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オルセー美術館展2010 [展覧会(西洋画)]

 今回の「オルセー美術館展」は、オルセー美術館が改装中ということで、たくさんの
有名作品が来ていて、実に見応えがあった。
 
「ポスト印象派」というサブタイトル通り、1886年~の作品が紹介されていた。
1886年は、最後の印象派展(第8回)が開かれた年である。
まず、ドガのこの絵。
「階段を上がる踊り子」1886年
「さぁ、これから」と稽古場へ向かう絵が、展覧会の一枚目にふさわしかった。
ドガは鍛練されたしなやかな体の踊り子が表現する瞬間的な動きに興味を
持ち、稽古場での踊り子の絵を描きつづけた。

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シスレー「モレの橋」
シスレーのぽっかり雲。橋の遠近法。構成がしっかりしている。
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モネ「睡蓮の庭、緑のハーモニー」
「ロンドン黒海議事堂 霧の中にさす光」

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名作「日傘の女性」もあった。
「ボルディゲラの別荘」は、ルノワール作と思えるかのような南仏風景だった。

シニャック「マルセイユ港の入口」
ピンク色に染まる港が美しい。

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シニャック「井戸端の女たち」
白いくねった道、手前の波のような影が印象的。

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セザンヌ「台所のテーブル(籠のある静物)」
複雑な空間。青みがかった壺は上からの視点、果物や白いピッチャーは
横からの視点。奥の果物籠は宙に浮いているかのよう。従来の遠近法と
全く異なる構成。果物にリズミカルな動きが感じられる。

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「セザンヌ夫人」(青い服)、「水浴の男たち」、「サント・ヴィクトワール山」
「ドラクロワ礼賛」もあった。

ロートレック「赤毛の女」、「黒いボアの女」もあったが、これらは、以前、
ロートレック展の時にも来ている。

ゴッホ「星降る夜」
画面の上半分の夜空。大熊座が描かれている。ローヌ川に映るアルルの街の灯りは、
黄色く長く水に浮かび、幻想的なふんいき。

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「アルルのゴッホの寝室」、「銅の花器のフリティラリア(おうかんゆり)」、「自画像」
もあり、ゴッホは充実していた。
ゴーギャンとゴッホは2人だけで一つの部屋を使っての展示だった。
「牛のいる海景」(深い淵の上で)
両側からせり出す岸壁の間に見える海。波しぶきの向こうに赤い帆の船が見える。
岩?と思ったのは、実は干し草の山。牛が食べている。
この奇妙な構図、謎が秘められている。岩は右を向く横顔で、ゴッホが描いた
ゴーギャンの肖像にそっくりなのだそうだ。

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ゴーギャンは「黄色いキリストのある自画像」、「タヒチの女たち」、
「ポンタヴェンの洗濯女たち」、「ブルターニュの農婦たち」もあった。

ゴッホと別れ、ポンタヴェンに滞在していたゴーギャンは、ベルナールらと
「総合主義」を打ち立てた。
ベルナール「愛の森のマドレーヌ」
妹をモデルにした大胆な構図、涅槃図が浮かぶ。くっきりとした輪郭線。
リズミカルな木々の森は詩情豊かで、人物に比べると小さい。

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ベルナールは「水浴の女たちと赤い雄牛」、「ブルターニュの風景」もあった。

ポンタヴェンのゴーギャンのもとを訪れたセリュジェがパリに戻った時、
ゴーギャンの口述をもとに描いたポンタヴェンの風景画「護符(タリスマン)」

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抽象画のように見える「タリスマン」は、自然の色の束縛から脱した大胆な
ものであり、これをドニが所蔵し、ボナール、ヴュイヤールらが集まり、ナビ派が
結成された。

ドニ「木々の中の行列」
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ドニの「カルヴァリオの丘への道」、「ミューズたち」、「ペロス・ギレックのレガッタ」
もあった。

ボナール「格子柄のブラウス
縦長のキャンバスに、ネコを抱いて食事する画家の妹が描かれている。
ジャポニズムに心酔していたボナールなので、縦長の画面、平面的で装飾性
の強いスタイルを生み出した。
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ヴァロットン「ボール」
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ヴァロットンは、日本の浮世絵版画の影響を受け、木版画を制作していたので、
光と影の表現、色数の少なさにその影響がみられる。
ヴュイヤールが描いた「フェリックス・ヴァロットン」、赤い靴でコンソールに座る
ヴァロットンの姿もあった。

ナヴィ派の中でも、ドニ、ヴュイヤールとボナールは作品の題材を日常に求めた。
「親密派」と言われ、ひっそりとした室内に漂う中世的な雰囲気は、魂の表現に
対する要求といわれている。
親密さの探求で、理想化された女性像を歴史画に求めたのが、
モローの「オルフェウス」である。

シャヴァンヌ「貧しき漁夫」
静かな絵。実際にパリのオルセー美術館で見た時も、抑制された色調が
醸し出す静けさに惹かれた。
祈る漁夫は悲しみをたたえているが、背後の2人の子供には動きと希望がある。
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ルドンの「目を閉じて」があり、ハンマース・ホイ「休息」もあった。
もちろん後ろ姿。

アンリ・ルソー「戦争」
大きな絵。馬のような動物にまたがり剣をふるうのは白い服の戦争を擬人化した女性。
赤い雲は戦火なのだろうか。横たわる死体に目をそむけないですむのは、お人形の
ようで顔が見えないこと。良く見ると禿鷹がいる。。
強い黒、色のコントラストの大きさで、はっとさせられる。
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最後に、ドニ、ルーセルの女性像の横長の優雅で美しい装飾パネル、
縦長5枚のヴュイヤールの「公園」、ボナールの黄色を主体とした枠絵付き
の作品が展示されていた。

見応えのある作品揃いで、順に見ていくと、19世紀末のフランス絵画の流れ
がわかるようになっていてえ、良い展覧会だった。

 ☆ずっと、下書きにあった記事を後日アップしました。


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