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メトロポリタン美術館のアメリカ絵画 [外国の美術館、博物館]

三菱一号館で、7日から始まる「ワシントン・ナショナルギャラリー展」に、どんな作品が来るの
だろうと、サイトを見に行ったが、まだ、「近日公開予定です」のまま。あと3日なのに。

そういえば、2012年のメトロポリタン美術館の記事が書きかけだったと思い出したので、
遅まきながらアップします。

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威風堂々、ギリシア風の立派な建物。

中庭に面した光がたくさん入る明るいロビーは、Scalpture(彫刻) Garden という名前。
高い位置にある「狩りの女神」であるダイアナの像は、美しいプロポーション。
昔、この2倍の大きさのものがマディソンスクエアガーデンにあり、ニューヨークの風見鶏
だったそう。

MetDiana.jpg

Scalpture Garden の横の通路は、イスラム風のブルーのタイルで装飾されていて、
奥のティファニーのランプとステンドグラスが美しい。

MetTiffany3.jpg

ステンドグラスの両脇はブドウの木模様で、真ん中は、藤の花模様で日本画の雰囲気。

MetTiffany.jpg

アメリカ絵画の部屋は、いくつもあるが、中でも、目立っていたのは、
「デラウェア川を渡るワシントン」という6m50㎝の巨大な絵。アメリカの歴史の原点
なのだろう。

アメリカを代表する肖像画家といえば、ジョン・シンガー・サージェント(1856~1925)
流麗なタッチで、実際以上に美しく描くと評判だった。
サージェントは父がアメリカ人医師。イタリアで生まれ、パリで美術教育を受け、
代表作「マダムX」をサロンに出品したが、品がないと酷評を受けたため、ロンドンに
移住した。後年は、毎年、アメリカを訪問、ボストン美術館の天井画を制作した。

「Mrs.Hugh Hammersley」(1892) モデルはロンドンの銀行家夫人29歳。
フランスふうのソファーに座り、エレガントな雰囲気。ドレスの生地ベルベットの光沢表現
がすばらしい。この絵の評判で、ロンドンでサージェントに肖像画を頼む人がふえた。

「ウィンダム姉妹」(1899) 上流階級の3姉妹。3人共が嫁いだ後、実家で描かれた。
後ろに見えるのは、ジョン・フレデリック・ワッツによる彼女たちの母の肖像画。
3姉妹の花のようなドレス、白い花が優雅さを強調している。

Sergent.jpgSergen3tSisters.jpg

「日傘をさす2人の女性」(1888)
サージェントは1885年からジヴェルニーのモネの家を度々訪れ、印象派っぽい風景
を描いた。これはイギリスのバークシャー地方の田舎で描いたモネふうの絵だが未完。

SergentNew.jpg

サージェントとちょっと違うけど、、と目を留めたのは、この絵。
ロバート・ヘンリ(1865~1929) 「仮面舞踏会のドレス」(1911)
ロバート・ヘンリは、街の情景や人物を描き、市民生活に密着した新しい写実絵画を提唱、
20世紀初期のアメリカ画壇の指導的地位にあった。ホッパーやデーヴィスを育てた。

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アメリカを代表する印象派の画家メアリー・カサット(1844~1926)
(その生い立ちや画業は、yk2さんのカサット記事に詳しく書かれています。)

メアリーは、1890年からは、甥や姪などをモデルに子供を題材にした絵を描く。
母と子(昼寝から起きた子)(1899)
美しい装いの母が子供の足を拭いている。ブルーの瞳でブロンドのJulesは、しばしば、
カサットのモデルになっている。色彩豊かで、型にとらわれない自由な空間構成の絵。

母と子(楕円の鏡)(1899)
ルネッサンス絵画の聖母子のような構図。鏡の楕円形が子供の頭の上の天使の光輪と
関係づけることができる。カサットの絵の先輩ドガは、ルネッサンス絵画のようだと認め
ながらも、「きみの良い資質と悪い点が出てる絵。子供のイエスと英国人の乳母のようだ」
と語った。

Cassat.jpgCassat3.jpg

「縫物をする若い母」(1910)
母の膝に寄りかかって、縫物の邪魔をしないようにしている子供。
でも、母は子供が気になるので、ちらっと子供を見ては、縫物を続ける。

