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ポンピドゥー・センターの1906年から1914年の絵画 [外国の美術館、博物館]

ポンピドゥー・センターは、フランスの現代美術館。
1905年から1965年までの20世紀の美術品を見ることができる。
(ルーヴルは中世の絵画、オルセーは近代の絵画(1905年まで)と年代的に
分けられて、収蔵されている。)

常設展示は5階だが、数年毎に大きく入れ替わる。
今回は、入ってすぐがマチスの「黒猫と少女(マルゲリータ)」1910年。
少女の強い瞳に吸い寄せられ、膝の黒猫を見落としてしまいそうになる。

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次のコーナーからは、フォービスム作品が続き、明るい色合い。
ブラックの「レスタック」L'Estaque 1906年
レスタックはマルセイユに近い小さな漁村で、ここで多くの印象派の画家が絵を描いた。
ブラックというと、キュビズムの印象が強いが、キュビズムになる前は、フォーブで
こんな明るい色彩の可愛らしい絵を描いていた。画中に描かれた小さな2人の姿が、
景色の壮大さ、大地と自然のエネルギーを際立たせている。
セザンヌは普仏戦争の間、レスタックに住み、たくさんの風景画を残している。
ブラックはセザンヌに影響を受け、レスタックの風景をいくつも描き、1908年の作品
が、事物を単純な形で表すキュビスムの創造となった。

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1906年、デュフィも明るい色彩表現。
「トゥールヴィルの広告板」
佐伯祐三もパリの広告板をいくつも描いていたのを思い出す。

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アンドレ・ドランの「タミーズ河岸」Les Quais de la Tamise 1906年
シニャックの点描の影響も見られる。

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ここからは、風景画でなく、人物画。
顔に添えられた強烈な色彩に目が行ってしまう。

ソニア・ドローネーの「眠る女性」1907年
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ピカソの「女性の上半身」 1907年
単純な形での表現が見られる。

GP7Picasso.jpg

クプカの「黄色の連続的変化」1907年
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ローランサンの「アポリネールとその仲間たち」1909年
かなり大きな絵。
詩人アポリネールは、当時の文壇の実力者。「キュビスム」を理論的に先導し、
彼に多くの人が賛同した。絵の中央にいるのがアポリネールで、彼の周りに
、ピカソ、ガートルード・スタイン、ピカソのミューズの詩人、そしてローランサン
自身もピアノの前にいる。アポリネールはローランサンの恋人だった。
キュビスム的手法で、円形を多用した絵。
GP10Lauransant.jpg

ロシアの画家ナターリア・ゴンチャローワの「収穫物を運ぶ女たち」1911年。
当時ロシアでは、ロシアン・アバンギャルドという自国の芸術を大切にする
運動があり、素朴な民衆や労働をテーマにした絵が多かった。
この絵も、大地にしっかり足をつけ、素朴でたくましい女性たちを描いてる。

GP4Russe.jpg

同じ年、1911年のシャガール「ロシアとロバとその他のもの」
シャガールは、ロシアで生まれ、美術教育を受け、23才の時(1910年)パリに来た。
時代の波を受け、フォーブ、キュビスムの影響を受けた絵を描く。
この絵も、雌牛と手桶を持った農婦に幾何学的なものが見られ、色合いは青や緑の
強い色彩。下の方に、ロシアをイメージするロシア正教会が描かれている。
どこにロバ?実際ロバはいない。ロバは平和な労働者を意味するのだそう。
首が飛んでいるのに驚くが、これは夢見ていることを示してるのだそう。
私は赤い牝牛の睨む目つきが気になった。
GP15Chagal.jpg

