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ヴィラ・フローラ(VILLA FLORA)展 [☆彡Paris  展覧会]

マルモッタン・モネ美術館で、ベルト・モリゾ部屋から出ると、次の部屋は、
Arthur & Hedy Hahanloser Collection で、私が好きなナビ派や
ヴァロットンの絵がずらり。すごい!と思ったら、これは2月7日までの企画展
「ヴィラ・フローラ展」だった。

「ヴィラ・フローラ」は、スイスのチューリッヒに近い町、ヴィンタトゥールにある
邸宅美術館で、Arthur & Hedy Hahanloser(アーサーとヘディ・ハーンローザ―)
のコレクションである。ヘディは父から相続した地に、ウィーン分離派風の幾何学的
な建物を作り、将来は美術館にと意図したが、後にベランダ付きのネオ・クラシック
様式を付け足し、画家のアトリエの雰囲気を出した。
ヘディは絵を描くのが趣味だったので、ヘディの描いた絵も展示されていた。

VillaFlora.jpg

庭に置かれている彫刻は、マイヨールの「夏」
アンリ・マンギャンもここを訪れ、「ヴィンタトゥールのヴィラ・フローラでのお茶」
を描いた。(1912年)

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夫妻のコレクションは20世紀の画家たち、ボナール、ルドン、マンギャン、ヴュイヤール、
ヴァロットンにスイスの画家のジョバンニ・ジャコメッティとホドラー。さらにマネ、ゴッホ、
セザンヌも加え充実している。コレクションの特徴は、夫妻が画家たちと親しく交流しながら
作品を入手したことである。

ヘディは、ヴァロットンの絵が好みだったので、肖像画を依頼した。
左)アーサー・ハーンローザー博士(眼科医)1909年  右)ヘディ・ハーンローザー(1908年)

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ヴァロットンの仲介でハーンローザー夫妻は、ボナールに会い、絵を購入した。
さらに夫妻が南仏カンヌに別荘を購入すると、3年後に、近くのル・カネに
ボナールが住み始め、アトリエに夫妻が来るのをいつも歓迎、親しくつきあった。

1、ボナール
*カンヌの船着き場(1928~34年)
南仏の太陽は、ボナールの作品に光と色の輝きを吹き込んだ。
地中海の海の濃い青色が船着き場の柵の白さで強調されている。
ぽちゃん、ぽちゃんと音を立てる荒い波の動きは、船着き場にじっと
佇む人々と呼応している。波の表現はもはや印象派ではない。

BonardMediterrnee.jpg

*お茶(1917年)
午後の光を浴びた部屋での親しい人とのお茶の時間。
緑色の服を着て青い帽子をかぶった夫人は、室内の様子と窓の外の景色を
見ているかのようであり、庭の木々の葉の形や花瓶の花の形も重要な構成
要素になっている。

BonardTeaTime.jpg

*鏡の効果あるいは浴盤(1909年)
ボナールは、浴室での女性(妻マルト)を描いた作品が多い。
これもマルトが体を洗おうとしてるところか、身体を拭こうとしてるところである。
「写真のような効果を狙った」とボナールが言うように、画面いっぱいに浴室の
ガラス戸を配置し、ある距離を置いて見ているかのような視点である。

BonardMirroir.jpg

2、ヴュイヤール
ハーンローザ―夫妻は、ヴァロットンを通じてヴュイヤールの絵を知った。
ヘディはヴュイヤールに肖像画を描いてほしかったのだが、ヴュイヤールが
ヴィラ・フローラに来てくれなかったので、夫妻はパリのヴュイヤールの
アトリエを訪ねた。

*アンフレヴィル(Amfreville)でのゲームの勝負と夫人たち(1906年)
ハーンローザ―夫妻のコレクションには、親しい人たちが集っている場面の絵が多い。
ヴュイヤールが当時借りていた家の窓から見下ろした写真のような構図の絵。
家主は画商で、画商の妹が一番手前に描かれている。

vuillard.jpg

*青い花瓶(1932年)

