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着想のマエストロ 乾山見参(サントリー美術館) [展覧会(絵以外)]

サントリー美術館で開催中の尾形乾山に着目した展覧会へ行った。
乾山は尾形光琳の弟で、京都の裕福な呉服商の三男として生まれ、野々村仁清
につき、陶芸を学び、乾山窯を開いた。
本阿弥光悦や楽焼きの楽家とも血縁関係がある尾形家。恵まれた環境に育った
乾山の美意識や文学的素養は、作陶の世界で独自のスタイルを生み出した。
それが「着想のマエストロ」という展覧会のタイトルなのだろう。

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乾山の特徴ともいえる絵画のような角皿は、「皿に絵付けをするのでなく、
絵を皿に描く」、という発想に基づいている。

●「色絵定家詠十二ケ月和歌花鳥図角皿」の「一月」(1702年) (MOA美術館)
狩野探幽の絵「柳にウグイス」を写したもので、皿の裏には、乾山の書で藤原定家
の歌が書いてある。自分独自のモチーフでなく、狩野派の絵を真似、裏に書。
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●色絵桔梗文盃台(18世紀) (MIHO MUSEUM)
盃台の花びらが横から見ても垂れ下がらず、水平である。
焼くときに支柱を使うそうだ。これを底から見たものがチラシに使われている。

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●菊の模様の盃台「色絵菊文透盃台」(サントリー美術館)は、鮮やかな色で豪華。
桔梗の色合いとは対照的。私は、桔梗のほうが好きだけど。


●光琳が絵を描いた兄弟のコラボ作品
「さび絵牡丹図角皿」 (MIHO MUSEUM)
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●中国山水画風のコラボ作品、光琳画、乾山作。
「さび絵山水文四方火入」 (大和文華館)

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●乾山は、舶来ものを好む客のために、中国やヨーロッパの陶磁器のモチーフ
を取り入れた作品も制作した。これはオランダのデルフト焼き。
「色絵阿蘭陀写花卉文八角向付」 (出光美術館)

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●「白泥染付金彩芒文蓋物」 18世紀 (重要文化財) サントリー美術館
琳派の絵をいくつか見ていると、蓋の部分の絵柄は「芒(すすき)」とわかる。
これは「武蔵野」を表しているそうだ。内側、入れ物の方は染付で「業平菱」
つまり、伊勢物語の「東下り」を意識したデザイン。文人の乾山ならでは、だろう。

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●「色絵菊図向付」 18世紀 (五島美術館)
菊の花の小皿。単純化した菊の花は、「乾山菊」という名前でモチーフとして、
他のものにも使われている。花びらに沿って形が作られているのがすばらしい。
裏面(左下)に大きく「乾山」と窯の名前を入れている。
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●紅葉型で、竜

●竜田川模様の反鉢は、出光美術館蔵で、たびたび見た作品だが、何回、
見てもすばらしい。水の流れの見込みと胴の部分がつながって見え、赤と緑の
もみじが心地よく配置され、乾山の作品の中で、私はこれが一番好きだ。

着想のマエストロというネーミング通り、次から次へといろいろなタイプが
出て来て、面白かった。興味尽きずに見ていたら閉館時間になってしまった。
1時間半位見ていたのかしら。ゆっくりと器の使い方、どの器に何を入れたら、
まで考えていたら、もっと時間がかかるだろう。

追記:
乾山の角皿は、パリのギメ美術館(東洋美術専門美術館)にもありました。
http://taekoparis.blog.so-net.ne.jp/2009-03-08


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コメント 12

よしあき・ギャラリー

乾山、光琳の美は普遍的ですね。
by よしあき・ギャラリー (2015-07-15 05:47) 

カエル

色絵阿蘭陀写花卉文八角向付には、煮浸し入れたいです。
菊のお皿もかわいいな♪
by カエル (2015-07-15 11:46) 

TaekoLovesParis

よしあきさん、特に乾山のお皿には、クレーのような模様のもあり、新しさ、普遍性には目を見張ります。
by TaekoLovesParis (2015-07-15 12:45) 

TaekoLovesParis

カエルちゃん、デルフト焼きふうには、煮びたしね。ほうれん草かな。いいなぁ。
菊のお皿、私は鯛のお寿司を入れたいです。
by TaekoLovesParis (2015-07-15 12:47) 

coco030705

こんばんは。
すばらしい焼き物の数々ですね。確かNHKの日曜美術館で放映していましたね。
チラッとみただけでしたが、ちゃんと見たらよかったと後悔しました。
この中では色絵桔梗文盃台が好きです。とても面白く美しいと思います。
やはり東京はすごいですね。行きたいのですが夏の暑さが苦手なので、ちょっと…。関西でがまんしておきます。
by coco030705 (2015-07-15 22:56) 

