ルーヴル美術館・ランス別館 [外国の美術館、博物館]
5泊と短かったけれど、パリに行った。
一日目、2012年12月に開館したルーヴル美術館・ランス別館に出かけた。
フランスで「ランス」と言うと、シャンパンや大聖堂で有名なReimsだが、ルーヴル別館
があるのは、Lens。Lensは炭坑で栄えたリールのすぐそば。大きな町ではないから、
「リールの近くのランス」と言わないと、わかってもらえない。
なんで、そんな小さな町にルーヴルが?
ルーヴルは所蔵品が多くなりすぎて、実際に展示できるのは10%以下。
過疎化してる元炭鉱の町に別館を作り、ルーヴルの絵を定期的に入れ替えて展示
することで、町に人を集めることもできる、いわゆる町おこし。
建物は、コンペで日本人建築家SANNAの設計が採用された。
パリ北駅からTGVで1時間ちょっとで、Lens駅につく。
Lensにとまるのは一日に何本もないので、途中で各駅停車に乗り換えた。
駅前からルーヴル行バス(無料)に乗ったが、歩いても20分だそう。
建物は、「風景の中に消える」というコンセプトで、透明で明るく開放的に造られている。
白く見えるのは、雪ではなく、大きな飛び石のように配置されたコンクリート部分。
入口はこんなふう。アルミとガラスでできた平屋。ガラスに周囲の木々が映り込む。
展示室は「Galerie du temps 時のギャラリー」と名付けられた広い1部屋だけ。
紀元前3500年頃から19世紀半ばまで、年代別に、200を超える作品が展示されていた。
ちょうど真ん中に立って、入口、紀元前3500年~のほうを振り返ると、こんなふう。
同じ場所から、逆方向を見ると、15世紀末のペルジーノの「聖セバスティアヌス」が見える。
右でおじさんが眺めているのは、ラファエロの「友人のいる自画像」、昨年のラファエロ展
で来日した絵。
一番奥に、「あ、アングルのオイディプス」とよく知ってる作品が見えてうれしくなった。
絵のそばに同じテーマの同時代の彫刻が置いてあるのがいいなと思った。
下の写真で、右端の絵はフラゴナールの「ディドロの肖像」。白い大理石のウードン作の
彫刻「ディドロ」が傍に置かれていた。フランス人たちは、「ディドロだ!」と、うれしそう
に声をあげていた。ディドロは哲学者で、啓蒙思想の時代に百科全書を編纂した。
中央に鎮座まします彫刻は、ルコント作「ダランベール」。
ダランベールは数学者、物理学者で、ディドロと共に百科全書を編纂した。
奥の左がアングルの「スフィンクスの謎をとくオイディプス」、その横はゴヤの絵。
美人画家エリザベート・ルイーズ・ヴィジェ・ルブランをモデルにした彫刻は、
Augustin PAJOUの作品。
絵は、ジョシュア・レイノルズの「マスター・ヘアの肖像」。2つとも顔の向きが同じ。
(マスター・ヘアの肖像は、2009年西洋美の「ルーヴル展」に来てた絵)
暗くて見えにくい写真だけど、ジョルジュ・ラ・トゥールの「灯火の前のマグダラのマリア」
横には、マグダラのマリアに合わせて、腕組みをして悔悛の表情の聖人の木彫り像。
以上、長さ120mの部屋での展示は、見たことのあるものが多いので、30分で終了
してしまった。
パリからの電車の本数が少ないから、行くのに時間がかかり、交通費は往復74ユーロ
(10930円)。帰りは夜6時の列車のチケットを買ったので、カフェでご飯を食べ、
ミュジアムショップを見て、周りを散策しても、まだ時間が余った。
1960年に閉山された炭坑の町ランス、炭坑跡の三角山が見える。
小さな駅だが、駅前にはかわいらしい建物がある。駅前なのに人があまりいない。
駅構内には、昔の炭坑のようすを示すモザイクの絵があった。
一度はいいけれど、再訪することはないだろう、と思った。