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「ボクの穴・彼の穴」 [演劇、ミュージカル、Jazz]

9月29日(日)、青山のスパイラルホールへ「ボクの穴、彼の穴」を見に行った。
穴って? 何だかわからないチラシだけど、芝居を見た後に意味がわかった。
僕の穴ちらし.png


今の演劇界の第一人者松尾スズキが翻訳したフランスの童話作家の「ボクの穴、彼の穴」
をもとにした2人芝居。休憩なしの一幕。
チラシはマンホールから上体だけ出した2名に見えるけど。。
主演の窪塚愛流は、窪塚洋介の息子。180㎝で顔が小さくモデル体型。

<あらすじ>
砂漠の戦場。
敵対する二人の若い兵士「ボクと彼」は、それぞれの穴の中に銃を持ち、潜んでる。
「相手が撃ったら、こっちも撃つ。しかし撃ってこない。相手は何をしてるんだろう」
持久戦。空腹に耐え独りぼっち。手許にあるのは「敵はモンスターだ。見つけたら
殺さねばならない」と書かれている戦争マニュアルだけ。
敵の穴はここのところずっとひっそりしてる。孤独に耐えられなくなったボクは穴を
出て銃を構え敵の穴に向かう。
そこに敵の姿はなく、戦争マニュアルが落ちていた。戦争マニュアルはボクが持ってるものと
全く同じだった。さらに家族写真。こんなにいい家族がいるのに戦争で殺し合う。それに~ボク
は敵だけどモンスターでない。あ~なんというしくみ。はめられた?

大道具がほとんどない一人芝居、役者が上手くないと入り込めない。
やがて、敵も現れるが、つかみ合うわけでなく、淡々とお互いに独白。自己紹介形式。
「ボクは窪塚愛流、小さい時から、いじめられてきた。でも、僕は、、」
「ボクは篠塚悠伸、小さい頃から、、、」コンビニの唐揚げが食べたいなぁというセリフ
もあったりで笑える。今、まさにそこで、という臨場感。
それだけに今、戦争している国の兵士達もこんな感じなんだろうかと思ったりする。
相手は殺さねばならないモンスターだと刷り込まれて戦場へいくのだろうか。
ウクライナでの戦争も、ガザ地区に端を発したハマスとイスラエルの戦争も、
既に1年以上戦いが続いている。日本人が明日、戦闘地域に行くことはないけれど、
未来のことはわからない。

考えさせられる良い芝居だった。
原題は、穴でなく、L'ennemi(敵)


Wキャストで、もう一組は、上川周作、井乃脇海。
演出:ノゾエ征爾

穴は戦争中に使う塹壕(ざんごう)の意味だった。塹壕trench(トレンチコートの語源)は
よくわからなかったが、TVで名作映画「西部戦線異状なし」を見て、初めて理解できた。
第一次世界大戦で、ヨーロッパの画家たちが亡くなったり、怪我をしたりするのも、こういう
戦いだったから、と初めてわかった。

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angie17

昔はよく演劇を観に行っていましたが、
すっかりご無沙汰しています。
生の舞台って良いですね! 
役者さんのエネルギーが伝わるし、その日しか見られない瞬間だし。

by angie17 (2024-10-08 16:24) 

yk2

第一次大戦で亡くなった画家と云えばフレデリック・バジールを思い出しますね。

この記事を読ませて頂いてふと思い出したのですが、昔に観たケネス・ブラナー監督作品・映画版の『魔笛』は第一次大戦らしき戦場を舞台にしてたな~、塹壕のシーンから始まるんだっけ?、と。youtubeでトレイラーでも見つからないかな、と「kenneth branagh the magic flute」で検索したところ・・・(権利関係がどうなってるのか判らないので以下省略としておきます^^ゞ)。闘うそれぞれの軍服が青(タミーノ側)と赤(敵軍)で、『ボクの穴、彼の穴』のポスターも同じくそんな色づけがされてますね。偶々かしらん(^^。
by yk2 (2024-10-09 01:58) 

