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松岡美術館のエコール・ド・パリとフォーヴィスム [展覧会(西洋画)]

松岡美術館の紹介記事は以前に書いたが、今回は所蔵作品の中でも数の多い
エコール・ド・パリ周辺の画家たちの絵をご紹介。
他の美術館と違って、ここに載せている絵は常設に近いので、松岡に行けば
会えると思う。(この美術館は撮影可、シャッター音のする携帯は不可)

前回も書いたが、松岡美術館の創始者松岡翁が、美術コレクションを始める
きっかけとなったのは、シャガールの絵だった。
シャガールはロシア出身。パリに来て、外国人芸術家のモディリアーニ、
フジタ、ユトリロ、スーチン、キスリングらと「洗濯船」という共同のアトリエで、
お互いに刺激を与え合った。1910~30年の間、活躍した彼らは「エコール・ド・パリ」
と呼ばれていた。

シャガール(左)婚約者 (右)題名不明 小さいサイズのリトグラフ

matuoka4.JPG  chagall.jpg

(左)モディリアーニ「若い女の胸像」(マーサ嬢)
(右)ユトリロ「サン・ベルナール教会」
アル中の療養のため、パリを離れてサン・ペルナールの城館で過ごしていた
ユトリロは、この教会の絵を10点以上描いている。これは雪のあがった朝、
礼拝に向かう人々。単純で素朴な静けさに信仰の希望が伺える。

mojiriani.jpg mUtriro.jpg

(左)フジタ「2人の子供と鳥かご」 パリで売れ出した頃の絵。乳白色の世界。
(右)聖誕 馬小屋でのキリストの生誕という聖書を題材に描いた絵。
白い馬が首を伸ばして誕生を祝福しているのだろう。硬質な力強さを感じる。

 foujita.jpg   m13.jpg

ポーランド人、キスリングの絵は、松岡美術館に7枚ある。
どれにしようかな、と迷って、赤の綺麗なこの2枚。人物画。
(左)「シルヴィー嬢」 (右)「プロヴァンスの少女」

 m3.jpgm4.jpg


エコール・ド・パリの作家たちの活動年代が1930年までと限定されるのは、
ナチスの台頭により、画家たちはパリを離れ、母国に帰国または亡命した
からである。

「エコール・ド・パリ」の時代、絵画の主流は、形の芸術の「キュビズム」と、
色の芸術のフォーヴィスム(野獣派)だった。
キュビズムの提唱者は、ピカソ。
(右)ピカソ「ドラ・マールの肖像」1941年なので、キュビズムとしては後期の絵。
ドラ・マールはピカソの恋人で「泣く女」(パリ・ピカソ美術館)のモデル。
(左)ローランサン「若い女」。洗濯船でピカソと知り合い、最初はキュビズム作品
を描いていたが、後に独特の優雅な若い女性像を描き、人気を集めた。

m1.jpg


フォーヴィスムの作家としては、ヴラマンク、ヴァン・ドンゲン、
デュフィ、マルケらがいる。
キース・ヴァン・ドンゲンはオランダの出身。
初め、挿絵を描いていたので、こんな可愛い絵がある。
「葦毛色の馬、ノルマンディ」

 m_Vandongen.jpg

フォーヴの代表格のヴラマンク「嵐の前の風車」
深緑色が海のように見えるが、大地である。積わらが手前にあり、風車が奥に
見える。暗雲漂うグレーの空と大地は荒いタッチで、恐ろしいほど。人が2、3人
家路を急いでいる(小さくて見えないと思う)

mvuramank2.jpg

同じくヴラマンク「スノンシュ森の落日」
落葉した木々の奥に沈み行く夕陽の色が強烈。何が起きてるのかと思わず、
画面奥に見入る。
mvuramank.jpg

ルイ・ヴァルタ「黄色い背景と大きな花瓶」
初めて名前をきく画家だが、強烈な色合いで存在感を放ってた絵。
m5.jpg

他に私が個人的に興味があったのは、ドニ「赤い椅子に横たわる裸婦」、
マクシミリアン・リュスの「リュシー・クーチュリエの肖像」、キスリングの花、
ルオー「ブルターニュ教会の内部」。

