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ワシントンナショナルギャラリー展(印象派コレクションから) [展覧会(西洋画)]

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三菱一号館へ「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展~私の印象派~」を見に行った。
ワシントン・ナショナル・ギャラリー展は、4年前に、国立新美術館で大々的に開かれたが、
今回のは、「私の印象派」というサブタイトルがついている。ワシントン・ナショナル・ギャラりー
の創設者アンドリュー・メロンの娘エイルサが自宅や別荘に飾るために集めた絵が中心の
展覧会である。

大きな作品はない。なぜなら、エイルサ自身が眺めていたい作品が主だからである。
まずは、風景画から始まった。どの絵もほぼ同じような大きさ。高さが揃っているので、
展示室全体を見渡した時、安定感がある。

1、屋外の絵

モネの「アルジャントゥイユ」、ピサロの「柵」、「ルーヴシエンヌの花咲く果樹園」、
何度か日本に来ている絵。

シスレーの「ポール=マルリーの洪水」、オルセー美術館のとよく似ている。

シスレー「牧草地」1875年
のどかな牧草地、モネやルノワールの絵にも出て来そうな景色だが、空の部分が
多いのがシスレーっぽい。

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ルノワール「花摘み」1875年
34歳の若く瑞々しい作品。

RenoirHana.jpg

ゴッホ「オランダの花壇」1883年
パリに出る前、オランダ時代の作品。花の色が明るく美しい。

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ブーダンの「トゥルーヴィルの浜辺」は、ヨットの浮かぶ海辺のリゾート。
上流階級の人たちが集った。

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「ドーヴィルのカジノの演奏会」1865年 ドレスの競演。何人、人がいるのだろう。
建物の屋根の下にも大勢の人。

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ルドン「ブルターニュの海沿いの村」 1880年
ルドンがよく使う綺麗なブルーとベージュの配色。

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2、屋内の絵

ベルト・モリゾ「窓辺にいる画家の姉」1869年
モリゾの姉も画家であったが、結婚で絵の道をあきらめるしかなかった。
手に持った扇を眺める姉の表情には、子供を身籠り、絵をあきらめるしかない
寂しさが表れている。妹だからこそ描けた心理描写。

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ルノワール「髪を編む若い女性」1876年
ルノワールは経済的な理由から、若い女性を挿絵ふうに描くポートレイトを
はじめた。どれも優美さが魅力である。

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ルノワール「猫を抱く女性」1875年は、チラシに使われている絵。
淡い色合いの「アンリオ夫人」もあった。
ピアニストのホロヴィッツからの寄贈品、「少女の横顔」もあった。

マネの「タマ、日本犬」、黒と白の狆(ちん)。
絵にTAMAと描きこまれ、タマにずたずたにされた中国人形がころがっている。

3、画家の肖像画(エイルサの弟ポール・メロンのコレクション)
若いラトゥールは、鬼気迫る鋭いまなざしでこちらを見据えている。情熱の画家を
イメージしたのだろうか。
ドガ、ヴュイヤールも若い。ゴーガンは「カリエールに捧げる自画像」

4、静物画

5、ボナールとヴュイヤール
2人は、アンティミストintimiste (親密)と言われている。
親密、つまり、身近な肖像や室内画を描くことである。

ボナール 左) 「革命記念日のパリ、パルマ街」1890年
縦長の画面で斜めから見た構図、奥行きを短縮。
日本びいきのボナールは、日本の版画の手法を用いている。

右)「さびれた街の二匹の犬」
二匹の迷い犬、うろうろする様子が閑散とした街の風景の中で和む。
白、グレー、ベージュ、茶色、ピンクという押さえた色合いに洗練を感じる。

bonard.jpg Bonard2chien.jpg

ボナールには、こんな強い色合いのものもある。
「セイヨウスモモ」1892年
BonardFruits.jpg

ヴュイヤールは、自分の家や家族の生活の室内画が多い。
左)「黒い服の女性」1891年
地味な色彩、単純化された形。テーブルの上には、オレンジののった皿と猫だけ。
モデルは姉らしいが、肖像画ではないので、顔をはっきりさせない。

