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ブランディワインリヴァー美術館 [外国の美術館、博物館]

今春、フィラデルフィアに行った時の話です。
「ブランディワインリヴァー・ミュージアムへ行く?」って訊かれ、「ワイナリーはカリフォルニア
で行ったけど、こっちにもあるの?」「ワイナリーじゃなくて、ワイエスの美術館なのよ」
ワイエス美術館は、フィラデルフィア郊外。ブランディワインという名の川があるらしい。
ロングウッドガーデンに行く時、ちょっと回り道をすれば行けるから、行ってみる?」
「もちろん、行くわ!」


brandywine3.jpg

この左手に正面入口がある。右手には、ブランディワイン川が流れる。
brandywine.jpg

これ、まさに、ワイエスの絵の世界の景色!
枯れ木と草の静かなたたづまい。
川縁に牛のブロンズ彫刻が寝そべっていた。美術館の建物の2階ロビーから撮った写真。
brandywin2.jpg

2階のロビー
lobby.jpg


アンドリュー・ワイエスは、ここ、ペンシルヴァニア州チャッズフォード ChaddsFordの生まれ。
父親は人気の挿絵画家で、かなり収入があったので、ここに広い土地を購入し、アトリエを作った。
ワイエスは、ここと避暑地のメイン州以外には、行ったことがなく、旅もせず、91才で生涯を
終えるまで、ここで過ごした。
従って、ワイエスの絵に登場する場所は、こことメイン州だけである。
ワイエスは、身の回りのものを注意深く観察し、デッサンを何枚も描いてから絵を完成
させた。ワイエスの人物画は肖像画でなく、一生懸命生きる人の生活を描こうとした。
ありのままを描いているので、ぱっと見、地味だが、よく見ると、力強さ、深みがある。

この美術館は、ワイエスの父、息子、親子三代の作品及び同時代のアメリカ作家の絵を
展示している。絵は、撮影禁止だったので、以下は、絵葉書から。
ちょっと驚いたのは、この豚の絵。かなりリアル。干し草の一本、一本が丁寧に描かれている。

WyesPig.jpg

「スノーヒル」 Snow Hill
雪の白、みごとな明るさ。楽しくダンスをする人たち。自分の住む地域から出なかったワイエスなので、
ここに登場する人たちは、皆、ワイエスの知り合いである。

snowdance.jpg


親子三代美術館なので、アンドリュー・ワイエスの作品数はさほど多くない。
父親の挿絵は、挿絵と言う範疇にないほど、丁寧に描かれ、いきいきとしている。
息子も画家で似たような作風。周辺の風景や室内を描いた絵が多かった。
単に浴槽だけという絵は、他の人が描かない題材。

ワイエスというと、思い浮かべる絵は、「クリスティーナの世界」だが、これは、NYのMOMA蔵。
wyethChristina.jpg

東急文化村のミュージアムで開催された「アンドリュー・ワイエス展」の図録に使われてのは、
「春か彼方に Fareaway 」 少年の帽子があらいぐまの毛皮。
内向的に見える少年なので、遥か彼方を見つめているのだろうか。

wyesBoy.jpg


代表的な作品は、各地の美術館にあり、ここにはないとわかった。


案内してくれたY子が、以前ここに日本人の画家を連れて来た時、とても熱心に見てるので、
ワイエスの親戚って名乗る人が、「画家か?」とたずね、Yesと答えると、「それなら、僕のうちを
見せてあげよう。ワイエスが描いたものもあるから」と少し離れた所にある家の中に入れて
くれたのだそう。

ワイエスが描く世界そのものという場所に行けて、ワイエスの絵にいっそうの親しみを感じた。



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コザック

こんばんは。
なんとタイムリーな。昨日の日曜美術館でワイエスの特集やってたんですよ。米国でも今トランプさんの影響でワイエスの主張(アメリカ人にとってアメリカとは何か・・)を再認識することで話題となっているようです。土曜の再放送で是非。
ちなみに埼玉は朝霞の丸沼芸術の森というとこで日本での展覧会もやっているらし。「クリスティーナの世界」の習作などもあり日本のワイエスならここというところらしいです。
by コザック (2017-09-11 20:59) 

