私が見たカサットの絵 [展覧会(西洋画)]
前の記事、横浜美術館で見た「メアリー・カサット展」を書いていたら、外国の美術館で見た
カサットの絵を思い出したので、記事にまとめておくことにした。
1、オルセー美術館(2010年春)
今は撮影禁止のオルセー美術館だが、当時はOKだったので、気に入った絵を何枚か
写真に撮った。
カサットはアメリカ人なので、作品は主にアメリカの美術館で見れるが、パリで学び、
死ぬまでパリに住み、印象派展に参加、出品していたので、当然、オルセーにも作品がある。
”Jeune fille au jardin" 庭で針仕事をする若い女性 1880年
カサットには、縫物をする女性の絵が数枚ある。当時の女性の日常的な光景だったのだろう。
女性を囲むゼラニウムの赤が全体を華やかにしている。背景の道が斜めに画布を切っている
ので、女性がこちらに近づいてくるかのような感じがする。
"Malle.Louise-Aurore" 1902
2、ボストン美術館(2008年)
”In the Loge" 1878
「桟敷席にて」 今回のカサット展(横浜美術館)に出品されていた。
桟敷席での絵は、姉リディアをモデルにしたものも何枚かあるが、これが突出している。
"Tea" 1880
午後のお茶は、当時の上流階級の儀式のようなものであった。
ストライプの壁紙や大理石のマントルピース、銀のティーセットが豊かな生活を象徴している。
手前にすわるのがこの家の人(モデルはリディア)、中央の女性が客。
客の女性は正装で手袋をしたまま紅茶を飲んでいる。
3、メトロポリタン美術館
"The Cup of Tea" 1880
姉リディアと両親がパリに移住して来てからの絵は、姉がモデルの絵が多い。
「お茶の時間」は、当時の上流階級の習慣だった。
印象派の活き活きとしたきらめく筆づかいと明るい色調。
ピンクのドレスは補色関係にある青のソファーや背景で強調されている。
1881年の印象派展に出品し批評家に称賛された絵。
”Lady at the Tea Table” 1885
母のいとこリドゥル夫人がモデル。リドゥル夫人がここにある立派な青磁のティーセットを贈って
くれたので、お礼にと、夫人の肖像画を描いた。
カサットとしては自信作だったが、あまりにも本人に似ていたので、夫人に拒否され、ずっと、
カサットの手元にあり、メトに寄贈された。
”Young Mother sawing" 1900
カサットは、1890年頃から専ら「母と子」または「子供」をテーマにした絵を描いた。
甥や姪への愛情、子育てへの興味が反映しているが、この絵のためには、モデルを雇った。
親友のハヴマイヤー夫人は、この絵を絶賛して購入した。「お母さんの膝にもたれかかってる
子供。お母さんにとっては、それだけで、邪魔なのに、子供は邪魔してないつもりなのよね。
でも、それは本当ね。お母さんは、ちょっと手を止めるけど、またすぐ針仕事を続けてるんですもの」
”Mother and Child (Baby getting up from his nap)" 1899
美しいドレスを着た女性が昼寝から起きた子供の足をタオルで拭っている。
ブロンドで青い眼の赤ちゃんはJulesという男の子で、カサットのモデルとして頻繁に登場する。
豊かな色彩で、型破りな構図のこの絵は、メトに収蔵されたカサット作品第一号である。
”Mother and Child" (The Oval Mirror) 1899
ルネッサンス絵画の聖母子のような構図。楕円形の鏡が子供の頭上の天使の光輪と
関係づけることができる。カサットの絵の先輩ドガは、「きみの良い資質と悪い点が出てる絵。
子供のイエスと英国人の乳母のようだ」と批評した。
この絵は、ハヴマイヤー夫人が「フィレンツェのマドンナのようだわ」と気に入り購入した。
”The Garden" 1880 「別荘の庭でかぎ針編みをするリディア」
カサット一家はパリ郊外の別荘で夏を過ごしていた。姉リディアは、美しく
着飾って(刺繍が袖口、前たてにある服)、かぎ針編みにいそしんでいる。