TaekoLovesParis

cocoさん、こんばんは。
日曜美術館、私も見ました。乾の方角に窯を開いたから、乾山という名前にしたと、番組で知りました。デザイナーの佐藤オオキさんが、色絵桔梗文盃台について、「この盃台は花入れなど他の用途にも使えるデザイン」と言ってました。オオキさんは30代ですが、建築出身なので、視点が変わっていて、2次元、3次元、幾何学的なことから乾山の器の造りを解説していました。
台風で少し涼しくなりましたが、暑さはこれから本番ですね。からだに気をつけて暑さをのりきりましょう。
歌舞伎に行ったので、次の記事にしますね。
by TaekoLovesParis (2015-07-16 23:24) 

yk2

僕には「焼き物」はよく解らないけど、器そのものの姿形よりも、そこに描かれた絵やトータルとしてのデザインを鑑賞する点で、琳派の器を見るのが好きですね。この皿には何を乗せたら良いだろう?、この花卉には何の花を生けたら似合う?。服と同じで、柄物はコーディネートが制約されて難しいけれど、それでも乾山の器には何か料理を盛ってみたい、花を飾ってみたいと、実用しているところが次々想像させられて楽しいです。そんな見方をしていると、時間なんてあっという間に過ぎちゃう(^^。
by yk2 (2015-07-17 05:37) 

TaekoLovesParis

yk2さん、今回の展覧会は、乾山に的を当ててたから、茶道の道具中心でなく、生活に使うお皿が多かったと思います。日本画に季節感があるのと同じく、琳派のお皿も花鳥図12か月のように、季節感を大切にしていますね。桜の絵だったり、紅葉の絵だったり、花びらを模ったり。だからこそ、このお皿に何を置こうと考えるのが楽しいですね。全部、乾山の器を使う和食のコースを組み立てたら面白いでしょうね。yk2さんは、お料理も作ってしまう廬山人のような暮らしが憧れかしら。
by TaekoLovesParis (2015-07-18 01:10) 

Inatimy

色絵桔梗文盃台、カッコイイですね〜。斬新なフォルムのデザインもそうですが、
花びらの裏側や、口に描かれた模様が、西洋っぽく。サイドの模様も、かわいい^^。
テーブルに鏡を置いて、その上に飾っておきたいですね。
尾形乾山のは<色絵龍田川透かし鉢>というのを、春に一時帰国した時に
京都の相国寺承天閣美術館で見ました^^。 水の流れに飲まれるモミジの葉っぱが。
by Inatimy (2015-07-19 06:23) 

moz

尾形乾山という人がいたのも初めて知りましたし、それが尾形光琳の弟なんだということもはじめて知りました。
やはり芸術家の血って濃いのですね。色々なものがありますが、やはりびっくりしたのは色絵桔梗文盃台です。あの突き出した形、すごい独創的な形ですね。
1700年代にこんなすごいデザインがあるなんてびっくりです @@;
これだけでも尾形乾山のすごさが分かります。上から見るとタイルを合わせたような形、鋭角も丸みを帯びているものも、すごいです!!
それからフェルメールつながりでデルフト焼きをモチーフにしたものもあるんですね。これも興味津々です。フェルメールよりも少しだけ後の世代なんですね。
by moz (2015-07-19 09:18) 

TaekoLovesParis

Inatimyさん、色絵桔梗文盃台、私もこの展覧会でこれが一番好きでした。
<テーブルに鏡を置いて、その上に飾っておきたいですね。>→ 裏も見えるように、っていうことね。チラシにこうやって、裏を使うのは、斬新ですよね。
相国寺承天閣美術館の若冲展、9月末までなんですよね。行けたらいいなぁ。
乾山の<色絵龍田川透かし鉢>は2つあって、ひとつは出光美術館所蔵で、私がサントリーで見たもの。もうひとつは、岡田美術館所蔵で、Inatimyさんがご覧になったものです。両者は全く同じでなく、岡田蔵のほうが派手なんです。
by TaekoLovesParis (2015-07-20 14:08) 

TaekoLovesParis

mozさん、尾形乾山を知っていただけて、すごさをわかっていただけて、よかったです。自由な発想で斬新な形のものが展覧会では中心だけど、やはり、角皿が一番出回ってる乾山作品だと思います。パリのギメ美術館(東洋美術の美術館)で、たくさんの乾山を見た時は、うれしかったです。(記事本文、文末に追記しました)
フェルメールはブルーが有名だけど、デルフト焼きもブルーですね。
by TaekoLovesParis (2015-07-20 14:26) 

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