再オープンの西洋美術館 [日本の美術館]
東京・上野にある国立西洋美術館は、長らく耐震工事をしていたが、先月、
再オープンした。大きな企画展は6月4日からだが、常設展は見れる。
大きく変わったのは前庭。植栽をなくし、開館当初の姿にしたそうだ。
さらに開館当初の正門は、上野公園の噴水側だったので、そちらの扉からも
入れるようになった。つまり、昔は、入ると、正面に「地獄の門」が見える
光景だったのだ。夕方、5時半、閉館前の写真。
再オープンした。大きな企画展は6月4日からだが、常設展は見れる。
大きく変わったのは前庭。植栽をなくし、開館当初の姿にしたそうだ。
さらに開館当初の正門は、上野公園の噴水側だったので、そちらの扉からも
入れるようになった。つまり、昔は、入ると、正面に「地獄の門」が見える
光景だったのだ。夕方、5時半、閉館前の写真。
ロダンの彫刻「考える人」の向こうがフェンスで、写真右端に上野公園に面した
西門(旧正門)が見える。閉館前、夕方の写真。
西門(旧正門)が見える。閉館前、夕方の写真。
建物の中は変わらず、地下のロダンの彫刻群の部屋を通って、展示室へ進む。
展示されている絵と、絵の並びが大きく変わっていた。
まず、目に入るのが、
●アンドレア・デル・サルト「聖母子」1516年頃、ポプラの板、油彩
アンドレア・デル・サルトは、ミケランジェロとラファエロがローマに活躍の場を移した後、
フィレンツェの盛期ルネサンスを牽引した。赤ん坊の筋肉質な足は彫刻を参考にしたらしい。
展示されている絵と、絵の並びが大きく変わっていた。
まず、目に入るのが、
●アンドレア・デル・サルト「聖母子」1516年頃、ポプラの板、油彩
アンドレア・デル・サルトは、ミケランジェロとラファエロがローマに活躍の場を移した後、
フィレンツェの盛期ルネサンスを牽引した。赤ん坊の筋肉質な足は彫刻を参考にしたらしい。
●クラーナハ「ゲッセマネの祈り」1518年 板、油彩
キリストは、最後の晩餐の後、弟子たちを連れて、オリーヴ山に向かった。
山の麓、ゲッセマネの園で、キリストは祈りを始め、天使もやって来るが、
ペテロ、ヤコブ、ヨハネ、3人弟子たちは眠りこけている。左上方には、
ユダに先導されてキリストを逮捕に来た群衆の姿が見える。
左端、若くかわいい少年がヨハネだろう、他の2人はどっちがどっちかわからず。
ヴァザーリの「ゲッセマネの祈り」も展示されており、クラーナハのも加わった。
●クラーナハ「ホロフェルネスの首を持つユディット」1530年頃 板、油彩
美貌で敵の大将ホロフェルネスを誘惑、酔わせて斬首。故郷を救ったユディト。
おぞましい場面だが、絵の大きさが小ぶりなのが丁度よい。こちらを見つめる
ユディットの冷めた美しさに目がいく。
●スルバラン「聖ドミニクス」1626年
縦2mの大きな肖像画
ドミニコ会修道院の創設者、聖人ドミニクスの肖像画。脇にいる首輪の立派な犬は
松明をくわえているので、聖人の背後にほのかな影ができている。
スルバランは、17世紀スペイン絵画を代表する画家で、プラド美術館に作品がたくさん
あり、白の使い方がすばらしい。静寂性、瞑想性は比類なし、と思う。
松明をくわえているので、聖人の背後にほのかな影ができている。
スルバランは、17世紀スペイン絵画を代表する画家で、プラド美術館に作品がたくさん
あり、白の使い方がすばらしい。静寂性、瞑想性は比類なし、と思う。
以上が、オールド・マスターで気になった作品。
写真は撮らずに見ていたのだが、突然、聞こえてきた幼児の大声。さらに走る。
両親が走るのは止めたが、大声は注意せず。係の人も注意せず。気を悪くした
私はティータイム。入館が3時半だったのに、ケーキをゆっくり食べ、見る時間
がなくなってしまった。間を飛ばして、19~20世紀の馴染みの作品へ。
写真は撮らずに見ていたのだが、突然、聞こえてきた幼児の大声。さらに走る。
両親が走るのは止めたが、大声は注意せず。係の人も注意せず。気を悪くした
私はティータイム。入館が3時半だったのに、ケーキをゆっくり食べ、見る時間
がなくなってしまった。間を飛ばして、19~20世紀の馴染みの作品へ。
●ハンマースホイ「ピアノを弾く妻イーダのいる室内」1910年
これは、オールドマスターの部屋のエヴァリスト・バスケニス「楽器のある静物」
(1660年代後半)の向かいにあった。なぜここに?と思ったら、「楽器のある静物画」
という共通点で時代は異なるが呼応するように展示すると説明があった。
この絵には静寂さが満ちているけれど、静物画と捉えるのは、、と違和感。
ハンマースホイ展で、いくつも作品を見ると、妻イーダの後ろ姿と半開きの白い