Veuiyallrd2.jpg

3、ヴァロットン
*すみれ色の帽子(1907年)
valloton200.jpg

4、ルドン
*赤い船(1910年)
空と海の間に漂う幽霊船、船は血のように赤く、青い帆は風に導かれる。
水平線は、青、緑、黄土色の統合。雲と波は同じ要素でしかない。
ルドンは命題「見えるものの論理を見えないもののために奉仕させる」
(見えるものだけにとらわれず、見えないものにも光をあてよ)をこの絵
でも示している。

Redon.jpg

5、マルケ
*ルアーヴルの祝祭日(1906~1913)

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6、ジョヴァンニ・ジャコメッティ
ジョヴァンニ・ジャコメッティは、2人の息子=彫刻家のアルベルトとディエゴほど
有名でないが、スイスの国民的画家。スイス国民どうしということで、
ハーンローザ―夫妻のコレクションに加わった。

Jacometti.jpg

7、ホドラー
ホドラーもスイス人。ハーンローザ―夫妻はジュネーヴのホドラーのアトリエで
彼に会った。ヘディは、「あなたの作品に惹きつけられています」とホドラーに
手紙を送った。

*サヴォイ側のアルプスとレマン湖(1905年)

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*イタリア女性Giulia Leonardi の肖像(1910年)
Giulia Leonardi は、歌手でギタリスト、ジュネーヴでカフェをやっていた。
ホドラーはそこの常連で、彼女をラファエロ風に神話のゴルゴン(醜い女)
として描いた。

Hodler2.jpg

ハーンローザー夫妻は、コレクションの充実のために、ゴッホ、セザンヌ、マネ
の絵を購入し、ヴィラ・フローラの壁に飾った。

8、ゴッホ
*種をまく人(1888年)
ミレーの「種をまく人」(1850年)にヒントを得て描いた作品。

Gogh300.jpg

9.マネ
*アマゾネ(1883年)
黒い服にシルクハットの女性、Henriette Chabot
都会のエレガンス。

manet.jpg

10、セザンヌ
自画像(1877年)は写真なし

どれも見応えのある絵ばかりだった。あまり絵に興味がない同行の友達も
かなり、じっと眺めていた。


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コザック

おはようございます。
コレクションを見るとなんとなく集めた人がどういう作品が好みかわかる気がします。
なんだか、私も好きな作品多数。見応えあってよいですね。
こういう画に囲まれるのは幸せな時間ですね(^^)/

by コザック (2016-01-24 08:54) 

coco030705

こんばんは。
こちらも建物が素敵な美術館ですね。それにすばらしい絵画の数々!ため息が出ちゃいます。
マイヨールの彫刻って丸みがあってやわらかで素敵ですよね。
セザンヌ、美しい色ですね。ヴュイヤール、好きです。いい構図ですね。
ルドンの作品、幽霊船なんですね。ルドンらしいです。↑の言葉なるほどと思います。三菱一号館にルドンのすばらしい絵が常設展示してありますね?あれを眺めるのが楽しみです。
ジャコメッティのご兄弟で画家の方がいらしたんですね。初めて知りました。
ホドラー展は関西にも来てましたので、行きました。山の絵がいいと思いました。
ゴッホいいですね。アムステルダムのゴッホ美術館にも行きました。とてもすばらしかったです。マネも好きです。
ほんとにいい絵ばかりで、楽しく観させていただきました。有難うございます。

by coco030705 (2016-01-24 22:04) 

TaekoLovesParis

コザックさん、ハーンローザー夫妻は、奥様が絵が好きで、ヴァロットンが好みだったので、ヴァロットンに肖像画を依頼、家に来て描いてもらった。その翌年、ご主人の肖像画も依頼。それでヴァロットンと親しくなり、次々、他の画家を紹介してもらい、ヴィラ・フローラに何人もの画家たちが集まったりしたそうです。サロンの雰囲気かしら。もちろん、ヴィラ・フローラの壁は、たくさんの絵で飾られていて、その写真もありました。いつか、ヴィラ・フローラとヴィンタトゥール美術館、それにサガンティーニ美術館、スイスに行きたいです。
by TaekoLovesParis (2016-01-26 00:46) 