Cassat1.jpg


「別荘の庭でかぎ針編みをするリディア」(1880)
カサット一家はパリ郊外の別荘で夏を過ごしていた。姉リディアは、美しく
着飾って、かぎ針編みにいそしんでいる。屋外での制作に関心が薄かった
カサットだが、リディアの白い大きな帽子に、まぶしい夏の太陽がさしている。

Cassat4.jpg


ウィンスロー・ホーマー(1836~1910)
身の回りの生活や風景を得意とした。人々が海辺で楽しんでいる絵が多い。
「Eagle Head,(満ち潮)、マサチューセッツ州」
満ち潮の大波で濡れたスカートを絞っている女の子。犬がかわいい。

MetHomer.jpg

エドワード・ホッパー(1882~1967)
単純化された構図と色彩でアメリカンライフを描いた。
灯台や郊外の景色の絵が多い。

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次回は、印象派の絵を紹介します。


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コメント 10

hatsu

私もサージェントに、肖像画お願いしたいなぁ♪
なんて思ったりして^^

ウィンスロー・ホーマーもすてき。
海辺で遊んでいる感じが、とてもほんわりしますね。
by hatsu (2015-02-05 06:12) 

よしあき・ギャラリー

目が洗われます。^^
by よしあき・ギャラリー (2015-02-05 06:46) 

gillman

ホッパー、見たいなぁ。
by gillman (2015-02-06 13:18) 

yk2

今回ここに書かれているドガからカサットへの作品評は、彼がいつだって気難しい皮肉屋と云う点を差し引いても、彼女には「痛い」評だったでしょうねぇ。誰よりもカサットを評価しているのは他ならぬドガだったわけだし。メアリーは若い頃パルマに滞在していたことがあるので、コレッジョなどの聖母子像を相当じっくり研究出来ているはずなんですが、それでいて聖母役たる母親が「英国人の乳母のよう」だなんて云われてしまうとは・・・(苦笑)。要は母子像を描いていながら、そこには聖なる神々しさも親子の慈愛も感じられないってこと(?)をドガは云いたかったのでしょうか。

だけども、感情や情緒的なストーリーを極力作品に持ち込まずに、構図と様式で勝負する!って点でドガとメアリーは共通軸を持っているわけで、彼女にしてみれば「あなたにだけは云われたくないわよ!」って、またカチンと来て発奮材料にしたかもしれませんね(笑)。まぁ、カサットの「母子像」は年を経るにしたがって定形化してしまい、印象派展に参加した当時の前衛的な輝きを後年失ってしまったのもまた事実だと、カサットが好きな僕でさえ思ってしまう(=ドガの批判も解る気がする)ワケなのですが(^^;。
by yk2 (2015-02-06 14:55) 

Inatimy

ジョン・シンガー・サージェントの「マダムX」、
黒いドレスに白い肌のコントラストが印象的で、
身体は正面向いてるのに、横顔で、腕や腰のくびれなど身体のライン、
服のデザインのラインがなんとも色っぽい^^。
確かに、なんか羽織ったほうが・・・と勧めたくなるのは確かですねぇ。
私が気になるのは、この中だとロバート・ヘンリかな。
調べて見てたら、立ち姿の絵、この他にもたくさん描かれてて、
紳士、ご夫人、闘牛士、踊り子、花嫁・・・と様々。 
見比べて楽しんでいたら、コメント書くのが遅れちゃって^^;。
by Inatimy (2015-02-06 22:27) 

匁

最後のエドワード・ホッパーの絵が気になります。
灯台の絵ですが、この構図の描く地点を決めるまでに
何時間も掛かっている?自宅の近く?。
このような絵画は広い部屋で天井の高い?所有するギャラリーで
飾られているのと、日本の狭い美術館で展示されているのとは
相当印象が違うのでは?匁には比較しようがありませんが?。



by (2015-02-07 09:17) 

moz

メアリー・カサットは、原田マハの「ジヴェルニーの食卓」、ドガの肖像の主人公で登場していました。
ドガの影響が大きいのかなと思っていましたが、ルノワール? でも、やっぱり、ドガの影響もあるのかな?
もっと見てみたい画家です。
ワシントン・ナショナルギャラリー展、どんな絵が来るのでしょう?
ブリヂストン美術館も改修になるようですし、たくさん見ておかないといけないかなと ^^;

by moz (2015-02-07 17:01) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます。
▲hatsuさん、実物以上に、、に反応したでしょ(笑)。
ホーマーには、夜の海辺でダンスしてる絵があって、私は、それも好きです。
やはり、ほんわり、なのよ。

