「ファンタスティック・江戸絵画の夢と空想」展 [展覧会(日本の絵)]
「面白いのやってるから、連休に行きましょう」と、同僚に誘われて
府中市美術館へ「ファンタスティック・江戸絵画の夢と空想」を見に行った。
府中市美術館は、京王線府中駅からバスに乗って5つめの停留所「美術館前」で
降りる。緑に囲まれた大きな公園の一角にあり、五月の風が気持ち良かった。
「ファンタスティック」なので、、奇想天外に面白いものがいろいろあった。
展示は、作品を自然現象、山水、天文、面白い動物、妖怪とセクションに分けてあった。
まずは、自然現象のなかでも「月」を取り上げた掛け軸で始まる。
森一鳳の「満月図」、柴田是真の「三日月図」、円山応挙の「残月牽牛花図」と、
同じ大きさの掛け軸でも、月が満月、三日月、残月と順に欠けて行く展示。
いきなり、是真、応挙と好きな画家の作品が登場でうれしい。
そして、さすが応挙!と感心したのが、「雲峰図」。
画面には、夏雲の一番上のところだけが「もくもく」というようすで描かれていた。
薄墨色の大胆な雲が、入道雲を思わせる夏らしさ。
宗達調の四季の花の金屏風。堂々と豪華な「伊年」印の6曲2双。
季節に関係なく配置された花々。左上に垂れ下がる藤が、左曲の画面を締めている。
美しいので、しばらく眺めていた。
谷文晁の山水画の前で、友達が、「これは、本物よね」とくすっと笑って言うので、
「何で?」ときくと「鑑定団(TV番組)で、一番多く出てくるのが、谷文晁の偽物なの」
白い小鳥がたくさん配置され舞っている絵、でも、あり得ない配置と笑うと、夢を絵に
したものとの説明書き。「日々歓喜図」岡本某。その横に、同じ小鳥の群れでも真ん中に
ぴっと光を放つほど見とれる写実の青い鳥。これも応挙。「群鳥図」
たしかに面白い。こんな絵があったの!と笑ったり驚いたり。
応挙の写実に感心していたら、こんな絵もあった。「地獄変相図」。閻魔大王が主役。
お寺のために描いたそうだけど、応挙は何でも描けるんですね。
この応挙の絵を参考にして描いた酒井抱一の「地獄図」が横に展示されていた。
歌川国芳のギャグに富んだ絵は、いつ見ても面白いので好きだ。
「道外化もの(どうけばけもの)夕涼み」、化け物の仮面を被った人たちの夕涼み風景。
ゆかたの柄が粋。
歌川国芳と国貞は兄弟弟子で、今、Bunkamuraで、「俺たちの国芳、私の国貞展」を
やっているが、二人とも浮世絵の名人。特に国芳は武者絵に優れ、国貞は美人画が
人気だった。国貞が歌舞伎の場面を描いた「豊国奇術競」の「鳴神上人」は人目をひく。
「鳴神上人」が、雲の絶間姫を追いかけて行くところ。火災の衣装。
応挙はすばらしいと讃えたが、応挙の弟子の「蘆雪」の「蓬莱山」は重要美術品指定の絵。
遠近法の三角形構図。蓬莱山は中国伝説にある仙人が住むという桃源郷。
白砂青松の海。砂浜ではカメが行列。空には鶴が飛び、仙人が鶴にのっている。
蘆雪の「朧月図」
白い鳥たちが飛び交う空。月と雲のまわりを淡墨で外隈を描いているのでくっきりと浮かぶ。
青みがかった墨が月明かりの感じを出している。幽玄な世界。
チラシの「虎の絵」も芦雪 は蕪村だが、これは前期の展示なので、今回は見れなかった。
富士山といえば、北斎。「富士越竜図」は大きい水墨画。
かなり縦長の富士。その上を天に上る竜。竜の通った道筋が黒いのは雲竜。
手前は海の波なのだろう。画面の左上、佐久間象山がつけた漢詩に、「海から現れた竜」とある。
現在、都美術館で「若冲展」が開催され人気の若冲の「乗興舟」、11mの絵巻物。
この絵が描かれたのは、「釈迦三尊像」3幅と「動植綵絵」24幅を、相国寺に寄進した2年後。
相国寺の和尚から誘われ、京都伏見から大阪の天満橋までの夜の淀川下り舟に乗った。
和尚が詠んだ詩に、若冲が絵を描いた。
若冲の墨絵「亀図」もよかった。灰色の亀の甲羅は筋目がきで描かれ、藻亀なので、
毛のような藻が、墨の一筆で、さっと描かれていた。
狩野芳崖の「鷹雀図」は、鷹と雀が仲良く群れ飛んでいる図。夢で見た情景を描いたそうだ。
是真の「月下布袋図」は布袋様だから、さくっと描かれ愉快。
逃げる途中、山の中で笠を置き佇んでいる後醍醐天皇。傍らの木の根元に腰を下ろし休んで
いる烏帽子を被った2人は御付きの者。
東東洋「富士・足柄山・武蔵野図」は3福の掛軸。
左は太った鹿、中央が富士山、右が山桜。ゆったり、のんびりした風景。
東東洋は、初めてきいた名前だが、他にも風景画が展示されていた。
司馬江漢の「天球図」(地球)やオランダ風景を描いたものなど、江漢の作品が一番多かったが、
私は応挙、蘆雪の絵が良かった。
いろいろとバラエティに富んでいて、楽しく面白い展覧会だった。