TaekoLovesParis

cocoさん、ヴィラ・フローラのサイトでは、土地の○○氏に設計を頼み、、と、建物の説明もあったので、たぶん自慢なんだと思います。ここはチューリッヒに近いので、ドイツ語地域、サイトがドイツ語だけでした。マイヨールの彫刻、私も好きです。ギリシア彫刻より、現代には似合ってますね。最初のボナール、ブルーが綺麗ですね。水平線の色もいい感じに海のブルーと溶け合ってて。。cocoさん、ヴュイヤール、お好きですものね。ルドンは、初期はモノクロが多いけれど、晩年は色彩豊かですね。三菱の「グランブーケ」、花瓶のブルーが綺麗で、色とりどりの花。あの大きさは印象に残りますね。ルドンは思考の人だから、哲学的な面もあって、それが魅力かもしれないけど、わかりにくかったりもする。
細長い人物彫刻のアルベルト・ジャコメッティのお父さんが絵描きのジョヴァンニなんです。ホドラー、やはり山の絵ですよね。このイタリア女性は、私、はじめ男の人かと思っちゃいました。
マネもゴッホも大家ですね。絵の前に来ると、すばらしくて、見入ってしまいました。アムスのゴッホ美術館、こじんまりで、見やすいですね。
by TaekoLovesParis (2016-01-26 01:03) 

moz

邸宅美術館、こちらもここならではの展示ですね。
こういう美術館では絵画を見たことないです。きっと日本の美術館とは全然雰囲気が違うのでしょうね。もともと、絵画は美術館ではなくて家に飾られるものでしょうから、本来の絵画の良さを見ることができるのでしょうね。
ボナール、ヴュイヤールの写真の構図のような作品、面白いです。
この頃になると、画家たちも写真を気にしているのですね。 ^^
by moz (2016-01-26 06:57) 

Inatimy

「鏡の効果あるいは浴盤 」、面白い描き方ですね。
鏡に映ったのを描いてるんだろうけれど、今の時代から見ると、
なんだか壁掛けTVみたいです^^。
ゴッホの「種をまく人」もカラフルなのがいいなぁ。
ミレーがもっと長生きして、この作品を見ていたら、なんて言ったのかも気になりますね。
前の記事のモネの藤(Glycines 1919-1920)ですが、私が行った時は
マルモッタン・モネ美術館の1階端っこの階段あたりに展示されてた覚えが。
私が撮ったパリの藤の花の写真といえばレストランの壁に這うように伸びてたものかしら。
シテ島のシャノワネス通り(Rue Chanciness)にあります^^。
by Inatimy (2016-01-26 22:17) 

TaekoLovesParis

mozさん、そういえば日本には洋館の邸宅美術館がないですね。以前、鎌倉にホテルニューオータニの社長の邸宅だったオータニ美術館があったけど、閉館してしまいました。やはり、家具の中に展示されるのと、箱ものの壁に展示されるのでは、全然違いますね。写真のような俯瞰的構図に注目は、やはり、写真のmozさんだから、ですね。フェルメールの時代から画家たちも写真を意識してたんでしたね。
そういえば、日本家屋の横山大観記念館はあるけれど、雰囲気が違いますね。
by TaekoLovesParis (2016-01-27 00:48) 

