色を配した水彩なんですね。西洋美のほうがゲティの油絵より年代的にあとだから、セザンヌは「永遠の女性」をずっと追求してたんですね。並べて比較して見るのは変遷がわかり面白いですよね。
▲yk2さん、このアイリスは写真が小さくてわかりにくいわね。実際は横が1m近くある絵だから、実物大なんですよ。花を観察できます。花を覗いた途端にぱくっと、、食虫植物だなんて、アンゼルムになったつもりで文学的な表現をしてくださいな。一輪白い花がすくっとあり、その奥にオレンジの花、白い小さい野の花と草原のよう。アイリスの花と葉たちはそれぞれ勝手な方を向き、風を受けている感じがしたので、音楽と思ったの。パガニーニのカプリース、ドラマティックですね!風が時々かなり強くて、葉っぱも花も揺れる感じすらします。ゴッホも揺れているアイリスを見てたのかしら?それとも揺れは心象風景。私は激しいゴッホをなだめるような優しい曲、バッハの無伴奏パルティ―タの3番、ガボットでこの絵を見ました。重音部分の強さが葉や花々の重なりそうで重ならないところを表してるような気がして。。
オーネット・コールマン、空に突き抜けていくようなサックスの音色。今の季節、澄んだ空の秋にぴったりで、最近、時々、聞いてるの。私はゴッホの絵はジャズよりもクラシックの方が似合う気がするわ。パガニーニの超絶技巧の映画、見逃したけど、どこかでやらないかしら。
▲チョコロさん、印象派の絵は、ルノアールとかモネ、マネ、それぞれ作品を見てるものが多いから、親しみがありますよね。今回もモネのきれいな花の絵があって、モネの花は珍しいわね、と思いながら見ました。巨万の富が集まると、社会に還元したくなるんでしょうか。
▲匁さん、そうそうたるコレクションでした。しかも、遺言により、これからも毎年、絵を買うのだから、もっと充実して、すごいですよね。
ドガの「踊り子」は、西洋美術館の常設にはないけれど、いろんなパターンでいくつも世界中に、日本にもあるから、展覧会などで見る機会が多いですね。
▲ひこうき雲さん、おかえりなさい。迫力ある写真を見せていただきました。
美術館は西館で東館、本館、さらに、、といくつも建物があり、一日遊べるようになっています。ゲティが惜しみなくお金を出すので、今まで絵を館にしまっていた貴族たちも売る気になったりするようで、そんなストーリーも面白かったです。
by TaekoLovesParis (2014-09-21 16:35)