2010年春オルセー美術館 [☆彡Paris 美術館]
3月にパリへ行ったとき、オルセー美術館に寄った。
いつもと展示が違う!初めて見る絵がいくつも、と思ったけれど、それは改修工事
のために主要な絵がオーストラリア→日本→サンフランシスコというツァーに出ている
からなのだと帰国後、知った。
今、開催中の国立新美術館の「オルセー展」で、一番の賑わいはゴッホの絵の所。
1887年」「アニエールのレストラン・ド・ラ・シレーヌ」「オウカンユリ」
「星降る夜」「アルルのゴッホの寝室」などが見れる。
3月に本家パリでお留守番をしていたゴッホ作品は、
「アルルのダンスホール」 1888年
はっきりした輪郭、単純化された形。ゴーギャンの影響を強く受けている作品。
「アルルの女(Mme.Ginoux)」 1888年
この絵のモデル、Mme.Ginouxは、アルルでカフェを経営。ゴーギャンやゴッホ
がたびたび訪れていた。特にゴッホは、ここに下宿していたので、Mme.Ginouxとは、
親しかった。「彼女にアルルの伝統衣装を着せ、背景をレモンイエロー、顔はグレー、
服は黒、緑のテーブルにひじをつくポーズ。オレンジ色の木の肘掛椅子」と、絵の構想
を、弟テオに宛てた手紙に記している。
「サンレミの病室」 1889年
アルルで、ゴーギャンとの激論の末、怒号したゴッホは、自分で自分の耳を切り
落としてしまう。サン・レミに引っ越したゴッホは、ゴーギャンに対する発作的興奮
を自覚し、病院に入院した。
ねじれた木、過剰な力、過剰な苛立ち、過度な表現と、当時は評論された。
(左)「シエスタ」 1889年
ミレーの絵をもとにしたもの。ゴッホはミレーを賛美し、作品を熱心に模写した。
(右)「コードヴィルのわらぶきの家」 1890年
終焉の地、オーヴェール・シュル・オワーズの小さな村。ゴッホはここの景色を気に入り、
数多くの風景画を描いた。これは色は地味だが、パワーあふれる絵。
次は、セザンヌ。
「一個のりんごでパリを驚かせたい」と言ったセザンヌ。
自然を円筒形、球形、円錐形と幾何学的に描くことを試みた。
「りんごとオレンジ」 1895年~1900年頃
果物が絵全体に伸びる対角線の上に配置され、皿、水差し、テーブルクロスが
同じ白であること、掛け布と果物の色の類似によって、りんごとオレンジが際立って
見える効果がある。
「青い花瓶」 1889年
美しく咲いている花を描くのではなく、色の調整を考え、計算された絵。
垂直線、水平線が構図全体に感じられ、花瓶の青と背景の青の微妙な色違いが
ポイント。さらに机の上にりんごを置くことで、りんごのセザンヌと言いたかった。
「カードをする人たち」 1890年~1895年
セザンヌは、エクス・アンプロバンスの美術館で、同地出身の農民を描いて有名な
ナン兄弟の「カードをする人たち」を見て、これをカラバッジョ的な手法で描こうとした。
中心に酒瓶を置き、左右対照の構図の輪郭とした。白いカードを持つ手が真ん中に
あり、実際に見ると、手に緊張感があるのがわかる。カードに集中する静けさも伝わ
ってくる。
左) デルフト焼きの大きい花瓶にはいったダリア 1873年 初期、印象派の時代
右) アジアの農夫 1900年~1904年
光を追い続けた印象派の絵は、輪郭線がなかった。
ブルターニュ地方のポン・タヴェンに集まったゴーギャンを中心とした画家たちは、
輪郭線と単純化した形に重きを置いた。後期印象派とよばれている。
エミール・ベルナール(1868~1941)もそのひとりである。
「陶器の水さしとりんご」 1887年
この絵を描いたとき、ベルナールは19才。果物と構図の選び方はセザンヌ的だが、
黒の輪郭線と単純化で、はっきりとセザンヌとは異なる路線を示している。
背景の水平線的な色の塗り分けが、果物と水差しを際立たせている。
この絵は、ゴッホがアルルへ旅立ってから、制作されたので、この絵のことを
手紙で読んだゴッホは、「すばらしい未知の仕事」と、ほめた返事を送っている。
ポール・セリジェ(1864~1927)もポンタヴェン派である。
「ブレトンのレスリング」 1890年
ブレトン(ブルターニュ地方)なので、観客の女性がブレトンの衣装で頭巾をしている。
当時のブレトンは古い伝統が工業社会に変わる移行期だった。
国立新美術館のオルセー展には、ドニの「セザンヌ礼賛」というセザンヌの絵を
真ん中に置いた芸術家の集団肖像画があったが、
これは、アンリ・ファンタン=ラトゥールの「ドラクロワ礼賛」 1864年
ファンタン=ラトゥールは、白いシャツ姿。ドラクロワの肖像画の前に、花が飾られて
いるのは、ラトゥールが花の絵が得意だったからでしょう。自分と花と肖像画が目立ち
ますよね(笑)。ラトゥールの逆時計周り隣は、Whisler,ひとりおいて茶色い髪がマネ、
ブラックモン(映画「夏時間の庭」で花瓶が話題になっていた)、ボードレール。
マネのこの絵は、透明感があって、遠くから目だったけど、タイトルわからず。
マネの「扇を持つベルト・モリゾ」 1872年 (左)
ベルト・モリゾの「ちょうちょ採り」 1874年 (右)
ピサロの風景画。
上は、ベルギーの教会 1894年、下は秋の日のエラニーの庭 1897年
右は、三角スカーフの少女 1893年。はっきりした点描の絵。
今回の国立新美術館のオルセー展に出ている画家の絵を取り上げてみた。
コロー、モネ、ドガなどは、オルセー美術館2010年春(2)