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角川武蔵野ミュージアム [日本の美術館]

角川武蔵野ミュージアムは昨年、埼玉県東所沢市にオープンした。
うちからは、高速・関越道の「所沢インター」で降りて10分ほどなので、
車で行けば近いという場所。
設計は隈研吾、巨大な石の要塞なような建物。
花崗岩2万枚を手で切り出し、斜め方向に積み上げたもの。
昨年末の紅白歌合戦で、「埼玉県の某所からです」と映し出された時、
「どこだろう?」と思った。しかも吹き抜けの2階の天井まで全部本棚と
いう図書室で、男女のユニットYOASOBIが歌っていた。

美術館にはあまり行かない弟が紅白を見て、建物と本棚に興味を持ち、
行ってみたいと言うので、一緒に行った。

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石の要塞の横に、ショッピング棟、ホテル棟がある。

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正面入り口。ここから入る。花崗岩のパネルは陽を浴びるとキラキラして美しい。

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ここが本棚劇場がある図書室の入り口。中は撮影禁止。

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図書室はテーマに沿って本が並べてある。
コロナウィルス対策で、手に取った本は、元に戻すのでなく「返却場所」に置く。

図書室の中に、展示室があり、私が見たいと思っていた「米谷健+ジュリア展」は、
そこでやっていた。予想よりずっと狭く、小規模。
展覧会は、サブタイトルが「だから私は救われたい」
日本人とオーストラリア人のユニット、「米谷健+ジュリア」は、環境破壊、気候変動、
原発事故処理、パンデミックなどの問題をかかえる現代社会での経済動向、健康など
に不安を覚え、「救われたい」という思いを持つ。それらを科学や聖書の話も取り入れ、
作品に表している。


「救われたい」というテーマなので、キリストの救い、聖書の「最後の晩餐」を
9mという長い食卓で、塩を使って表現している。
オーストラリアの大規模農業の灌漑による塩害、環境破壊、食の安全性に不安を
覚え、塩害に関連させ塩で2014年に制作した。
このまま進むと、人類の最後の晩餐の時が来てしまうという警告。

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色鮮やかで美しいシャンデリア。この蛍光緑の素材はウランガラスで、
放射性物質を含む。福島の原発事故から着想し、制作を始めた。
各々のシャンデリアには、原発を持つ国の名前が書いてあり、シャンデリアの
大きさはその国の発電量に比例している。

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白い像、大人と子供の像、それと?
この作品は、白いサンゴのようなパーツから出来ていて、地球規模で進む
サンゴの白化現象を警告している。

KadokawaJulia2.jpg

実際に見ればすぐわかるのだが、これらの像は、信楽焼きの白い磁器の
パーツを組み合わせている。
子供の像の足を拡大すると、こんな。サンゴの白化現象がわかる作品。

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友達にすすめられた5階の「SACRA DINER」で食事。
2時を過ぎていたので、ランチタイムメニューでなくグランドメニュー。
所沢野菜をふんだんに使ったイタリアン。
左は牛肉とごぼうのフェットチーネ。右は所沢野菜のオーブン焼き。
石の建物なので、プレートも石。マスタードマヨネーズのようなソースで石の上に
ラインを引いてストライプ模様に見立てている。おしゃれ。
明るくシンプルな内装で居心地がいいレストランだった。


KadokawaLunch0.jpg


チケットは予約制で、私が行った図書室が基本で1200円。さらに漫画を読む部屋が600円とか、
どんぐりの森散策が〇〇円、妖怪展が〇〇円と、いろいろなオプションがあるので、
一日楽しめるようになっている。

GWに出かけるのに、おすすめの場所だが、緊急事態宣言が出されたので、休館かもしれない。
米谷健+ジュリア展は、5月31日まで。

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トライアローグ展(会期終了) [展覧会(西洋画)]

2月末で終わった展覧会だが、横浜美術館、愛知県立美術館、富山美術館、3館の
20世紀美術のコレクション展なので、展示作品を今後、見る機会もあると思うので、
記事にしておく。

