「英一蝶 」展 [展覧会(日本の絵)]
サントリー美術館で開催中(10日まで)の「英一蝶」展に行った。
これが展覧会のちらし。楽しく動きのある絵。江戸時代の風俗画。
以前、サントリー美術館で見た「久隅守景」の地味さと正反対の華やかさ。
狩野派に学んだ確かな筆致だが、瞬間をとらえた表情の滑稽さに惹かれている。
しかし、たくさんの絵を見る機会がなかったので、サントリー美術館で
「英一蝶展」開催と知り、年会員申し込みをしパンフを見ながら期待していた。
以前、サントリー美術館で見た「久隅守景」の地味さと正反対の華やかさ。
狩野派に学んだ確かな筆致だが、瞬間をとらえた表情の滑稽さに惹かれている。
しかし、たくさんの絵を見る機会がなかったので、サントリー美術館で
「英一蝶展」開催と知り、年会員申し込みをしパンフを見ながら期待していた。
英一蝶(はなぶさいっちょう)は江戸時代、元禄年間に活躍した絵師。
狩野探幽の弟に学ぶが、独自の都市風俗画を生み出し人気があった。
松尾芭蕉に学び俳諧をたしなみ、話術も巧み、吉原での人気者だったが、
将軍綱吉の母を揶揄したとの噂で将軍の怒りを買い三宅島へ流罪となった。
ところが、将軍代替わりの恩赦によって江戸へ戻るという波乱万丈な生涯。
面白いと思いませんか?
さて展覧会。
第一部
会場に入って最初に目についた作品は、「朝暾曳馬図」
若い時代の作品。みずみずしさがある。朝の爽やかさ、馬を曳いて走る少年の姿が
水に映る描写の巧みさ!
狩野探幽の弟に学ぶが、独自の都市風俗画を生み出し人気があった。
松尾芭蕉に学び俳諧をたしなみ、話術も巧み、吉原での人気者だったが、
将軍綱吉の母を揶揄したとの噂で将軍の怒りを買い三宅島へ流罪となった。
ところが、将軍代替わりの恩赦によって江戸へ戻るという波乱万丈な生涯。
面白いと思いませんか?
さて展覧会。
第一部
会場に入って最初に目についた作品は、「朝暾曳馬図」
若い時代の作品。みずみずしさがある。朝の爽やかさ、馬を曳いて走る少年の姿が
水に映る描写の巧みさ!
同じく若い時代。多賀朝湖と名乗っていた。
《雑画帖》36枚の絵全公開。花、鳥の他に猫や猿、牛といった動物たちが
生き生きと描かれている。とりわけ目をひくのが猫。
「眠猫図」三毛猫がまん丸くなってねむる。猫の毛のふんわり感。
生き生きと描かれている。とりわけ目をひくのが猫。
「眠猫図」三毛猫がまん丸くなってねむる。猫の毛のふんわり感。
同じく《雑画帖》から「不動尊像に悪童図」
「ちょっと切りつけてみようか」と刀をかざす弟を「よしなよ」と制する兄
という場面かしら。
「ちょっと切りつけてみようか」と刀をかざす弟を「よしなよ」と制する兄
という場面かしら。
一蝶は、悪ふざけをユーモアたっぷりに描くのが上手い。
「仁王門柱図」は、仁王門の柱に、アキレス腱が切れそうなほど背伸びして
落書きする者、それを呆れて見ている人々、滑稽な絵で、展覧会場なのに
クスッ以上に笑ってしまう。
「徒然草 御室法師図」にも笑った。宴席で酔った勢いで鉄の茶釜を頭に被り
抜けなくなってしまった法師。困ってしまって、、。
「投扇図」
NHKの「日曜美術館」でも紹介していたが、扇を投げて神社の鳥居の隙間を
通す遊び。手前の人物が投げた扇が見事に隙間を潜り抜けたので、見ていた男が、
扇を指さしながら、倒れそうになる場面。扇が見えますか?
「日曜美術館」では、「雨宿り図屏風」も紹介された。
突然の雨の雨宿りでは、見知らぬ者どうしが肩寄せあう。
こういう風俗画が屏風になるのは珍しいのでは?
