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ドガ展 [展覧会(西洋画)]

 11月の某日、横浜美術館へ楽しみにしていた「ドガ展」を見に行った。
ドガの作品に描かれる題材は、当時の上流階級の生活なので、洗練されていて、
どんなときに見ても穏やかな気持ちになり、その達者な表現力に惹きつけられる。
強烈な個性はないけれど、そこはかとなく漂う品のよさがある絵。

 展覧会の展示順に従って御紹介。
 [1] 古典の時代
ドガは、絵をアングルの弟子に学んだので、初期は古典的な作品を描いていた。
この春、オルセーで見た「町(バビロン)を建設するセミラミス」が、入り口から近い
所にかかっていたので、うれしかった。この絵のための習作(デッサン)も数枚、
並んで展示され、セミラミスに情熱を注いだ熱心な仕事ぶりがわかった。

 同じような古典的技法の絵が、「トキと若い女」、メトロポリタン美術館で見た絵。

TokiMeto.JPG

 左上に、丁寧に描かれた町が見える。手前には植木鉢の花。
女の人が佇む場所は高台のテラスのように見える。
青緑の服のドレープが絵全体に立体感、厚みを持たせ、このドレープと
2羽のトキが逆三角形をなしている構図。鮮やかな色彩。

 マンテーニャの「磔刑図」の模写。クールベ風の「木陰で死んでいるキツネ」
に同行の友達が「死んでいるように見えない」とつぶやいた。マンテーニャや
クールベの迫力は、若い時代のドガには表現しきれなかったのね、と思った。

 [2] 馬
ドガは、馬の絵がうまい。
これは、ボストン美術館で買ったポストカード。
小さな絵で、ボストン美術館では、特別扱いでなく、廊下に他の作家の絵と並んで
展示されていたのだが、半分以上が空、という爽やかな空気にひきつけられた。
二頭立ての馬車、黒い犬と山高帽の紳士の視線の先には、赤ん坊に授乳する奥さん。
誰の絵?と近づいてみたら、「EdgarDegas」。
この頃のドガは、印象派に属していた。
モデルは幼い頃からの友人ヴァルパンソン夫妻。競馬はこの時代、英国から伝わり、
上流階級で流行っていたそうだ。
toki.JPG

 「アマチュア旗手のレース、出走前」
アマチュアのレースなので、大勢の観客たちが熱心に見送っている。
旗手たちも、プロ旗手の「出走前」(下の絵)に比べると、うつむき加減の姿勢に、
多少の不安感が伺え、あわただしいようすも伝わってくる。
 この絵の遠景の煙突は20年後に描き加えられた。工場ができて、この辺りの
景色が変わったため、描き加えたのだそう。工業化の波がここにも押し寄せて
いた時代。20年間、手元にあった絵とは、気に入ってたから?それとも?

AmatureKeiba.JPG

  「出走前」
これは、上の絵より10年後。横長の画面に臨場感がある。

Keiba.JPG

 [3] 肖像画
ドガは、たくさん肖像画を描いているが、時代によって技法が違う。
古典の時代の自画像は、アングル風。印象派の時代は、顔に赤や緑の点が置か
れたものがある。鉛筆画の「マネの肖像」は、立ち姿のマネ。さらりと描いているが
、マネのポーズが決まっていて洒落た一枚。

ドガの肖像画は、家族や親戚、友達のアーティストと、よく知っている人を描いている。
親しいから、着飾った記念撮影ふうではなく、日常の瞬間を捉えて描いている。
マネ夫妻を描いた絵をマネに見せたところ、奥さんがきれいに描かれてないと、
マネが奥さん部分を切ってしまったという有名な逸話の「半欠けの絵」もあった。

ドガファミリーでのドンは祖父。
王党派だったため、フランス革命後、祖国を追われイタリアに移住。銀行を開いた。
ドガの父は、銀行のフランス支店をまかされ、フランスに戻った。
威厳ある姿の祖父の肖像画。    父は、スペインギターに耳を傾けている人。
                      「ロレンソ・パガンとオーギュスト・ガス」

イレール・ドガ.jpg      spanishguitar.JPG

 
 [4] 踊り子
 「ダンス教師ジュール・ペロー」という肖像画もあった。
この絵で、真ん中に立っている先生。ドガが踊り子を描き始めたのは、40歳頃。

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 有名な「エトワール」は、パステル画なので、オルセー美術館では、暗くて
よく見えないのだが、ここでは、照明を受け、実にきれいで、華やかだった。
絵のすみずみまで見え、描かれている人たちのドラマが伝わってくるかの
ようだった。

 [5]浴女

 60歳、視力が衰え始めたドガは、パステル画が多くなり、入浴する裸婦をテーマに
描き始める。左は、手に持っているスポンジが髪の毛の色と同じなので、?と思える
かもしれないけど、視点がおもしろい。上から見ている?右は大胆。

yuami.JPG rafuorange.JPG

 さらに、彫刻の制作も始め、踊り子の彫刻をたくさん造った。
一瞬の動きを絵に、彫刻にとどめおこうと追求し続けた生涯。展示された写真など
からもドガを身近に感じる展覧会だった。

 行ったのが日曜日3時すぎ。展覧会場から帰る人が、どんどん出てくるので、
会場正面の写真は、撮りにくかったから、これは横の写真。

  entrance.JPG

 

 


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