背の高い扉は、何度も登場するので馴染みになる。
(1660年代後半)の向かいにあった。なぜここに?と思ったら、「楽器のある静物画」
という共通点で時代は異なるが呼応するように展示すると説明があった。
この絵には静寂さが満ちているけれど、静物画と捉えるのは、、と違和感。
ハンマースホイ展で、いくつも作品を見ると、妻イーダの後ろ姿と半開きの白い
背の高い扉は、何度も登場するので馴染みになる。
●ベルト・モリゾ「黒いドレスの女性(観劇の前)」1875年
2019年新規収蔵作品
ベルト・モリゾは画家だが、マネのモデルをつとめ、マネの弟と結婚した。
パリのオルセー美術館やマルモッタン・モネ美術館にはモリゾのが描いた絵が
たくさんあるが、日本で持っているところは少ない。
このドレスにそっくりのドレスを着たモリゾの肖像写真があることから、
モリゾが自分のドレスをモデルに着せて描いたものだろうと言われている。
白いオペラグラスを手に持ち、白い手袋、ドレスの白い花飾り、と黒のドレス
に白がアクセントになっている。
ベルト・モリゾは画家だが、マネのモデルをつとめ、マネの弟と結婚した。
パリのオルセー美術館やマルモッタン・モネ美術館にはモリゾのが描いた絵が
たくさんあるが、日本で持っているところは少ない。
このドレスにそっくりのドレスを着たモリゾの肖像写真があることから、
モリゾが自分のドレスをモデルに着せて描いたものだろうと言われている。
白いオペラグラスを手に持ち、白い手袋、ドレスの白い花飾り、と黒のドレス
に白がアクセントになっている。
●ルノワール「帽子の女」1891年
ルノワールは何回か画風を変えているが、これは印象主義から古典的傾向に戻った後の
「真珠色の時代」に描かれた。さまざまな色彩が白と混じり合って真珠の輝きを放つ。
「真珠色の時代」に描かれた。さまざまな色彩が白と混じり合って真珠の輝きを放つ。
●モネ「陽を浴びるポプラ並木」1891年
モネは、同じモティーフを時間や構図を変えて描き、光と色彩を研究した。
この川沿いのポプラ並木も何回も描かれている。
青い空と白い雲、緑と黄色のポプラの木。明るく晴れやかな色彩である。
この川沿いのポプラ並木も何回も描かれている。
青い空と白い雲、緑と黄色のポプラの木。明るく晴れやかな色彩である。
●モネ「睡蓮」1916年 2m四方の大きな絵。
これを制作した時は、睡蓮を描き始めてから20年が経っていたので、
もう描き慣れ、花や水面の影は、細部が大胆に省略されている。
これは後の抽象絵画にもつながると言われている。
●彫刻は、ロダン「化粧するヴィーナス」1890年頃
中庭が見えるカフェ「睡蓮」
新しく追加されたのは、どのようにして収集がなされていったのかを説明して
あるコーナーがあったこと。それによると、西洋美術館は、元々、松方コレクションを
展示するために作られたので、フランスの近代作品が中心だったが、1968年に
就任した山田智三郎館長の方針で、西洋美術全般の収集が始まった。その過程に
ついては、次回、行った時にもう一度、読みたい。
あるコーナーがあったこと。それによると、西洋美術館は、元々、松方コレクションを
展示するために作られたので、フランスの近代作品が中心だったが、1968年に
就任した山田智三郎館長の方針で、西洋美術全般の収集が始まった。その過程に
ついては、次回、行った時にもう一度、読みたい。
作品解説にQRコードが利用できるようになっているのも新しい試み。
解説には、日本語の他に中国語、ハングル語が表示されていた。
解説には、日本語の他に中国語、ハングル語が表示されていた。
常設展は、16世紀からの西洋美術作品、300点以上が見れて、500円と格安です。
クラーナハもハンマースホイもあるんですね。
これは見に行かなくちゃ...連休が明けたらぜひ。
by ナツパパ (2022-05-05 12:15)
入って正面に地獄の門が見えるというのは
なるほどと思える気がしますね。
ハンマースホイの絵は、なんとなく
独特な空気感が漂って見えます。
ちょっとそわそわするのは構図のせいかな。
by ふにゃいの (2022-05-05 15:12)
ドキュメンタリー要素の強い絵画も
怖いけど伝える意識を感じますね。
by 響 (2022-05-06 19:10)
一時休館を知ったときは随分長く休むんだな~なんて感じていましたが、コロナで美術館通いが出来なくなってからは再開がいつからなのかもすっかり忘れてましたよ(^^;。