第二部
三宅島に島流しになった一蝶は、有名な絵描きだったので、島の社寺などの他に
江戸からも注文が来ていた。
「吉原風俗図巻」(部分)一巻
よく通っていた吉原だから、思い出しながら、たやすく描けたのだろう。
中央は帰ろうとする武士、引き留めようと突っ伏して泣く遊女。絵の側に
「ウソ泣き」とマンガチックなキャプションがついていた(笑)
三宅島に島流しになった一蝶は、有名な絵描きだったので、島の社寺などの他に
江戸からも注文が来ていた。
「吉原風俗図巻」(部分)一巻
よく通っていた吉原だから、思い出しながら、たやすく描けたのだろう。
中央は帰ろうとする武士、引き留めようと突っ伏して泣く遊女。絵の側に
「ウソ泣き」とマンガチックなキャプションがついていた(笑)
先日、出光美術館で見た「四季日待図巻」も出品予定だったが、何かの事情で
だめだったのか、写真での展示だった。
神社からの依頼が多かったのが絵馬。三宅島近くの御蔵島からも依頼があった。
「絵馬図額」 稲根神社・御蔵島蔵
三宅島時代、一蝶は、「島一蝶」と名乗っており、この時代の絵は特に高く
評価されている。
第三部
江戸へ戻った一蝶は、風俗画をやめ、仏画や狩野派画風の花鳥画に取り組み、
英一蝶と改名した。
「釈迦十六善神図」 個人蔵 前期展示
最近、発見されたそうだ。
私が見た後期展示は、これとよく似た「阿弥陀來迎図」(個人蔵)
評価されている。
第三部
江戸へ戻った一蝶は、風俗画をやめ、仏画や狩野派画風の花鳥画に取り組み、
英一蝶と改名した。
「釈迦十六善神図」 個人蔵 前期展示
最近、発見されたそうだ。
私が見た後期展示は、これとよく似た「阿弥陀來迎図」(個人蔵)
「富士山図」
富士山が際立って大きく裾野まで描かれ、人々がとても小さい。
どんな位置から描いたのだろう。美しく迫力ある富士山。
メトロポリタン美術館から特別出品の晩年の大作《舞楽図・唐獅子図屛風》
六曲一双が展示室に置かれていた。この作品は写真撮影可。
これは《舞楽図》のうち左隻
右隻は、人が大勢で全体写真は撮れなかったので、部分だけ。
面をつけて楽しそうに踊りを披露する人たち。ひょっとこ面が笑える。
屏風の裏側に描かれた「唐獅子図」も次の部屋から見れるようになっている。
傑作「雨宿り図屛風」もメトロポリタン美術館から帰国し展示されていた。
期待以上に見ごたえがある展覧会だった。
10日(日曜日)まで、です。
富士山が際立って大きく裾野まで描かれ、人々がとても小さい。
どんな位置から描いたのだろう。美しく迫力ある富士山。
メトロポリタン美術館から特別出品の晩年の大作《舞楽図・唐獅子図屛風》
六曲一双が展示室に置かれていた。この作品は写真撮影可。
これは《舞楽図》のうち左隻
右隻は、人が大勢で全体写真は撮れなかったので、部分だけ。
面をつけて楽しそうに踊りを披露する人たち。ひょっとこ面が笑える。
屏風の裏側に描かれた「唐獅子図」も次の部屋から見れるようになっている。
傑作「雨宿り図屛風」もメトロポリタン美術館から帰国し展示されていた。
期待以上に見ごたえがある展覧会だった。
10日(日曜日)まで、です。
日本画はやはり清々しいです。加齢とともに感じます。
by よしあき・ギャラリー (2024-11-07 05:09)
すごい人生ですね。とても運が強そうでユニーク。島流しにされても、絵の依頼が絶えないなんて、「島一蝶」て名前も面白いです。遊女の「ウソ泣き」(笑)、楽しい!人気なのがわかります。動物たちを見るのも楽しそうだし、お釈迦様も神々しいし、どの時代の絵も見ごたえたっぷりですね♪
by おと (2024-11-07 20:53)
この男芸者はいつでも面白おかしいことばかり云って、悪ふざけが過ぎてお役人に睨まれ、ついには生類憐れみの令に触れたからと半ば云いかがりみたいな罪で、当時は絶望的に遙かなる海の果ての三宅島に島流し。二度と生きて江戸に戻れるとは思ってなかったでしょうね。好色な権力者に誘惑され弄ばれた愛娘こそ登場しないものの、道化者の悲劇ってことでこじつけて(^^ゞ、youtubeでリゴレット(例のブレゲンツ音楽祭のヤツね:https://youtu.be/gutz42b3oBg?si=X5449xEuVCw4_www)を聴きながら、taekoねーさんの記事に並べられた一蝶の絵を眺めています(^^。
