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エリザベート・ヴィジェ=ルブラン展 [☆彡Paris  展覧会]

昨年末、パリに行った時、グランパレでやっている評判の展覧会が、
「エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン展」だった。

ヴィジェ=ルブランは、18世紀に最も有名だった女流画家で、マリー・アントワネットに
気に入られ、何枚もの肖像画を残した。アントワネットが断頭台に消えた後は、
イタリー、ウィーン、ロシアと貴族たちの肖像画を描きながら移り住み、晩年、ようやく
フランスに帰国した。

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展覧会は、回顧展として、年代ごとの展示であった。

1、若い頃
アーティストの家系に生まれ、画家の父から絵の手ほどきを受け、父の友人の画家
たちからもアドヴァイスを受け、ラファエロ、ティツィアーノ、ファンダイクの絵を好んだ。
●19歳の時の絵「詩の寓話」。Allégorie de la Poésie
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上の絵の制作と同じ年、19歳の時、画家仲間の母を描いた肖像画は、
ヴィジェ=ルブランの特長であるエレガントさが既に表れていた。
21歳の時、画家で画商のルブラン氏と結婚した。

2、王妃の肖像画
貴族の肖像画を描き、評判を得たヴィジェ=ルブランは、マリー・アントワネットの
肖像画を描くために、ヴェルサイユに呼ばれた。
アントワネットとヴィジェ=ルブランは同じ年であったため、親しくなった。

●「マリー・アントワネット正装にて宮廷で」1778年

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●「軽い服装のマリー・アントワネット」 1783年

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●「マリー・アントワネットと子供たち」 1787年

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3、画家であり母であり
ヴィジェ=ルブランにも娘がいた。娘をモデルに母と子の絵を描いている。
●「鏡の中の自分を見るルイーズ=ルブラン」1787年 ルイーズちゃん、目がくりっ。
●「画家とその娘」1786年 ルネッサンスの画風。
本人の自画像、2もあるが、とっても美人。
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 4、輝いていた時代
著名人からヴィジェ=ルブランに肖像画の注文がたくさん来た。

●ポリニャック公爵夫人 1782年
一番上、この展覧会のポスターや図録の表紙に使われている絵。
ポリニャック夫人は、マリー・アントワネットの取り巻き、親友。
美しいだけでなく、人を引き付けるエスプリを持っていた。
軽い生地のガリア服を着て、花飾りのついた帽子をかぶり、寛いだ雰囲気。

●「デュバリー夫人」1871年
この展覧会のチケットはデュバリー夫人の肖像画だった。
デュバリー夫人は、ルイ15世の公妾。ポンパドゥール夫人亡き後の公妾。
従って、ルイ16世の妻マリー・アントワネットとは確執があった。

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●廃墟を描いて有名な画家ユベール・ロベール 1788年
ユベール・ロベールは当時55才。王立美術館のルイ16世絵画コレクションの責任者
も任され、活躍していた。(2012年、国立西洋美術館でユベール・ロべール展があった)
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5、イタリー
1789年、フランス革命を察したヴィジェ=ルブランは、宮廷に革命派(ジャコバン党)
が押し入る一日前に、荷物をまとめてパリを去り、イタリアに行った。
ローマでは、ギャラリーでコレッジョ、ラファエロの作品を見、オペラを観たりした。

次、ナポリに行った。ナポリには、マリー・アントワネットの妹が嫁いでいたからである。
「庭のバラの花を摘むマリア・クリスティーナ・テレジア・ブルボン」1791年。
マリアはアントワネットの姪で、後に、ナポリ、シチリア両王国の王妃となった。

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「バッカスの巫女に扮したエマ・ハミルトン」1792年
エマは英国の肖像画家ジョージ・ロムニーのモデルだったが、世紀の美女だったので、
在ナポリ英国大使ハミルトン氏と結婚した。しかし、ネルソン提督とのダブル不倫が
世間を騒がせ、その話が映画「美女ありき」になった。
「古代ギリシアの巫女に扮するエマ・ハミルトン」という絵もあった。
(エマ・ハミルトンを知らなかったので、誰?と思って調べた。)

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6、ウィーン
ウィーンの滞在は2年ほどだった。
大使館主催のパーティで、ヴィジェ=ルブランはロシアの貴族たちと知り合い、
ロシアに行くことにした。

