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静嘉堂美術館の曜変天目 [展覧会(絵以外)]

東京・世田谷区、多摩川に近い辺りにある「静嘉堂文庫美術館」へ国宝「曜変天目茶碗」と
重要文化財「油滴天目茶碗」を見に行った。所持品なのだが、常時展示ではなく、期間を
限定して展示される。今回は、12月15日明日までの展示。

静嘉堂文庫は、三菱の創業者、岩崎彌太郎の弟、二代目社長の之助によって設立され、
東洋美術品および古文書を所蔵している。
このレンガ造りの建物が「静嘉堂文庫」で、美術館はこの横に新しく作られている。
反対側には赤いモミジの紅葉があり、ちょうどいい季節だった。

静嘉堂.jpg


「曜変天目茶碗」(12~13世紀)
思っていたより、小ぶりの茶碗だが、実に美しい。
曜変の「曜」は輝くという意味の字で、実際、きらきらと輝き、星のようだ。
中国福建省の釜の作成だが、偶然の産物なのだそう。
曜変天目は、世界で3椀だけ。それも全部、日本にあり、大阪の藤田美術館蔵のものを
サントリー美術館の企画展で見、こちらのもぜひ見たいと思っていた。
茶碗を四方から眺めることができるのも展覧会ならではの楽しみ。側面の縞模様も美しい。
徳川家の所蔵品であったが、家光が春日局に下賜、春日局の婚家先
(撮影禁止なので、絵はがきより)

001_img_01.png


こちらは「油滴天目茶碗」(12~13世紀)
撮影可。すり鉢形で口が広いため、曜変天目に比較すると大きく見える。
油滴が黒光りをして美しいが、力強さもあり男性的である。
これも四方から見れるので、見る場所により油滴の輝きが異なって見え興味深かった。

静嘉堂_油滴天目.jpg


これらの茶碗は、「仕覆」と呼ばれる布製の袋に入れ、さらに桐の箱で保存される。
今回の展覧会のタイトルは「名物裂と古渡り更紗」なので、茶碗と共に仕覆も展示されていた。
通常、仕覆はひとつだが、「曜変天目」の仕覆は、稲葉家伝来の14~15世紀のものと、岩崎家に
来てから調製されたものの2つがあった。特に稲葉家伝来のものは、金地金襴に蔓、牡丹、唐草模様
が刺繍されたもの。細かい仕事なので模様の緻密さが拡大図でわかった。刺繍なのだが、
細い糸でなされてるため織物のように見える。


利休が所持していた「茶入れ」(濃茶用)とそれに合わせた仕覆が展示されていた。
漆塗りの「棗」(薄茶用)は大切だったので、仕覆が複数枚用意され、それらは、
色味を揃えたり、柄合わせがなされたりと、調和がとれていた。


江戸時代になると、「煎茶」文化もさかんになったので、仕覆も、輸入されたインド更紗や
中国製布で作られるようになり、輸入布での風呂敷もあった。
色を合わせた紐がアクセントになっている。中央にあるのが一人用の茶器。

仕覆.jpg

亀甲、間道と呼ばれる横縞、絣、鶏頭の花柄などの模様は、日本古来のものかと思って
いたが、インド由来のものなのだとわかった。


ここに着いたのが、4時だったので、帰る頃、5時少し前には、夕焼けがきれいで、
富士山もはっきり見えた。

静嘉堂富士山.jpg

nice!(37)  コメント(9) 
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コメント 9

coco030705

曜変天目茶碗、藤田美術館にあるので、いつ展示するか聞いてみようと思っています。絵ハガキのでも、美しいですね。
by coco030705 (2019-12-14 22:27) 

ふにゃいの

静嘉堂美術館の曜変天目、以前見ましたが
ほんとうにきれいですよね~。
大好きです。
静嘉堂美術館、ちょっと高いところにあっていい眺め。
ちょっと遠いけど。
by ふにゃいの (2019-12-14 23:05) 

yk2

二子玉川って、駅からもすごくよく富士山が見える日があるんですよね。冬の好く晴れた日なんか、かなりばっちりと。と云っても、ここ数年は明るい内のフタコに電車で行くこともないので、今も同じ眺めが楽しめるのかは僕には分からないですが。

茶器を見る展覧会って、どうにも僕には「お勉強」に行く感覚が湧いてしまうものなのですが、曜変天目茶碗はまるで別物ですよね。ずっと見つめていると、宇宙を見ているかの様な感覚に陥ります。中世の人たちがこのお椀を初めて目にした時、一体何を思っただろう?と想像するだけで楽しくなっちゃう(^^。展示は今日までかぁ。どうもここはアクセスがなぁ~。世田谷は出来る事ならクルマで近寄りたくないし(笑)、ここはいつも逡巡だけして終わってしまいます(^^;。
by yk2 (2019-12-15 11:56) 