入り口.jpg


トライアローグは、三者の話し合いという意味なので、特定の作家、
たとえばピカソの作品を3館のものを並べて展示、比較するという試み。
Picasso3.jpg

左から「青い肩掛けの女」1902年(愛知)、「肘掛け椅子で眠る女」1927年(横浜)、
「座る女」1960年(富山)
ピカソの絵は、青の時代、バラ色の時代、キュビズム、新古典主義、シュルレアリズムと
変遷をとげ、第二次大戦後は過去の巨匠作品のアレンジやそれまでのスタイルの混合である。
「青い肩掛け」青の時代、「肘掛け椅子で眠る」シュルレアリズム、「座る女」混合の時代
であり、下の写真「肘掛け椅子の女」1923年(富山)は新古典主義である。
picaso_肘掛け椅子.jpg



次、ジョアン・ミロの作品も3館のが並んで展示されていた。
左:花と蝶 1922年(横浜) 右:パイプを吸う男 1925年(富山)
「パイプを吸う男」は日本で最初に購入されたミロの作品である。
写真はないが、愛知のは「絵画」で大きめのサイズ。

Miro花と蝶.jpg    miroパイプを吸う男.jpg


3館のコレクションは、横浜美術館はシュルレアリスム、愛知県立美術館は
ドイツ表現主義、富山美術館は第二次世界大戦以降に特徴がある。


レジェも3館のものが並んでの展示だった。
これは愛知県立の「「緑の背景のコンポジション」1931年
題名の通り緑色が鮮やか。レジェ作品に多くみられるモチーフ「機械」もある。
Leger緑の背景のコンポジション1.jpg
パウル・クレーも3館からの作品がたくさんあったが、私が好きだったのは、これ。
メルヘンぽいのだが謎めいている。
「女の館」(愛知)1921年
cray2.jpg
他に3館のものが比較できるよう並べられていたのは、ポール・デルヴォー。
「階段」1948年(横浜)不思議な絵。デルヴォーの絵は夜や朝もやが多いが、
これは眩しい光がさす昼間。
デルボー階段1.jpg

3館作品の比較はいくつもあったが、面白かったのは、マックス・エルンスト。
「少女が見た湖の夢」(横浜)、「森と太陽」(富山)
横浜のは何回も見ている絵で、富山もそれに似ている。
しかし愛知の「ポーランドの騎士」1954年は、色合いからしても他の2つの
重厚な暗さと異なり、青が基調。馬の顔はわかるが、左側に鳥、背景は廃墟?
MaxErnst_ポーランドの騎士.jpg

ハンス・アルプの絵は横浜でいつも見ていたが、その横に愛知の「森」という単純化された木
の形に型どった木材に絵の具を塗って仕上げたオブジェを展示し、傍らのテーブルの上に
彫刻「鳥の骨格」(富山)を置くことによって、アルプコーナーが出来ていた。
メレット・オッペンハイム「りす」は、横浜のと富山の、そっくりな2つが並ぶ。
こげ茶色のふさふさの毛と黄色のグラスでリスの形に似せている。

横浜美術館の自慢の作品マグリットの「王様の美術館」1966年
Magrid.jpg
他に、箱詰め作品のジョセフ・コーネル、アルマン、ブルーが特徴のイブ・クライン、
一昨年回顧展があったボルタンスキー、石膏像のジョージ・シーガル。
コンバイン・ペインティングのロバート・ラウシェンベルグ、ポンピドー美術館で
展覧会を見たのだが良さがわからなかった。今回の「ボーリアリス・シェアーズ」
(富山)も私には、、。
そして鮮やかな色彩を放つリヒターの「オランジェリー」1982年(富山)
こんなにたくさんの20世紀美術が集まることは初めてのことだと思う。
外国の美術館で見て馴染みのアーティストの作品に会えて、面白かった。
展示のしかたも、関連付けの工夫が随所に見られ、楽しかった。

今、人気のリヒターを先駆けて購入などの富山県立美術館に行ってみたいと思う。

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