追記:この美術館のロビーには、ジャコメッティの小さな彫刻「猫の給仕頭」
があり、とてもかわいいのです。その写真は、yk2さんの記事でごらんください。


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コメント 12

coco030705

こんばんは。
素敵な美術館ですね。Taekoさんご紹介の絵はどれもすばらしいと思います。シャガールから始まって、モディリアーニとユトリロ、いいですね。白という色も色々あるのだなと思います。
フジタの絵は左の少女の絵はフジタらしい感じで、右の宗教画は変わった構図で面白いです。
キスリングの人物像、とてもきれいですね。ローランサンの「若い女」いいなぁ好きです。ピカソの小品も構図のバランスがよく色も素敵ですね。
ブラマンク、力強いですね。惹きつけられる絵だと思います。独特ですね。
ルイ・ヴァルタ「黄色い背景と大きな花瓶」は好きな絵です。初めてこの画家を知りました。他の絵も見てみたいです。
ほんとにいい美術館ですね。関東がうらやましいです。いいレビューを有難うございました。

by coco030705 (2015-08-15 20:37) 

TaekoLovesParis


cocoさん、おはようございます。
この美術館は閑静な場所にあって、いい佇まいなんですよ。ここ(港区・白金シロガネ)に住んでいるセレブマダムはシロガネーゼと呼ばれています。ペットショップも多くて、かわいい犬の服など売っています。ここに住んでる友だちは、「白金お友達ご案内コース」に松岡美術館を入れていて好評なんだそうです。東京駅に近い三菱やブリヂストンのような交通アクセスの便利さはないけれど、港区で都心ですから、何かの折にでもおたづねください。彫刻やエジプトコーナー、ガンダーラ系もおすすめですが、何よりもcocoさんに喜んでもらえると思うのは、ロビーでお出迎えしてくれる小さな彫刻「猫の給仕頭」です。(写真を見れるように本文にyk2さんの記事へのリンクをつけました) 

フジタの使っている白は乳白色、この作り方は秘密だったけれど、近年、絵の具が分析されて、和光堂のシッカロールを混ぜていたんですって。右の宗教画、私も構図がいいなと思いました。マリア様の傾き具合は、晩年のボッティチェリが浮かぶけれど、茶と黒と白、グレーというモノトーンでの色合いがモダンな感じでいいな、と惹かれました。

近代絵画ばかりなので、人物画がいわゆる威厳ある肖像画ではなく、特徴を上手くとらえ、アレンジしているところに面白味があり、親しみをもてますね。
ここには、私が気に入った作品ばかりのせたので、cocoさんも気に入ってくださってうれしいです。

by TaekoLovesParis (2015-08-16 09:47) 

匁

こんにちは
松岡美術館、しばらく行ってません。
外も閑静なところですが、中もゆっくり落ち着いて観覧できるところですね。エジプトの「彩色木棺」も印象深いです。
小さな絵も独り占めでゆっくり見れて。いいですね。
また、行ってみたいです。しかし?
先週、匁は瀬里奈で今月分の食事代を使い果たしたようです。
今月中は身動きが取れません?!?。
秋になったて、涼しくなったら、ぷらっと、また、行ってみたいです。
by (2015-08-16 13:34) 

coco030705

Taekoさんへ
こんばんは。再度お邪魔致します。
yk2さんのブログ写真で「猫の給仕頭」を見せていただきました。
ほんとうにかわいくて面白い彫刻ですね。この猫ちゃん、給仕頭だけあって、お利口そうな猫ですね。見れて嬉しく思いました。有難うございました。
フジタの”白”にシッカロールが混ぜてあったなんて、さすがTaekoさんですね。こんな専門的なこと誰も知らないでしょう。
とてもいい美術館ですね。いつかぜひ行ってみたいと思います。色々お教えいただき有難うございました♡


by coco030705 (2015-08-16 21:28) 

らしゅえいむ

さきほどは
らしゅえいむ のブログにお越しくださいまして
そのうえ、
お褒めの言葉までいただきまして、ありがとうございました。
これからもよろしくお願いいたします。
で、
フジタというと、
戦争の被害者・・・と。
大事な日本人を失った・・・。彼の悲しい気持ちが痛いほどわかります。
戦争は、ほんとうに、さまざまなところで、人々を痛めつけていますね。

by らしゅえいむ (2015-08-16 22:01) 