右)「黄色いカーテン」1893年
黄色い布のベッドカバー。黄色のカーテンをあけている女性は、奥にある化粧鏡で
これから化粧をするのだろうか。朝の一コマ。花柄の壁紙が絵を華やかにしている。

Veuiller.jpgveuilleCartain.jpg

ヴュイヤールは全部で8点。こんなにたくさん見れる機会はまたとないから、ヴュイヤールを
好きなかたはぜひ、ご覧になってください。
ボナールも9点。今まで見てきたボナール作品とは違うものが多く、新鮮で面白かった。

24日までです。


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コメント 20

コザック

おはようございます。
Taekoさんの丁寧な解説と感想読んでたらまた行きたくなってしまいました(^^)/
モリゾは来月映画が公開されるのでちょっと違った視点で観ちゃいますし・・。
今週いっぱいなんですね☆

by コザック (2015-05-19 07:33) 

yk2

確かに日本でヴュイヤール8点はなかなか一度には拝めませんね。

今回はカサットが1枚も来なかったんだな~が、この展覧会を観た僕の感想でした。4年前は結構いい扱い(?)を受けてたけど、エイルサさんのお好みではなかった・・・ってコトですね(^^;。
by yk2 (2015-05-19 23:27) 

TaekoLovesParis

コザックさん、こんばんは。
名画は、見るたびに良さを再発見できますね。
映画「ベルト・モリゾ」、楽しみにしています。予告編を見たら、モリゾの描いた絵の場面の再現がいくつもあったので、わくわくでした。
「Mommyマミー」という映画、なかなか面白かったです。時々、画面サイズを変える手法が注目されていたけれど、それは、どっちでもよかったです。むしろ、内容のほうが面白かったなぁ。よかったら見てください。バードマンより、わかりやすいですから(笑)。
「イタリアは呼んでいる」も、映画をたくさん見ているコザックさんには、軽く笑える箇所が多くいと思うので、おすすめです。
by TaekoLovesParis (2015-05-20 00:22) 

TaekoLovesParis

yk2さん、今回のWNG展は、エイルサ・コレクション部屋の改修工事のため、貸し出されたものなのだそうです。エイルサが画商と相談しながら、コレクションをふやしていった経緯を読みましたが、カサットという字は出て来ませんでした。好みじゃなかったんですね。ピサロやルノワールが好きだったようです。今回のマネやドガの馬の絵はエイルサのコレクションではないんですよ。展覧会として形をつけるために、偏らないよう他のコレクターのものの出品が結構多かったとわかりました。
エイルサは、ヴュイヤール作品を画家のアトリエから直接手に入れ、NYのアパートメントに飾っていたそうです。モリゾの作品は、ジュリーの婿から購入したそうです。
by TaekoLovesParis (2015-05-20 00:45) 

Inatimy

ゴッホの絵、カラフルな花の上に、オランダらしい空^^。
できればシスレーの「牧草地」のような空がいいけど、
ゴッホの描いた空がリアルで妙に納得です。
エイルサが眺めていたい作品・・・私だったらどれを部屋に飾っていたかなと
考えて選んだのは、ボナールの「セイヨウスモモ」。
実が白っぽいところ、よく雰囲気が出てるなぁ、と♪ 西洋スモモ大好きで^^。
by Inatimy (2015-05-20 16:33) 

baby_pink

どれも柔らかく暖か味の感じられる色あいですごく好きです.。^^
こんな絵がお部屋に飾ってあったら、気持ちも穏やかに、いつも
優しい気持ちで過ごせそうです^^
特に「牧草地」のお空が、まるで下に広がる牧草地の柔らかい緑が
高く広い空に映ったような暖か味感じる色合いに、ふわっと心が温まりました。✿*