7、ロシア
ヴィジェ=ルブランの名声をエカテリーナ2世は知っていたので、宮廷画家として
迎えられ、皇族を多く描いた。

「エリザヴェータ・アレクセーエヴナ」1795年
エカテリーナ2世が孫のアレクサンドルの嫁にと、ドイツから連れて来た16才の
皇女。ロシアらしい服。手前に白テンの毛皮つきの赤いマントが見える。ピンクの
バラがアクセントになっている。

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「アレキサンドラ・ゴリシャーナ姫と息子の肖像」1794年
ラファエロの「小椅子の聖母」と似た構図で、赤と青が服に使われている点も
似ている。
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1802年、革命政府が転覆したので、47歳のヴィジェ=ルブランは、フランスに
戻った。13年に及ぶ国外での生活だった。

それぞれの国で、女性の顔つき、服装が異なるのが、見ていて興味深かった。
フランスでは面長の宮廷の人が多かったのに、イタリアでは、どんぐり眼で濃い顔
になった。ウィーンの服装は地味めで、ロシアでは、赤が多く使われ独特の服だった。

フランス人だったら、当然知っているポリニャック公爵夫人、デュバリー夫人
だが、私には、宝塚の「マリー・アントワネット」に出て来たかな?くらいの認識
だった。親友E子の絵に関心がないフランス人の御主人でも、「グランパレで、
女性のほら、何て言ったっけ、マリーアントワネットの肖像画描いた人の展覧会
やってるよ」と教えてくれるほど、ヴィジェ=ルブランは、フランス人には馴染みの
画家なのだとわかった。
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展覧会場入り口。VIGEE LE BRUN と銅版に打ち出した看板が左右についている。
パリの12月は朝10時でもまだほの暗さが残っていた。


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コメント 10

coco030705

こんにちは。
この女性画家の方は初めて知りました。おっしゃるように、エレガントな画風ですね。絵のマリー・アントワネットは気品にあふれ、とても美しいと思います。アントワネットにとって、ヴィジェ=ルブランは心許せる話し相手だったのかもしれませんね。ご本人もきれいで、子供もかわいいですね~。
エマ・ハミルトンの絵もすごくきれいで、魅力的過ぎてそんなことになったのかしらなんて・・・。立派な美術館ですね。さすがパリです。

by coco030705 (2016-03-14 16:06) 

U3

絵を堪能させて頂きました。ありがとう。
by U3 (2016-03-14 18:22) 

moz

女流画家なんですね。当時としては珍しいのではないのでしょうか?
ブーシェとかフラゴナールとか、作品を見せていただいてそんなに感じがしました。歴史がその時ちょうどの悲劇が襲ってきたけれど、うまく逃げおおせて本当によかったですね。
それにしても、イタリア、ウイーン、ロシア、その先々での絵画の影響もちゃんと受け、やはり、画家は画家なのですね。 ^^;
ルイーズ=ルブランの鏡を覗いている絵、とても素敵ですね。表情がとても好きです。 ^^
by moz (2016-03-14 18:28) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます。
▲cocoさん、私もヴィジェ=ルブランの自画像(何枚もあります)を初めて見た時、
とても上品で美しいので、すぐに名前を覚えました。と言えど、長い名前をどこで、切っていいのかわからず、ルイーズ・ルブラン?って思ったりしましたが(苦笑)
17世紀~18世紀、ヴェルサイユの宮廷には、取り巻きや公妾など、着飾った女性がたくさんいて、確執があったことが、「ヴェルサイユの庭師」の映画でわかりました。だから、そういうグループに属さない同じ年のヴィジェ=ルブランと心が通ったのでしょうね。
エマ・ハミルトンをモデルにした「美女ありき」というのは、昔、有名な映画だったんですって。展覧会場の「グランパレ」は1900年のパリ万博の時、建てられた荘厳な建物です。

▲U3さん、マリー・アントワネットをはじめとして美しい人たちばかりの肖像画なので、目の保養に(笑)

▲mozさん、18世紀にフランス美術アカデミーに属していた女性画家は2人だったそうです。でも、もう一名は今は忘れられています。
ヴィジェ=ルブランがパリを去るのが一日遅かったら、マリー・アントワネットのお抱え画家なので、確実に断頭台だったと言われています。イタリアへ行ったのも、アントワネットの妹がいたからで、画家としての名声がヨーロッパの王室に届いていたようです。さらに、きっと語学も堪能だったんでしょうね。
一番上の麦わら帽をかぶっている女性の絵は、オランダに旅行した直後の絵で、レンブラントのこういう帽子をかぶっている女性の絵を参考にしたそうです。mozさんがおっしゃるように、旅先でちゃんと影響を受けて絵に生かしてるんですね。ね。
by TaekoLovesParis (2016-03-15 01:18) 

