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たまもの展・埼玉県立近代美術館  [日本の美術館]

 埼玉県立近代美術館へ行った。
りゅうさんのブログで何回も紹介されている美術館だが、遠い?と思って、
行きそびれていた。でも、今回は、「たまもの」と名付けた大コレクション展、
所蔵作品の一挙公開。行くなら今でしょ(笑)

京浜東北線の北浦和駅、西口を出て、大通りをまっすぐ2分くらい歩くと、
北浦和公園につく。美術館は公園の中。
公園入口には、エミリオ・グレコの「ゆあみ」像。
さらに豊かな緑の木々を見ながらすすむと、ん?大きな裸婦がごろんと。
フェルナンド・ボテロ「横たわる人物」(1984)
ボテロの彫刻は、どれも太っていて大きい。
埼玉県立近美3.jpg

近代的な建物は、黒川紀章の設計。
MOMAはMusium Of Modern Artの略、最後のSはSaitama。

埼玉県立近美2.jpg

カメラを持って行かなかったので、携帯のボケ写真。

テーマにそった展示。
最初のコーナーの
テーマは、「面ざし」
児童画のようにも見える単純な形表現のルフィーノ・タマヨの「顔」が最初の絵。
タマヨの顔シリーズが数点続く。ほんわかしたタマヨを見たあと、振り返ると、
田中保のデッサン自画像。初めて名前をきく画家だが強い意志がみなぎる絵
に魅せられる。キスリングの「リタ・ヴァン・リアの肖像」は赤いスカーフ、黒い
透けるドレス、陶磁器のような白い手の女性リタ。若い日の黒柳徹子はこんな?
「黒いドレスの腰かけている女」、黒い背景に黒いドレスだが、淡いグレーの
ストールが2つの黒を分けている。
キスリングふうだが、これ、田中保!
ルオーの「横向きのピエロ」、パウル・クレーの「古代風の二重肖像」。
イラストふうで楽しい駒井哲郎柄澤斎の木版での肖像画シリーズが面白い!
「待った!」とダメだしの手を出しているアルブレヒト・デューラー。
絵筆を持つクービンの両肩に誰かの手が、、死の舞踏などドクロ系の絵が多いクービン
だから、悪霊が絵を描かせているという発想かな?

最初のコーナーだけで、こんなに面白いが、テーマは32あるという。
あまり興味がないところは、はしょらないと。
2つめのテーマは家族。私の好きなモーリス・ドニの「シャグマユリの聖母子」。
シャグマユリは背が高くルピナスのような赤い穂。いかにも南国という花。
白い服のドニの妻が、海の見えるシャグマユリ咲く
庭で赤ちゃんを抱いている絵。
熱帯の強い光が妻に降り注ぐ。紫陽花のほうがたくさん咲いているのだが、存在感
からいうと、シャグマユリ。
小松崎邦雄「五月の花嫁」は、牧場に牛たち、神父様が司式、新郎がタキシード姿
で新婦は牛!シュール。。「オルナンの埋葬」ふうの結構大きな絵。
池田満寿夫、瑛九、吉岡正人の作品もあった。

3つめのテーマ、深く眠るでは、パスキンの「眠る裸婦」のふわっと浮いた感じが
印象に残った。
こんな調子で詳しく書いていくと、いつまでたっても終わらないので、気になった
ものだけ記しておくと、
岸田劉生「路傍初夏」 奥行きのある道、遠近法で吸い込まれる。国立近代美術館
で見た「道路と土手と塀」より単純化されている。
埼玉の景色、東京の景色コーナーでは、知っている場所も昔はこうだったのね、と
眺める。

斎藤豊作もここで初めて知った画家。埼玉生まれだから取り上げられているのだろう。
斎藤は早くから二科会の花と称賛されたが、フランスに渡り、古城に住み、絵の制作を
した。「にわか雨」というサロンに入選した絵は、画面中央に風に揺らぐ大きな木が一本
ある絵。不穏な空、雲に動きが感じられる。
同郷で、同じく美大に学んだが、遅咲きで
苦労をした熊谷守一に援助をしていたそうだ。
埼玉県立近美_熊谷守一ケシの花.jpg ← ケシの花 1956年 熊谷守一

近代美術館なので、シュルレアリスムは外せない。
アルプ、マン・レイ、ミロ、イヴ・タンギーらの作品。
出品点数1000というのだから、見出がある。

すばらしかったのは、大熊家コレクションの横山大観、掛け軸10点。
四季折々、日本の自然の美しさ、繊細さを見てとれる。

一階には、普通の常設がある。
日本画の小茂田青樹「春の夜」は、すっきりとしたきれいな作品。
梅の花の香り漂う春の夜、ネコが獲物をねらって歩く。木の上でそれを見つめる
フクロウ。梅の木にはたらしこみ技法が取り入れられている。夜空の色あいと
さくらの色の対比が美しい。
小茂田青樹_春の夜.jpg


埼玉県立近代美術館のお宝は、モネの「ジヴェルニーの積みわら、夕日」と、モネ17歳
の作品「ルエルの眺め」。ピサロ「エラニーの牛を追う娘」 フジタ「横たわる裸婦」
MonetSaitama.jpg   埼玉県立近代美ピサロ.jpg


彫刻室もあり、ソファーにすわってゆっくり3点の彫刻を見るようになっている。
舟越保武「ダミアン神父像」ブロンズ。私財を投じ、ハンセン病患者救済に献身した神父。
自分もハンセン氏病で亡くなった。何かを語りかけるような口元。崇高さが漂う。
ジャコモ・マンズー 「枢機卿」1979年 ダミアン神父が等身大なのに比し、これは
大きな作品。白い大理石で三角錐の大きく広がったマント、高い帽子、椅子に座り
目を閉じているが厳粛さが漂う。
ヴェナンツォ・クロチェッティ「マグダラのマリア」
風に向かうマリアの後ろ姿。衣服や髪が強い風にたなびき顔が見えない。風に向かう
ことで、全身で悔悛の情を示しているように見える。衣服のうねりに激しさを感じる。

遠くても行く価値のある美術館でした。[ハートたち(複数ハート)]
  *りゅうさんの常設展の作品紹介ブログ記事
「たまもの」展は、5月19日までです。


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