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印象派を超えて 点描の画家たち [展覧会(西洋画)]

国立新美術館で開催中の「印象派を超えて 点描の画家たち」展、
先週の日曜日に行って、予想以上の面白さだったので、おすすめ。
会期が23日(祝)までと、残りわずかです。

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点描の画家たち、見る機会の多いゴッホ、スーラ、モンドリアンの作品よりも、
分割主義(DIVISIONISM)のベルギー、オランダの画家たちの初めて見る
作品に惹かれた。

この展覧会は、オランダのクレラー・ミューラー美術館からの作品を中心に
構成されているので、レイセルベルヘ、ヤン・トーロップ、プリッカー、
ヘンドリクス・ペトルス・ブレマーらの初めて見る絵が印象に残った。

はいってすぐは、印象派のモネ、シスレー。日本の美術館の所蔵品。
モネの「サンジェルマンの森の中で」は、紅葉の吸い込まれそうな森。
シスレーの「舟遊び」も、シスレーとしては珍しい点描だった。

点描を始めたのは、スーラ。彼は31歳で亡くなったため、シニャックが
あとを引き継ぐ。
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スーラは、北フランスの景色を描いているので、色合いが優しく穏やかだが、
シニャックは、太陽のふりそそぐ南フランスを描き、ピンクが目立つ明るい色彩。

シニャック「ダイニングルーム」。初期の作品。小さな点描。
真横を向いた召使の姿が、スーラの「グランドジャット島」の女性を思わせる。
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ピサロのエラニーの農場風景、アンリ・エドモン・クロスの「モンマルトルのはずれ」
やさしい絵のあと、マクシミリアン・リュスの「鋳鉄工場」は、熱い火の溶鉱炉でシャベル
を持って働く労働者たち。力強さが伝わってくる絵だった。景色が多い中で異色。
ドニの「病院での夕暮れの祈り」は、小品だが、人をシンプルな形に表現、色の対比が
明確で好きな絵だった。

ゴッホは9点あった。チラシの「種をまく人」は、ミレーの構図の模写を起点と
した絵。同じ主題のものは、ゴッホ美術館にもある。点描というより分割主義
で長方形に近い構成要素。
「レストランの内部」は、壁も床もまさに点描。白いテーブルクロスが印象に残る絵。

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ゴッホは点描を試みたものの、それは自分に合わないということで、
クルクル渦巻きになっていった。
ゴッホとけんか別れをしたゴーギャンの「木靴職人」も印象に残る絵だった。
昨年秋に愛知県立美術館が3億円で購入し、裏は「海岸の岩」になっている。
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今回、レイセルベルヘの大きな絵をまとめて見れた。
ベルギーのエミール・クラウスにも通じる明るい光。
「7月の朝」
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「読書する女」は、青い大きな帽子をかぶった女性の後ろ姿。
「眠る若い女」「オダリスク」と裸婦の絵が2点。アングル風とゴヤ風なのが面白い。

「おやっ!」と見つめたのは、「アンリ・ヴァン・ド・ヴェルド」の文字。
アール・ヌーヴォーの机など家具・建築のデザイナーだと思っていたが、
初期には絵も描いていたのだそう。明確に3つにわかれた構図の「夕暮れ」。
正面の塀に向かって歩く後ろ姿の農婦が一人、静かなアクセントになっていた。
クレラー・ミュラー美術館は、ヴァン・ド・ヴェルド設計の建物なのだそう。
さらに、美術館の作品収集アドヴァイザーは、ヘンドリクス・ぺトルス・ブレマー。
ブレマーの「石炭入れのある食器洗い場の眺め」は、室内、部屋を描き、人はいない。
日本の昔の家のような茶系の色あいの静かな絵。ハンマースホイを思い出した。

今回、13点も絵があり、コーナーをもらっていたのがオランダのヤン・トーロップ。
「オルガンの音色」1890年のような象徴主義の作品もあれば、「ストライキの後」
のように俯いてとぼとぼ歩く親子4人という写実に近いものもあり、2つは、ほぼ
同年代の制作というのが意外だった。かと思うと、「秋」のような明るい色合いの
大きな点描は、よく見ると親子で心和む。
私は「海」(1899年)が好きだった。波の白さが遠くからもはっきりとわかる。
さまざまな青が使われ、リズミカルな波から音楽が聞こえるように思えた。
オルセーで見て好きになったアンリ・エドモン・クロスの「金色の島々」もこういう絵。

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最後はモンドリアンのコーナーだった。
初期の具象の作品が、形と色の調和ということで、黒い線で分割されたスタイルの
「コンポジションNoⅡ」(1913年) になっていくのがわかる。

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分割していくことから、幾何学的な「赤と黄色と青のあるコンポジション」1927年
が生まれていったとわかる流れ。

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最初、印象派にモンドリアンとは、乱暴なつなげ方、と思っていたのだが、
ベルギー、オランダの分割主義を見ていくうちに、ヤン・トーロップの「海」もモンドリアン
的な道の礎となっていたのだろうと納得できた。良い展覧会だった。

 *オランダ在のInatimyさんが「クレラー・ミュラー美術館」へいらした記事もご覧ください。
  ここで載せたヤン・トーロップの「海」、レイセルヘルベの「7月の朝」も出ています。


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