屋外での絵画は多くないが、リディアの白い大きなレースの帽子に、まぶしい夏の太陽がさしている。
4、シカゴ美術館
"The Child's Bath" 1892
背景の色からだろうか、静けさを感じる画面構成だが、子供をしっかり抱えて足を洗う母、
そのようすを見つめる無邪気な子供。親子の情愛が伝わってくる。
上から見たような構図や、大胆な縞模様の服は、日本の浮世絵からの影響といわれている。
子供の白い肌、子供の腰に巻かれた白布、母親の太い縞の服の白、白の水差し画面と、
全体を白が引き締めている。縞模様の服は日本の着物の柄を思わせる。
"On the Balcony" 1978~9
バルコニーで新聞を読む姉リディア。リディアの白いドレスも華やかだが、背景の花々が
さらに画面に明るさと華やかさを加えている。知的で豊かな雰囲気の伝わる作品。
5、ホノルル美術館
”The Child's Caress" 1891
カサットは、「母と子」の作品で有名な画家。
この作品は、キリスト教の主題「聖母子」を思い起こさせるが、カサットは聖母子を
現代版に置き換えている。これもそうだが、カサットは、後期の作品の「母と子」には、
知人ではなく、モデルを使い、家族の肖像というより、人間の愛情の交流を描いている。
6、その他
"Little girl in blue arm chair" 1878 「青い肘掛椅子の少女」
WNG(ワシントン・ナショナル・ギャラリー)にある作品だが、2006年ボストン美術館で
「パリのアメリカ人」という企画展をしていた時に見た。
このソファーは元々ブルー単色だったので、ドガが模様を加えたという先生の手の入った
作品。退屈そうな少女、左の犬までが退屈でねむいなぁという様子がほほえましい。
こんにちは。
カサットのお姉さんのリディアは美人ですね。「桟敷席にて」が好きです。
"The Cup of Tea”はドレスの色が美しくてフランスの雰囲気がしますね。
お母さんと子供たちの絵の数々もとてもいいですね。最後の「青い肘掛椅子の少女」が素敵です。青の色がいいですし、子どもの自然なポーズが微笑ましい。モデルを務めさせられて退屈している様子がかわいいですね。ワンちゃんはおとなしく女の子に付き合ってあげてるんでしょう。さすが犬だわ!(猫だったらとっくにどこかへ行ってますね。=^_^=)
by coco030705 (2016-08-17 13:56)
最後の絵のブルーが何とも言えず印象的で素敵ですね。
by gillman (2016-08-18 00:09)
「桟敷席にて」、すてきですねー^^
横浜美術館での「メアリー・カサット展」へ行こうと思っていたので、
今、Taekoさんのお話を読んで良かった。
楽しい時間になりそうです♪
by hatsu (2016-08-18 10:59)
nice&コメントありがとうございます。
▲cocoさん、リディアは初めの頃は可愛さを残してるのですが、数年後、病気になってからは、急に老けます。カサットは、ルノワールのように、どの人も美しく描くことをしなかったので、リディアの変化がはっきり見て取れるんです。
"The Cup of Tea”、ピンクのドレス、ふんわりとすてきですね。袖口のレース、胸元のレース?服と揃いの帽子をかぶり、長手袋をして、と、当時の正装でしょうね。
<猫だったらとっくにどこかへ行ってますね。=^_^=)>→ そうよね、この気づきかた、いいなぁ。
▲gillmanさん、「青い肘掛いす」とタイトルに使うほど、青が印象的で、量が多いですね。少女のスカートと靴下のタータンチェックが明るい青を引き立てている、って思いました。
▲hatsuさん、私も「桟敷席にて」、好きです。実際に絵を見ると、遠くからオペラグラスで、舞台でなく、こちらを見ている中年男性がいるのが、はっきりわかり、面白いです。カサット展、子供の表情が、hatsuさんの姪ごちゃんに似てるところがあって楽しめると思います。
by TaekoLovesParis (2016-08-19 23:40)