小泉淳作展 [展覧会(日本の絵)]
昨日、カポディモンテ美術館展の帰りに、日本橋高島屋で「小泉淳作展」を見た。
4月頃、日経新聞の「美の美」欄に載っていた、紙面縦半分の「しだれ桜」の
絵を見たとき、あまりの華麗さとみごとさに驚いた。小泉淳作という画家だった。
だから、チケットをいただいたときは、「これ、見たかったんです」と、ニッコリ。
なぜ、日経新聞に特集されていたのかというと、小泉淳作が、東大寺の40面の
襖絵を5年がかりで完成、奉納したから。襖絵は鮮やかな色彩で緻密に描かれた蓮。
小泉は御歳86歳。
会場にはいると、いきなり蓮の花の襖絵!16面に圧倒される。
どの花も一つ一つ、花びら、花の色、咲き具合、花托のようすなどが異なっている。
とても緻密に描かれているので、見入ってしまう。
東大寺で、この襖絵が置かれる場所が写真で示してあった。
なんと、廊下をはさんで、蓮池を望む位置。蓮の花が咲く時期には、本物の花と襖絵
が向かい合う形になるのだ。実際にその光景を見てみたい。。
続いての部屋が、桜の絵。三面が三枚の桜の絵。まさに春爛漫。
しだれ桜の桜ももちろん見事だが、背景の緑の色合いもすばらしい。
小泉が初めて描いた桜の絵だそう。桜は、花びら一枚一枚を丹念に描いていく根気
のいる作業。近づいてみると、どの花びらも寸部違わず描かれている。さらに、ピンク
の花びらの上に、所々白い花びらが重ねて描かれ、立体感を出している。この大仕事
に80歳を過ぎて挑んだことには、驚嘆する。自分に与えられた使命と思ったのであろうか。
「聖武天皇」と「光明皇后」それぞれの肖像画も80歳過ぎの作品。
モデルに衣装を着せて描いている様子を、別室のビデオで見せていた。
衣装は、正倉院の遺品に時代考証をし、模様を復元させたそうだ。
先刻見た、カポディモンテの「アンテア」の衣装もすばらしかったけれど、光明皇后は
奈良時代、1260年前という昔。木製であろう浅沓は、蓮の花型?
聖武天皇の浅沓も衣装と揃えた赤でおしゃれ。
晩年の絵ばかりを紹介したが、もう少し若い頃の、山水画風の硬質の山々の絵は、
雄大で力強い自然描写。小さく描かれた木々とのやさしい調和に和む。
小泉淳作は、幼稚舎からの慶応ボーイで、仏文科を中退した後、芸大の日本画に
すすんだ。50代までは、デザイナー、陶芸家だったという異色の経歴。
とにかく、襖絵と桜が圧巻なので、おすすめです。
日本橋では、27日(月)までですが、横浜、京都と高島屋を巡回するそうです。