SORI

TaekoLovesParisさん こんばんは
外国の美術館には惹かれます。こちらは自然の中にある美術館なのですね。すばらしい体験です。
by SORI (2017-09-11 21:17) 

TaekoLovesParis

コザックさん、日曜美術館がワイエス特集だったんですか。再放送、見ます!
趣味で絵を描いてる友だちが「テンペラ画を学ぶ」っていう講座に行くという話で、ワイエスがテンペラ画の技法を作品に取り入れていたと言ったので、ワイエスの美術館のことを思い出したんです。
「丸沼芸術の森」、調べてみました。広そうね。ワイエスのデッサンをたくさん持っているのね。
by TaekoLovesParis (2017-09-11 23:40) 

TaekoLovesParis

SORIさん、ルーヴルやメトのような大きい美術館も良いけれど、くつろいで見れるのは、こういう小さい美術館です。フリックコレクション、バーンズコレクションのような邸宅美術館もすてきですよ。
by TaekoLovesParis (2017-09-11 23:43) 

coco030705

こんばんは。
アンドリュー・ワイエス、すばらしいですね。かなり昔に京都の美術館で展覧会があり、絵を描く友達といったんですが、「クリスティーナの世界」も来ていました。すごく印象に残っています。友人はワイエスが大好きだと言っていました。
「ブランディワインリヴァー・ミュージアム」はとても素敵な美術館。こんな美しい景色のところで過ごしたら、他に行かなくてもよくなりそうですね。それにしても、「スノーヒル」が絵なのかどうか、写真に見えます。完璧な絵ですね。
ワイエスがこことメイン州だけしか行かなくても、こんな素晴らしい作品を残せたというのが、ターシャ・テューダーやエミリ・ディキンソンと相通じるところがあると思いました。天才は絵の対象をあれこれ選ばないということでしょうか?
by coco030705 (2017-09-12 21:33) 

yk2

寝そべっていた牛がブロンズだと気付いたのは、取りあえず本能でガブっ!とやってみた結果がすごく固かった・・・と云うことですかぁ~?(^^ゞ。

ワイエスって、ワタクシ、実際一度も直に作品見たことが無いかも。
by yk2 (2017-09-13 01:36) 

Inatimy

ワイエスで思い浮かべる絵は、私の場合、中学の美術の教科書に載ってた、
"Alvaro and Christina"「アルヴァロとクリスティーナ」なのだけれど、
人の名前がついてるのに、農場の片隅みたいなところなんですよねぇ。
ブルーの扉がとても印象的で、すごくリアルで。卒業後も切り抜いて残してあります^^。
・・・って、これ以外のワイエスの絵って知らなかったり・・・^^;。
by Inatimy (2017-09-13 06:36) 

coco030705

Taekoさんへ
こんばんは。またお邪魔します。
Taekoさんの知識の深さには驚きます!色々お教えいただくことが多くてとても興味深いです。ソーローの「森の生活」は題名だけ知っています。いつか読んでみたいですね。都会に住んでいるとなかなかわからないんですが、やはり自然の中で暮らす、自然とともに暮らすというのが本来動物である人間には自然なことなのかもしれませんね。そして「絵描き、小説家に共通してることは、優れた観察力」、なるほどと思います。