by baby_pink (2015-05-21 06:07) 

moz

気になっていて結局行けそうにないのですが、 ^^; そうなんですね、
今回の展覧会の絵たちは、「エイルサが自宅や別荘に飾るために集めた絵」、とても私的な空間に飾られていた絵なんですね。
そういうコンセプトとお聴きすると、また行きたくなってしまいます 笑
その人がどんな感性の人なのか、どんな画家の絵がどんな種類の絵がと、とても興味が惹かれます。
大きくなくて、親密な絵と言うものも良いですよね。ヴュイヤールも価値あるものだと思います。 ^^v
ゴッホのオランダの花壇も良い画ですね。ゴッホらしいけれど、とても優しい感じがしてこの絵良いな。

by moz (2015-05-21 06:29) 

匁

今、風景画に凝っているので
シスレー「牧草地」1875年 が好きですね。

ゴッホ「オランダの花壇」1883年 の雲は
花曇りなのか?良く表れる現象ですね。
G-T戦
T軍 土俵際剣が峰で落っこちそうです。
こらえきれるか?!楽しみにしています。

by (2015-05-21 17:01) 

TaekoLovesParis

匁さん、TVで試合見てました。勝ちを譲っちゃいました。鳥谷、いいとこで打ちましたね!G軍だって、由伸がヒットで逆転の可能性大ありだったのに、なんか元気なく終わってしまい。。とほほ。T軍が剣ヶ峰状態から一歩抜けるかどうかは、ヤクルトの試合結果ですね。

匁さんは、風景画「新緑のメタセコイヤ」でしたね。水彩はやさしい雰囲気で、風を感じます。ゴッホの空は、オランダ在住のInatimyさんが、「オランダらしい空」とコメントくださってるので、こういう空がよくあるんでしょうね。
by TaekoLovesParis (2015-05-21 21:39) 

TaekoLovesParis

Inatimyさん、こんなに空が高いのに雲がたちこめる、って、オランダではよく見かける空なんですね。この展覧会の一番初めの作品は、ヨンキントの「曳舟道」でした。広い空、もくもくとした雲、遠近法のお手本みたいな絵で、Inatimyさんの写真で見たことがあるような田園風景でしたよ。

セイヨウスモモって、見たことないから、どんなだろう?って思ってました。日本で見るスモモより大きいみたいね。
by TaekoLovesParis (2015-05-21 21:54) 

TaekoLovesParis

pinkちゃん、いつも詩人してるpinkちゃん。写真にぴったりの言葉が添えられてる記事を読んでは、pinkちゃん、いま、幸せでよかったね、って思ったりしてます。「牧草地」、新緑の今の季節にぴったりの絵。色合いもすてきだし、ぽっかり浮かぶ雲もかわいいですよね。
by TaekoLovesParis (2015-05-21 21:58) 

TaekoLovesParis

mozさん、部屋にかける小さめの絵、なので、三菱一号館にはぴったりでした。国立新のような大きい会場では、冴えなくなってしまうでしょ。
エイルサの父アンドリュー・メロンは銀行王。鉄鋼王カーネギーと並ぶお金持ち。エイルサは小さい時から良いものに囲まれて育っているから眼も肥えていたでしょう。画商さんが出入りして、いろいろ相談にのってくれてたし、病気がちだったそうなので、よけいに絵と過ごす時間が長かったのでしょう。初めに買ったのは、ピサロの風景画、それから上の2つ、ボナール、ルノワールとコレクションしていったそうです。ヴュイヤールはNYのアパートメントの自室に合いそうですね。ゴッホの色彩、いいですねー。

by TaekoLovesParis (2015-05-21 22:44) 

