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「板谷波山の夢みたもの」展 [展覧会(絵以外)]

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出光美術館で、「板谷波山の夢みたもの」展を見た。
180余点も展示されていたので、とても見応えがあり、感心して見ているうち、
閉館時間になってしまった。2時間ちょっといたことになる。
ほとんど全部の作品が出光佐三の所蔵品というのだから、すごい。

板谷波山(1872~1963)は今年没後50年なので、その回顧展である。
上のチケットの写真にもあるように、上品な白いぼかしの葆光釉(ほこうゆう)が
波山の特徴で、図柄はアールデコふうの斬新さがある。これはチューリップの
模様。波山の作品は、「麗しのうつわ」展を始め、いくつかの展覧会で見てきたが、
その品の良さとスマートさに、とても惹かれている。

はいった所すぐに、漱石は5歳年上の同時代人、封建制から脱した新しい時代、
「生命礼賛の時代」と、波山の生きた時代の説明があった。
「唐草にオウムの絵柄の花瓶」があり、壁には津田青楓装丁のアールデコふう
唐草模様で描かれた漱石の「道草」の表紙が、比較できるよう展示してあった。

波山という名前は、茨城県、筑波山のふもとの出身だからなのだそう。
東京芸大の彫刻科を卒業後、石川県の工業高校で彫刻の他に陶芸も教えた
ことから、陶芸の道に進むことになった。
彫刻を学んだ技を活かし、模様を薄く彫る「薄肉彫」を始めた。
「棕櫚葉彫文花瓶」 一面にシュロの葉を彫った花瓶。彫があるので立体的。
光をあびて、縦横に葉と葉の重なりがうかび、間に雷文が見える。みごと!

波山しゅろ模様3.jpg


波山は、葆光釉(ほこうゆう)という薄いヴェールのようなぼかし技法も考えた。
器の中に光を閉じ込めているように見えるので、葆光と名付けられた。
チケットのチューリップ模様の花瓶の他にも、下の写真の
「葆光彩磁花卉文花瓶」、いろいろな花がぐるりと描かれている。
ため息がでるほど美しい。

波山ほ光.jpg


「彩磁延壽文花瓶」
青海波の地に白い吉祥文、桃の蕾、花、実の図柄。
桃の蕾、花、実がいっしょにあるという図柄も面白い。
青は当時、日露戦争、戦勝の色として人気があったそうだ。

波山青海波3.jpg

波山は色にもこだわっていて、白は白でも、氷の結晶のように見える「氷華磁」、
霜のように見える「凝霜磁」、繭のように少し黄ばんだ「蛋殻磁」、光を閉じ込めた
「葆光磁」と種類があり、実際、作品を見ると、地が霜のようだったり、氷のよう
だったりと、わかって感心した。

図柄として、葡萄や八つ手がよく使われていたのが意外だった。椿の花も多かった。
大きな笹の葉の図柄の水指は斬新。ウサギも時々模様として使われ愛らしかった。

最後のコーナーは、茶道具。
銘が「命乞い」という色の美しい天目茶碗、それは波山が、傷があるので割ろうと
したところ、出光佐三が、「割らずに譲ってほしい」と貰い受けたもの。粋な命名は、
茶人、佐三ならでは、のもの。
91歳、波山最後の作品は、椿の模様の茶碗だった。

作品が多いので、それぞれの細かい違いも、比較ができ、とても興味深かった。
どれも模様の絵が実に美しい。

陶磁器の形に、植物をのせた「器物図集」は、こんなふうに考えていったのだな
、とわかるスケッチ集。絵葉書になって売店で売っていた。

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あと3日しか会期がないのですが、おすすめの展覧会です。


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