TaekoLovesParis

Inatimyさん、「鏡の効果あるいは浴盤 」、私は鏡というより、お風呂場のガラス戸なのかと思いました。夏なのかしらね。今みたいな季節だったら、お湯でガラス戸が曇るのではないかと。。<壁掛けTV>→面白いわ!
「種まく人」、ミレーはこんなふうに真似されたのを知らないのだから、生きてたら、、そういうところに気づくなんて、いいなぁ。
藤の花、壁にはってたぶんです!日本ではあり得ないと思って印象深かったです。
by TaekoLovesParis (2016-01-27 23:38) 

nao(baby_pink)

taekoさん、こんにちは^^
ルドンの赤い船すてきですね~。。
なんだかじんわりこの絵の世界に吸い込まれるような・・
何て言うか・・幸せな気持になりました。
見えるものだけにとらわれず、見えないものにも光をあてよ。
あぁ.。そうだなぁ.。見えないもののなかにも沢山大切なことがありますもんね^^
いつまでも忘れないでいたいナ。わたし、すぐわすれてしまうので^^:
でもこの絵ほんと素適だなぁ~。。ほしいー。笑
by nao(baby_pink) (2016-01-29 09:13) 

yk2

ヴァロットンの絵が好みで肖像画を依頼するだなんて、ハーンローザーさんはちょっと変わったご趣味をお持ちか、それとも結構なヒネクレ者?だなんてふうに、ついつい勘ぐってしまうワタクシ(^^ゞですが、スイスの同郷人ってことで素直に納得しときます(笑)。

今回ここで紹介されている絵で興味を惹かれるのはヴュイヤールの『青い花瓶』ですね。1932年の作とのことですが、齢60を過ぎて、彼がこんなにも印象派的な静物画を描いているだなんて、ちょっとした驚きです。ナビ派の理念は印象主義とは相反するものって頭にインプットしちゃってあると、これがヴュイヤールとは思いも寄らない(^^;。とは云え、美しい色使いはルドン的だと思えなくもないですかね(ここでは象徴主義的なものは覗えないけれど)。長い画業の中で、彼もいろんなスタイルを模索してたんだろうなぁ~と改めて感じました。
by yk2 (2016-01-29 18:48) 

TaekoLovesParis

pinkちゃん、メッセージありがとう。
時々、pinkちゃんの写真サイト見てる~。星野珈琲でモーニングサーヴィス?、
美味しそうに撮れてるわね、なんて思いながら、ね。
ルドンには、他にないものがたくさんあって、私も好きです。特にこの「赤い船」は、色合いがいいでしょ。pinkちゃんの写真に通じるほんわかしたものがある、って思うわ。
by TaekoLovesParis (2016-01-31 23:56) 

TaekoLovesParis

yk2さん、ハーン・ローザ―夫人が描いた絵も展示されていましたが、穏やかだけど、色彩が強めの風景画でした。だから、ヴァロットンの奇抜性に憧れていたのかしら?夫人の肖像画は上品で聡明、且つモダンな感じが表れていて良いと思いました。写真も展示してあったので、比較すると肖像画は物語性があっていいなと思いました。実際、夫人は、この絵が気に行ったから、ご主人の肖像画も依頼した、と、絵の描かれた年代からわかりました。
yk2さんがおっしゃるように、スイスの同郷人だから、支援したいという気持も強かったでしょうね。ホドラー、ジョバンニ・ジャコメッティをも応援してますものね。

ヴュイヤール…yk2さんはずっとヴュイヤールの「寝台」をサイドバーに置いてますものね。「青い花瓶」、ベージュ系の色づかいが多い印象のヴュイヤールなのに、青と黄色という補色(反対色)を使っての大胆な表現。もう、これは印象派とは違い、新印象派よりすすんで、時代的にフォーブの影響もある?ブルーは、私もルドンを彷彿させるブルーって思いました。でも、ルドンは花瓶に黄色い線は入れない、これはヴュイヤールらしさかな?オルセーにあるヴュイヤールの「ヴェルサイユ宮殿の礼拝堂」も少女のドレスの青が印象的な絵でした。
どの画家も長い画業の中、そのときどき、時代の波の影響を受けていますね。

by TaekoLovesParis (2016-02-01 23:58) 

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