エミール・ノルデの「踊る人たちの絵がある静物画」1914年
ノルデはドイツ表現派の画家。(エミール・ノルデ展の記事

GP6Norde.jpg


マティスの「金魚鉢のある室内」 1914年
GP0203Matisse.jpg

この後、1920年代の絵画は次回に。


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コザック

こんばんは
ポンピドーセンターは以前の記事で知ったのですが、
今では行ってみたいとこのうちの一つ。
今回の記事も、読んでいると本物観たくなりますね~(^^)
次回つづき記事も、たのしみにしてます(^^)/
by コザック (2016-02-14 23:45) 

hatsu

「黒ネコと少女」、少女の瞳が強くて引き寄せられますね~^^
「トゥールヴィルの広告板」、広告版が積み上げられたコンテナに見えてしまいました(笑)。色合いが素敵ですね♪
by hatsu (2016-02-15 07:13) 

カエル

ソニア・ドローネーの「眠る女性」、ピカソの「女性の上半身」、シャガール「ロシアとロバとその他のもの」にぎゅっと鷲掴みされました。
眠る女性は夕刻なのかな、夕日が差し掛かってきているのかしら?そろそろ起きて、ご飯つくらないと。
ピカソの女性は、背景のトーンもあってか、少々さびしそう。嫌なことがあったのかなぁ。。。と心配になります。いいことあるといいな。
シャガールの夢を見ている!なるほど!と思いました。ちょっと感動しちゃった。^^

by カエル (2016-02-15 12:54) 

moz

年代別の美術館なんですね。ルーヴルは中世でオルセーは1905年まで、その後の絵画が展示されているのですね。
さすが、絵画国ですね ^^v
素敵な作品ばかり、ブラックのフォービズムの作品も明るい色彩で素敵ですが、中でも、佐伯祐三を思わせるデュフィの作品いいな。
また、近代美術館に会いに行きたくなりました。 ^^
by moz (2016-02-16 05:52) 

coco030705

こんばんは。
マティスの「黒猫と少女」と「金魚鉢のある室内」、すごくいいですね。色は暗めですが、魅力的な絵です。ブラックの風景画も明るくて素敵。デュフィのパリの街角、彼らしい色調で、構図の切り取り方がセンスがあるように思います。ピカソの「女性の上半身」すばらしいですね。ピカソのデッサン力というようなものを感じました。ローランサンは才能あるたくさんの芸術家と付き合った人だったんですよね。きっと魅力的な女性だったのでしょう。
他の絵もいい作品ばかりですね。楽しく見せていただき、有難うございました。
by coco030705 (2016-02-16 15:15) 

Inatimy

この中で一番気に入ったのは、ナターリア・ゴンチャローワの「収穫物を運ぶ女たち」。
輪郭が明るめな色なのもぐっと惹きつけますね^^。 動きのシンクロも。
エミール・ノルデのこの絵は、思わずチューリップに目がいきました。
いかにもイメージ通りのチューリップで可愛いくて♪
静物画なんだけれど、背景の踊る人の絵で「動き」もあるのも面白く。
マティスの「金魚鉢のある室内」は、金魚だけが赤で周りに寒色使ってるところ、
自然と赤に目がいきますよね^^。
by Inatimy (2016-02-16 18:48) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます。
▲コザックさん、振り返ってみれば、私の記事の中で、一番多い美術館がポンピドーセンターです。現代美術は苦手ですが、近代、つまり60年代くらいまでなら、わかりやすいし、並ばなくて入れるので、行く頻度が多くなるんです。建物もユニークですから、パリにいらした時は、ぜひ!