鳥獣戯画に通ずるおかしみが有って、とっても面白い作品群ですよね。ほぼ全編でふざけているんだけど、突然大まじめで信心深そうな仏画が登場したりして、振れ幅が大きいのもとっても愉快。構成も演出も好く、「面白いよ~、楽しいよ~」って人に勧めたくなる展覧会だなって思いました。そんな江戸の絵師って、そうそういませんものね(^^。
by yk2 (2024-11-08 12:53)
「眠猫図」がとっても可愛く^^。まるくなって眠る猫の頭の後ろまで、しっぽの先がくるんと沿っているの、いいところ見てるなと感動。顔を尻尾で隠してるのか、おでこのあたりに何かが触れていると安心するのか、この姿、我が家の猫もよくしてました。そばにあるカラフルなものは、当時の猫のおもちゃ?なんて興味津々。
英一蝶のユーモア溢れるシーンを見ててふと頭に浮かんだのがオランダのヤン・ステーン(1626-1679)。ちょうど同じ頃に生きてた画家かな。酔っ払ってワイワイ騒いでるシーンの絵が多いんですけどね。ビール醸造所の飲み屋さんもやってたようで。風俗画って当時の暮らしの様子や当時の道具が分かって面白いですよね。
by Inatimy (2024-11-09 06:51)
上手な構図であり絵だなあ、とため息が出ました。
これは人気が出るのも分かります。
ユーモアも良いですね。
by ナツパパ (2024-11-10 11:11)
nice&コメントありがとうございます。
▲よしあきさん、私も年齢と共に日本画の良さが、わかってきました。和食の良さも。しっくりくるものがあります。
▲おとさん、まさに波乱万丈、破天荒です。英一蝶の父は御殿医で、藩主の江戸への転居に伴い一家で江戸へ。藩主に絵の才能を認められ、狩野派に弟子入り、ある程度学んだ後、破門され、俳諧に親しみ、芭蕉と交流。絵の世界にとどまらず、広い人脈。それゆえ絵の注文が多かったのでしょう。家柄と性格の良さで吉原でも人気者。そんな人、ちょっといない、稀ですよね。だから、島流しにあっても、戻ってこれたんでしょうね。おっしゃるとおり、見ごたえたっぷりでした。
▲yk2さん、吉原での男芸者としての活躍ぶりから、リゴレットを思い出してくださったんですね。しかも愉快で奇想天外ということから、伝統的なリゴレットでなく演出が独創的なブレゲンツ音楽祭、湖の上に作られた舞台。yk2さんに教えて頂いてYoutubeで見て楽しかったです。
おっしゃる通り、振れ幅が大きい、何でも描けるし、おかしく描く、真面目に崇高に描く、いくらでもさじ加減ができるところがすごい!会場では笑いながら見たけれど、日にちが経つほど、改めて稀有な絵師だなと思います。
by TaekoLovesParis (2024-11-14 18:21)
nice&コメントありがとうございます。
▲Inatimyさん、「眠猫図」えっ、どうなってるの?尻尾がここだから頭は、、と考えてしまいました。三毛猫だから、よけいに難しい。トラチちゃんもこんな格好で寝てたことがあったのね。そばにあるのは、ネコのおもちゃで、遊び疲れて寝ちゃいました、なのかなと想像。
ヤンステーンは、海外の美術館展の時には、レンブラントやフェルメールと一緒に作品が来るのでおなじみです。自分のサイトで検索したら、4つの美術館展で見ていました。風俗画だけど、通り一遍でなく何かを暗示したり教訓を含んでいるところがが、英一蝶との共通展かしらね。ビール醸造所の飲み屋さん(Wikiには宿屋と書いてありました)をやったりというのも、ユニークですものね。
▲ナツパパさん、達者な筆ですよね。速い動きを上手に表現してますしね。
ユーモアセンス抜群、人気者になるのもわかりますね。いま、こういう多才な画家がいるかしら?
by TaekoLovesParis (2024-11-14 21:24)