匁

沢山の肖像画それも巨大なサイズ?は
宮廷のどこに掛けたのか?
想像ですがアントワネットのニラミを利かすために各部屋に1枚ずつ?
それとも壁は絵でいっぱい?にした。

このブログは昨年末に行かれた緊迫のパリ旅行記念記事ですね。
素晴らしいです。
パリ下町スケッチ旅日記そんな記事を描いてみたいです。夢ですが?。

by (2016-03-15 20:49) 

TaekoLovesParis

匁さん、国立新美術館の展示では匁さんの絵が大きく見えなかったように、ヴェルサイユ宮殿はとても広いし、天井が高いから、大きな絵でも大丈夫なんですよ。部屋もたくさんあるし。でも、どの部屋だったんでしょうね。客間?居間?ニラミだんんて(笑)、アントワネットは美しいし、衣装もため息が出る程豪華なんですよ。王様の肖像画だったら、権威があって、にらんでる感じでしょうね。

<緊迫のパリ旅行記念記事>→ あの時の飛行機はガラ空きだったけど、もう最近は混んでて、パリの友達が里帰りチケットを取るのが大変だったと言ってました。卒業旅行が多いらしいです。

<パリ下町スケッチ旅日記そんな記事を描いてみたいです>→ ぜひ、実現させてください。風景と風景になじむ人物たち、匁さんの水彩での得意分野ですものね。

by TaekoLovesParis (2016-03-15 22:51) 

yk2

ロココはあまり得意な部分でないのですが、女性は好きな方多いですよね、こう云う柔らかな画風の絵。ま、マリー・アントワネットのお気に入りとあってはtaekoアントワネットが好まないワケがないってコトで、ねーさんが再三取り上げるのも納得です(笑)。僕はやっぱりラファエッロっぽい『詩の寓話』に安心感を持ちますね(^^ゞ。
by yk2 (2016-03-16 07:52) 

Inatimy

初めて観る画家の絵だなと思っていたら、「軽い服装のマリー・アントワネット」の絵になんだか重なるイメージが・・・。 気になって調べたら、同じ1783年に描かれた肖像画で、ブルーグレーのドレスをまとって同じポーズをとってる絵がありました。私、これ、以前ウィキペディアでマリー・アントワネットを調べてた時に目にしてたようです、画家さんの名前まで注意して読んでなかった・・・^^;。
この中では「鏡の中の自分を見るルイーズ=ルブラン」が気に入りました。鏡で横顔と正面の表情がどちらも表現できますね^^。
by Inatimy (2016-03-16 18:43) 

TaekoLovesParis

yk2さん、そう、ロココを好きなのは圧倒的に女性ですね。衣装のせいもあると思うわ。服や帽子が優雅で手がこんでいるので、すばらしいなぁと眺めてしまいます。アントワネットの衣装はその最たるもの。着たいとは思わないけど、眺めるのは好きです。yk2さんが、「詩の寓話」に安心感を持たれるのは、対角線構図で安定しているからかしら。顔に光を当て視線を向けさせ、動きのある画面ですね。yk2さんは、人物が静止した肖像画より、動きのあるドラマティックなものがお好きかなと、思いますが。
by TaekoLovesParis (2016-03-20 01:48) 

TaekoLovesParis

Inatimyさん、<同じ1783年に描かれた肖像画で、ブルーグレーのドレス>→私も調べてその絵を見ました。「バラの花を持つマリーアントワネット」 Marie-Antoinette à la rose だとすると、これを描いた後に、普段のアントワネットを描きましょうということで、ドレスなし、アクセサリーなし、「軽い服装のマリー・アントワネット」を描いたのだそうです。(図録の説明から) 
鏡を見つめるルイーズちゃん、どんぐり眼で可愛いですね。そう、横顔を正面、上手い表現ですね!ルイーズちゃんは、ずっと母親と一緒に旅。ロシア滞在中に会ったロシア人貴族と結婚したのだそうです。
by TaekoLovesParis (2016-03-20 02:24) 

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