▲hatsuさん、大きなはっきりした瞳ですものね。このブラウスも素敵だけど、「ルーマニアブラウスの少女」というルーマニア刺繍のブラウスを着た少女の絵もありました。
広告板がコンテナに見える、、たしかに、この形だと、そうですね。

▲他の方々へ
明日、書きます。おやすみなさい。
by TaekoLovesParis (2016-02-18 00:59) 

yk2

僕がこの中で気になったのは、あまり馴染みの無い名前のソニア・ドローネー、『眠る女性』かな。単純化された線と平面的な塗り分けは何となくナビっぽいし、そう思って観ると色遣いがベルナールとかセリュジエっぽいな~って見えて来たりして。
by yk2 (2016-02-18 01:04) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます。
▲カエルちゃん、眠る女性に「ご飯作らないと」、って日常に呼び戻しちゃうのが面白い(笑)。
ピカソは20才の頃、「青の時代」という哀しみを青で表現した絵を描いていたけれど、これも、その続きかなと思える色合い。でも、青の時代から一歩すすんでいるのは、女性の頬にバラ色の輝きがあって、凛とした表情なこと。鼻の三角形が特徴的で、一度見たら、忘れられないです。
シャガールは、この時代、色彩がまだフォーヴっぽくて強い色合いだけど、年々背景の色が明るくなって、幸せ感にあふれた絵が出て来ますね。画家への恋人の影響は大きいですね。感動を与える絵、幸せを与える絵を生み出すんですもの。

▲mozさん、フランスの美術品はナポレオンの戦利品が基本になっています。王家がヴェルサイユに宮殿を作ったため、廃墟になっていたルーヴル宮を手直しし、美術館としたのです。オルセー美術館は1900年のパリ万博の時、作られた駅舎ですし、2つの美術館は堂々とした歴史的な建物が素晴らしいです。
ポンピドーは近代的な(当時は前衛的と言われた)建物で、建物見物も楽しいです。
「トゥールヴィルの広告板」、佐伯祐三もパリでの広告板を描いていましたね。日本から行ったら、今まで見たことがない風景だったんでしょうね。佐伯とデュフィでは、人の描き方が違ってそれがまた面白いですね。mozさんはブリヂストンの「佐伯祐三展」の記事を書いてらっしゃいましたものね。

▲cocoさん、マティスの「黒猫と少女」は、黒髪でおしゃれなブラウス、きりっとした雰囲気で、動いちゃう猫を膝の上でコントロールしながら、モデルを勤める少女、cocoさんの若い頃はこんなだったのでは、と思いました。
ピカソのこの女性の顔、近くで見ないとわからないのですが、目と耳は普通に描いた後から太い隈取りを入れてるんです。鼻に入れた黒褐色と髪の毛の下の部分が同じ色で、まぶたの下に少し黄色が入りと色使いがみごとです。「ここにハイライトを入れ、、」という今のメーキャップに通じるものがありますね。そう、きちんとデッサンしてから、そこに色を重ねてるんですものね。

▲Inatimyさん、ナターリア・ゴンチャローワの「収穫物を運ぶ女たち」。ベージュの輪郭線が青色の背景にくっきりと目立ってますね。Inatimyさんのご指摘通り動きがシンクロだから、単純作業ってイメージで重量感のある構図は、目に焼き付きますね。
やはり、Inatimyさんは、チューリップに注目ね。ノルデは黄色を使うことが多いから、チューリップも花瓶も黄色。ダンスのせいで、絵全体に動きが感じられて、私も楽しい絵って思いました。
マティスの「金魚鉢のある室内」、空と川、ベランダの囲いと金魚鉢の水、全部がが青で繋がってますね。そんな中に赤い金魚。色の使い方が上手ですねー。
遠くに見える建物がピンクなのは、南仏だからかしら?

by TaekoLovesParis (2016-02-19 21:57) 

TaekoLovesParis

yk2さん、ソニア・ドローネーは元々服飾デザイナーで、ロベール・ドローネーと結婚してから綺麗な色の円形を組み合わせたような抽象のロベールに似た作品になりました。
「眠る女性」は、結婚前の作品。私はこの絵を見た時、単純な形で平面的な構成だから、木版画を思い浮かべたけど、ベルナールの「愛しのマドレーヌ」にも似てるわね。色彩はセリュジエっぽいわね。でも、クローズアップで「大胆な感じ」がソニアっぽいと思う。
by TaekoLovesParis (2016-02-19 22:20) 

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