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コートールド美術館展 [展覧会(西洋画)]

tirashi.jpg

この展覧会は、東京での会期は終わってしまったが、巡回で現在は、愛知県美術館、
3月28日からは神戸市立博物館で見ることができる。

manet_FolieBerge2.png

チラシに使われているマネの晩年の傑作「フォリー・ベルジェールのバー」をはじめとして、
良い絵が勢ぞろいだった。このマネの絵は、鏡に映る酒場の女性の後ろ姿が実際あり得ない
位置であるとか、右隅の男性の視線は?など、長年にわたり、物議がかもされたが、
現在では、鏡に映る観客たちは、左上の緑の靴の足、すなわち空中ブランコ乗りを見ている、
右隅の男性も空中ブランコを見ていると、3Dカメラの視点操作で証明できたとのこと。
詳細に描かれているお酒の瓶もそれぞれ面白い。左端はマネと名前が入っているので、ボトル・
キープだろう。赤い▲は、有名なビール、ペールビールでしたっけ?


私が好きだった順に、いくつか紹介したいと思う。

(1)ピサロ 「ロードシップ・レーン駅 ダリッジ」1871年

44×72㎝の絵。向こうからこちらに向かって汽車が来る。
汽車の煙が雲の方へと消えていく。広々とした景色。遠近法のため立体的に見える。
村の家も丁寧に描かれていて、かわいらしい絵。

Pissaro_LordshipLaneStation_Dulwich2.jpg

(2)マネ「アルジャントゥイユのセーヌ河畔」1874年
横1mの大きめの絵。白い波、白い帆、白い瀟洒なドレスの女性。傍らに女の子。
舟を見ているのだろう。この前年に描かれた「鉄道」も身なりの良い女性と女の子。
当時は鉄道や船が急速に身近になった時代。対岸の緑の木々が手前の土手の緑と
対応して左から右へと広がる三角形構図が水の青さと広がりを示している。

Manet_Banks of the Seine of Algentuille2.jpg

(3)セザンヌ「アヌシー湖」1896年
正面、アルプスの山の麓にアヌシー城が見えるアヌシー湖。風光明媚なことで知られている。
いつか行ってみたい場所なので、写真で見慣れているが、セザンヌが描くと、こんなにも
男性的で力強い。山肌と水面に光がさし、美しい波紋となっている。

Cezanne_Lac d'Annecy2.jpg


(4)セザンヌ「カード遊びをする人びと」 1892~96年
同名の絵が5枚あるが、絵の大きさ、カードをする人数が異なっていたりする。
バーンズコレクションのはここ
これは2人だけバージョンで、パリのオルセー美術館のと似た構図。
セザンヌは、この一連の作品のために、4~5年を費やし無数のスケッチを描いている。

Cezanne_Card.jpg

(5)セザンヌ「大きな松のあるサン・ヴィクトワール山」1887年
セザンヌは、1890年代前半は「カードをする人びと」中心だったが、その前1870年代に
南フランスのエクス・アン・プロヴァンスに住み、「サン・ヴィクトワール山」を
水彩で40点、油絵で40点描いた。これは初期なので、写実に近いが、1904年、05年
の頃のは、形がはっきりしない。

Cezanne_Exprovince.jpg


(6)マネ「草上の昼食」1863年
オルセー美術館の「草上の昼食」の習作。大きなオルセーの絵よりも小さめ。

Manet.jpg

(7)モネ「アンティーヴ」1888年
南フランス、セザンヌが住んだエクス・アン・プロヴァンスにも近い町、アンティーブ。
地中海に面していて日差しが明るい。モネの点描でキラキラのゆらめきが映し出される。
同名の絵が、愛媛県美術館にあり、国立新美術館での「モネ大回顧展」に出ていたが、
もっと暗かった。構図がほとんど同じなので、モネの得意技、時間を変えての定点観測
かと思う。

Soura.jpg

(8)ゴーガン「テ・レリオア」1897年
ゴーガンがタヒチに移住してからの絵。
背中の向こうにいる妻、左わきには赤ん坊。「これからどうやって生活するか」と
考えているかのような表情の主人公。

Gougan.jpg

(9)左ロートレック「ジャンヌ・アヴリル ムーラン・ルージュの入り口にて」
当時有名だった踊り子のジャンヌ。この小ささだと目立たないけれど、実物で見ると、
当時20代前半というのに若さが見えない描き方。花飾りのついた帽子と毛皮はすてき。
(10)モディリアーニ「裸婦」1916年頃
発表当時は警官が出動したという話が伝わっているほど、当時、刺激的だった絵。
身体と顔の部分の描き方を変えて描いているのが、実物を見るとよくわかる。
背景のブルーグレーはモディリアーニがよく使っていた背景色。

Lautrec.jpgModiriani.jpg


(11)ルノワール「桟敷席」1874年
コートールド氏お気に入りの作品。これと、チラシに使われているマネの絵が
購入価格が高かったそうだ。
黒と白の縦じまは当時流行の服。

(12)ドガ「舞台の上の2人の踊り子」1874年
シンプルな構成。前に余白があるので踊り子がこちらに歩み寄ってくる気配を感じさせる。

Renoir_Opera.jpgDogas.jpg


どれも素晴らしい絵ばかりだった。小さい絵だが、スーラも良かった。
アンリ・ルソーの絵は「税関」。ルソーは長く税関に勤めていたので、税関吏ルソーと
呼ばれていたが、税関の門の前に男がぽつんと一人立つ絵だった。


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ふにゃいの

ピサロの絵、よかったですね。
私も、この絵がとてもお気に入りです。
by ふにゃいの (2020-01-18 17:18) 

coco030705

こんばんは。
コートールド美術館は、かなり前にロンドンに短期留学していたときに、イギリス人の人に、あまり知られてないけどすごい美術館があるよといって教えてもらいました。行ってみたら、どこかの画集で観た絵ばかりだったので、びっくり!!何度か通いました。↑のTaekoさんの選ばれた絵はどれもこれも素敵ですね。最近、セザンヌがいいなと思っているので、たくさん解説していただいて嬉しいです。大阪に巡回しましたら、ぜひ行きます。ありがとうございました。
by coco030705 (2020-01-18 23:23) 

Inatimy

この中で選ぶとしたら、マネ「アルジャントゥイユのセーヌ河畔」かな。
水面のブルーが鮮やかで美しく。服装や緑から初夏か夏かなって感じで、
冬の今に時期だから、余計に眩しく感じる一枚です^^。
あと、モネ「アンティーヴ」。南仏の光は違いますね〜。
by Inatimy (2020-01-20 17:22) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます。
▲ふにゃいのさん、ピサロのこの絵のことを話しても、「そんなのあったっけ」って言われてばかりだったので、ふにゃいのさんのコメント、うれしいです。

▲cocoさん、現地で何度もいらしたなんて、贅沢な経験ですねー。ここにあるだけでは足りないくらし、良い絵が揃っていました。cocoさんがご覧になると、これはロンドンで見たわ、と思い出す絵がいくつもあるでしょうね。

▲Inatimyさん、爽やかなブルーがいいですよね。絵葉書で買ったので、今、目の前にピンアップしてあります。Inatimyさんがおっしゃるように、今、冬だから、水面のまばゆさに惹かれるのでしょうね。
モネのアンティーヴ岬、中央に縦に走る大きな木が前景。背景に横に走る水平線の海と島々、浮世絵の影響がありますね。ピンク色が入ってきらきらする海は光あふれる南仏だから、ですよね。
by TaekoLovesParis (2020-01-23 23:14) 

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