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円山応挙から近代京都画壇へ [展覧会(日本の絵)]

芸大美術館で、「円山応挙から近代京都画壇へ」展を見たのは、8月初め。
わかりやすい展覧会で楽しかった。
ほとんど忘れているが、京都展開催中なので、図録をたよりに記録しておく。

ちらし.jpg


大乗寺の襖を壁面を使って横に展示するのでなく立体的展示。
十字型に四面の展示、すなわち、一面に2×2でコーナーを作る。部屋の再現。
これだと裏表、32枚の絵が見える。


今から250年前、江戸時代中期から後期(享保から寛永)の京都では、円山応挙が、
写生画で名を馳せ、それまでの狩野派に代わって、京都画壇の中心となった。さらに
、応挙や蕪村に師事した呉春によって四条派が結成された。円山・四条派は、脈々
と続き、長沢芦雪、岸駒、松村景文、竹内栖鳳、上村松園など多くの画家を輩出した。

それらの画家たちの作品を見ることによって、円山・四条派を知る展覧会だった。


応挙の襖絵があることで、応挙寺ともよばれている「大乗寺」は、兵庫県の日本海側、
美方郡香美町にある。
「松に孔雀図」墨一色で描かれているが、光の当たり具合によって、松の葉が緑がかって見え、
孔雀が青味を帯びて見える。応挙は、松を原料とする松煙墨と植物性油脂を原料とする油煙墨
を使い分け、金箔の効果も計算に入れていた。

松に孔雀図_応挙.jpg

会場では、このように展示されていた。


松に孔雀図.jpg

展示されている32枚の襖絵を応挙は、弟子たち13人を引き連れて寺に出向いて、描いた。
この「松に孔雀図」の裏側は、呉春の描いた「群山露頂図」で、蕪村ふうの南画的表現で
題名通り、霧に包まれた
連なる山の頂のみを描いている。見る人に別の峰から見ている
ように思わせるのだろうか。同じく呉春の「四季耕作図」は牧歌的で、木の描き方が応挙譲り。

襖絵の「少年行」は、山本守礼作で、漢詩からの題材。山道を鞍を銀で飾った若者2人が、
山の中腹にて、目指す女たちのいる酒場方向を眺める図。「あと少し」と言ってるかのよう。
「使者の間」という客間なので、大乗寺から依頼のテーマなのではと想像されている。



襖絵の他は、動物、風景、人物とテーマごとに展示されていた。

1、動物
応挙の「写生図」(部分)みごとな描写。

写生図_応挙.jpg


「花卉鳥獣図巻」も、黒、白、茶色の鶏、尾の長いもの、短いもの、孔雀、などが並んだ

10mもの絵巻。みごとな写実で美しい。円山派5代目・応文と望月派4代目・玉泉の合作。


動物というテーマなので、時代が違うが、犬の絵2つが並んでいた。
長沢芦雪の「薔薇蝶狗子図」
蝶は薔薇の枝の一番上。犬5匹は、それぞれじゃれ合ったり、すましたり。
芦雪のころんとした犬が愛くるしい。
薔薇蝶狗_芦雪.jpg

竹内栖鳳「春暖」
こちらの犬は、かまってほしい表情。「僕、ひとりでいいもん」

栖鳳犬.jpg


岸竹堂「猛虎図」 屏風一対
これは右隻。
右隻と左隻の間、つまり中央、ここでは左端に水の落ちる渓流がある。2頭は渓流の対岸に
いる虎に向かって吠えている。大迫力の画面。岸竹堂は虎図を得意とした「岸駒」の弟子。
猛虎図_岸竹堂.jpg


森狙仙 「雪中灯篭猿図」 猿は森派を代表する画題。
上の方にいる猿が枝をゆすったことで、細かい雪がぱらぱらと落ちている。
降り積もった雪を塗り残しで表現しているのは、応挙の技法に倣ったのだろう。
sosen.jpg


写真はないが、芦雪の「花鳥図」は、右隻中央に低い岩山、そこから伸びるうねった桜の花
の枝、下に椿、牡丹、水流と個性的。左隻では藤の枝ぶりに応挙門下らしさを感じた。


2、風景画

岸竹堂の「大津唐崎図」は、右隻に朝もやに霞む唐崎の浜の素朴な民家、
左隻に、夕暮れなずむ時の唐崎の松みごとな枝ぶりを堂々と描いているが、
朝もや、夕やみが、絵全体に紗をかけたようで幻想的だたt。


塩川文麟の「嵐山春景平等院雪景図」は、右隻に雪の平等院、左隻に桜咲く嵐山を
描いている。松に雪が積もる表現は、応挙の国宝「雪松図」(三井記念美術館)と
同じ外隈の技法が使われている。


3、人物
上村松園 「羅浮仙女
唐の時代物語に出てくる仙女である。松園は、円山派の画家たちが描いた唐美人図を
参考にして、一時期は、唐美人を多く描いた。


Syouen.jpg


応挙「江口君図」
縦1mある大きな絵。美人画が少ない応挙だが、これは優品として知られている。
謡曲「江口」に登場する遊女が普賢菩薩となって象に乗って登場する場面を描いている。

帯を前に結んでいる遊女でありながら、江口はたいそう品がよく美しい。象までも
品が良く優しい雰囲気なのが笑えた。
江口君.jpg


私が見たのは前期。後期はまた展示ががらりと変わり、京都展の前期、後期もまた

異なる作品が登場する。図録には全てが収められているので、見ていると、
「これ、見たかった」という作品が続々出てきた。日本の作家たちなので、いずれまた
どこかで見る機会があるだろう。


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