アールグレイ

イチョウなどが見頃の良い時期に行かれましたね^^
曜変天目茶碗、美しいですね。
宇宙を感じます。
棗を包む仕覆も素敵なものばかり^^
by アールグレイ (2019-12-15 17:11) 

チョコローズ

この展示、母と行くかどうか、迷ったんです。
行けばよかった・・・でも記事を読んで今は満足です。
直に見る価値ありますよね。今度チャンスがあったら、一人で行きます!
by チョコローズ (2019-12-21 16:12) 

engrid

曜変天目、美しい。。
四方から、観賞できるのは、嬉しい支度
仕覆が、また素晴らいい、、衣装持ち、、代々の方々がお好みで誂えていらしたのね、お裂地のいわれも興味深いですね
by engrid (2019-12-22 01:05) 

Inatimy

「曜変天目」の仕覆、Taekoさんの描写、すごくそそられます。ものすごく豪華絢爛そうですね。どんなものか見て見たい気が^^。
いろんな布地で作られた仕覆、それだけでも見ごたえありそうです。その紐も重要ですものね。結び方もいろいろあるみたいだし。
by Inatimy (2019-12-23 19:35) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます。
▲cocoさん、藤田美術館のと比較ができるように、記事本文に、サントリーで見た時の記事にリンクをつけました。藤田美のは、流星群のようで、こちらは、銀河系そのもの、です。展示期間を調べて、ぜひ、ご覧になってくださいね。藤田美術館に、来春行こうと調べたら、なんと改装のため2022年まで休業中でした。

▲ふにゃいのさん、静嘉堂美術館は車で行けばらくだけど、電車だと駅から遠いですよね。前に行ったのは、梅の季節、斜面に梅の木がたくさんあって、ちょっとした眺めでした。でも、今回の紅葉のほうがいいなと思いました。散策の道もあるようです。

▲yk2さん、二子玉川からの夕陽の写真が、以前の記事にありましたね。
リトをたくさんお持ちの家からの眺めの。
茶器自体は地味な色合いのものが多く、「心躍る」感覚はないのですが、
曜変天目茶碗は違いますね!徳川将軍の所持品というのも納得です。
2つ見たので、最後のひとつ、大徳寺のも見たいけれど、これが一番、展示機会が少ないので、関西の展覧会を時々、チェックしないと。
住んだこともありますが、迷路世田谷ですものね。
by TaekoLovesParis (2019-12-24 10:04) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます。
▲アールグレイさん、ここは多摩川のそばの高台で敷地も広く、岩崎家のお墓もありました。きちんと手入れされた樹木に囲まれ、気持ちの良い空間です。
曜変天目茶碗は、光の当たり方でいろいろ変化して見え、キラキラと美しく虜になってしまいます。お棗、お仕覆、お茶の世界では、「お」をつけて使うことが多いですね。こういう美しい手仕事のものを見ていると、「お」は接頭語というより尊敬の「お」なのかしらと思えてきます。

▲チョコロさん、曜変天目茶碗は一見の価値あり、です。静嘉堂美術館も駅から遠くアクセスが悪いのですが、お庭の散策もできますし、一度はいらしてみてください。ティールームはなく、ソファーのある休憩室に自販機があるだけです。

▲engridさん、美しいですよね。私は、サントリー美で見た藤田美術館のものより、こちらが好みでした。お茶碗は手に取って眺めたりするから、四方から眺められるのがいいですよね。写真ではわからないけれど、外側の縞模様部分の色合いがまた、すてきなのです。
裂地にも格があって、第一位が金襴、銀蘭、緞子(どんす)なんですって。
だから、岩崎家に曜変天目茶碗が到来したとき、お出迎えする気持ちで格調高い裂地で仕覆を作ったんでしょうね。
写真を載せた江戸時代の仕覆は、遊び心があって可愛らしいですね。

▲Inatimyさん、裂地(きれじ)は、小さいから手仕事も細かいのもになりますね。細い金糸での刺繍、びっちり敷き詰められた織物のよう。Inatimyさん、刺繍もなさってましたよね。裂地を使っての仕覆づくりは、お茶を習ってるかたの中には今もご自分でなさるかたがいらっしゃいます。簡素な裂地で作ったものは、普段のお稽古で楽しめます。



by TaekoLovesParis (2019-12-24 11:28) 

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