七月大歌舞伎 [演劇、ミュージカル、Jazz]
七月の歌舞伎は、猿之助・猿翁・中車襲名披露第二弾。
私は夜の部に行った。
歌舞伎座が工事中のため、近くの「新橋演舞場」が使われている。
新・猿之助主演の「黒塚」は、能の「安達が原」を下地にした演目。
能のゆったりとした間での一幕が終わると、二幕目は、鬼の老婆の踊り。
一面に広がる薄の野原、月あかりの下での踊り。猿之助の上手さにびっくり。
お婆さん姿で膝を折って、昔を思い出しながら、童女のような柔らかい踊り。
琴、尺八の音色が美しい。月の光の影で、自分の頭に鬼の角が出てることに
気づき、「あら、やだ」と、はにかんで、頭に手をやる仕草がかわいい。
誰も見てないと思って、踊っていたのに、因縁の太郎吾が出てくると、「見たな」と
ばかりに鬼の姿に戻り、急に激しい怒りの踊り。4,50センチ、ピョンピョン、
跳ねる、足を振る、スピードがあって、まさにコサックのダンス。そして、バク転で
墓に戻る。体操選手並みの技量。拍手も忘れ、息をのんで見てしまう。
三幕目では、鬼は長袴姿。刺繍がたくさんある黄色の繻子の豪華な長袴。
裾捌きが大変。まさに荒事芸を披露。鬼の口の周りは、大きく赤く塗られ、
恐ろしさを強調していた。
感動する大作だった。見終わって、これは、中車(香川照之)がこれから何年
かかってもできない芸だと思った。
中車には、「将軍江戸を去る」という将軍慶喜に江戸城開け渡しの御注進、
説得をする山岡鉄太郎役の世話物が用意されていた。「今、開城しなければ、
江戸は戦いの火の海となり、、」と熱く熱く、長いセリフで説得する。慶喜は、
團十郎。セリフは少ないが、将軍の渋さ、重さが滲み出てよかった。
中車は、去り際の歩き方が、まだ少し歌舞伎になじんでなかった。
口上で中車は、「これから一生涯かかって、歌舞伎に精進してまいります。
皆様、なにとぞ、御支え下さいますよう、お願い申し上げたてまつります」
と、深々と頭を下げて言うと、やはり、応援してあげたくなりますよね。
口上は、市川宗家5名、猿之助、中車、團子、團十郎、海老蔵の出演。
全員、市川家のしるし、「鉞(まさかり)銀杏」、先のとがった髷姿。
仕切り役の團十郎が、貫録があるし、上手かった。
最後は、元・猿之助、猿翁のための短い舞台「楼門五三の桐」。
猿翁の弟段四郎、弟子の右近、笑也、笑三郎、春猿、さらに門之助など、
猿翁ゆかりの人々が勢ぞろいの華やかな舞台。猿翁の功績の偉大さを
再認識させるものだった。
ご飯は、幕間に食べられるよう、劇場のお弁当を予約しておいた。
(写真はパンフから借用)。
いっしょに行った歌姫は、アメリカから帰ってきた翌日だったので、
「鱧のお吸い物、出汁がきいていて、日本のごはんはおいしい」と喜んでいた。