ルノワール展 [展覧会(西洋画)]
国立新美術館で開催中のルノワール展は、今まで見たルノワール展の中で一番よかった。
でも、会期が明日22日まで。遅い記事ですみません。
どこが良いのかというと、大きな代表作がいくつも来ていて、見応えがあり、それが、
新国立の天井の高い大きな空間に、見やすく展示されていて、印象に残る。
チラシに使われている「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」、177×131㎝の大きな絵。1876年。
「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」は、パリ・モンマルトルのダンスホール。画面狭しとばかりに
大勢の男女が踊ったり、会話したり。光がいっぱいの楽しそうなひととき。日本初公開。
「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」で、中央にいる女性2人、美人姉妹で、上の方の黒い服のジャンヌは
「ブランコ」1876年、のモデル。
「ブランコ」は、Bunkamuraの「ルノワール+ルノワール」展にも出品されていた。
リボンが前についた白い服に当たる陽のきらめきが、写真では伝わらず、実際に絵を見ると
よくわかる。地面に降り注ぐ木漏れ日もきらきらと美しい。
まさに印象派という「光のきらめき」の時代から、7年後の1883年。
「田舎のダンス」「都会のダンス」これも180×90㎝と大きな絵で、2つ並んでの展示は45年ぶり。
田舎のダンスのモデルは、後にルノワールの妻となるアリーヌ・シャリゴ。
赤い帽子で赤い頬。楽しそうに笑っている。健康そうなシャンパーニュ地方オーブの田舎娘。
一方、「都会のダンス」のモデルは、ユトリロの母で画家のシュザンヌ・ヴァラドン。
純白のドレスでの美しい立ち姿は、まさに都会の洗練。
ダンス関連として、ルノワール以外の同時代の画家も展示されている。
ゴッホの「アルルのダンスホール」
ティソの「夜会」の裾が豪華なサテンドレスの黄色の鮮やかなこと!これも1mの大きな絵
ルノワール次男、映画監督のジャン・ルノワールの作品「フレンチカンカン」の
ハイライトシーン映像コーナーがあり、外にもフレンチカンカンの音楽が聞こえてくる。
会場は、いくつものセクションに分かれている。
最初の絵は、「猫と少年」。1868年。縦123㎝の大きな少年のヌード。
かなりの美少年。マネ、クールベの影響を受けた印象派以前の若い時代の作品。
次の絵は、「陽光の中の裸婦」1876年
ルノワールらしさが出てきた絵。Bunkamuraの展覧会にも出品されていた。
「私は人物画家だ」というタイトルのセクションは、肖像画特集。
ここでも180㎝と大きい「ジョルジュ・アルトマン夫人」の全身、室内肖像画の立派さに目が行く。
「ジョルジュ・シャルパンティエ夫人」1876年
ブリヂストン美術館にある「座るジョルジェット嬢」の母君。
「モネ」を描いた肖像画もあった。
「読書する少女」 1874年
白い頬をバラ色に染めて読書に熱中する少女。何を読んでいるのだろう。
窓からの光が美しい。
風景画
「草原の坂道」 1875年
少し高い視点から描かれた坂道。降りてくる人の動きがいきいきと、実際にこちらに向かって
くるかのようだ。遠景の一本の糸杉の木が全体をひきしめ、野原の空気感が伝わる。
モネの「日傘の女性」もこんな草原に立っていたっけ。
「バナナ畑」1881年は、ルノワールらしくない強い色彩だが、実際、バナナ畑はこういう
色合いだったのだろう。
子どもたち、身近な人たち
「ジュリー・マネ」1887年
画家ベルト・モリゾとマネの弟ウジェーヌ・マネの娘ジュリー。
9歳だけど大人びた表情。気品があってかわいらしい。抱かれた猫の顔がいいなぁ。
「母性(ルノワール夫人と息子ピエール)」 1885年
田舎のダンスでモデルだったアリーヌは、ルノワールの妻となり、子どもを3人生んだ。
授乳中のアリーヌ。顔は喜びに満ちている。
「道化師(ココの肖像)」
ココはルノワールの息子クロードの愛称。道化師の服を着せての肖像画。
「バラを持つガブリエル」1911年
ガブリエルはルノワール家の乳母であり、たくさんの絵のモデルとなった。
豊満な肉体だったので、「横たわる裸婦(ガブリエル)」1906年という大きな作品もあった。
ピアノを弾く少女たち
「ピアノを弾く少女たち」1892年
印象派の作風を離れた古典的画面構成。温かみのあるルノワール色。
じっと見ていると、実に多彩な色の組み合わせで絵が構成されているとわかる。
この絵の横に、ブリヂストン美術館の「ドビュッシー展」に出品され、チラシに使われていた絵
「ピアノを弾くイヴォンヌとクリスティーヌ・ルロル」 1897年 が展示されていた。
裸婦
肌色表現が得意なルノワール。生涯、裸婦をたくさん描いたが、その集大成がこの大きな裸婦。
「浴女たち」1918~1919年
晩年はリウマチに侵され、手が不自由になっていたにも関わらず、豊かな色彩と表現力。
生命感に満ち溢れている。
作品数は全部で100点ほどで、すべてオルセー美術館とオランジュリー美術館のコレクション。
質の高い展覧会だった。