by coco030705 (2017-09-13 23:24) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲cocoさん、絵描きさんでは、ワイエスを好きな人が多いですね。1枚の絵のために何枚ものデッサンをするのですから、完成度が高いんでしょうね。クリスティーナは小さい時ポリオを罹って手足が不自由。家に帰るのに、この坂になってる草原をよじ登らないと、なんですよね。そういうことを知らないで、この絵を見た時は、棄てられちゃったの?とか骨折ったの?とか、不思議な絵、でも、なんか気になるって思ったのでした。
ターシャやエミリ・ディキンソンとの共通点、コザックさんのコメントにあるように<アメリカ人にとってアメリカとは何か・・)を再認識する> → 番組を見てないので正しいかどうかわからないけど、私は、アメリカ人は移民の歴史から、努力して道を拓くことを旨とする、自然と共に生きようとする、内省を尊ぶ、その3つに特徴があると思うの。cocoさんの記事で、エミリ・ディキンソンのことを読みながら、思い浮かんだのは、ソローの小説「ウォールデン 森の生活」。19世紀半ば(エミリと同時代)、ソローはウォールデンという場所に自分で小屋を建て、自給自足の質素な生活をした、毎日、昼は周りの動物や木々を観察、夜には自分自身を内省、精神的なこと、哲学的なことを深めていったの。あぁ、これは私の憧れの生活と思い、ある夏休みにソローのような暮らしを河口湖でしてみたけど、3日ともたなかった。
以来、「森の生活」のことは忘れてるけど、時々、人間本来の暮らしは、ああいうのなんだろうな、と思うわ。
絵描き、小説家に共通してることは、優れた観察力ね。

▲yk2さん、違いますよ。本能で牛をやさしく撫でてみたんですよ。ひんやりとしました。正面から写真を撮ったのですが、光が反射して、黒光りする物体は上手く撮れませんでした。で、あきらめて、建物に入り、2階へあがったら、眼下に見えたので、今度は撮れるかなとカシャッ。これも粗末な出来ですが、無いよりはいいかなと載せました。
そうね、yk2さんは西洋美術にお詳しいけれど、アメリカものはご覧にならないわね。とはいえ、CDのジャケにはアメリカのポップアートが使われてたりする?

▲Inatimyさん、「アルヴァロとクリスティーナ」、教科書に載ってたんですか!それなら、すぐ見つかると、検索して見ました。ほんと、ブルーの扉がとっても印象的。アルヴァロとクリスティーナのお父さんは元船乗りで、この地に来て農業に転向。引退したけれど、いつも海を見ていたいからと青く塗ったんですって。
人がいないのは、住人の二人が亡くなってから、ワイエスが、家をたずねて行ったときのことだからだそうです。ふたりはいないのに、そこにある道具たちはそのままで、二人がいるような気がするほどだったんですって。「どうぞ安らかに」という意味も含まれてるのかしら?
by TaekoLovesParis (2017-09-13 23:57) 

TaekoLovesParis

cocoさん、Inatimyさんへのお返事がかきかけだったから、付け加えたら、cocoさんのお返事のの方が後になっちゃって、ごめんなさい。よく見ればよかったのに。。観察力に欠けてるから(笑)
<自然の中で暮らす、自然とともに暮らすというのが本来動物である人間には自然なことなのかもしれませんね。>→ そうなんだと思う。ターシャはそうよね。皆も漠然と気づいてるからこそ、ターシャが尊敬されるんだと思うわ。何より、お庭&お花がきれいですものね。
私は19cアメリカ文学、好きなんですよ。ヘミングウェイは海を見つめて「老人と海」、スタインベックはぶどう畑を見つめて「怒りのぶどう」、真剣に自然向き合ってるでしょ。20cになってからは、短編に面白いものが多いです。マラマッドとかマッカラーズ。でも、最近は日本のベストセラーばっかり読んでるの。貸してもらったりするので。
by TaekoLovesParis (2017-09-14 00:15) 

moz

素敵な美術館に行かれたんですね。
ワイエス、ちょうどじぶんも記事にその名前を書いたところでした。
クリスティーナの世界いい絵ですよね。一瞬を切り取った感のする絵、少し冷めている感じもする絵好きだなぁ。
吉田篤弘さんの「モナリザの背中」という少し不思議な小説にもクリスティーナが出て来て、記憶に残っていたこともあって、ワイエス、まとまって見たいなと思っていたところです。
また展覧会来てくれないかと ^^
by moz (2017-09-14 06:10) 