TaekoLovesParis

匁さん、松岡美術館のことは匁さんに教えていただいたんですよ。その頃は、
とらionさん、だったんですね。
<先週、匁は瀬里奈で今月分の食事代を使い果たしたようです>→ 笑ってます。ここは入館料、800円で、そんなに高くないから、何とかなるのでは?とはいえ、まだ、残暑が厳しいですものね。秋になってからのほうがいいですね。
いつも、すいてて、ゆっくり見れるのが何よりいいです。
by TaekoLovesParis (2015-08-16 23:56) 

TaekoLovesParis

cocoさん、「猫の給仕頭」、見てくださったんですね。お利口猫ちゃんでしょ。お盆を恭しく持っていて、擬人化されてますね。
フジタの白のことは、NHKの日曜美術館で説明してたので、知ったんですよ。
今、東京のサントリー美術館でな、大阪の「藤田美術館」展をしています。お庭も綺麗だそうなので、ぜひ、行きたいと思ってる美術館なのですが、作品が初めて東京で見れるので、行こうと思ってます。
by TaekoLovesParis (2015-08-17 00:06) 

TaekoLovesParis

らしゅえいむさん、こんばんは。
フジタの戦争画は大きいし、リアルで正視するのが辛いです。フジタは軍部の命令で描かされたんですよね。描きたくないものを描く、それは彼の心を大きく傷つけたことでしょう。終戦記念日を過ごして、安易に戦争に走ってはいけない、と痛切に思います。数年前までは、原爆を落とされた被害者、「敗戦国日本」、だったのに、今年は侵略戦争の加害者日本。がらっと変わるものなのね、と戸惑っています。
by TaekoLovesParis (2015-08-17 00:19) 

yk2

cocoさんに「”おねだり”給仕頭」の記事の宣伝までして頂いてありがとうございます~(^^。

松岡美術館、しばらく行ってませんが良い美術館ですよね。すぐ近くの庭園美術館とセットで巡るのが好き(^^です。エコールド・パリの絵画作品もだけど、磁器陶器やインド、ガンダーラの石仏の展示なども興味深いですよね。あまり人が多くないので(これは美術館側としては好い事ではないでしょうが^^;)とても静か。ここは写真も撮れるし、1人で出掛けてじっくり作品と向き合ってると、いつの間にやら結構な時間が過ぎちゃう場所。久し振りに出掛けたくなります。ついでに、帰途、利庵の穴子天せいろ+お銚子1本がセットに加えられちゃったら、さらに素敵(笑)。
by yk2 (2015-08-18 12:23) 

Inatimy

キース・ヴァン・ドンゲン・・・どこかで見たかも、と思ったら、
女優のヘレナ・ボナム=カーターを思わせるような女性の絵を多く描いてた画家さんですね^^。
確かパリに引っ越す前にヘルミタージュのアムステルダム分館で観たんだったかな。
ジャコメッティの<猫の給仕頭>は、しなやかな体のラインが美しく、かつ愛らしい♪
レプリカあったら、買ってるかも・・・小さなグッズでも^^;。
by Inatimy (2015-08-18 19:45) 

TaekoLovesParis

yk2さん、「猫の給仕頭」の写真が方向を変えて4枚もあるので、これなら、わかってもらえると、紹介させていただきました。猫のからだのしなやかさがみごとに表現されていて、洗練されたフォルム。私には、給仕頭としてのプライド高い猫で、おねだり、って言うことばが、、って蒸し返すのは、やめときます。(って、言ってるじゃないか)
ここの、磁器陶器やインド、ガンダーラの石仏、コンパクトにまとまっていて、良いですね。さらに、人気所蔵品を展示という回には、日本画も出ていました。「ぐるっとパス」で見れるので、一人で何回か行きました。
ここには、カフェがないから、やはり、利庵ですか、ね。お酒+卵焼き&天ぷら+お蕎麦、ベストな組み合わせ!
by TaekoLovesParis (2015-08-19 08:36) 

TaekoLovesParis

Inatimyさん、エルミタージュのアムステルダム分館の「マティスからマレヴィッチまで」展の記事、もう一度、読みました。絵の写真がたくさんあったので、わかりやすかったです。ヴァンドンゲンは「春」、雲のような白い花の風景画でした。マティスの面白いのが多くて、改めて、興味深く見て、いいなぁ~って。
ヘレナ・ボナム=カーター似、わかりました!大きな黒い帽子をかぶってる人ね。
by TaekoLovesParis (2015-08-19 08:50) 

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