『ゲッセマネの祈り』と云う画題は、メト展のtaekoねーさんの記事で紹介されていたらラファエッロで知りましたが、西洋美術館の常設にも所蔵作品が2点も在るって事に全然気付いていなかったわけで、ここには過去何度も繰り返し訪れているくせに、一体これまで何を観ていたのか、我ながら情けなくなりますね(苦笑)。特にクラナーハは、いつだって生首にばかり気を取られて・・・(^^;。
モリゾの絵はマネの教え子である証明のような「黒」使いですね。自分のドレスを着せて描いたのは姉のエドマかな。2019年にコレクション入りとのことで、僕は未だ自分の目でこの作品を観られていません。カメラを持って、久しぶりに上野へ出掛けたいなぁ。
by yk2 (2022-05-06 23:01)
クラーナハ「ホロフェルネスの首を持つユディット」、ユディットの顔、紅潮して血色良く見えるのに、剣を持つ手の色が青みがかっていて、それがまた怖さを増してる気がするんですよね^^;。クラーナハって、サロメもそうだし、切られた首の絵のバリエーションが多いですよね・・・。
紹介された絵画の中からだと、モネ「陽を浴びるポプラ並木」が一番明るくって春の気分♪
by Inatimy (2022-05-07 23:40)
やはり東京の美術館は持っておられるものが違いますね。
常設展は観たことがありますが、何度みてもすばらしいと思います。
どれもこれもいい絵ばかり。私はルノアールが好きなので、「帽子の女」をもう一度みたいです。
カフェ「睡蓮」も入ったことがあります。いいカフェですね。美術館のカフェは落ち着くので好きです。
by coco030705 (2022-05-09 22:50)
お返事が遅くなり申し訳ありません。
▲ナツパパさん、西洋美術館はJRの上野駅から近いので便利ですよね。企画展の場合は、張り切って出かけますが、常設の場合は、お安いし、いつでも見れる気軽さがあるので、用事で出かけた帰りに、寄ることもできて、いいなと思います。まず、お茶で休憩してから、ですが(笑)
▲ふにゃいのさん、私も地獄の門の位置がなぜ右横なのかと思ってました。私は左右は、左を先に見る癖があるので、手前にある「カレー市民」に目が行って、次に正面を見るので、右の「地獄の門」を見ないことが多いのです。
だから、以前は動物園側が正門に、とっても納得がいきました。
ハンマースホイの独特の空気感、静寂感、ざわざわするって、ちょっと神秘的なものもあって惹かれますね。
▲響さん、ドキュメンタリー、聖書の中の話は、印刷技術が発達する前は、絵画で伝えられてきたわけですものね。見る人に、怖いという感情を起こさせるのは、やはり画家の技量でしょうね。
▲yk2さん、私も、お休みが長いので、もう期待しなくなってました。再開を大きな企画展で始めると、混んで大変だから、こうやって常設だけから、ひっそり始めるのもいいなと思いました。今回、丁寧に見て歩くと、初めて見る気がする絵がいくつもありました。2021年、2020年購入の絵は、当然、「はじめまして」だけど、モリゾの絵も初めてでした。モリゾがこのドレスを着てる写真が横に展示してあります。書いてなかったけど、容貌が似てるし、他の絵でも、モリゾのモデルになっているから姉のエドマでしょうね。
「ゲッセマネの祈り」は、有名な題材なので、いろいろな画家のがあります。
マンテーニャ、エル・グレコのもあって、それぞれの特徴が表れていて興味深いですよ。「オリーブ山での祈り」という題のも同じです。
▲Inatimyさん、よく見てくださって、さすが、です。私は、大仕事を終えて興奮気味の顔ばかり見て、手が青いのに気づきませんでした。もとの撮影した写真を大きくして見たら、手に鎖のようなものが巻き付き、左手には甲冑?
調べたら、この主題は人気があったので、工房作のものがいくつもあり、手の
表現が少しずつ違うし、顔が優雅さに欠けるものがあったり、、おかげさまで、いろいろ比べて見て面白かったです。
私も、明るい水色が多いモネの絵は好きです。暗い色の睡蓮は苦手。
by TaekoLovesParis (2022-05-21 18:36)
cocoさん、西洋美術館は、正式名称は、国立西洋美術館。日本で唯一の国でやっている美術館なので、所蔵作品も多いし、毎年、国から予算が出て新規に収蔵作品をいれています。だから充実していて見応えがあります。常設は企画展を見ると、無料で見れるようになっているけど、2つみるのは、結構、大変。こうやって分けて見るほうがいいかもしれません。ルノワールの「帽子の女」は松方コレクションなので、秀逸な絵ですね。真珠のような輝きと気品が感じられて、私も好きです。
by TaekoLovesParis (2022-05-21 23:02)