Inatimy

「敵」ってなんだろうな・・・と考えさせられますね。
なんとなく思い出したのが小学生の頃教科書で読んだ小川未明の「野ばら」。
短いお話だったけれど、ものすごく濃縮されてて。戦争とバラの花の対比がとても切ない感じ。
ずっと忘れられない作品です。
by Inatimy (2024-10-10 15:24) 

coco030705

こんばんは。
チラシは明るい感じですが、穴=塹壕なんですね。
ちょっと怖いです。
主演の窪塚愛流は、窪塚洋介の息子さんなんですね。
窪塚洋介さんも若いと思っていましたが、子どもさんの成長は早いですね。
これからも、頑張ってほしいなと思います。
各地の戦争、いつまで続くのか、暗澹たる思いです。

by coco030705 (2024-10-10 21:35) 

TaekoLovesParis

angieさん、私もコロナを境に演劇から遠のいていたのですが、最近、また「行きましょう」と誘われるようになりました。青山スパイラルのホールは小さいので舞台と近くて、一体感がありました。演劇は役者が上手いかどうかで引き込まれ方が違いますね。
by TaekoLovesParis (2024-10-11 00:37) 

TaekoLovesParis

yk2さん、私もバジールを思い出したんですよ。惜しいですよね。亡くならなくても戦争体験が心に深い傷を負ってしまう人も多くて。。

yk2さんの映画「魔笛」の記事、読んだのに、舞台が第一次大戦の戦場に置き換えられていたことをすっかり忘れてました。夜の女王の3人の侍女たちが従軍看護婦になっている(笑)。軍服が赤と青、そうだったんですか!ポスターの制作者は、映画「魔笛」を見た?と調べたら、軍服は国によって決まってるのではなく、連隊ごとに違ってたりするのだそうです。映画やポスターではビジュアル的に目立つ2色にしたのでしょうね。(推測)
by TaekoLovesParis (2024-10-11 01:03) 

TaekoLovesParis

Inatimyさん、小川未明の「野ばら」を読んでからコメントへのお返事しますね。
by TaekoLovesParis (2024-10-11 01:04) 

TaekoLovesParis

Inatimyさん、小学校の教科書なんだから、短いはずと「あらすじ」でなく全文で読みました。子供向きなのに、最近見ない丁寧でやさしい文体で書かれ、穏やかな気持ちで好感を持って読み始めました。
あまりにもこの劇と似ていてびっくりです。若者と老人という前線の見張りの敵同士の2人が毎日、顔を合わせ、そこにいるのは2人だけ、という状況から、仲良しになる。小鳥がさえずり、蜂が来る野ばら、平和な自然風景。私が見た劇より一歩進んで友情が深まるのが将棋を教わる場面。お互いになくてはならない存在になった所で戦いが始まり若者は戦地に。劇は自分の存在を、人間とはを問うてるのだけど、本「野ばら」には人間の運命を感じました。しかも運命を決めるのは人間社会のリーダー。戦争を起こしてるのはリーダーたち。Inatimyさんが忘れられない作品とおっしゃるのがよくわかります。小学生でなく年とった今、読んでも、友情、運命、別れ、老いを考えさせられました。
by TaekoLovesParis (2024-10-11 23:31) 

TaekoLovesParis

cocoさん、自分と違う考えの者は敵、排除しようとする人、自分の力を誇示したい、領土を広げて歴史に名を残したいという人がリーダーになると世界の平和が崩れますよね。ノーベル平和賞が日本の「被爆者団体協会」に与えられたのは、嬉しいですね。でも、ノーベル平和賞に全く興味なしの人達がふえているのは、残念です。
窪塚愛流は、小学生の時から大阪暮らし、芸能人が通う大阪学芸高校の出身だそうです。
by TaekoLovesParis (2024-10-11 23:54) 

coco030705

Taekoさん、またお邪魔します。
ノーベル平和賞が日本の「被爆者団体協会」に与えられたのは、本当にすばらしいことだと思います。犠牲になった方々に祈りを捧げます。
そして、米軍基地がなくなり、アメリカの支配がなくなる日を心から祈っています。
by coco030705 (2024-10-14 20:55) 

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