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えさき [和食の店]

この店は、八ヶ岳に移転しました

 東京・青山にある「えさき」、創作和食の店でミシュラン5年連続3つ星。
かねてから行ってみたいと思っていたが、都合のいい日に予約がとれなかった。
今回、月曜夜ならあいているとのことで、昨晩、出かけた。

タクシーの運転手さんが、「電話番号を言ってくれれば検索で行けますよ」というので、
頼んだら、「お客さん、ここだけど、洋服屋」と怪訝そうな顔。「看板でてるから、ここだわ」
つまり、洋服屋(紳士服)の横の階段を下りたところ、ビルの地下の小さな店。

引き戸を開けると、お香の香りがして、和の雰囲気。
白いシンプルな壁紙のインテリア。
テーブル席に通されたが、カウンターの奥の調理場で働く人たちが見える。
お料理はコースで、10000円と13500円。違いは鮑の皿がつくかどうか。

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私と友達は和食でもシャンパン。
選択肢はなく、ポル・ロジェのみだけど、好きなブランドなので、うれしい。
一品目は、ハマグリのリゾット、彩豊かな野菜に土佐酢をまとわせ苺ドレッシング
を添えて。
「酢をまとわせる」と書いてあると、酢漬けではなく、さらっと、とわかる。こういう
表現が創作料理の説明には不可欠なのだろう。

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森県産ヒラメのお造り。レモンと塩で食べる。
私は、ワサビが好きなので、ワサビをもらって食べた。

菊芋のスープ。ふんわりかつおだしの香り。甘みと芋のとろみが濃厚。
浮かんでるのは、菊芋のチップス。

鯛の蒸し物、下に三浦大根。うす衣の青菜の天ぷら添え、菜の花ソース。
北海道産のきんき煮つけ、ごぼう添え。
どーんと一尾づけ。大きさに驚くけれど、頭の大きい魚なので、持て余しはしない。
薄味でやさしい味の煮つけ。

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蝦夷アワビの酒蒸し。長いものわさび酢醤油あえと共に。
ソースは鮑の肝入りなので、濃厚で美味しい。
白のグラスワインを合わせた。

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このあと、ホタルイカのたきこみご飯と、佐島のワカメ入り味噌汁。
苺のデザート、有機コーヒー。コーヒーがすっきりと美味しかった。

私は覚えてないので省略したが、ここの料理は、どれも素材厳選なので、
産地が全部記してあった。

季節感をいかした創作料理は、料理人の意気込みが伝わってくる。
始めにハマグリのリゾットは意外だが、ご飯にほっとするし、濃い味は、
シャンパンによく合った。きっと、ビールにも合うだろう。
黒服のサーヴィスの女性が洗練されていて、てきぱきと、白いシャツの
若い女の子たちのサーヴィスに気を配りながら動き、すてきだった。


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「板谷波山の夢みたもの」展 [展覧会(絵以外)]

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出光美術館で、「板谷波山の夢みたもの」展を見た。
180余点も展示されていたので、とても見応えがあり、感心して見ているうち、
閉館時間になってしまった。2時間ちょっといたことになる。
ほとんど全部の作品が出光佐三の所蔵品というのだから、すごい。

板谷波山(1872~1963)は今年没後50年なので、その回顧展である。
上のチケットの写真にもあるように、上品な白いぼかしの葆光釉(ほこうゆう)が
波山の特徴で、図柄はアールデコふうの斬新さがある。これはチューリップの
模様。波山の作品は、「麗しのうつわ」展を始め、いくつかの展覧会で見てきたが、
その品の良さとスマートさに、とても惹かれている。

はいった所すぐに、漱石は5歳年上の同時代人、封建制から脱した新しい時代、
「生命礼賛の時代」と、波山の生きた時代の説明があった。
「唐草にオウムの絵柄の花瓶」があり、壁には津田青楓装丁のアールデコふう
唐草模様で描かれた漱石の「道草」の表紙が、比較できるよう展示してあった。

波山という名前は、茨城県、筑波山のふもとの出身だからなのだそう。
東京芸大の彫刻科を卒業後、石川県の工業高校で彫刻の他に陶芸も教えた
ことから、陶芸の道に進むことになった。
彫刻を学んだ技を活かし、模様を薄く彫る「薄肉彫」を始めた。
「棕櫚葉彫文花瓶」 一面にシュロの葉を彫った花瓶。彫があるので立体的。
光をあびて、縦横に葉と葉の重なりがうかび、間に雷文が見える。みごと!

