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「フランス絵画の19世紀」展 [展覧会(西洋画)]

 会期が残り数日ですが、横浜美術館で開催の「フランス絵画の19世紀」展
なかなかよかったです。

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 19世紀のフランス絵画は次々、新しいものが生まれた時代。
上の絵、右は「アングル」の「パフォスのヴィーナス」
左は、「マネ」の「カルメンに扮したエミリー・アンプルの肖像」
どちらが好きですか? 2つの絵は、同じような時代でも画風が全く違います。

 「マネ」などの印象派の絵は、近づいてみると、荒々しいタッチなのに、離れて見ると、
光や影を感じる明るい自由な画面。
一方、「アングル」など印象派以前は、写実が主流で、題材も、神話や歴史からのもので、
「新古典主義(アカデミズム)」と呼ばれている。

 会場にはいってすぐ目にとまるのが「パフォスのヴィーナス」。
吸い込まれるように美しい! 透明感のある肌。不自然なほどの背中の曲線からは
やさしさ、優雅さを感じる。背景の深い緑の葉との対比。
 この展覧会には、アカデミズム絵画がたくさん。各々がドラマティックで魅了されてしまう。
2度行ったのに、もう一度行きたいと思うほど。。


 上段左:ジェローム「酔ったバッコスとキューピッド」
 上段右:レーマン「預言者エレミヤ」  下段:カパネル「ヴィーナスの誕生」 

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 ジェロームは当時の人気作家。酔ったバッコスとキューピッドが愛嬌たっぷり。
「預言者エレミヤ」は、鎖で繋がれても、「災いがくる」と預言をし、書記がその言葉を
書き留めている。天使は災いの来る方向のエルサレムを指さしている。
天使の迫力と、エレミアの苦渋の表情から、災いの大きさが推測できる。
 

  私が気になった絵は、 
   [右斜め下]アリ・シェフェールの「聖アウグスティヌスと聖モニカ」
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 静謐さが漂う。単純な色合い、構図。
二人が見上げる方向には、とてつもない何かが。。
聖人ふたりなので、神の来臨を見たのでしょうか。
私の好きなシャヴァンヌの壁画に通じるものがある。
  図録の解説によると、聖アウグスティヌスとは、有名な「告白」の著者。
聖モニカは、アウグスティヌスの母で、祈りと涙で放蕩息子を改宗させた。
手に手をとり、天を見上げ神を感じる息子、母の安堵の表情は、ドラマティック。

 同じく、アリ・シェフェールの「糸巻きのマルガレーテ」
マルガレーテは、ゲーテの「ファウスト」に出てくる無垢で純真な乙女。グレートヒェンとも
呼ばれている。
F14.JPG 糸を紡ぐグレートヒェン 曲が聞けます。歌詞つき。

 シューベルトの「糸を紡ぐグレートヒェン」は、演奏会で何度もきいた曲。
リストがピアノ曲にもしている。
絵を見て、思いつめた表情にギクッとした。ドラマが凝縮されている。

 ドラマティックなのをもう1点。
アントワーヌ・ジャン・グロの「レフカス島のサッフォー」
「あのサッフォー?」と眺めてしまった。世界史で習った古代ギリシアの女流詩人。
若く美しい青年に恋をし、叶わぬため絶望。月明かりの暗い海に、身を投げたのだそう。
これは今、まさに飛び込もうとする瞬間。

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  ドラロッシュの「クロムウェルとチャールズ1世」
クロムウェルが清教徒革命で首をはねたチャールズ1世の棺を開けてみている絵。
「憎くてはねたのではない、英国のためにこうしなければならなかったのだ、許してくれ」
と語りかけているかのようだった。

 レオン・コニエの「死せる娘を描くティントレット」 
バロック調色彩の光と影のはっきりした作品。

 ドラマティックが続いたので、最後は、ほっとする明るい自然や農作業の絵で。
バスティアン・ルパージュの「干し草」
オルセー美術館の「ルパージュ展」で見た絵

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 左:ミレーの「施し」 
「何か恵んでください」と戸口に来た人に、「これをあげてね」と少女にわたす母。
この頃の農村での日常的な光景なのだろう。温かみが伝わってくる。
 右:モネ「ジュベルニーの積みわら」(ポーラ美術館)

19世紀は、いろいろな技法の時代であったことがわかる。もっと、もっと載せたい絵はある
けれど、紙面の都合もあるのでこれで終 [end] 


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