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エル・グレコ展 [展覧会(西洋画)]

 東京都美術館で開催中の「エル・グレコ展」に行った。
エル・グレコ(1541~1614)はスペインのトレドで活躍した画家。
劇的といわれる引き伸ばされたような体の宗教画が特長。

はいってすぐが、この54歳の自画像。
「あら、低い位置に!」と思ったら、目と目が合う位置に肖像画をかけると、絵の中の
人物とコミニュケーションがとれるから、と説明が書いてあった。
ならば、セニョール・グレコと目と目を合わせてご挨拶。

greco自画像.jpg

こちらは、「白貂の毛皮をまとう貴婦人」 1590年 グラスゴー美術館
毛皮の表現が素晴らしい。そして頭から巻いているスカーフが透ける生地で、ドレスが
うっすら見えるあたりが色っぽい。しかし眼光鋭く、気が強い貴婦人であるとわかる。
色白で眉、髪が黒く、スペイン人の顔立ち。

greco白てんの毛皮.jpg

グレコは肖像画家としてスタートした。当時の肖像画は、王侯・貴族を描いたものが
ほとんどだったが、グレコは自分の友人である聖職者や知識人を多く描いた。


エル・グレコは、当時ヴェネツィアの支配下だったクレタ島に生まれた。ビザンティン文化の
時代であったので、イコンの制作をしていた。若い時代のテンペラで描いたイコンが今回
展示されている。その後、ヴェネティアへ渡り、ティツィアーノなどの影響を受け、ローマを
経由して、スペインのトレドに定住した。
グレコとは、ギリシア人という意味で、本名ではないが、そのように呼ばれていた。
ペルジーノ(ペルージア人)、パルミジャニーノ(パロマの人)と同じでしょう。

イタリア時代、30歳の作品 「燃え木で蝋燭を灯す少年」 コロメール・コレクション 
暗がりの中に浮かび上がる蝋燭の灯り、息を吹きかける少年。
近くで見ると、眉の下にも白が塗られ、明暗をはっきりさせている。
ラトゥールの絵を連想させるが、ラトゥールはグレコより後の生まれである。
カポディモンテ美術館展でも同じタイトルの絵があったが、それとは少し違う。
好んで描いた主題なのだろう。

grecoろうそく.jpg

次のコーナーは、聖人たちの肖像画。
左)聖ヒエロニムス。 賢者の誉れ高いヒエロニムスらしい表情。聖書の翻訳をしたので、
              聖書が傍らに置いてある。
   
右)聖パウロ。パウロの手紙を聖書に執筆したので、手で聖書を示している。
         髪の毛が薄い容貌で描かれることが多い。背景が普通の家ふう。

GrecoHieronimus.jpg grecopaul.jpg

西洋美術館所蔵の「十字架のキリスト」も展示されていた。S字型のうねりの
体が痛々しい。同じ構図のゲッティ美術館のものも展示されていた。この絵は
当時、大人気で、何枚も描かれたそうだ。
「聖ドミニクス」1605年も似た色合いの絵。単純化された雲がデザインのようで
現代的。好きな作品。

greco十字架.jpg  StDominique.jpg

そして、いよいよ宗教画。「受胎告知」
左)1576年、イタリア時代はルネッサンス絵画ふう。
右)1600年 スペイン時代になってから、独特のマニエリズム表現になってきたとわかる。
神秘的ともいえるような。。。
これは、テイッセン・ボルネミッサ美術館のものだが、私がプラド美術館で見たのは、
3メートルある大きな絵だった。
「受胎告知」の別バージョンは、倉敷の大原美術館にもある。

greco受胎告知1.jpg greco受胎告知.jpg



そして、最後は、3.5mある大きな絵。「無原罪のお宿り」1607~1613年 トレド
鳩で示される精霊の光を浴び、音楽に充ちた空間の中にあるマリアの顔は悦びに満ち
、神への従順を誓っている。教会の祭壇で下から見上げられることを意識して長く引き
伸ばされた体。絵を見ていると上へ上へと引き上げられていくような気持ちになる。
下の方の遠景はトレドの景色。大きくあでやかな花が目に残る。

greco無原罪のo.jpg

プラド美術館で、グレコの絵はたくさん見たし、トレドの大聖堂にも行ったから、
、と思っていたけれど、これは世界中の美術館から集めてきた絵で構成、年代
順に展示され、とてもわかりやすい展覧会でした。初の大規模回顧展というだけ
のことはあります。宗教に関心がなくても飽きません。絵が圧倒的で、素晴らしい
のです。
会期は4月7日まで。


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