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波山は、葆光釉(ほこうゆう)という薄いヴェールのようなぼかし技法も考えた。
器の中に光を閉じ込めているように見えるので、葆光と名付けられた。
チケットのチューリップ模様の花瓶の他にも、下の写真の
「葆光彩磁花卉文花瓶」、いろいろな花がぐるりと描かれている。
ため息がでるほど美しい。

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「彩磁延壽文花瓶」
青海波の地に白い吉祥文、桃の蕾、花、実の図柄。
桃の蕾、花、実がいっしょにあるという図柄も面白い。
青は当時、日露戦争、戦勝の色として人気があったそうだ。

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波山は色にもこだわっていて、白は白でも、氷の結晶のように見える「氷華磁」、
霜のように見える「凝霜磁」、繭のように少し黄ばんだ「蛋殻磁」、光を閉じ込めた
「葆光磁」と種類があり、実際、作品を見ると、地が霜のようだったり、氷のよう
だったりと、わかって感心した。

図柄として、葡萄や八つ手がよく使われていたのが意外だった。椿の花も多かった。
大きな笹の葉の図柄の水指は斬新。ウサギも時々模様として使われ愛らしかった。

最後のコーナーは、茶道具。
銘が「命乞い」という色の美しい天目茶碗、それは波山が、傷があるので割ろうと
したところ、出光佐三が、「割らずに譲ってほしい」と貰い受けたもの。粋な命名は、
茶人、佐三ならでは、のもの。
91歳、波山最後の作品は、椿の模様の茶碗だった。

作品が多いので、それぞれの細かい違いも、比較ができ、とても興味深かった。
どれも模様の絵が実に美しい。

陶磁器の形に、植物をのせた「器物図集」は、こんなふうに考えていったのだな
、とわかるスケッチ集。絵葉書になって売店で売っていた。

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あと3日しか会期がないのですが、おすすめの展覧会です。


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ザ・ビューティフル [展覧会(西洋画)]

友達Mが、「ザ・ビューティフルって、ポスターがとってもきれいな展覧会やってるから
見たいわ。場所も丸ビルの三菱だし」と言ってきた。

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たしかに~、はっとするほど色鮮やかなオレンジ色。

ザ・ビューティフル(The Beautiful)展は、英国の唯美主義1860~1900年に
焦点を当てた展覧会で、英国のヴィクトリア&アルバート(V&A)美術館で開催された
ものの巡回展である。
三菱一号館は、英国人コンドルの設計で、唯美主義の時代の英国ふうの建物
だから、この展覧会の会場にはぴったり。

唯美主義がおこった19世紀は、芸術の分野で絶えず、「変化と革新」があった。
ヴィクトリア女王の時代であり、英国は世界に植民地を広げた絶頂期であった。
新しいものへの欲求が高まり、絵画を購入する層も広がったことから、物語を
主題とするわかりやすい絵が広まった。さらに、芸術は美的価値を第一に
おくべき、唯ひたすら美しいものを求めるという「唯美主義」の運動がおこった。
 (注:唯美主義は耽美主義とほぼ同じ)

ダンテ・ガブリエル・ロセッティ「愛の杯」

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この絵、見たことある、ってお思いの方もいらっしゃるでしょう。
上野の西洋美術館所蔵の絵。
耽美主義の先駆け、ラファエル前派の重要メンバーであったロセッティ。

当時の売れっ子フレデリック・レイトンの「母と子」

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実際に見ると、コントラストがはっきりした白が美しい絵。
花瓶にはいった白い百合、細かい模様のペルシア絨毯の上でくつろぐ母と子。
後ろの金屏風はどうやら日本ふうらしい。描かれている絵が日本画とは違うが。。
ぜいたく品に囲まれたゆったりとした暮らしぶりは、きっと、当時の憧れ。


ジョージ・フレデリック・ワッツ「孔雀の羽を手にする習作」

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孔雀の羽根は、耽美主義の作品によく使われている。
美しいものの代表格だったのだろうか。

アルバート・ムーア「黄色いマーガレット」

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服の色、扇子の色も黄色。黄色いマーガレットは足元右にある。
ムーアは、古代ギリシア彫刻を学び、衣服を古代ギリシア風に再現した。

チラシに使われている絵は、同じくアルバート・ムーアで、「真夏」
これも衣服がゆったりと古代ギリシアふう。色が鮮やかなだけでなく、
かなり大きな絵なので圧倒された。


ザ・ビューティフルというタイトルだから、全体に美人画が多い。

エドワード・バーン・ジョーンズが下絵を描いたタピストリー「ポモナ」
ウィリアム・モリス商会の制作。
ポモナはローマ神話の果実の神なので、りんごを持っている。

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同じくエドワード・バーン・ジョーンズ作のブローチ。
色鮮やかできれい。七宝、サンゴ、トルコ石に真珠が少し。

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工芸品もいろいろと展示されていた。

ウィリアム・ゴドウィン 「飾り戸棚」

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画家ホイッスラーの自宅を設計したゴドウィンは、家具もデザインした。
だから、この飾り戸棚は実際にホイッスラーの邸宅に置かれていた。
開き戸棚の部分は火灯窓模様で、日本の寺院ふう!
ホイッスラーの絵「黒と金」も展示されていた。

耽美主義は、年数を経ると、時代の流れもあり、だんだん世紀末的になっていった。
オスカー・ワイルドの「サロメ」をモノクロの版画にしたビアズリーの作品が当時よく売れた。
この辺りは、mozさんが詳しく版画つきで書いていらっしゃるので、そちらをご覧ください。

ザ・ビューティフルの名に違わず、きれいなものがたくさんあるので、ふらりと、
見に行くのに、ちょうど良い展覧会だと思う。[黒ハート]


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