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舟越桂展 [展覧会(絵以外)]

渋谷の松濤美術館へ舟越桂展を見に行った。
今週のNHK「日曜美術館」で、紹介していたので、仕事が早く終わった日、
帰りに寄ってみた。
感染者が出た時のために、入り口で、自分の名前と電話番号を書く。
「観覧時間は1時間を目安にしております」と番号付きの札を渡された。


松濤美術館は、白井晟一設計の建物で、半円形の展示室は天井が高くアトリエ
のような佇まい。洒落ているが落ち着きを感じる居心地の良い空間。
Funakoshi1.jpg

舟越桂は日本を代表する
彫刻家で、等身大の上半身の人物像が多い。
どれも小顔で細身、上品さと優しさを持っている彫刻は、
楠に彩色をしたもの。

展示室に入った途端、部屋全体が見える。台の上に置かれた半身像は、鑑賞者と
ほぼ同じ背丈。ぽつん、ぽつんと配置されていた。
Funakoshi3.jpg
「冬の本」1988年
モデルをお願いした女性は叔父が彫刻家という人。
当日、よそ行きのワンピース姿で現れたので、この間のような普段着で
来てほしかった、と舟越は言い、彫刻にするとき、服を普段着に変えた
と説明が書いてあった。
Funakoshi_Sweater.jpg
「夏のシャワー」1985年
セーターを着ているのに、タイトルが夏なのは、プールの思い出と関連が、、
後は忘れました。楠への彩色でセーターらしさがでているところ、Yシャツ
とネクタイの立体感が素晴らしい。
舟越桂の父は舟越保武というクリスチャンの日本を代表する彫刻家。ライ病の
人を救ったダミアン神父、
聖クララ、少年像など、清楚で美しい作品が多い。
母は詩人。弟も彫刻家、舟越直木。
桂は、東京造形大、東京芸術大学大学院卒。大学院時代に函館のトラピスト
修道院から「聖母子像」の依頼を受けた。
初期の作品は、上の2つのようにリアリティあふれ、人物の内面をも映し出していたが、
1990年代頃から、異形へと変化していく。

チラシの作品は、「水に映る月蝕」2003年。妊婦のような丸い身体。全体としては、
洋梨の形。手は、キリストの体に触れたマリアの手という意味合いで、別の作品に
使われていたが、ここでは翼のようにも見える。
写真はないが、「山を包む私」「遅い振り子」も気になった作品だった。

FunakoshiSuffinx.jpg
「スフィンクスには何を問うか」2020年。
スフィンクスが人間に謎解きを迫る「スフィンクスの謎を解くオイディプス」
というアングルの絵があるが、この作品は逆に、人間がスフィンクスに謎解き
を投げかけている。私にはスフィンクスの首が馬のように見えた。
これとほぼ同じ原型で、彩色されていず、しかめっ面をした作品、
「戦争を見るスフィンクス」2006年は、2003年におきたイラク戦争に対する
怒りと嘆きの表情で、戦争への抗議の作品である。


最後に、余った木を使った木彫りのおもちゃや子供のために作った車などが紹介
されていて、良き家庭人としての一面が見えた。クリスマスのカードも可愛く、
クリスチャンの家であることがほのぼのとしたものと共に伝わってきた。
Funakoshi4.jpg


父、保武の作品と弟、直木の作品も数点、展示されていた。

1月31日(日)まで開催。


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yk2

お父さんの保武さんの彫刻作品が好きなので、桂さんにも以前から興味が有るので、今回の松濤美術館、行きたかったなぁ・・・。ついでにすぐお隣のオステリア・アッサイにも(^^ゞ。

『冬の本』って作品のモデルは、ずっとanan誌面や資生堂の広告でモデルとして活躍していた甲田益也子さんなのでは?って勝手に思ってました。すごく似てるんですもん!(^^;。女性像の静的な表情の付け方はやっぱり父子だけあって保武作品と共通する佇まいが有りますね。美しいです。
by yk2 (2021-01-23 13:44) 

ふにゃいの

松濤美術館は個性的な面白い作品展を
やることが多くていいですね。
文化村からすぐだけど落ち着いた雰囲気で
建物も好きです。
夏のシャワーちょっと肩が下がった感じと骨格とか
視線とか
生きている人みたいですね。
by ふにゃいの (2021-01-23 19:28) 

Inatimy

舟越桂の作品を知ったのは昔、本屋さんで見た作家 天童荒太の本「永遠の仔」の表紙で。
マネキンでもなく、彫刻で、淡いながらも色で塗り分けられてるっていうのが
すごく印象に残って、誰の作品か調べたと言う。
「夏のシャワー」の男性の顔、描いたみたいにリアルに見えます。
「スフィンクスには何を問うか」を見た時、一瞬にして頭に浮かんだのが、ブルース・ウィルス主演の1997年の映画「フィフス・エレメント」に出てきたオペラの歌姫。
(吹き替えで歌ってるのはアルバニアのオペラ歌手インヴァ・ムラだけど)。
甲田益也子さん、画像検索してみたら、yk2さんがおっしゃる通り、ほんと似てますね^^。
by Inatimy (2021-01-23 20:31) 

やまびこ3

船越保武の作品は何回か見に行ったけど、船越桂さんの作品は直接見たことがなかったので見たかったなあ。表情が個性的ですね。
コロナ下でなければ。残念。
by やまびこ3 (2021-01-24 18:43) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます。
▲yk2さん、近美で撮った舟越保武の「原の城」、府中の森公園で撮った「鳩を持つ少年」、記事にしてらっしゃいましたね。私は、ブロンズの彫刻を撮ると、陰影がつかなくて、塊にしか見えなくなってしまうけど、yk2さんは、撮る角度がいいのかくっきりと写ってますね。桂さんのは、木彫で彩色なので、やさしさが溢れています。舟越親子の作品は、品の良い佇まいですものね。
甲田益也子さんと、雰囲気が似てますね。甲田さんは、小顔で、かわいらしく清楚だけど、私は私という主張があって、当時、人気でしたね。

▲ふにゃいのさん、松濤美術館いいですよね。こじんまりしてるから、さくっと見れて、長い滞在ができないこの時期には丁度いいです。40分くらい見ただけでも、気分転換になりました。
ごく初期の彫刻には眼球がないのですが、お父さんのアトリエにあった大理石の屑を見て、これを使って眼球にしたら、というアイディアが浮かんだのだそうです。眼球があると、生きている人みたいになりますね。

▲Inatimyさん、「永遠の仔」の表紙、見てみました。この女性像、展示されていました。はっきりした顔の女性で、お気に入りのイタリアのトマト缶のブローチをつけていて、マフラーをして、、タイトルを忘れて、、作品リストを見てもお思い出せなくて。。同じ天童荒太の「悼む人」の表紙は、舟越桂のスフィンクスシリーズなんですね。私が知ってる本の表紙は須賀敦子の「ゴルシア書店」など、須賀作品。
ミラ・ジョボビッチのフィフス・エレメントは見たけれど、オペラの場面に覚えがなくて、、。

▲やまびこ3さん、父君の舟越保武の作品の持つストレートな迫力はないけれど、静かな美しさは共通です。大理石を焼いた眼球をはめ込んでいるので、人物がかなりリアルです。展覧会場で、いくつもの人物像を見ると、それぞれの人の特徴がよく出ていて、面白かったです。
by TaekoLovesParis (2021-01-26 01:18) 

TaekoLovesParis

Inatimyさん、「永遠の仔」の表紙の女性の彫刻は、タイトルが「砂と街と」でした。
by TaekoLovesParis (2021-01-29 23:14) 

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