初夏(はつか)

ブロンズ像の牛、気持ちよさそうですねー。
ほのぼのと、いい感じ。
「ここに登場する人たちは、皆、ワイエスの知り合いである」
とても素敵で、力強いですね。

「ボンジュール、アン」観てきました♪
映画を通じて「フランスの旅」、楽しんできましたょっ。
Taekoさん、映画を紹介してくれてありがとうございます^^
by 初夏(はつか) (2017-09-15 09:47) 

TaekoLovesParis

初夏(はつか)さん、「ボンジュール、アン」、実際、フランスをドライブしてる気分になるでしょ。この車で大丈夫?クレジットカード戻ってくる?なんて、ちょっと心配したり。こんなにたくさんの新鮮なバラの花束、車に積んで走りたいなぁ。車の中いっぱいにバラの香りよ。
ワイエスの世界は、素朴なアメリカの良さを教えてくれます。健康でお金もあったのに、自分の住む世界から外へ出る旅をしなかったのは、そこの生活、周囲の人々に満足してたからなんでしょうね。
by TaekoLovesParis (2017-09-16 11:39) 

TaekoLovesParis

mozさん、私もmozさんの記事に「クリスティーナの世界」が取りあげられていたので、おっ!って思いましたよ。とっても印象に残る絵ですものね。プロの人には、デッサンが参考になるみたいですが、私は色のついた完成作品を見る方が好きです。2008年、ワイエスが亡くなるちょっと前に、東急文化村のミュージアムで、「ワイエス展」があって、とっても良かったです。もう9年前なので、そろそろ、どこか
で、やってくれるといいのですが。。
<「モナリザの背中」という少し不思議な小説> → 読んでみたいです。
by TaekoLovesParis (2017-09-16 11:54) 

ふにゃいの

素敵な風景の中にある美術館ですね。
草の色合いとタッチがいいなぁ。
by ふにゃいの (2017-09-16 18:26) 

TaekoLovesParis

ふにゃいのさん、<草の色合いとタッチ>→ ワイエスの草表現は、とってもリアルで、まさに写実。写真のようだけど、実際の景色よりもっと深みがある。実際に行ってみて、絵のすばらしさが今まで以上にわかりました。
by TaekoLovesParis (2017-09-17 07:22) 

匁

こんにちは
流石ですね!。現地アメリカの美術館で作品に出会うとは
感心します。
「クリスティーナの世界」は説明を聞かないと、ここで
休んでいるのかな?と思います。なんと、丘の上まで
歩行に障害があるので、這っているんですか?テレビで説明していましたが?。

G軍3位CSに出場可能性大きくなりましたね。入ってしまえば
大物選手が多いだけに、短期決戦のCS優勝の可能性が大ですね。

by (2017-09-17 10:24) 

TaekoLovesParis

匁さん、台風接近とのニュースでおとなしく家にいる休日です。
昨日はパリーグ、ソフトバンクの優勝が決まりましたね。西武ファンですが、工藤は私が熱心に応援してた時代に西武に入団、ダイエー、巨人と長くプレーしたので、辻監督より親しみを感じる選手でうれしいです。
G軍は昨日、一発のホームランで負けて、DeNAと共に3位。ちょっと休んだから、ここからは一気に勝ちます。DeNAより投手陣が勝ってると思うし、そろそろ打線も爆発の時期。CSに加わりたいです。
by TaekoLovesParis (2017-09-17 12:06) 

TaekoLovesParis

いっぷくさん、お久しぶりです。
ご訪問ありがとうございます。いつかまた、記事を書いてくださいね。
by TaekoLovesParis (2017-09-18 23:10) 

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