Inatimy

事後報告で大変申し訳ないんですが、
Taekoさんの記事2つにリンクを貼らせていただきました。
<若冲と蕪村(サントリー美術館)>、<細見美術館 琳派のきらめき展>です。
もし御都合が悪ければ、リンクを削除しますので、おっしゃってくださいね。
今日も空が高いのに、雲が立ち込めてます^^;。
一昨日はヨンキントの「舟曳道」風の雲でしたよ。
by Inatimy (2015-05-22 17:10) 

TaekoLovesParis

Inatimyさん、リンクつけてくださって、うれしいです。
ヨンキントの「曳舟道」、探して見てくださったんですね。あの雲では、まだ、そちらは涼しいのでしょうね。日本の今は、初夏のような気候ですもの。
by TaekoLovesParis (2015-05-22 19:02) 

coco030705

こんばんは。
遅ればせながら、今日「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」に行って参りました。
友達に招待券をもらったので、歌舞伎座の団菊祭と一緒に日帰りで。
歌舞伎は菊之助が、がんばっていました。「摂州合邦辻」の玉手御前、親子共演で「天一坊大岡政談」の通し。菊之助は女形、立役ともいいですね。その他海老蔵、巳之助、時蔵もよかったです。
「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」はポスターの「猫を抱く女性」が大好きで、何時間でも眺めていたい気がしました。その他、Taekoさんが詳しく解説してくださっているように、好きな画家の絵が目白押しで非常に満足度の高い展覧会でした。特に、ヴュイヤールの絵がたくさんあったことが嬉しかったです。もう一度観たいと思いました。


by coco030705 (2015-05-23 00:06) 

TaekoLovesParis

cocoさん、こんにちは。
東京からお帰りになってすぐ、コメントくださって、ありがとう。三菱一号館前の広場の蔦のからまる柱(通風口)にも「猫を抱く女性」のポスターが貼ってあり、それが、いい雰囲気でした。たしかこの展覧会は、巡回がないんですよね。大きな美術館だとイメージがくずれるからでしょうね。
「猫を抱く女性」のネコはトラで、りーちゃんに似てるのでは、って思いました。少女の目線は下で、ネコの目線がこっちを見つめてるから、ネコが気になる絵ですものね。
今月の歌舞伎は、団菊祭だから、チケットがとりにくいと友達が言ってました。菊之助の女形は品があって艶やかで、私も大好きです。立役もよかったんですね。
巳之助が三津五郎亡き後、がんばっているのは頼もしいですね。
by TaekoLovesParis (2015-05-23 14:03) 

coco030705

Taekoさんへ
温かいコメントありがとうございます。「猫を抱く女性」の猫、トラ猫なのでリリーを連想してずっと見てました。この女性(少女)も素敵ですね。
歌舞伎は巳之助がとてもよくなって嬉しいです。男の人って親が亡くなるとしっかりしますね。やはり責任感が強くなるということでしょうね。
by coco030705 (2015-05-26 20:35) 

TaekoLovesParis

cocoさん、こんばんは。
このコメントを読んだら、私も巳之助を見たくなって、、でも、6月は日程的にきついので、7月昼に行きましょう、と友達を誘ったところです。
リリーちゃん似のネコは、少女に抱かれて、得意げですよね。愛されている自信かしら。この絵は、きっとcocoさんの好きな絵、ベスト3にはいることでしょう。
by TaekoLovesParis (2015-05-27 01:58) 

カエル

ヴュイヤールの対照的な室内が印象的です。
花柄のカーテンだと思ったら壁紙だった!
お姉さんの家に猫がいてよかった。。。とホッとした絵ですね。
by カエル (2015-06-19 16:06) 

TaekoLovesParis

kaeruちゃん、私もこの花柄、最初、カーテンだと思ったの。レースのカーテンみたいに2重のカーテン。でも、解説に壁紙と書いてあったので、?と思って見たら、間に化粧台と鏡があるので、壁紙に納得。
猫って絵の中では、重要な憩いのポイントだったりしますね。
by TaekoLovesParis (2015-06-22 22:22) 

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