▲よしあきさん、いいものは、いいですねー。時代を経ても。

▲gillmanさん、ホッパー、もちろん灯台もいいけど、私は、「ナイトホークス」が
一番好きです。

▲yk2さん、<メアリーは若い頃パルマに滞在していたことがあるので、コレッジョなどの聖母子像を相当じっくり研究出来ているはず> → そうだったんですか!それを知って、この会話を読み、絵を見ると、いっそう面白いですね。<昼寝から起きた子>の母は慈愛に満ちているし、優しい顔立ちなのに、<楕円の鏡>の母は顔立ちがいかついし、右手が子供の指をつかんでいるというのが聖母っぽくない。腰に手をあてて優しく抱いているほうがいいのに。ドガは言い得て妙ですね!

<カサットの「母子像」は年を経るにしたがって定形化してしまい、印象派展に参加した当時の前衛的な輝きを後年失ってしまった> → そうだったんですか。
yk2さんのカサット記事をもう一度、じっくり、読んだけど、この辺りの記述がなかったのは、メアリー・カサット後編で書く内容だったんでしょうね。後編、待ってますよー。

▲Inatimyさん、今だったら、「マダムX」の服など、問題にならないけど、当時、スリップドレスはダメだったと、他の肖像画の服装からわかりますね。イギリスのテート美術館には、マダムXの習作、Study of Mme Gautreau があって、こちらは、肩ひもが片方ないのよ。どうしてかしら(笑)

ロバート・ヘンリの中で、私がいいなと思ったのは、ホイットニー美術館蔵の
「ガートルード・ホイットニーの肖像」、アラビアっぽい服もすてきで、すごくおしゃれな人ってわかる肖像画。ガートルードは大富豪。現代美術のコレクターとして有名で、ホイットニー美術館を作った人。

▲匁さん、ホッパーの風景画には、時間が止まったかのような静けさがあります。この灯台も人ひとりいなくて、静かですね。構図や絵を描いた場所に思いを馳せるのは、匁さんが絵をお描きになるからでしょう。
この絵が、メトのどこに展示されていたか、覚えがないのですが、外国の美術館は天井が高いですね。天井が高いと、絵を縦に3段で飾ってある所もあります。ごちゃごちゃした感じで、私は、好きな展示方法ではないんですけどね。

▲mozさん、原田マハの「楽園のカンヴァス」は、mozさんのオススメで読んで面白かったです。「ジヴェルニーの食卓」、ここで紹介していただたいて、面白そうだったので、「エトワール」の項を読みました。「14歳の小さな踊り子」は、横浜美術館のドガ展で見て、踊り子の顔が強烈な印象の彫刻だったので、いっそう興味深く読みました。完成した当時は、1mもあって、チュチュをつけてトウシューズを履いてたんですってね!
ワシントンナショナルギャラリー展も始まりましたね。いつ行こうかしら。
by TaekoLovesParis (2015-02-09 01:19) 

moz

えーっ、読んで頂いたんですね ^^;
でも、面白い本でした。全部良かったけれど、タイトルにもなっているジヴェルニーの食卓の余韻はとても素晴らしいものでした。
読んで、モネの絵がもっと見たくなりました。
by moz (2015-02-14 06:11) 

TaekoLovesParis

mozさん、「ジヴェルニーの食卓」のモネでは、ブランシュがお料理を作るところ、
庭の野菜を使ったりして、母のレシピで作るのを、いいなぁと思って読みました。
私も自分で育てた野菜をとって料理する生活をしたいです。
マティスの項も面白かったです。
by TaekoLovesParis (2015-02-18 02:49) 

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